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暗闇に沈んだ大地に静かに流れる時間は天空の星座の運行にもにてゆっくりとしかし確実にその位置を変えていくのでした。やがて流れの果て、視界の中心に求めた妖精画廊の常夜灯が見えてきました。
あそこには確かに手がかりとなるものがある。ポウポーは確信にも似た想いでその緑色ににじむ常夜灯の明かりに目を凝らしました。

近づく常夜灯の夜光の中、不意に黒い人影が浮かび上がりました。その人影は手にしたカンデラをゆっくりとかかげます。四散する明かりに浮かんだその顔は宣教師のものでした。でもその表情は先ほどとは違い上気しています。
「おお!やはりあなたは1番目の魔法を解いたようですね!」
「え?」
ポウポーは一角獣から降りると驚いた表情をみせながら宣教師に近づきました。
「月姫の物語の第1番目・・・そのとうりになりましたね・・・
一角獣がその証拠です」
「ポウポーあなたに渡した折り紙の一角獣、実はわたしが一角獣座で見つけたものなのです。
宣教師は天を仰ぎながら感慨深げに言いました。
「不思議です。砂に埋もれたこれを初めて手にした時なにかおおきな流れが動き出すのを感じました。しかしわたしにはその時なにも起きなかった。
でもあなたは違った。
先ほどあなたにはじめてあった時なぜかこの折り紙を渡さなければという思いがよぎりました。これは私が長い間探し続けてやっと見つけた魔法を解く鍵。とても大切な物だと言のにです。
いやほんとうは一角獣が私の手の中でその身をよじり訴えたのかもしれません・・・ほとんど命令にも似た直感に大切な鍵をあなたに託したのです。」
「それで僕に・・・」
「でも僕は何もしていません。ただ螢水晶に引き寄せられるようにたどりついて、そこには一角獣座の星の並びが形作られていてその空気に触れたとたん本物の一角獣へと変わったのです」
「一角獣があなたを選んだのですね」
「僕を?」
「月姫の第1番目に描かれた旅の精にあなたは選ばれたのですよ。
この魔法を解くようにと!」
「この僕が!?
でも僕にはなんの力もありません。確かにこの不思議な出来事にびっくりしてだんだん興味もでてきて、それに魔法の謎も気にはなるけど・・・」
「しかし実際に第1の道が開かれています。」
そう言って宣教師が指差した所には一角獣がものいいたげにこちらを見つめていました。
不思議にかられたポウポーを見つめながら宣教師は続けました。

「それではもうひとつの証をご覧に入れましょう」
「もうひとつの証?」
宣教師はそっとポウポーの肩に手をやると「こちらへ」とうながすように歩きだしました。
ポウポーはだまって宣教師のあとに従うことにしました。


宣教師がポウポーを案内した処は先に月姫の話をしたあの絵の飾ってある妖精画廊なのでした。
「ここに証があるのですか?・・・」
「さあ第1番目の絵を御覧なさい」
「ああ、こ、これは・・・!」
ポウポーはビックリしてしましました。
なんと一角獣にまたがった旅の精の絵が星座図に変わっていたからです。

・・・証・・・


宣教師は言いました。
「旅の精の絵が一角獣座の星のならびに変わっていったのですよ。
私はそれを目の当たりにして、そして理解しました。なにかが起こりかけていることを・・・
そしてあなたをお迎えしたのです。」
「それではこれが魔法が解けた証なのですか」
「そう・・・そしてあなたが選ばれた証でもある。おそらくこれらの絵の意味する所・・・奥に隠されている寓意を導き出したとき魔法が解けていくのでしょう。星座図という証を残して・・・しかしまだ始まったばかり、魔法の全てを解き明かすには残りの9枚の解釈が必要でしょう。」

ポウポーはあたりをぐるりと見渡しました。確かにこの一枚目の絵以外に変わったところはありませんでした。
近づいて色々と確かめてみました。「確かにこの絵だけが変わったんだ。」
宣教師はポウポーのこころが落ち付くのをまって話し始めました。
「どうやらあなたにはもっとこの部屋の、いや真の謎を知っていてもらわなければならないようです。」