MEET THE NEKOSENNINPart2)<BACK>

 

 かうみゃうの「さんじゅつし」といひしおのこ、その名は「ネコ仙人」。私、しもまっちと相棒ちかぴゅうは、ネコ仙人に出会うべく妖怪が出没する岩手山麓を歩きつづけているのだった。さて、今回、我々の前に立ちふさがったのは、サイコロ大王サイコロンだ。このサイコロンの出す問題に答えられなければネコ仙人のもとにはいけないのだという。さてどんな問題が出されることやら。

「サイコロを7個投げる。このとき、目の和が20になったら100万円貰えるというのと、30になったら150万円貰えるというのではどっちが得か答えてみよ。」

 サイコンは早速我々に問題を出した。うーん。これは難しい。ちかぴゅうと2人で手分けして数えても大変な時間がかかるだろう。一体どうすればいいのだろう。我々は途方にくれた。

「どっちの場合の数が多いかはわかるだに。」ちかぴゅうは最近覚えたポケビの口調を真似て私にいった。

「そうか。サイコロを7個投げたときの目の和の最小値が7、最大値が42。ということは、その中央の値のときに、場合の数は最多になるはずだ。」

「だから7と42の中央の値は7と42の平均を考えて24.5。」

「ということは、2425の時の場合の数が一番多いだに。」

 2人はだんだん興奮して掛け合いになっていった。すると、目の和が20の場合は、24からの隔たりが4、30の場合は25からの隔たりが5。つまり、目の和が24になる場合が30になる場合よりも多いことがわかる。まずこれで一歩進歩した。

 さて、じゃあ一体どれだけ場合の数が違うのだろうか。

「やっぱり数えるしかないだにか。」ちかぴゅうがうめいた。数え上げるにしても何かうまい方法はないのだろうか。7個のサイコロで目の和が30なんてとてもじゃあないが……まてよ。そうだ。一天地六の原理だ。サイコロの目は、上の面とその裏の面を足せば7になる。ということは、目の和が30になっているということは、その裏の面は4930=19 になっているんだ。これが1対1に対応しているんだから、目の和が19になる場合を数え上げればいいんだ。これで少しは楽になる。しかし、もっとうまく場合の数を求める方法はないのだろうか。

 

 2人はまたしばらく途方にくれて、ネコ仙人の棲む岩手山麓の方をぼんやりと見やった。すると、山おろしの風と共に、ネコ仙人の声がはっきりと聞こえた。

「南のパスカル山をみるのじゃ。パスカル山はきっと何かを教えてくれるぞよ。」

はっと我に返り、南の山を見るとそこにはパスカル山が雲の切れ間からくっきりとそびえたっているのが見えた。

 「そうか。パスカルの三角形だ。これを利用すれば我々はパスカル(助かる)」

 ネコ仙人の声を聞き、2人は勇気100倍。駄洒落もでるほどであった。パスカルの三角形といえば母関数だ。母関数を使ってサイコロンの問題が解決できるんだ。例えば、硬貨を7個投げるというときの表と裏の個数の場合の数は、の展開を考えればよい。ということは、サイコロを7個投げる場合は、

の展開を考えればいいことになる。つまり、目の和が20の場合は、7から始まり14番目だから、の係数を求めればいいし、30になる場合は、19になる場合と考えて、の係数を求めればいいことになる。

 解決の糸口は見つかった。あとはどうやってこの式を展開するかである。まず、パスカルの三角形に潜む母関数を復習しておこう。パスカルの三角形には、いろいろな母関数が隠されているのだった。(参照→クリックここ

 

 ここで、パスカルの三角形の縦の数列の母関数、に注目しよう。

   これがうまい変形だ。

 をべき展開したときの第k項の係数は、先ほどのパスカルの三角形から、だったから、それを使ってうまく公式を作ることができるかもしれない。最初から7個の場合を考えるのはちょっと面倒なので、3個の場合についてまず考えてみよう。

 

  

              

                A     B      C

 この式のA項部分をべき展開したときの第k項は、となる。次にB項部分は、項Aの値をそれぞれ3倍して6桁分次数を上げたものになっている。つまり、項Bの影響がでるのは、0番目から数えて第6項目、つまり目の和が9になるときからだ。同様に、項Cの影響が出るのは12番目、すなわち目の和が15になるときである。

 いいぞ。うまくいきそうだ。これでいくと、例えば3個のサイコロを投げて目の和が10になる場合の数は、、目の和が16になる場合の数は、 などとすればよい。

 ようし。できた。サイコロを投げて目の和が20になる場合の数は、

   

 同様に目の和が30になる場合は、19になる場合と同じなので、

 

 この結果から期待値を求めると、目の和20の方は、約5.530の方は約6.5。つまり、目の和30のときに150万円貰うほうが得だ!

 

 

 

 

 


           25−1  10−1  24から6を引く 18から6を引く (以下続けて、6を引けなくなったらお終い)           

 

 私、しもまっちとちかぴゅうは、サイコロンとの戦いに勝ち、再びネコ仙人のもとへと旅に出る。我々はネコ仙人の住処へと続く一本道にたどり着いた。そして、そこが最後の難関だった。そこには「論理の道」と書かれていた。(つづく)

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