夜空にひときわ輝く星シリウスに導かれるようにポウ・ポーがたどり着いたその場所にはやはり蛍水晶が輝いていました。それも今まで見たこともないほどの美しさの石だったのです。「すごい」言葉になる前にすでに駆け出していました。水晶は暗闇を溶かすほどにその存在をあらわにしていました。輝きはそこいらを照らし出すような勢い。「こんな明るい水晶は始めてだ!」ポウポーはすいこまれるようにその石に近づいていきました。発光する水晶の明るみの中に入ったときふとあることに気付きました。
水晶のそばになにか模様がある。丸いくぼみがあって、それを小さい石をならべて創った線がつないでいる。なんだろう・・・たんなる装飾なのか、模様?それとも文字だろうか?

 あらためてまわりを見まわしてみると、その輝く水晶のところだけではないのでした。近くにも先ほどの蛍水晶には劣るものの質のよい水晶がいくつかあることに気付きました。そしてやはりそれも意味ありげに石をならべた線で結ばれているのでした。
「ああこれは・・・・星座図だ!」
星を示す丸いくぼみ、そしてそのくぼみ同士を関係付ける様にならべられた石の線。
その模様を丹念にたどっていくと星座を示す図が浮かび上がってきたのでした。
「それにこの並びは・・・・!」ポウ・ポーがある重要なことに気づいたそのときです。ポウポーの握り締めていた折り紙の馬が輝き出したかと思うとポンと手からはね大地に降り立ちました・・・次の瞬間そこには一角のひかり輝く馬が現われたのです。
「えっ!?」
突然のことに驚いたポオ・ポオーは自分の身にいったい何が起きたのかすぐには理解できませんでした。でもその瞬間何かの符合の存在を無意識に感じました。「・・・一角の馬!・・・やっぱりこの水晶の並びは星座の一角獣座!」・・・ポウ・ポーが導かれてきた所には一角獣座の星図が描かれてあったのです。そしてそこでまるで月姫のお話しのように本物の一角獣が出現したのです。


・・・一角の馬・・・

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 「線でつながれた模様はやはり星座図で、するとこの広がり全体が巨大な星図になっているのだろうか?」・・・ポウ・ポーはそう考えました。これも魔法使いがかけた魔法の一部に違いない。一角獣の出現で宣教師の言っていたことは本当かもしれないと思えるようになっていたのです。ポウ・ポーは恐る恐る一角獣に近づきその瞳を覗きこみました。そのまあるい瞳の奥にポオ・ポーは忠誠とやさしさを感じました。さらにその瞳は語りかけてくるのでした。月姫の話に出てきた旅の精のように一角獣にまたがって、古代遺跡の中庭と言うには広すぎる星座の平原「ティファレットの庭」を旅してみなさいと・・・。
「ぼくは何だか、魔法使いがし掛けたジグソーパズルを解いてみたくなってきた」

一角獣の瞳はまるで催眠術のようにポウ・ポーの心を冒険の旅へといざなうのでした。