7.スペクトル解析

7.スペクトル解析
7.1 SPCANAスペクトル解析の概要
 SPCANAは,FFTを用いたいくつかのスペクトラムとMEM(最大エントロピー法)によるパワースペクトルを計算し,多様なスタイルのスペクトラムを描くことができます.
 また,時系列にそったスペクトルの変動をランニングスペクトラムとして表示したり,カラースケールを用いて表示された振動数−時間の二次元スペクトラムを表示することができます.また,スペクトルピークの出現頻度をカウントすることもできます.

7.2 スペクトル解析
7.2.1 FFT(高速フーリエ変換)
 FFTは,2のべき乗個の時系列数値データに対して計算します.本システムでは512〜8192個
(または16〜256個)のデータに対してFFTを行います.
 FFTによるスペクトル解析では,解析振動数範囲(上限振動数)は,サンプリング率によって決定され,解析データ個数には関係ありません.データ個数を多くすれば,振動数分解能が向上します.
  解析チャンネル番号,データ開始点およびデータ個数を選択し,「Run」ボタンをクリックすれば,FFTによるスペクトル解析を実行します.

    開始点の選択



ステップの選択

データ点数選択→
 
 
 
 
チャンネル指定→

データ個数pointsは,「min」にチェックを入れると,16〜256個の点数を指定することができます.



これにチェックを入れると



から選ぶことができます.

FFT解析データは,Positionで指定されたデータカウントからStepの間隔のPointsの個数です.
解析波形の継続時間Tは,
   T = dt×Points×Step   (dt : サンプリング時間間隔)
になります.
TおよびDT=Step×dtは,下のように表示されます.


 FFTによるスペクトル解析の上限振動数は1/(2DT)であり,また,分解能は1/Tで表されます.
 「Run」ボタンをクリックするたびに,解析結果を表示しますが,スライダイーのポジションは一定間隔ごとに自動的にスキップします.
 スキップの間隔は,解析時間長の4/1,1/2および1倍の長さをメニューバーの「Spectrum」−
「Skip」から選択します.
 スキップ間隔0を指定すれば,スキップせずに,毎回,同一波形についてスペクトル解析を行います.
 スキップするデータカウント数はチェックした数値にPointsの数を乗じたものです.1/2は,解析範囲を半分ずつ移動させながらスペクトル解析を行います.
 Skipの規定値は1に設定していますので,「Run」ボタンを押すごとに,Pointsデータだけスキップします.

 「Skip」のチェックボックスで,スキップの有無を指定することもできます.

メニューバー「Spectrum」から チェックボックス

 データ個数がPointsに満たない場合,不足するデータを0値で置き換えることができます.


7.2.2 FFT解析結果
「Run」ボタンをクリックすれば,指定したデータについてFFTを実行し,結果が下のように表示されます.
基本的には,振動数とFFTの実数部および虚数部とスペクトルの値が表示され,スライダーを移動することによって,すべての数値を確認することができます.
ただし,複数チャンネルを選択した場合は,最終チャンネルについて表示されますから,ある特定のチャンネルのFFT結果を知りたい場合は,そのチャンネルを単独に指定して「Run」を実行しなければなりません.
なお,ここに示される実数部および虚数部は,FFTルーチンの処理結果を直接表示したもので,実際の大きさの1/2です.


7.2.3 スペクトルの選択
FFTにもとづいて,フーリエ係数スペクトル,フーリエ振幅スペクトルあるいはフーリエパワースペクトルを計算し,スペクトラムとして表示します.

スペクトルの選択は 「Type」から行います.

 
←フーリエ係数/振幅スペクトラム
←フーリエパワースペクトラム
←実行ボタン
←解析結果をファイル保存するとき

Amp:「Abs F Coeff」にチェックを入れればフーリエ係数(絶対値)スペクトラムを表示します.
   「Abs F Coeff」のチェックをはずすとフーリエ振幅スペクトラムを表示します.
Power:フーリエパワースペクトラムを表示します. 

FFTの結果およびスペクトル解析の数値データをファイルに保存する場合は,「File Save」にチェックを入れて「Run」ボタンをクリックします.

←ファイル保存のときチェックを入れる

(1) フーリエ係数スペクトラム
 フーリエ係数スペクトラムは,解析データをフーリエ級数展開した際のフーリエ係数の絶対値を計算します.
 FFTの実数部および虚数部の2乗和の平方根を2倍したものとして計算しています.
 フーリエ係数スペクトラムは,「F Abs Coeff 」と表示され,スペクトルの単位は解析データの単位と同じ単位になります.

(2)フーリエ振幅スペクトラム
 FFTによる係数の絶対値にT/2(T:解析時間)を乗じて,スペクトルを表しています.
 
(3)フーリエパワースペクトラム
 FFTの係数の2乗和に解析時間Tを乗じて,両側パワースペクトル密度を表しています.

7.2.4 スペクトルの平滑化
 「Smooth」の回数でスペクトルの平滑化を行えます.

解析データ列にHanninng Windowを乗じて,スペクトルの平滑化を行うことができます.
Hanning Windowは,単に,周波数領域では,スペクトル値を1:2:1の重みで移動平均を行うのに相当します.「Smooth」の回数は,この移動平均を何回繰り返すかを指定しており,0と1以外に数学的な意味はありません.
MEMの場合は無関係です.

7.2.7 スペクトル表示
 「Run」ボタンのほかに,PointsやHanningなどをクリックすれば,再計算を実行します.Channelの選択を変更した場合は,「Run」ボタンをクリックしてください
 ・横軸は一般に振動数を表します.
 ・縦軸,横軸の目盛りは線形目盛りで,自動的に設定されます.目盛り軸の変更は,グラフ上でマウスを右クリックするか,メニューバーのSpectrum-Formatで自由に変更できます.
 ・Ver4では,周期を横軸に設定することができます.X ValueをPeriodに設定し,対数目盛りを指定してくだささい.
 ・スペクトルのグラフ領域内にマウスを移動すれば,マウスの指す位置の座標値を表示します.
 ・複数チャンネルのスペクトル表示で,縦軸の目盛りの大きさは,最も若いチャンネルの大きさで目盛りが設定されます.グラフが領域からはみ出る場合は,メニューバー-Formatで縦軸目盛りの最大値Y maxを設定してください.
 ・グラフの補助軸の表示・非表示をメニューバー-Spectrum-Sub Axisで選択できます.
 ・グラフは,メニューバー-Edit-Copyでクリップボードにコピーできます.クリップボードにコピーされたグラフイメージは,ウインドウズの他のアプリケーションで貼り付け(ペースト)することができます.
 ・File Saveにチェックを入れてRUNをクリックすれば,スペクトル解析結果をCSVファイルに出力することができます.
 ・File Saveにチェックを入れると,FFT変換後の実部,虚部とスペクトルをCSVファイルに保存することができます.また,MEMスペクトルを保存することもできます.
 ・メニューからFile-Wite Data Fileをクリックすれば,スペクトル解析を行った位置の全チャンネルのデータをCSVファイルに出力します(Ver4.4以降).

7.3 解析波形のファイル保存
 スペクトル解析を行った部分の波形データを標準形式CSVデータファイルとして保存することができます.
「File」-「Write Data File」−「Analized Data」をクリックして保存してください.
保存されたデータファイルは,標準形式データファイルとして,読み込むことができます.