遺骨の「散骨」に関する法律問題
2015(平成27)年5月20日
- 1 最近遺骨の「散骨」,すなわち火葬した遺骨をお墓に埋葬せずに土地や海に散布することが適法か否かが問題になっています。
- 2 遺骨の埋葬等を定めた法律に「墓地,埋葬等に関する法律」があります。
同法第4条は,埋葬,または焼骨の埋葬は墓地以外の区域に行ってはならないと規定しています。
更に,同法第5条は,埋葬,火葬又は改葬を行うものは市町村長の許可を受けなければならないと規定しています。
しかし,同法は「散骨」については規定しておりません。
そうすると,「散骨」は,同法が予想した埋葬方法ではないことになります。 - 3 次に「散骨」が刑法第190条の「遺骨遺棄罪」に該当するか否かが問題になります。
この点に関して,法務省は非公式に「節度をもって行われれば刑法の遺骨遺棄罪には当たらない。」と表明しているとのことです。
そうであれば,「散骨」が節度をもって行われれば刑法第190条の「遺骨遺棄罪」には該当しないものと思われます。 - 4 仮に「散骨」が「刑法」や「墓地,埋葬等に関する法律」等に抵触しないとしても「散骨」を行う場所に関する法律問題があります。
- ① 他人の土地
「散骨」を他人の土地にその土地の所有者の承諾無く行った場合は,不法行為となり損害賠償請求されることになります。
そして,「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」第16条の廃棄物の投棄禁止の規定に抵触することも考えられます。 - ② 自己所有地
自己所有地に「節度をもって」散骨をする場合の問題です。
その場合自己所有地を事実上墓地と同様に使用することになりますので,隣接ないし近隣の土地所有者との間で相隣関係の問題が発生してくるおそれがあります。
また,「散骨」した自己所有地を第三者に所有権移転等の権利移転をする場合,その土地に「散骨」した事実を予め告知しないと,所有権移転等を受けた第三者から告知義務違反等を理由として契約解除及び損害賠償請求されることも考えられます。 - ③ 海洋
海に「散骨」する場合には,「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」第10条の船舶からの廃棄物の排出の禁止規定に抵触するおそれがあります。
特に,海水浴場や魚介類の養殖場,及びその付近に「散骨」した場合は,海水浴場経営者や養殖業者の業務活動に対する妨害行為として損害賠償請求されるおそれがあります。