反社会的勢力(暴力団等)の不当要求への対応
2014(平成26)年9月26日
第1 企業対象暴力
企業,又はその従業員等企業の関係者に対し,暴力や集団の威力を背景に不当に金品を得ようとする行為一般。
第2 不当要求等類型
- 1 文書購読要求
機関誌などを購入するよう要求される。
職員が,個人で,自費で購入してしまうこともある。
- ア 新規購入要求 → 断る。相手からの購読要求に対しては,一貫して,理由を付けずに毅然たる態度で明確に要求を拒絶。文書などが送り付けられてきた場合は,速やかに着払いで送り返す。
マニュアルを作成すること,及び対応する職員が相談できる専門部署を作ることが望ましい。
*組織ではなく,担当者個人が購入を要求(強要)されることもあるので,注意。
(参考)特定商取引に関する法律59条。
特定商取引法では,販売業者が勝手に商品を送り付けてきた場合,①消費者がその商品を使用しないまま14日経った場合,②消費者が「買う意思がないから引き取ってほしい」と販売業者に請求したときは,その請求日から7日経った場合は,販売業者はその商品の返還を求めることができない。
- イ 既に購入している場合
契約解除を行う。
弁護士に委任するのが無難。 - 2 寄付金・賛助金要求
政治団体などを標ぼうする者から寄付金・賛助金名目で金員を要求される。
対応方法としては,理由を付けずに断る。
ここで,理由を付けると,かえって相手に言いがかりの糸口を与えることになるため,理由はつけずに,要求を断る。 - 3 金品の要求~スキャンダルに対する口止め料名目の金品等の要求
- 4 損害賠償請求~事故等の示談交渉に介入した損害賠償請求
- 5 債務履行要求
- 6 特に,クレームに係る不当要求
- 7 架空請求
対処方法
第3 不当要求等実例
- 事例1 土下座の強要
物流関係の男性が,とある受取人に対し荷物を配達したところ,荷物に破損があった。
破損の原因は不明である。
受取人は,男性に対し破損の責任を追及し,「誠意を見せろ。」と言って,最終的には男性の上司も巻き込んで,土下座をさせた。
→何らかのトラブルが発生した際,相手方に対して謝罪を要求する際,その要求内容が,社会的に許容される範囲を超えれば,違法である。
謝罪として,相手に土下座することを強要する行為は,社会的に許容されない。
そのため,他人に対して土下座を強要すれば,強要罪が成立する。
無理な謝罪要求(土下座をしろ,等)を受けた場合,できないものはできない旨伝え,それでも要求を続けるようであれば,被害届を出す,あるいは告訴状を提出するといった対応を行う。
(参考) 不退去罪について
刑法 第十二章 住居を侵す罪
(住居侵入等)
第百三十条 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求けたにもを受かかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
- 事例2 不動産への居座り
何年も地代を支払っていない借主が,貸主に無断で土地を第三者に転貸し,第三者が同土地上に工作物を設置した。
また借主は,地代を支払っていないにも関わらず,その土地を自分に売却するよう要求してきている。
→占有移転禁止の仮処分を行ない,その後契約解除に基づく不動産明渡請求を行い,解決した。
*注意点:占有移転禁止の仮処分をかけて,占有を固定しておかないと,借主に対して明渡しを命ずる判決が出たとしても,実際に土地を占有しているのが第三者であった場合には,執行ができなくなる。なお,仮処分には保証金として,数ヶ月分の家賃に相当する金銭が必要となることが多い。
- 事例3 美人局事例
男性(妻子あり)が,ある独身女性から悩み事相談を聞いているうちに,深い仲になり,最終的には男女関係を持つに至った。
その際男性は,今後,その独身女性と結婚すること等をメールで送っていた。
その後,独身女性の婚約者と名乗る男性が登場し,男性に対して,慰謝料等の名目で,「誠意を見せろ。」と言って,金銭を要求してきた。
*「女性の母親の親戚」と名乗る男性が登場したケースもある。よく聞くと,女性の母親の内縁の夫であるということであったが,確認は出来なかった。
→要求の相手を確認する。
→私生活上の行動にも注意。特に金,酒,異性関係に注意。
→もしトラブルに巻き込まれたら,すぐ第三者(特に弁護士)に相談すること。
第4 不当要求への対処法(武田法律事務所HPより。)
http://www5b.biglobe.ne.jp/~takedala/
- 1.基本的心構え
- a) 暴力団をむやみに恐れない。
暴力団を恐れているようなそぶりを見せると暴力団はそれにつけこみ嵩(かさ)にかかって不法な要求をする。
→対応する際,場所を当方の管理する場所にする。
→相手より多い人数で対応する。
→録音する。
- b) 暴力団をバカにしない。
暴力団をバカにした態度を示すと逆上して何をするかわからないような状態になり危険である。 - 2.譲歩しない。
暴力団の要求に対して,譲歩(こちらの落ち度を超えた解決に応じること)してはいけない。 - 3.応接の際の留意点
- a)受け付け時には相手方を確認する。(所属,肩書,フルネーム)
- b)責任者へのバトンタッチ。(民事介入暴力対策担当部署を決めておいてそこに引き継ぐ。)
- c)約束をしない。(できない約束やあいまいなことについて約束をしない。期限をきらない。)
- d)面談時の注意点
- イ)場所 当方の管理の及ぶ場所が原則。やむを得ず外部で面談する場合は喫茶店やホテルのロビーなど人目につくところにする。
- ロ)時間 必ず面談時間を限定して(最大限2時間程度),予めその旨告げて時間が来たら切り上げる。
- ハ)人数 相手方より多い人数でのぞむ。
- ニ)記録 会話の内容を録音する。録音する旨を相手方に伝える。相手方が録音を拒否したら,面談できない旨伝え,面談しない。
*録音した会話を,裁判所に提出する(第三者に聞いてもらう)ことも念頭において,録取する。 - ホ)警察への連絡 面談に先立って警察に対していざというときの協力要請をしておく。
- 4.違法な要求行為に対する法的対応
- 民事
- a)面談強要禁止の仮処分
- b)債務不存在確認訴訟
- c)その他の法的手続き
- 刑事
住居侵入・不退去罪
傷害罪(診断書を取得すること)
暴行罪(塩を振りかける行為,他人が手に持っている空き缶を蹴る行為,投石行為,拡声器を使って耳元で大声を発する行為等)
脅迫罪(生命・身体・自由・名誉又は財産に対し害を加える旨告知すること)
強要罪(脅迫又は暴行によって人に義務のないことを行わせ,権利の行使を妨害する罪)
名誉毀損罪
信用毀損及び業務妨害罪
威力業務妨害罪
恐喝罪
私用文書等毀棄罪
建造物損壊罪
器物損壊罪
通常人に接するのと同じ態度で接する。
第5 暴力団排除条項の活用
第6 最後に
相手方が,どこの誰なのか,明らかにしてもらう。
住所,氏名を確認。
また,相手方の要求を,書面にして提出するよう要求。
不当な要求は,断固拒否。