いい。とってもいいです。めちゃくちゃ面白いんだかめちゃくちゃ好みなんだかどっちかわからなくてわかるすべもなくてそんなことはどっちでもいい。読み進むのがもったいなくって少しずつ読んでたらずいぶん時間がかかってしまいました。
主人公はタイトルにもなっているアリソン。金髪碧眼の17歳の少女、空軍の飛行機乗り、楽天的で向こう見ずで気が強くて聡明で考えなし。もうひとり主人公といっていいヴィルは同い年の少年、上級学校の生徒、思索的で記憶力抜群で少し臆病で怜悧で心優しい。ふたりは幼なじみで小さい頃はヴィルはアリソンの「子分」でそれは今もあまり変わらなくてでも二人の関係は対等。大河を挟んで東西の大国がにらみ合う世界の東側に生まれ育ったこの二人が巻き込まれていく、宝探しの物語です。大河の近くどこかに隠され、二つの国の戦争を終わらせることができるという宝。どんなものかはわからない、もしかしたら老人のほら話かもしれない。でも迷うことなく首を突っ込むアリソン。ひっぱられるようについていくヴィル。アドベンチャー・ファンタジー、ここではない世界の痛快冒険小説。
ストーリーと人物描写の両方とも抑制された−−禁欲的と言ってもいいかもしれない−−「キノの旅」シリーズと違って、おはなしと登場人物が解放されていてすごく気持ちいい。率直に言って文章が上手いという感じは今回もしないけど(あえてそういう文章を選択している可能性もけっこうあると思うけど)、会話のやりとりがめっぽういい。だから登場人物が生きている。一個所引用してみます。
「ねえヴィル」 歩きながら、アリソンが話しかけた。歩いても、景色は変わらず、行く先には緑しか見えな い。道も見つからない。 「ん?」 ヴィルが後ろから答えた。 「”宝”ってなんだと思う?」 「え? 何?」 ヴィルは聞き返した。アリソンは振り向いて少し怒って、 「宝よ。あのお爺さんが言った。忘れたの?」 「ああ……。忘れてた。それどころじゃなかったから」 「金銀財宝かしら? いつかどこかの王様が、再興の軍資金としてこの地方にこっそり隠しま した、なんて話知らない?」 「さあ……。それより僕は、別のことを悩んでる」 「何?」 「”さて僕はどこの段階で、怒鳴ってでもアリソンの行動を止めるべきだったでしょうか? サイドカーで追跡? 警官尋問? 飛行機拝借? 国境越え……?”」 「……難しい問題ね。でも」 「でも?」 「今さら答えを見つけても」 「まったくだ……。次の行動は絶対に阻止しないと」 「うん」 「”うん”じゃないよ……。さっきも言ったけれど、まだ何かやろうと思ってるんでしょ?」 「うん」 「…………」 「最後まで諦めないのはいいことよ」 「…………」 「どうしたの?」
もう一発。
森の上空を、黒い戦闘機が飛んでいた。 前席のアリソンが、後席のヴィルに話しかける。 『やった! やった! やった! 気分は? ヴィル』 『こ……、こ……』 『はい?』 アリソンが聞き返して、ヴィルが一気にまくし立てる。 『怖かった! アリソン知ってないけれど! あの二等兵にばれてたんだ! 彼はロクシェ語 できたんだ! 精一杯脅かしたけれど! こ、怖かった! 誰かに言っていたらおしまいだっ た! いつばれてもおかしくなかった!』 『あら。そうだったの』 『そうだよ! それにあの飛行士も!』 『そうよねえ……。まさかこんなところで会うとは思わなかったわ。お断りしたこと、根に持 ってないといいけれど』 『ああもう、怖かった! あんなこともう二度とやりたくないよ……』 『そう? なかなか楽しかったわ、貴族のふり』 『…………。ああ……。そういえば、似合ってたよ、よく』 『あら、ありがとう』 『誉めてない』 『…………。ところで、宝の場所、覚えてる?』
若干ネタバレ気味です。読み終わったらきれいさっぱり忘れてください。
とにかく、読んでて楽しかった。寓意が含まれているわけでも謎ぶくみの組織があるわけでもない、そもそもそういう難しいおはなしではありません。この作者らしく容赦のないところはあるけれど、基本的には痛快冒険譚。無鉄砲な少年少女の話が好きな人や金髪碧眼乱暴少女がツボの人や森の上を飛行機で飛んでみたい人やこの表紙の絵にピンときた人は、迷わず買って読むが吉です。いや、必ず読むべきです。読まなきゃいけません。
この小説を原作にしたアニメが見てみたい。小説や漫画のアニメ化が予算その他の問題であまり楽しい結果に終わらないことが多いのは知っていて、だからこの夢想は夢想のままでとどめておくのがいいのかもしれなくて、ああでももしかなうことなら、画面で動く彼ら彼女らが見てみたい。すでにおれの頭の中では彼らの動く姿が見えその声も聞こえているのです。もちろん黒星紅白の絵で。
難儀なことに日常生活が大変忙しくなってきました。きました、というかこれから当分時間がなさげかもしれん。まったくこんなに暇が大好きな人間になんで仕事がまわってくるのか。おれの理想は2週7休だというのに。
2日続けて昼夜逆転したあとの月曜日はたいへんつろうございます。それとも単に春だから眠いだけなのか。
なんとか入手した先月号。明日には今月号が出ます。
巻頭新連載「SCRIPTダウナーズ」 はネットが舞台の漫画になりそうな感じだけど、いきなりメールソフトのペットを主人公が射殺したりきれいなおねーさんなAIを焼却したりしてるあたりぜんぜん作風変わってません。毎回このテンションが保てればOKでしょう。この人は一話完結向きかもしれないし。
こちらは集中連載の最終回という「スパイダーズ・ウェブ」 。とりあえずまとめたという感じでまだふくらましようのある話なので、もしかしての再連載を楽しみに待ちます。「W−face」も最初は短かったし。
「足洗邸のガキの使い」 は付録妖怪図鑑あり。水木しげるに伊藤潤二が好きで妖怪方面に詳しいというのはなんとなく納得がいきます。アニメ絵と妖怪絵が平然と融合しているこの人の漫画、サイバーパンク妖怪版とでも呼びたい気もする。読切「ココロ・SOS」 はよくまとまってると思います。
新連載:「SCRIPTダウナーズ」(RYU−TMR)
最終回:「スパイダーズ・ウェブ」(短期集中)(ひのきいでろう)
読切:「ココロ・SOS」(きづきあきら)、「Liquid Slave Driver」(前編)(藤堂獅子丸)、「KID'S FIGHT!」(前編)(ROS)
このところ自宅PCのマシンパワーにやや限界を感じていたので、思い切ってあれこれ入れ替える。今まではPCをいじくったときもOS再インストールなしでごまかしてたけど、今回は新しく買ったHDに全部インストールし直すことになって、まあ半日あれば終わるかなとか思ってたけど大甘だった。泣きながらフォーマットとWindowsのインストールを繰り返すこと数回、こらあかんビデオとマザーの相性だとあきらめたときは空が明るくなりつつ…どころか7時のニュースの時間でした。
そのあともnamazuが(正確にはインデックスを作るmknmzのほうが)なぜか実行すると戻ってこなくなった(対象ファイルの拡張子を判断するあたりでおかしな動きをしていたので、htmlファイル以外の処理をパスすることで応急処置とした)とかもあって、結局ほとんど丸3日つぶれてしまった勘定。くたびれました。
「卒業」で登場。瀬戸内海の島が舞台で、女先生にかなわぬ想いを寄せる不器用な男子高校生の話。おはなしとしてはわりとオーソドックスかな。色合いは以前読んだ「17歳」にむしろ近いかもしれないです。
「ああ探偵事務所」 はまたもや助手さん(涼子)が探偵さん(妻木)をぶん殴ってます。こんどはグーではなく傘で。怒ると怖い人なのだな。2号休んで10号から再開とのこと、おもしろいのでしばらくこの調子で続けてほしいです。
読切:「卒業」(たくまる圭)
「あずまんが大王」 、最終回。最後まで登場人物それぞれがそれぞれらしく、このまんがらしく。3年間ほんとに楽しく読ませてもらいました。ありがとうございました。
連載2回目「隻眼獣ミツヨシ」 は内容はまだよくわからないけどついていこうという気になってしまう。やっぱり絵の力に惚れてるのでしょう。作者がうれしそうに描いてるのがよくわかる「まにぃロード」 、今回はオタクの臭いというやりづらいねたを正面から取り上げたけどおちがない。解決や救いなんてないよということだったりして。新連載「ナイチンゲール・ゲマインシャフト」 はあいかわらず惹かれる絵だけど設定がよくわからん。まあおいおいかな。前回で宵闇が一段落ついた の読切「水仕女」はジャック&ジュネがメインで、久しぶりにお笑い側に針が触れたおはなし。個人的にはこういうののほうが好きかも。
連載の「魔法遊戯」 が続けて載ってるのは当然として、「苺ましまろ」 が連続登場してるのはたいへんうれしうございます。今回もまったくもってどうでもいい話だけどこれがいいのだ。見比べたわけではないので不確かながら、最初に比べると上手くなってるような気もします。
最終回:「あずまんが大王」(あずまきよひこ)
新連載:「G.G.F」(愁☆一樹+ブロッコリー)、「ナイチンゲール・ゲマインシャフト」(紅鉄絢)、「マブラヴ」(高尾右京)
シリーズ読切:「苺ましまろ」(ばらスィー)
読切:「ねこねこ帝国」(あさきやかい)、「水仕女」(八房龍之介)、「こころの魔法」(かずといずみ)
なぜか本屋で見つからなかったコミックガム先月号をようやく入手したのが先週。で、今日になって読もうと開いてみたらなぜか先々月号だった。どういうことだ一体…じゃなくていまから先月号のガム置いてある本屋を探さないといけないのか。あるのかそんなとこ。
読切「禁=素書=」 はお得意の中国もの。このまま読切連載にしてくれると大変うれしい、けどシュトロとカロンの続きも読みたいし。いっそのこと1号おきに交互に載せるとか。
「人形譚」 は奇譚風8ページだけどもう少し長いのが読みたいかな。「女神の鉄槌」 は引き続き脱線中だけどこのまんま行くんだろうか。いちおうお話のほうも進めてほしいような気がしないでもないのだけど。「パラノイアストリート」 は最終回ながらいつもどおりの語り口でした。らしい。
最終回:「パラノイアストリート」(駕籠慎太郎)
読切:「賢者の恋人」(大沢美月)、「−忍者飛翔− 雀蜂」(後編)(和田慎二)、「人形譚」(深木紹子)、「はなまるっ!」(荒木風羽)、「禁=素書=」(佐々木泉)
やっている途中でふともしやという予感がして「いやでもそんなことは」とあわてて否定したのに、ほんとに終盤伝奇SFになってしまった。SFの仕掛けを取り込んでも、赤い雪のしくみも蔵女の能力もちゃんと解き明かされているわけではなく、きつい言い方をするとただ説明のつかないことを放り出しただけのような印象が残ります。成功しているとは言えない、というのが正直な感想です。
物語装置自体はとても魅力的なのです。舞台となる雨に煙る山間の村も、それぞれ心の傷を抱えながら暮らす登場人物たちも、たった4日間を幾度も繰り返し、さらにそれを包み込むように永遠に回り続ける物語の構造も、しっかりとした文章や台詞回しも、雰囲気のあるBGMも。そして赤い雪が降り積もり人の気配の絶えた滅びの形も。この手のゲームでは登場人物はたいていアップばっかりだけど、ときおり使われる、背景の中に小さな姿で溶けこませる手法も効果的だし、果たしてこういうゲームに合うのかと少し心配だった中村哲也の絵も素晴らしいです。こんなに上手かったのか。
エロ方面は義母どんぶり義妹どんぶり実妹どんぶり従姉どんぶりと丼物づくしで個人的な趣味からは遠いのだけど、そこに至る彼ら彼女らの来し方や性格や歪みをちゃんと描いていて、ストーリー上の違和感はない。エロゲ特有のご都合主義的なものを全く感じないわけではないにしても、この手のゲームでつねに課題となる必然性という点では、ほとんど破綻は感じない。上手にクリアしていると思います。
だからもったいない。とてももったいない。伝奇物の約束ごとの中だけで−−なにも謎を解き明かす必要なんてないのだから−−物語を閉じていたとしたら、傑作になったかもしれないのに。
このゲームをやっていてときどき走る胸を刺す痛みは、自分の記憶の中にある、小さかったころの幸せな思い出に起因するのだと思います。かつてそういうことがあったこと自体は幸せなことなんだろうけど、二度とそこには立つことのできない悲しみが、それを思い出す行為には伴う。このゲームの後を引く離れがたさは、その点を正確にとらえていることもその一因でしょう。
残念ながら傑作ではないけれど、もしかすると忘れがたいゲームになるのかもしれない。いまはそう思います。
2日ほど腐っている間に(別に腐っていたわけではありません)桜が大変なことになってました。職場の近くのなんか八分咲きは堅い。
どうでもいいけど桜の早い年は杉も早いんでしょうか。早く咲いたら早く終わるのだろうか。職場じゅう花粉症の人だらけでいいかげんなんとかなってほしいです。明日はわが身とも言う。
ぎょ、餃子食いてえ。たらふく食いてえ。ビール飲みてえ。ビールゥゥゥゥゥっ。
食いしん坊に食いしん坊漫画を描かせてはいけません。
ガン&アクションシリーズと銘打ってるしのっけからライフル抱えた女の子は出てくるし話中でもあちこち騒動が起こるし、たくさん鉄砲ぶっぱなしてるような印象受けたけど、よく考えると一発撃っただけなのか。それも店の外で威嚇射撃。酔っぱらいが好き勝手わめいてる居酒屋のやかましさがそのまんまなのが錯覚受けた理由でしょう。うまい、なんていまさら言ってもしょうがねえですが。
錯乱してピストル振り回す酔客に向かい、女店員がモップを抱えて歌いながら近づいてくシーンがすばらしい。これ見れただけで今回は満腹です。ああでもやっぱり餃子食いてえ。
異様に暖かい陽気の続くこのところ。梅に馬酔木にジンチョウゲ、ヒイラギナンテンにモクレンにユキヤナギと次々に花が咲くなあ(順不同です)と思っていたら、今日はとうとう桜が咲き始めてた。まだ3月中旬なのに、これじゃあ4月まで持たないんじゃないかな。桜のない4月はちょっと寂しいなあ。
現在「アリソン」読書中なんだけど1日に1章しか進まない。あまりにもストライクゾーンど真ん中でもったいなくってたくさん読めないのです。
いつものとおり女の子だらけの増刊というかどの連載も女の子ばかりです(一部例外を除く)。
前回に続いての登場で今回巻頭の「ただいまつばくろ六丁目」 は今回ものんきな雰囲気がいい。お話をふくらますのが難しそうな設定だけど、うまくいくなら本誌で連載化してもいいような気もします。できれば読んでみたい。
「おしゃまっ子研究室」 はタイトルどおりのエッセイコミック。「Girls Go WEST!」 はこの作者に萌えまんがを描かせようという試みみたいで、実験としてはありかもしれないけど結果はどうだったか。多すぎる柱のツッコミには内輪受けめいたものを感じてしまったし。何度も書いてるけどこのひとには真っ向勝負してほしいのだ。「Dr.リアンが診てあげる」 は本誌でやってるのとなんも変わらん(あたりまえか)。「猫天使初期微動」 はちょいと内容がわかりにくかったか。
巻末近くにはいつもどおり「進んだり進まなかったり以下略。」 。今回エロさの度合を表わした天才的なセリフが一個所あるのだけど、天才的なので引用してしまいたいのだけど、あまりにもあまりなんでやっぱり引用できない。なんか5月ごろ単行本にまとまるらしいんで興味のある人(?)はそちらのほうで。