ゼータ関数と現代物理の関係について思っていることを若干述べます。
ゼータ関数はこの世の神秘のすべてを解く鍵をにぎっているのではないか?と最近つよく思うようになりま
した。
ゼータ関数とはなにか?
それは、素数を掛け合わせて(オイラー積表示という方式で)定義されるもので、例えばリーマン・ゼータと呼
ばれるゼータ関数は次のように定義されます。
ζ(s)=1/{(1-2^(-s))・(1-3^(-s))・(1-5^(-s))(1-7^(-s))・(1-11^(-s))・・・} -----@
右辺をばらせば次のようになる。
ζ(s)=1 + 1/2^s + 1/3^s + 1/4^s + 1/5^s + 1/6^s + ・・・・ ------A
これがオイラー(1707〜1783)によって史上はじめて発見されたゼータです。
@をばらせばAになるというところは、まったく感動してしまいます。
(ゼータ関数にはもっといろいろな種類がありζ(s)はその一つです。)
物理では場の量子論の発散の困難という大難問が横たわっていて、いまだに解決されていないのはよく知ら
れていますが、その原因の一つに相対性理論があります。
相対論という真っ赤な大嘘を、現代物理に組み込んでしまっていることが、その一因であることは
場の量子論の発散の困難の解消へで述べた通りです。
物理の世界から相対論をとり除くだけで、発散の困難の問題は解決にむけて大きく前進することは間違いあり
ません。
しかし、それだけでもまだ足りないのではないか?
それでもある物理量を計算したときに有限となるはずの所で∞に発散してしまう局面が現れるにちがいない。
そのときゼータがうまく作用してその困難を解消してくれるのではないか?
ゼータの大家・黒川信重氏(東京工業大学教授)の著書「数学の夢 素数からのひろがり」(岩波書店)には、
驚くべきことが書かれています。
「数学の夢 素数からのひろがり」(黒川信重著、岩波書店)p.47
まさに驚愕の事実だと思います。
上の”1 + 2^3 + 3^3 + 4^3 + ・・・”という値は、リーマン・ゼータ関数ζ(s)の特殊値ζ(-3)であるわけですが
(A式参照)、それが実際の自然界に現れているということが驚きなわけです。
”1 + 8 + 27 + 64 + ・・・”=1/120は、現代数学では解析接続という意味合いで解釈されていますが、私の
研究で、重回積分-重回微分という方法でもっと初等的に意味付けできることがわかりました。
詳しくは数学の研究をご覧ください。
ゼータの心で見れば、”1 + 8 + 27 + 64 + ・・・”=1/120がとても自然に見えてくるのです。
なお上記実験のラモローの論文は、次のとおりです。
S. K. Lamoreaux,Demonstration of the Casimir force in the 0.6 to 6μm range, Phys. Rev. Lett. 78(1997),5-8.
カシミール効果は真空のエネルギーに関係する物理的効果であると思いますが、真空のエネルギーにゼータ
関数がかかわっているのです。コンノ・ケンイチ氏は、「真空は空虚なものではなく、全てを生成する母体」といわ
れていますが、全く同感であり、「目に見える世界」と「目に見えない世界」の仲介役をゼータがはたしているような
気がしてなりません。
現代物理では「目に見えない世界」の研究が不足しすぎている・・
ゼータ理論はもともと純粋な数学者によって発展させられてきました。
そして、いまではゼータは現代数学でもっとも重要な研究対象の一つとなっているのです。
なぜゼータ関数が現代数学であまりに重要な研究対象かというと、私の独断と偏見でいわせてもらえば、
解析学,代数学,代数幾何などそれまで独立に研究されてきた分野を関連づける役割をゼータが果たして
いるからだろうと思います。孤立した島の間に橋をわたすという非常にすぐれたはたらきをゼータはしてくれる
のです。(もちろん、素数の解明へもゼータは大きな役割をになっている)
橋は重要です。島から島へ自由に行き来できるのはとても素敵なことです。
だからゼータは重要なのです。ただそんなことを度外視しても、その不思議さだけで十分ですが・・。
その重要さゆえ、またその神秘的不思議さも手伝ってゼータにとりつかれてしまっている人たちも数多い。
黒川信重さんは当然?そうですし、私の敬愛する加藤和也さん(京都大学教授)もそうです。
その他にもゼータ狂いの数学者は大勢います。一介のサラリーマンにすぎない私もその一人です。
ゼータの研究をしていると、数学だけでなく「ぜったいに物理にも関係しているはず・・」と直感されてきます。
最近の物理とのつながりをみていると「やっぱり」と思えます。
上で指摘した以外にも最近、ゼータはさまざまなところで物理学との接点が見出され、活発に研究されている
ようです。
読者で、「物理とゼータの関連で、こんな面白いことがある!」という情報があればぜひお知らせください。
とても興味があります。
「リーマン博士の大予想」(カール・サバー著、紀伊国屋書店)という本を読んいて、上で指摘したゼータ関数と
物理学との接点ということに関し、非常に面白い記述をみつけたので紹介します。
「リーマン博士の大予想」p.205〜210
註:色は杉岡が入れました。また行間を空けた箇所があります。 註2:プリストン高等研究所のこと。 註3: ”・・・”は中略を意味する。
この内容には驚きました。
まさか繰り込み理論で有名なダイソンがかかわっているとは夢にもおもいませんでいた。
じつは上の内容自体は「数学のたのしみ」No.17の小山信也氏(慶応大学)の「ゼータの零点とは」という解説等で
おおまかに知っており、はじめてではなかったのですが、そこにはダイソンのダの字もでていなかったので、今回本
で知ってびっくりしたわけです。
なお上述と同類の論文(小山氏)がサイトでも公開されています。-->ゼータ関数と量子カオス
この発見はあまりに重大だといわざるをえません。
上の解説の最後にもあるように、それまで全く独立に研究されていた物理と数学という異なる学問分野がじつは
地下深くでつながっていることがわかったからです。
そして、二つを橋わたしするのは、またしてもゼータ関数でした。
モンゴメリーが発見したリーマン・ゼータの零点の分布をあらわす関数が、物理学者が原子のふるまいを特徴づけよう
としたランダム行列の固有値の理論に等しかった。
この発見の重要性はいうまでもありませんが、自然の神秘性、奥深さに酔いしれてしまいます。
最近、日本でもゼータ関数の解説の中に、この内容がときどき盛り込まれているのも頷けるというものです。
日本では、先の小山信也氏が積極的に研究され紹介されているようです。
1-[(sinπu)/(πu)]^2を以前に小山論文でみたとき(小山氏の論説では1-sin2πu/2πu となっているようだが・・)
を見たとき、私は「これは・・」となにかを感じていました。
私が数学の研究で研究したゼータ関数における三角関数の母関数に似ているとおもったからです。
いずれまた研究したいなと思っていたのですが、いつしか忘れていました。
今回この「リーマン博士の大予想」(カール・サバー著、紀伊国屋書店)という本を読んで、モンゴメリーがやろうとして
いた意味がとてもよくわかり、またダイソンが関わったという偶然の面白さも手伝ってあらためて1-[(sinπu)/(πu)]^2
を自分なりに検討してみたいとおもってきました。こんな面白い本はちょっとありません。
モンゴメリーがやろうとしたのはリーマン予想のさらに先のことと思いますが、それでも「零点が全体でどんな分布を
しているのか?」をしらべるというその方針はとても自然であり、またきっとなにか出てくるにちがいないと思わせるもの
があります。
なお本筋とは関係ありませんが、昨今話題のリーマン予想は現代数学における未解決の大問題です。
リーマン予想とはなにか?簡単に述べます。
ζ(s)=0という方程式を解いたときの解を零点というのですが、
その実数の解はs=-2,-4,-6,-8,・・・・であることは既にわかっています。つまりζ(-2)=0,ζ(-4)=0,・・。
よくわかっていないのは複素数の解の方です。
リーマンは、「s=1/2 + i・K というように複素数での零点の実部はすべて1/2となるのではないか」と予想しました。
これがリーマン予想です。
つまり、s=1/4 + i・K とか s=3/5 + i・K とかそんな解はない!ということを主張している。
そして、いまではコンピュータで何十億もの解がしらべられているようですが、すべてリーマン予想をみたしています。
反例はまだ発見されていません。
ちなみに私は、リーマン予想は正しいだろうとおもっています。
なお実部が1/2の零点が無限個あることはハーディにより1914年に証明されています。
ゼータ関数はあまりも美しく、不思議な存在です。
私はこれまで自分の研究でいやというほどそのゼータの神秘性をあじわってきました(幸せなことだと思います)。
モンゴメリの発見も、驚きつつ「いやあ、ゼータならそんなことがあってもちっともおかしくない」と思うのです。
で優れた考察を行っておられます。
数学の巨人・佐藤郁郎氏も零点の分布やランダム行列の関係等を解説されています。おそろしくまとまっています。
さて、ゼータはすべてを知っているのか・・
追記2005/2/13
上で書いた「小山氏の論説では1-sin2πu/2πu となっているようだが・・」ということですが、小山論文をよく読
んでみると、この関数はディリクレのL関数L(χ,s)ゼータに関わる関数でした(ζ(s)はL(χ,s)に含まれる)。
佐藤郁郎氏の「ゼータ関数の零点分布と量子カオス 」でも示されている通り、やはり 1-[(sinπu)/(πu)]^2 は
正しいものでした。
ここでは上で出た関数 1-[(sinπu)/(πu)]^2 を面白い形に変形できることに気付きましたのでそれを示します。
1-[(sinπx)/(πx)]^2 をモンゴメリー関数Mo(x)と名付けることにしましょう。
すなわち、
Mo(x)=1-[(sinπx)/(πx)]^2 -----@
です。
この関数はリーマン・ゼータ関数ζ(s)の零点の分布をあらわす非常に重大な関数なのでした。
さて、1-[(sinπu)/(πu)]^2 ですが、私は[(sinπu)/(πu)]^2に着目しました。
これと似た関数のベキ級数展開の式を1年半前に出していたことを思い出しました。
私の「ゼータ関数のいつくかの点について その3」で出していたのですが、次のようなものです。
(πx)^2/(sinπx)^2=2{-1・ζ(0) x^0 + 1・ζ(2) x^2 + 3・ζ(4)x^4 + 5・ζ(6)x^6 + ・・・ } -----A
( 0 < |x| < 1 )
こんな美しい式を出していました(2003/9/7)。この式自体も不思議であり、ながめていてあきません・・。
@とAを見比べてください。@とAより容易に次のようにできることがわかります。
Mo(x)=1 - 1/[2{-1・ζ(0) x^0 + 1・ζ(2) x^2 + 3・ζ(4)x^4 + 5・ζ(6)x^6 + ・・・ }] -----B
そして、-1/2=ζ(0)ですから、Bは次のように変形できるでしょう。
Mo(x)=1 + ζ(0)/{-1・ζ(0) x^0 + 1・ζ(2) x^2 + 3・ζ(4)x^4 + 5・ζ(6)x^6 + ・・・ } -----C
@のモンゴメリー関数は、じつはCという姿であったのです!
これは、たいへん不思議なことをあらわしています。
その姿自体の調和に満ちた美しさはもちろんですが、意味的にもじつに深いことを示している。
モンゴメリー関数Mo(x)とはリーマン・ゼータζ(s)の零点(ζ(s)=0を与えるs)が、その零点全体の中でどのよう
に分布しているかを示すものでした。
すなわち、
Mo(x)=ζ(s)の零点の分布をあらわす関数
一方、Cの右辺はもちろん、
右辺=[ζ(0),ζ(2),ζ(4),・・の全部が関わった関数]
つまり、Cは次のことを表している。
ζ(s)の零点の分布=ζ(0),ζ(2),ζ(4),・・の全部に関するもの
これはまさに驚くべきことを表現しているといえるでしょう。
なんと零点の分布がすべての明示的な特殊値ζ(2n)で(n >= 0)で統制されているというのですから!
ζ(s)の特殊値が零点の分布に影響をあたえているというのは、なんとも摩訶不思議な気がします。
私は、数学の研究でこれまで主としてゼータの特殊値に関する研究をしてきました。あまり零点やリーマン予想
とは関係のないところを歩いてきたつもりでした。
しかし、ここに及んでCのような式を見ると、特殊値がいかに零点分布と密接に関連しているかがわかり、
いまさらながら数学の奥深さに粛然とします。
ゼータの世界は感動がいっぱいです。
例えば、現代数学でよくしられている
[オイラー積]=[アダマール積] -----D
というのもあり、このDは「素数に関する積」=「零点に関する積」というこれまたびっくりの関係を示しています(*)。
CはDと同類の”びっくり”をあたえるものだと感じられます。
(*)「ゼータの世界」(梅田亨、黒川信重他著、日本評論社)
注意:Aは( 0 < |x| < 1 )という定義域をもちます。これがモンゴメリー関数とどう関わるのか今回はとくに気にとめませんでしたが、この辺は
数学者の考察を期待したいところです。
モンゴメリー関数Mo(x)をまた少し別の変形ができることに気付きましたので、それを示します。
一つ上ではAという素晴らしい式を中心に変形しました。ここでは、また別の式をとりあげます。次式です。
log(πx/sinπx)= 2{1/2・ζ(2) x^2/2+ 1/4・ζ(4)x^4 + 1/6・ζ(6)x^6 + ・・・ } -----E
( 0 < |x| < 1 )
これも「ゼータ関数のいつくかの点について その3」で1年半前に出していたものですが、美しさをとびこえた
異様な式といえるでしょう。
しかし、この異様な式はゼータ世界において中心的な役割をはたす式であることは、「数学の研究」を読まれた読者は
気付いておられるかもしれません。
一言でいえば、現代数学でさっぱり不明!とされるディリクレのL関数L(χ,s)の非明示な特殊値がじつは
[偶数ゼータの無限和]として表現できるという驚くべき事実がわかったわけですが(それにはもちろん奇数ゼータ
ζ(3),ζ(5),ζ(7)・・もふくまれる)、それを示す過程にEを使うことになるのです。
非明示なゼータ特殊値を解明する決定的ポイントでEが有効にはたらいてくれる。
ゼータ世界では異様な式に注目せよ!ということがいえると思います。
「ゼータ関数のいつくかの点について その3」で示したとおり、とにかく三角関数は偶数ゼータζ(2n)に関する級数
だとおもえばよいのです。
さて、Eです。この式から、
πx/sinπx= exp(2{1/2・ζ(2) x^2+ 1/4・ζ(4)x^4 + 1/6・ζ(6)x^6 + ・・・ })
であるから、よって、
sinπx/πx= exp(-2{1/2・ζ(2) x^2+ 1/4・ζ(4)x^4 + 1/6・ζ(6)x^6 + ・・・ }) -----F
そして、-1/2=ζ(0)ですから、これを使うとFは次のように変形できる。
sinπx/πx= exp[{1/2・ζ(2) x^2+ 1/4・ζ(4)x^4 + 1/6・ζ(6)x^6 + ・・・ }/ζ(0)] -----G
Fより、モンゴメリー関数Mo(x)=1-[(sinπx)/(πx)]^2 は、次のように表現できることになります。
Mo(x)=1 - exp[2{1/2・ζ(2) x^2+ 1/4・ζ(4)x^4 + 1/6・ζ(6)x^6 + ・・・ }/ζ(0)] -----H
Mo(x)は、このようにも表現できるのです。
一つ上で見たCも味がありますが、このHも味わい深いものがあります。
二つを並べておきましょう。
Mo(x)=1 + ζ(0)/{-1・ζ(0) x^0 + 1・ζ(2) x^2 + 3・ζ(4)x^4 + 5・ζ(6)x^6 + ・・・ } -----C
Mo(x)=1 - exp[2{1/2・ζ(2) x^2+ 1/4・ζ(4)x^4 + 1/6・ζ(6)x^6 + ・・・ }/ζ(0)] -----H
もう一度復習しますと、モンゴメリー関数Mo(x)は「ζ(s)の零点の分布をあらわすもの」です。
それが[偶数ゼータの無限和]的なもので表現されている。
「零点の分布が明示的な特殊値ζ(2n)全部で(n >= 0)で統制されている」というたいへん不思議なことを表して
いるのです。
注意:ここでもEの( 0 < |x| < 1 )という定義域に関しては、とくに気にとめませんでした。この辺は数学者の方々の考察を期待したいところです。
2005/2/19追加
岸さんから、ゼータ関数に関して次のようなメールをいただきましたので紹介させてもらいます。
[岸さんからのメール]
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ご無沙汰しています。岸です。
場の量子論のくりこみと、ゼータ関数の関係、おもしろいですね。 何か関係がありそうですね。 ゼータ関数を使えば、無限大になりそうなものもちゃんとある値に収束してしまうの
ですものね!
私は未だデカルト的な時空の概念から脱することが出来ておらず、ゼータ関数と
量子論との具体的な結びつきにまで考えが及ぶ器やタイミングに至っておりませ
んが、直感的に、ゼータ関数が量子論と、ものすごく関係していると思います。
なにか単純な数の足し算や繰り返しでこの世界が出来ているような予感があります。 とくに、フラクタルやフィボナッチ数列、マンデルブロー集合図を見ているとそんな感じ
がします。
量子論と結び付けられるような器とタイミングがやってきてほしいものです。
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メール、 ありがとうございます。
ゼータ関数に興味をもっていただいてうれしいです。
岸さんは「現代物理と仏教を考えるページ」という素晴らしいサイトをもっておられ、主に量子論と仏教の研究
をされていますが、私も量子論と東洋思想とのむすびつきにはたいへん興味があります。
私はゼータ研究その他で手一杯でなかなかその方面に手が回らないのが残念ですが、「ゼータ関数が量子論と、
ものすごく関係している」のはまちがいないでしょう。量子論−ゼータ−仏教−真空のエネルギーは人間には思い
もよらない方法でたがいに手をとりあっていると思われます。
現代科学は恐ろしく進歩しているように見えますが、それは錯覚ではないのか。目に見えない世界、根源的領域
の研究が不足しすぎている・・。そして、その解明のヒントを与えてくれるのが量子力学なのだと思います。
量子論の創始者の一人で天才物理学者パウリは、ユングとともに驚くべき研究を発表していますが、あまり知ら
れていません。--->パウリ、ユングの研究
パウリらのこの研究は、今後の科学の方向性を示唆しているように思います。
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