株券の失効制度(株券喪失登録制度)
2019(平成31)年1月10日改訂
2020(令和2)年6月6日改訂
平成14年改正前は、株券を喪失した者は、公示催告・除権判決(当時)を得てからでないと会社から株券の再発行を受けることが出来ませんでした。
しかし、公示催告・除権判決(当時)は、費用がかかること、手続きが煩雑であること、株券の現所持者が官報等により公示催告の存在を知ることは期待できないなどの批判がありました。
そこで、平成14年改正により、新しい株券失効制度が導入されました。
それで、株券には有価証券無効宣言公示催告・除権決定制度は適用されないことになりました。(会社法第233条)
但し、株券以外の新株予約権証券や社債券等に関しては、有価証券無効宣言公示催告・除権決定制度の適用があります。
以下「株券失効制度」の概要を説明します。(会社法第221条~第232条)
株券を喪失した者は、株式会社に対し、株券喪失登録簿への記載・記録を請求できます。
株式会社は、株券喪失登録簿に喪失登録をして一般に閲覧させるとともに株式名簿上の株主と登録質権者に通知します。
喪失登録されている株券の株式については名義書換及び議決権行使等はできません。
但し、株式名簿上の株主が喪失登録をしている場合は、議決権の行使は可能です。
喪失登録された株券を有する者は、喪失登録に対して登録の抹消の申請ができます。
これがなされると、株式会社は喪失登録者に通知し、2週間後に喪失登録を抹消します。
喪失登録がなされた株券は、喪失登録された日の翌日から1年後に失効し株券が無効になります。
それにより、喪失登録者は株式会社から株券の再発行を受けることができます。
なお,株券を紛失した場合,その株券を善意取得した者が現れると,株券が善意取得された反射的効果として元の株主は株式を失ってしまいます。
このように,株券は紛失の危険があるため,会社法は株券の不所持制度を設けています。
また,株券発行会社であっても,定款を変更することにより株券を発行しないようにすることも可能です。
なお,有価証券無効宣言公示催告及び除権決定に関しては,
2019(平成31)年1月10日有価証券無効宣言公示催告及び除権決定
でご説明しています。
参考文献
江頭憲治郎著 株式会社法第6版 有斐閣
弥永真生著 リーガルマインド会社法第14版 有斐閣
神田秀樹著 会社法第18版 弘文堂