河口湖自動車博物館・飛行館

(山梨県南都留郡鳴沢村)

 

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河口湖ICからスバルラインに入り約6km、高原の木々の中にある河口湖自動車博物館にやってきた。19世紀終わりに自動車が製作されて100年余。その歴史を彩ってきた名車70台がところ狭しと展示してある。それがすべて個人のコレクションだというのだから腰抜かす。クルマ好きでなくても胸ときめく逸品の数々に魅了される。
  
 


 

  コレクションは自動車だけではなく、機関車や航空機にも及ぶ。今回紹介するのは軍用機のコレクション。20周年記念限定特別公開とのことで、普段は「お蔵」にしまってあるものばかり。復元された零戦や一式陸攻、その他栄12型エンジンなど「旧軍」ものの「お宝」が満載。

 
まず入口左の窓側に並べられた軍用機のエンジンから見てみよう。
 

 
 
あの「零戦」に搭載された中島製「栄」12型エンジン。空冷星型14気筒、940馬力。小型軽量、高出力を目指し設計され、零戦を世界の「ゼロファイター」にしたまさにその心臓部である。零戦のほか97艦攻、「月光」、陸軍では「ハ-115」と呼ばれ「隼」や99式双発軽爆撃機に搭載された。30,000基が製作された傑作エンジンである。
 
 
 
中島製「誉」空冷星型18気筒エンジン。格闘重視のいわゆる「軽戦」志向だった日本の戦闘機だったが、欧米各国ではパワー、速度重視のトレンドになりつつあったため、中島飛行機も1942年にこの「誉」(陸軍名ハ-45)を開発し、「紫電」、「紫電改」、爆撃機では「銀河」、「流星」、陸軍では「疾風」に搭載した。2,000馬力という大出力ながらコンパクトに収められた傑作である。(左)のものは海軍の双発爆撃機「銀河」のもので、(右)が「疾風」のもの。
 
 
 
愛知製「アツタ」水冷V12気筒エンジン。1,400馬力。ドイツのダイムラーベンツ製DB601Aをライセンス生産したものだが、水冷エンジンは構造も複雑で、故障が多かった。このエンジンを積んだ海軍の「彗星」や、陸軍の「飛燕」の稼働率は低く、のち空冷エンジンに換装されたものをそれぞれ製作した。この写真の2基は同じエンジンだが、左のものが実際マウントされるのとは天地逆に置かれている。
 
  (左)中島「寿」空冷星型9気筒エンジン。450馬力。イギリスのブリストル社のエンジン「ジュピター」をライセンス生産していた中島飛行機が、ほかにアメリカの「ワスプ」を手本にして製作した国産初の量産エンジン。海軍の90式艦戦に搭載された。「寿」というのは「ジュピター」のジュに因んで名付けられた。

どのエンジンも、ライト兄弟が世界初飛行を成し遂げてからわずか40年ほどのものであるが、その精緻で複雑な構造に、人間の叡知の偉大さと恐ろしさを感じずにはいられない。上で紹介したように、まず模倣から始めた日本の航空機エンジンではあったが、その性能は大戦前後には世界の水準に達していた。「疾風」に搭載された「誉」は終戦後、米軍の持ち込んだ高オクタンの燃料で700キロ近い速度を出したと言われている。

 
 
かわって米軍のB-17のエンジン、プラット&ホイットニーR-1820。スーパーチャージャーつきで1,200馬力。
 
  これはかのB-29のエンジン、プラット&ホイットニー製「ライト・サイクロン」R-3350。星型18気筒、排気タービン過給機つきで2,200馬力を発生する。

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2002/07/22 新規掲載 2007/08/24 再掲載