不動産競売執行手続内の不動産の引渡命令
2014(平成26)年1月11日
- 1 不動産強制競売・競売手続において、買受人に対する売却許可決定が確定し、買受人が売却代金を納付すると買受人はその不動産の所有権を取得します。
裁判所書記官が職権によりその不動産の買受人への所有権移転登記の嘱託を行います。 - 2 買受人が競落して所有権を取得した不動産に占有者がいて任意での買受人への引き渡しを拒んだ場合、買受人は競売の執行手続外で,売買契約あるいは競売で取得した所有権に基づき不動産の引渡・明渡請求訴訟を提起して判決を取得し、その判決を債務名義として引渡・明渡の強制執行をして不動産の占有を確保することが原則です。
- 3 しかし、それでは現実問題として相当の時間と労力と費用がかかり、執行手続きの売却価格が低減してしまい適正な価格が確保できなくなるおそれがあります。
- 4 そこで、簡易な手続きとして、執行手続内で買受人の申立てにより、執行裁判所が、債務者や一定要件の占有者に対して、競売不動産を買受人に引き渡せと命ずる引渡命令の制度があります。
この引渡命令は確定により効力が生じ、これを債務名義として競売不動産の引渡・明渡の強制執行ができます。 - 5 引渡命令には申立期間の制限があります。
引渡命令の申立期間は、代金を納付した日の翌日から起算して6ヶ月以内です。
但し、代金納付時に民法395条1項の明渡猶予を受ける建物使用者が占有している建物の買受人にあっては9ヶ月以内です。
それらの期間経過後は、前記の通常の不動産の引渡・明渡請求訴訟を提起してその判決により強制的に占有を取得するしかありません。 - 6 申立人は、代金を納付した買受人及び買受人の相続人等の一般承継人です。買受人から不動産を購入した転取得者等の特定承継人は申立てできません。
- 7 引渡命令の相手方は、債務者(担保権実行としての競売の場合は所有者)及び買受人に対抗できる権原を有しない不動産の占有者です。
債務者(所有者)に対しては不動産の占有の有無にかかわらず引渡命令を発することができます。
債務者(所有者)に相続等の一般承継が生じた場合は、その一般承継人が相手方になります。
債務者(所有者)以外の不動産の占有者は、競売事件の記録上占有権原が不明である場合や審尋手続を経ても占有権原が不明である場合引渡命令の相手方になります。