あまり暑いので自主的夏休み状態だったのですが、少し涼しくなってきたので復帰します。いやあいかわらずくそ暑いのですが、風にすこしずつ秋の匂いが強くなってます。きっとそのうち秋が来る。
「氷菓」でデビューした作者のニ作目、です。読み出せばすぐにわかるが登場人物と設定は同じ。たしかに一作限りにするにはもったいない連中かもしれません。
感想のなかに一部ネタバレがあります。ミステリパートではなくそれ以外の部分、ではあるけれど。これから読もうと思っている方はパスしたほうがいいかもしれません。
この小説はジャンル:ミステリということになるのだろうけど、(個人的なことながら)わたしはミステリの読者としては致命的な欠陥があります。謎とかそれをといていく過程とか最後のどんでんとか、そういうものにあまり心動かないのです。おそらく革命的な解決を見せるミステリを読んでも、その部分はなんとなく読み流してしまって、なんだ痴情のもつれが原因か陳腐じゃのうなどとふざけた感想を抱くのがおちです。根本的に読者適性を欠いているのだと思います。
でもこれはおもしろかった。それは、この小説の謎の設定(クラス映画の脚本が倒れて解決がわからなくなった)とかその解決過程がおもしろかったからではなく−−それはそれでおもしろかったのだけど−−、そのあとに残ったものが印象深いからなのです。もしかして自分は特別なのかもしれないという高揚、ひらめいて見事事態を解決してみせて得意になったところで足もとを救われて、あとに残る苦さ。
自分がまだなにものでもなく、なにものともわからない、そういう年代の揺れ方が、ここには的確に描写されています。ヒーローをつくると見せかけてあえてそうしなかったところに、この作者特有の視点を見ました。好きだなこういうの。
おなじ面子でもう一作読みたい。この苦さを味わった主人公が、次にどうするのか。それを見てみたいです。
すばらしいです。サイト更新再開は、この漫画に蹴っとばされるようにエネルギーをもらったせい、というのもあるかもしれない。
ノリのいい女先生(あや先生)といじめられっこ(中嶋)の話、と単純化してはこの漫画の魅力が見えなくなる。絵がよくてキャラクターがよくてエネルギーがあって後半の突っ走り方とラストの昇華がよくて、と並べ立てても、よさが伝わるわけではない。こういう漫画の魅力を伝えるのはいつものことだけど難しい。
学校の日常を描いた漫画ながら、そこにはとどまっていない。あや先生はノリのいいだけの存在から一歩踏み出しているし、中嶋もまたしかり。加えて見開き一発の魅力もついてくる。その全てが成功しているわけではないにしても、ここには描きたいことを描きたい方法で描いた、この作者だけの漫画がある。そう思います。
雑誌を手にとって開いてみれば、自分が読むべき読者かどうかは比較的すぐわかるはず。お見逃しなく。