ウィルソン・ヴァン・デュセン

 

『霊感者スウェデンボルグ』

日本教文社、サンマーク文庫

 

 

霊たちと話す状態は極めて危険

低次元の霊魂

悪魔への対処法

 

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセンは米国の精神科医でありスウェーデンボルグの研究家。彼が16年間にわたってカリフォルニア州立精神病院で得た体験から、精神病の幻覚症状がスウェーデンボルグの言う霊と人間の関わりに一致していることを発見。そのことについて同書第6章『狂気と霊の存在』の中で言及している。

 

 

 

 

1.スウェーデンボルグの指摘との一致

2.悪霊は人間を破壊しようとする

3.論理的思考ができない

4.しつこい

5.つねに攻撃を加え続ける

6.機械

7.反宗教的

8.低次元の連中の役割

9.狂気の原因

10.性的なこととか汚いことに気持ちを向けさせようとする

11.うそつき

12.面食らわせる

13.多くの名前をいう

14.心霊主義

15.低次元の声たちは患者以上に病んでいるように見える

 

 

 

 

1.スウェーデンボルグの指摘との一致

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』

 

P173

スウェーデンボルグがいっていることのうちでもとくにびっくりするような一つのことを裏付けるような事実に私はぶつかった。彼は人間の生には霊とのかかわり合いが含まれているといった。このかかわり合いは普通の場合、人間に意識されることはない。しかし、ある種の精神病の中では意識されるようになってくることがあるようだ。

 16年間にわたって私はカリフォルニア州立のかなりすぐれた精神病院で精神科医として仕事をしてきた。仕事上の義務と人間に対する関心から、私はこの間に数千人の精神病患者たちを詳しく診てきた。ある偶然のきっかけから、私がそれまでは気付かなかった精神病的な幻覚の正体を詳しくかつ正確に知ることができるようになったのは1964年のことだった。私は、スウェーデンボルグが霊と人間のかかわりとしていっていることと患者たちのいうこととの間に類似性があるのに少しずつ気づき始めたのだが、この両者の驚くべき類似が本当に明らかになったのは、私がこの幻覚に関する発見をしてから三年の後だった。そこで私は、彼がこの分野でいっていることを可能な限り集めてみた。そしてわかったのは、彼がいっていることは患者の体験と完全に一致しているだけでなく、よりはっきりしており、しかも、彼の指摘がなければ面食らうばかりな幻覚の正体が明らかにされているのだった。

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P174

 

精神病の患者は自分の置かれた環境から閉め出されてしまっているがゆえに、保護や世話や時には彼ら自身及び他人の身の安全のために拘束が必要な患者たちである。また彼らが眼に見えぬ他者によって戸惑わされたり、そんな他者と会話をしていたりすれば医者や看護人たちは彼らは幻覚に把われていると判断する。しかし、多くの幻覚患者たちはこのような体験を秘密にしている。なぜならばそれがあまりに異常であり狂気の証拠だと自分で知っているからだ。せいぜい彼らは私たち医師だけに、昔から自分が体験してきた幻覚のうちの一つ、二つを話すだけである。私にとくに協力的だった一人の女性患者がいて、私は彼女の幻覚の中に出てくる人間と直接話をしてみることができることになった。そして私はそうしてみたのだが、すると彼女は私の問いに対し、彼ら幻覚の人物たちの言葉ですぐに答えたのであった。私は幻覚の世界という内なる世界の豊かさには戸惑わざるを得なかった。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P174

 

 私は自分自身の考えと頭の中で話されたりしている言葉や彼らだけの眼に見えているものとが区別できるような患者を探し始めた。重症の患者の場合は自分自身と幻覚を区別することができない者が多い。自我が自分の外部の者とオーバー・ラップしてしまって区別する境界がはっきりしなためである。しかし私が扱った患者には比較的状態のいい者が多く、私は彼らにあなた方の体験しているものを私はもっと正確に知りたいだけなのだと話した。私には実際それ以外に何の意図があったわけでもない。

 

 

 

 

2.悪霊は人間を破壊しようとする

 

 

・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P179

 

低次元の人物たちの使う言葉も彼らの考えもひどく決まり切ったものばかりだが、彼らはどうしても患者の人格を破壊しないではおかないというしつこさは持っている。彼らは患者のプライバシイの隅々にまで侵入し、その弱さや信念に働きかけ、恐ろしい力を自分は持っているのだと脅し、嘘をつき、約束をしたりするが、こうやって患者の意志を打砕いていく。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P186

 

今日では霊と話をすることは稀れにしか許されないが、危険だからだ。霊はしばしば自分が人間と一緒にいることに気付いていて、それは悪い霊も同じである。そして悪い霊は人間に対して憎しみを持っていてその人間の心も体も破壊してしまおうという望みしか持っていない。事実このようなことがいつも空想の中に遊んでいて自然的人間に相応しいことから自分を遠ざけてしまっている人間には起きているのだ。また、孤独な生き方をしている人間はしばしば自分に話しかける霊の声を聞いたりしているものである(『天国と地獄』248〜249)。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P187

 

 悪い霊が人間の意識の中に潜入して来るとどんな結果をもたらすのかについてスウェデンボルグは色々と述べているが、それは私が患者たちに関して知ったものと同じものであった。最も根本的な特徴として悪い霊は人間を破壊しようとすると彼は言う(『天国の秘義』6192、4227)。そして、不安、心配、苦痛などを起こすとも言っており(同、6202)、また悪い霊は相手の人間の母国語で話すという(『結婚の愛』326、『聖なる摂理』135)。(ついでに言うと、私が扱った患者では幻覚の人物が患者の知らない他国語を知っていた例は一例だけしかなかった。なおこの時患者は高次元の幻覚の中にいた)。またスウェーデンボルグは悪い霊は良心も破壊しようとすると言っているが(『天国の秘義』1983)、彼らは常に高い価値に逆らおうとするものらしい。彼らが読書とか宗教的行為を妨害しようとするのもその一例である。彼らは患者の良心に反する行為を指示し、彼らはうまく患者にとり入ったり脅したりしてそんな行為がもっともな行為なのだと思い込ませたりするし、患者の抵抗を屈服させてしまう。スウェーデンボルグは悪い霊は特定の人格を持たなかったり、嘘つきだったりすると書いているが(『霊界日記』2687)これはまさしく患者を面食らわせる一つの現象のことを言っている。

 

 

 

 

3.論理的思考ができない

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P180

 

低次元の連中の使う言葉や彼らの考えの幅はびっくりするくらい狭い。ごく少数の考えだけがいつまでも繰り返し語られるのだ。

(中略)低次元の声たちは論理的な思考などはまるで出来ないように見える。

 

 

 

 

4.しつこい

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P178

 

低次元の声はバーで酔っ払って騒いでいる酒癖の悪い酔っ払いみたいで、他人をからかったり、いたぶったりして喜んでいるものである。彼らはみだらなことを言い、患者にはお前はそんなことを考えているといって非難したりする。彼らは人間の意識の弱点を見つけ、あきもせずそこを突付く。例えば、ある男の患者は三年間にもわたってもう返した10セントの借金のことで声にいじめられた。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P179

 

低次元の人物たちの使う言葉も彼らの考えもひどく決まり切ったものばかりだが、彼らはどうしても患者の人格を破壊しないではおかないというしつこさは持っている。彼らは患者のプライバシイの隅々にまで侵入し、その弱さや信念に働きかけ、恐ろしい力を自分は持っているのだと脅し、嘘をつき、約束をしたりするが、こうやって患者の意志を打砕いていく。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P180

 

低次元の連中のつかう言葉や彼らの考えの幅はびっくりするくらい狭い。ごく少数の考えだけがいつまでも繰り返し語られるのだ。

(中略)低次元の声たちは論理的な思考などはまるで出来ないように見える。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P183

 

特に奇妙で面食らわせるようなことも幾つかあった。低次元の幻覚は極めて多くの患者に現れる一方でその内容は決まり切ったものばかりだった。またこのタイプの幻覚の人物たちはそれぞれ自分の人格を主張しながらそれを確認させてくれるはずの事実、例えば生まれた場所、学校、名前、経歴などは全く隠しているのは奇妙であった。患者を痛めつけるために彼らが使うテクニックやそのしつこさは驚くべきものがある。またなぜ彼らは決まって不信心だったり反宗教的だったりするのだろうか? 宗教という言葉をちょっと口にしただけで彼らは怒ったり、軽蔑したりする。これに対し高い次元の者はきまって才能や感受性もあり、賢く、信心深い。彼らは自分が誰であるかを隠すこともなく、同時にそれは人間以上の存在であることが多い。例えば高次元のある女性の霊は患者に“聖なる者の女性的側面の投影されたもの”として理解されていたりした。また、私が彼女にあなたは聖なる者ではないかという意味のことを言ってみたら彼女はそうではない。聖なる者の意を受けているに過ぎないと反論してきた。しかし私は低次元とは反対極にある善なるものと接触している感じを持たざるを得なかった。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P186

 

悪霊が自分が人間と一緒にいることに気付くと彼は人間を苦しめ、その人の人生を破壊してしまおうとする。低次元の幻覚について私が発見したところとスウェデンボルグが言っていることは驚くほどよく似ている。低次元の幻覚と悪霊の憑依のことを一緒にして考えてみよう。私が前に低次元の幻覚は患者の意志に逆らい、ひどくしつこく、悪い策略を用い、攻撃的で、口うるさいといったのを思い出して欲しい。彼らは自分たちに強い力があるように患者に思わせ、脅迫し、甘言を言ってとり入ったりといった様々な手で患者の人格を破壊していく。悪い霊の憑依では必ず今のようなことが起きる。そして悪い霊はそのことを意識していないが、それでも自分が憑依された人物とは別の者であることを多少は知っていて、人間の意識の中で活動している。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P192

 

もう一つ奇妙に思われる現象は彼らがどこか患者自身の体験の範囲に縛りつけられ、その中にだけ閉じ込められてしまっているように思われることで、これもスウェーデンボルグは指摘している(『天国の秘義』796)。低次元の者は高次元の者のように論理立てたり、抽象的な考えを持ったりすることができない。また彼らは患者自身の記憶の範囲からは外に出られないように見える。たとえば声は患者を攻撃するにしてもそれは患者が思い出せることの範囲でしかできない。そして患者のした良くない行為を攻撃材料にすることに一番熱心なのだ。スウェーデンボルグもあるクラスの霊は人間の記憶に縛り付けられているといった(『天国と地獄』292、298)。これは患者の記憶の範囲にだけ縛りつけられ、理論的な思考や抽象的な思考ができず、従って極端に同じことばかりを繰り返すという彼らの特徴を正確に指摘したものであろう。前にも言ったが一つの過去の不行跡だけを何年にもわたって繰り返して責め続けるという例は実に多い。また、これは高い次元の霊はそうしばしばしゃべることができないのに低い次元の霊はひどくおしゃべりだといったスウェーデンボルグの指摘(『結婚の愛』326)とも一致している。

 

 

 

 

5.つねに攻撃を加え続ける

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P198

 

スウェーデンボルグは天使から流れ出るものは人を静かに善に導くのであり、人間の自由は尊重してくれると書いている(『天国の秘義』6205)。一人の患者が太陽のように見える善の力に気付いたこと、しかしそれを彼が恐れてびっくりするとそれは消えて行ったこと、これに対し低次元の者はつねに攻撃を加え続けるものだということは前述した。自分が低次元の者とは別の者だと信じさせるように高次元の幻覚は導く。しかし、それでも患者の自由は尊重しているという分かり易い例であろう。

 

 

 

 

6.機械

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P190

 

彼らは性的なこととか汚いことに気持ちを向けさせようとするが、このこともスウェーデンボルグは言っている(霊界日記2852)。そして、彼らはそんなことに気持ちを傾けたといってまた人間を非難するのだ。彼らはまた人間は単なる自動人形や機械なのだという意味のことを言ったりもする。

 

 『このように人間が機械みたいに操られて行動するので霊の眼には人間など塵芥(ちりあくた)でしかない。ある者が人間やあるいはまた霊だと知っても彼らは相手を機械としか見ていない。しかし、人間の方はいつも自分は生きていて、考えている存在で、霊なんてものは無きに等しいといったように考えているのである(霊界日記3633)。』

 

人間が自動人形だという考えは精神病的な妄想には共通の幻想で、幻想の中で起きるものである。普通の状態では霊には人間の世界のことは見たり聞いたりできないが、精神病などの中では彼らにはそれが出来るようになるということはスウェーデンボルグも言っている(天界の秘義1880、霊界日記3963)。例えば、私は患者の声に対してロールシャッハ・テストを与えて、患者自身の答えとは別にそれに回答させることも出来たのだった。このテストの結果をついでに言えば、低次元の声たちは患者以上に病んでいるように見えた。私は患者の聴覚を通じて彼らと話をすることが出来たが、彼らもまた患者の耳が聴くことを聴くことが出来るのだった。彼らは患者同様に見たり聞いたりが出来るように私には思えた。しかし、それが彼ら自身が言うように、患者が自分の感覚器官で見たり聞いたりするものよりももっとぼんやりした見え方や聞こえ方になっているのかどうかについてはどっちとも言えなかった。

 

 

 

 

7.反宗教的

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P180

 

低次元の者たちはみな宗教的に不信か反宗教的かである。患者が宗教的な行いをしようとするのを妨げようとする者もある。ほとんどの患者は彼らのことを普通の生きた人間と考えているが、一人の患者だけには普通に言われる悪魔の姿になって現れ、彼もそれを悪魔だととっていた例もあった。彼らは自分のことを自身で地獄から来た者だと言うこともたまにはある。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P183

 

特に奇妙で面食らわせるようなことも幾つかあった。低次元の幻覚は極めて多くの患者に現れる一方でその内容は決まり切ったものばかりだった。またこのタイプの幻覚の人物たちはそれぞれ自分の人格を主張しながらそれを確認させてくれるはずの事実、例えば生まれた場所、学校、名前、経歴などは全く隠しているのは奇妙であった。患者を痛めつけるために彼らが使うテクニックやそのしつこさは驚くべきものがある。またなぜ彼らはきまって不信心だったり反宗教的だったりするのだろうか? 宗教という言葉をちょっと口にしただけで彼らは怒ったり、軽蔑したりする。これに対し高い次元の者はきまって才能や感受性もあり、賢く、信心深い。彼らは自分が誰であるかを隠すこともなく、同時にそれは人間以上の存在であることが多い。たとえば高次元のある女性の霊は患者に“聖なる者の女性的側面の投影されたもの”として理解されていたりした。また、私が彼女にあなたは聖なる者ではないかという意味のことをいってみたら彼女はそうではない。聖なる者の意を受けているに過ぎないと反論してきた。しかし私は低次元とは反対極にある善なるものと接触している感じを持たざるを得なかった。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P188

 

またスウェデンボルグは悪い霊は良心も破壊しようとするといっているが(『天国の秘義』1983)、彼らはつねに高い価値に逆らおうとするものらしい。彼らが読書とか宗教的行為を妨害しようとするのもその一例である。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P191

 

スウェデンボルグは低次元の幻覚の変わった特色について示唆的なことを言っているが、そんな特色が確かにこの種の幻覚の中には幾つもある。もし声が患者の心の奥底にある無意識の世界からやってくるものだとするならば、声が奇妙なほどに反宗教的だったり、逆に信心深かったりする理由は私には分からない。そればかりか低次元の声は少しでも宗教のことを言うと最も口汚くそれに反撃するのである。スウェデンボルグも彼らは死後の生の否定には最も熱心で、神や宗教的行為には猛烈に反発すると書いている(天界の秘義6197)。私はあんたたちは霊かと尋ねてみたが、すると、彼らは「この辺にいる霊なんてみんな酔っ払っている」と答え、その後で馬鹿にしたような高笑いをした。スウェデンボルグによれば彼らは神や宗教やそれらと関連するものに反逆することによって彼ら自体になっているのだと言う。

 

 

 

 

8.低次元の連中の役割

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P179

 

私は高い次元の声が低次元の連中の狙いはその人間の弱点を洗いざらい本人に見せてやることなのだというのを聞いたことがある。彼らはこれをまことに巧みにかつ辛抱づよくやり抜くのだ。もっと悪いことには彼らは患者たちに約束をしたり、いかにも親切そうな調子の助言を与えたりすることがあるが、これもみな実は患者の弱点を暴くいたずらなのだ。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P183

 

ただ多くの患者は低次元からの攻撃だけを体験している。高い次元の者は自分たちのほうが低次元の者より大きな力を持っているのだといい、その証拠を時に見せたりはするのだが、しかし、それは患者の心を十分に安心させるほどではない。また、高い次元の者は、低次元からの攻撃も患者の弱点や間違いを教えて、それに気付かせるという役には立っているのだと患者に教えたりすることもある。

 

 

 

 

9.狂気の原因

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P185

 

二世紀前にはまだ狂気の正体もよくは解っていなかった。しかしスウェデンボルグはこの問題についても考えていた。彼は狂気は自分自身の幻想の中に捉われてしまうことだといったことも時々言っている(霊界日記1752)。また別のところでは狂気は自分自身の力を過信することだといった言い方で霊的狂気について触れた時に言っている(天界の秘義10227)。また、霊の憑依とか、憑依した霊がどんなことをするかについては彼は随分色々と書いている。幻覚はスウェデンボルグが固執(間違った考えに捉われること)とか憑依(霊によって自分の考え、感情、行動などが支配されてしまうこと)という言葉で言っているものとよく似ている。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P187

 

彼の全体的な考えの枠組の中から読者は彼は社会的な活動から習慣的に身を引いて内なるファンタジーの世界や内なる誇りの世界に入ることで意識の境界の裏側へ潜り込んでいたのだと推察するかも知れない。社会から時々引込んでしまうということがそんな働きをすることは確かで、それがまず精神分裂症の初期の状況でもある。また宗教的信念だけで幻想が防げるものでないのも確かだと私には思われる。なぜなら、多くの患者たちは宗教的信念によって自らを救おうとしているのにそれができないのだ。精神病者などを観察した結果から言えるのは役に立つ社会的活動、慈善行為などをすることはかなり分裂病を防ぐのに効果がありそうに思えるのである。

 

 

 

 

10.性的なこととか汚いことに気持ちを向けさせようとする

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P175

 

しかし、すぐ分かったのは多くの患者が彼ら自身、自分に見えたり、聞こえたりするものに面食らっているのだということだった。また彼らは自分たちが体験しているようなことは他人は経験しているものではないということも知っていた。さらに中には、彼らが耳にしているような猥褻なことを他人にいえば自分の評判を悪くしてしまうと心配している者もあった。

 

 

 

P178

低次元の声はバーで酔っ払って騒いでいる酒癖の悪い酔っ払いみたいで、他人をからかったり、いたぶったりして喜んでいるものである。彼らはみだらなことを言い、患者にはお前はそんなことを考えているといって非難したりする。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P190

 

彼らは性的なこととか汚いことに気持ちを向けさせようとするが、このこともスウェデンボルグは言っている(霊界日記2852)。そして、彼らはそんなことに気持ちを傾けたといってまた人間を非難するのだ。

 

 

 

 

11.嘘つき

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P188

 

スウェーデンボルグは悪い霊は特定の人格を持たなかったり、嘘つきだったりすると書いているが(『霊界日記』2687)これはまさしく患者を面食らわせる一つの現象のことを言っている。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P188

 

 霊が人間に向かって話し始めたら人間は彼らの言うことは信じないようにしないといけない。彼らは何でも言うが、彼らはみな勝手に作り上げたことばかり言う嘘つきだからだ。彼らは天国について話し、そこがどんなところかなどとしゃべりまくるが、それは嘘ばかりで、しかももったいぶって如何にも重々しく話したりするので、人間のほうは度胆を抜かれてしまうほどである。・・・彼らはでっち上げが大好きで、ちょっとでも話のとっかかりを与えるとそれについてああだ、こうだと自分の意見をあたかもよく知っているかの如くにしゃべりまくって止むことがなくなる。しかも、ある時はこう言い、ある時はああ言うといった具合で、もし人間が耳を傾けたり、それを信じたりでもすれば、彼らはしつこく迫り、だまし、とんでもない方向へ人間を誘惑していってしまう(『霊界日記』1622)。

 

 

 

 

12.面食らわせる

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P174

 

 16年間にわたって私はカリフォルニア州立のかなりすぐれた精神病院で精神科医として仕事をしてきた。仕事上の義務と人間に対する関心から、私はこの間に数千人の精神病患者たちを詳しく診てきた。ある偶然のきっかけから、私がそれまでは気付かなかった精神病的な幻覚の正体を詳しくかつ正確に知ることが出来るようになったのは1964年のことだった。私は、スウェデンボルグが霊と人間のかかわりとして言っていることと患者たちの言うこととの間に類似性があるのに少しずつ気づき始めたのだが、この両者の驚くべき類似が本当に明らかになったのは、私がこの幻覚に関する発見をしてから三年の後だった。そこで私は、彼がこの分野で言っていることを可能な限り集めてみた。そして分かったのは、彼が言っていることは患者の体験と完全に一致しているだけでなく、よりはっきりしており、しかも、彼の指摘がなければ面食らうばかりな幻覚の正体が明らかにされているのだった。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P175

 

しかし、すぐ分かったのは多くの患者が彼ら自身、自分に見えたり、聞こえたりするものに面食らっているのだということだった。また彼らは自分たちが体験しているようなことは他人は経験しているものではないということも知っていた。さらに中には、彼らが耳にしているような猥褻なことを他人に言えば自分の評判を悪くしてしまうと心配している者もあった。彼らが正直に気楽に体験を話してくれるようにするには多少の工夫も必要だった。さらに話がややこしくなることも起きた。というのは幻覚の声のほうが今度は私にびっくりし、彼らを安心させてやる必要も生じたからだ。彼らは心理学者たる私が彼らを殺そうとしていると感じたのだが、それはある意味では確かに事実ではあった。私は、患者及び患者が見たり、聞いたりしている人物とも関係を作り上げた。私はこれらの人物に直接質問をし、患者にはその声が答えることを逐語的に私に教えたり、彼らに見えるものをそのまま私に伝えるように求めた。私はこんなやり方で患者の幻覚と直接長々と対話し、私の質問と彼らの答えを記録した。私のやり方は現象学のやり方だった。私の唯一の狙いは患者の体験しているものを出来る限り正確に捉えることであった。読者は私が幻覚をリアリティとして扱っていたのに気付いているはずだが、それはまさに患者にとってリアリティなのだ。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P188

 

 スウェーデンボルグは悪い霊は特定の人格を持たなかったり、嘘つきだったりすると書いているが(『霊界日記』2687)これはまさしく患者を面食らわせる一つの現象のことを言っている。

 

 

 

 

13.多くの名前を言う

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P179

 

彼らは自分が特定の誰だということは明らかにしないが、多くの名前を言ったりする。彼らは自分の記憶していることは隠したり、思い出せなかったりする。彼らは自分が特定の誰だと言ったりはするが、それを証拠立て確かめさせるような具体的なことは言わない。声の質も変えたり、使い分けたりして患者を混乱させ誰がしゃべっているのか分からなくする。患者が知っている誰かだと分かったりすると彼らはその声を完全に真似て使ったりする。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P188

 

患者たちは、声はしょっちゅう変わったり、その時に霊が自分は何々だという者の声になったりして自分の正体を掴ませないと訴える。また患者が自分の知っている誰かだとして対応するとその人物らしく行動するという。ある期間以上こんな声とつき合った患者は皆今のようなことに気が付くに至る。

 

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P193

 

スウェーデンボルグがはからずも言ったことで私が患者とのやりとりで発見したことと同じ奇妙さがまだある。低次元の幻覚は自分を色々な人間のように言う。しかし、特定の誰だと分かるような具体的な事実はいつも言わないというのがそれである。

 

 

 

 

14.心霊主義

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P95

 

心霊主義者は霊的世界と自分は接触していると言う。しかし、それが事実と仮定してみた場合でも彼らがコンタクトしているのはスウェデンボルグが最下等の霊界として描いた霊的世界の一部だけである。そして、この最下等の世界とは後にスウェデンボルグが明らかにしたように人間を迷わせ騙す世界なのだ。

 

 

 

 

15.低次元の声たちは患者以上に病んでいるように見える

 

 

ウィルソン・ヴァン・デュセン/『霊感者スウェデンボルグ』P190

 

 

人間が自動人形だという考えは精神病的な妄想には共通の幻想で、幻想の中で起きるものである。普通の状態では霊には人間の世界のことは見たり聞いたりできないが、精神病などの中では彼らにはそれが出来るようになるということはスウェーデンボルグも言っている(天界の秘義1880、霊界日記3963)。例えば、私は患者の声に対してロールシャッハ・テストを与えて、患者自身の答えとは別にそれに回答させることも出来たのだった。このテストの結果をついでに言えば、低次元の声たちは患者以上に病んでいるように見えた。私は患者の聴覚を通じて彼らと話をすることが出来たが、彼らもまた患者の耳が聴くことを聴くことが出来るのだった。彼らは患者同様に見たり聞いたりが出来るように私には思えた。しかし、それが彼ら自身が言うように、患者が自分の感覚器官で見たり聞いたりするものよりももっとぼんやりした見え方や聞こえ方になっているのかどうかについてはどっちとも言えなかった。