Studio's Literary


管理人手記 / 雑記帳

ここはこのサイトの管理人kuribowの日々の自堕落... もとい切磋琢磨している
様子が克明に記された血と汗と涙と そして笑いのドキュメントであ〜る...


2002 April - May : 色々見えてくる時期ですね

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Apr. 5 (fri) 

今日は練習を早めに切り上げ、マッコイ・タイナー・トリオを見てきた。
 
ものすごく感動した。
その存在感の大きさ、音価、全てに於いて彼はパーフェクトだった。
 
何よりも、4×5やFly with the wind(何れも彼の作曲)など私の思い入れのある曲が、
彼の演奏で、しかも生で聴けたのだから....。
 

世界で一番愛するピアニストが、私の思い入れを語った。
 

これを感動と呼ばずして何と呼ぼうか?
 
 
Apr. 16 (tue) 
ここ1ヶ月ほど前からだろうか、突然目覚めたかの如く練習を開始している。
 
確かに今までも練習をしていなかったわけではない。
必要を感じた時に必要なだけしていたし、その都度一定の成果を挙げていた。
しかし練習場に8時間を普通に越すという日はなかった。
午後6時に授業が終わると夜中の2時まで練習、他の事は一切考えない。
 
今、云わば大掛かりな手術の断行中である。
運指方法の再検討に始まりフォームの改造、アンブシュア(咥え方)の改造、指自体の
動かし方の矯正などどれも完成に1年以上は費やすであろう作業を同時に行っている。
無論、ただ練習時間を増やしたからといって身に付くものではない。
どっちにせよ身体になじむまで、体が覚えるまでには時間を相当費やす作業なのだが、
今までのように自由に吹きこなせないもどかしさが練習時間を否応無しに吊り上げさせる。
しかも一度改造に着手すれば元の形には戻らない。実際度胸のいることだ。
 
確かに今までの奏法では上達に限界があった。
音楽のことだけを考えるこの環境がもたらした考え方の変化。
 
私の周囲は達人ぞろいだ。
色々な人と色々な情報を交換してるうち、それぞれの考え方を変化させる。
その変化を実践する為の練習時間があるのは本当に今のうちだけなのだ。
そしてそういう環境を求め飛び込んだ。
今が私の理想としていた音楽を追求することのできる時間。
 

みんな上達する為の色々なアイディアを持っており、それを交換し合う。
 

アカデミックに勉強する事を特に必要とされないジャズ界において、
こういう空気は特異なものに映る方も多いかもしれない。
「何だお前、音大って!ポップスターにでもなりたいのか?」 
一理ある発言かもしれない。
しかし、あからさまに気嫌いするようなものでもない。
 
確かにジャズは人から教わるのもでは決してない。
自分の感性を、自分の表現の仕方で訴えるものだからだ。
 
ただ、音楽にノウハウは存在する。
あからさまにぶつければいいというものではない。
最終的には自分に必要ないものを殺ぎ落としていけばいい。
そして、自分に必要なものを求める姿勢を常に欠かないこと。
 

その昔、周囲のミュージシャンたちが私の留学を止めたことがあたった。
お前、自分を見失うぞ?
しかし、ここ卒業のミュージシャンたちは私の留学を勧めた。
きっと自分の音楽を見つけられるだろう。
 

柔軟な姿勢(レスポンス)と確固たる価値観(ジャッジ)さえあれば、
研鑚を積む上ではこの上ない環境だと言える。
実際の所危険だと感じた時点で退学帰国する気持ちもあった。
とにかく自分の目で確かめたかったのだ。
 

 
今こうやって試錯を繰り返し大手術に及んだ事で私自身精神的に若干追い込まれている。
家に帰っても指のストレッチに相当時間を取られている。
言葉もろくに通じないストレスフルな環境に身を置いてまでやる価値のあることはそうはない。
 

みんな必死でやっているこの環境が私は好きだ。
 

卒業するまでに出来るだけ多くの刺激を受けておきたい。
音大生達のこのギラギラした目つきを一生忘れてはならない。
そして今の自分のこの目つきを.....。
 
Apr. 19 (fri) 
うちの家庭で奇妙な現象が起こっている。
 
うちの料理人と癒し系、実は同郷(神戸出身)で且つ日本での門下(師匠)が同じ。
そう、知る人ぞ知るあの小曽根門下だったらしい。
ご存じない方の為に簡単に説明しよう。
どう知られているかというと、弟子達一人一人に「ニックネーム」を付ける慣しがある。
因みにうちの料理人は「てっぱん」、癒し系は「おおじ」という屋号をそれぞれ授かっているようだ。
しかもこの門下、いわゆる「兄弟子」概念が強く、先に入門したものから序列されていく。
従っていくら年上であろうと、先に入門している者達には年齢関係なく敬語を使わなければならない。
 
当然同じ門下であった以上、うちの料理人と癒し系の間にも上下関係が存在する。
そう、もうこの話お分かりであろう。
うちの癒し系(21歳)が兄弟子で料理人(26歳)が弟弟子なのである。
 
さすがにもう慣れたが、最初この二人の会話は非常に奇妙に感じた。
当然だ、26歳が21歳に向かって「おおじ兄さん」と呼んでいるのだ、これは気になる。
中身は当然敬語のみ。
私と話す時は「うちの子」と呼んでいるが、いざ彼を前にすると「おおじ兄さん」となる。
 
ここは家庭だ。そのルール、どうにかならんか?
 
と撤廃を提案した事もあったがこの提案、彼らにとってはナンセンスらしい。
まんまと却下された。
さらに不自然な事に、うちの癒し系は料理人を「てっぱんさん」と呼んでいる。
しかも中身はやはり敬語。
このあたりが私の頭を混乱させる大きな要因となっていた。
 

さて、想像して頂こう。
 
私(27歳)は、彼らには敬語は使わないしさん付けでも呼ばない。
実際サイセイ(料理人)は大学時代の私の直属の後輩だ。
当然彼は私に対して当時から敬語で話す。
吉川くん(癒し系)は私に対し敬語を使う。なかなか礼儀正しい子だ。
つまり、彼ら2人は私に敬語でものを話す。別に不自然な点は見当たらない。
 
しかし彼らは彼ら同志で敬語を使い合っているのだ。ここが問題。
言い換えれは、彼らは家では敬語しか話していないことになる。
つまり、この家で敬語を全く話す必要が無いのは私だけということになるのだ。
入居時、一番後にこの家に乗り込んできて一番エライ場所に据えられてしまった。
 
パニック
 
ここは私も彼ら同様敬語で話すべきかどうか本当に迷った。
彼らはそれぞれに対し敬語で話す。
私も彼らに敬語で話せばこの家はすごく平和になるに違いない!
敬語同士の礼儀正しい会話。ああ日本の美意識万歳!!
 
彼らに敬語で話そうとしたところ、
気持ち悪いからやめて下さい
あっけなく一蹴。
 

知らぬ間に年を取った...
 

と感じっぱなしの数ヶ月であった。
最近になってこれは「彼らの仕掛けた罠である」と思うことにしているが...
 

 

Apr. 20 (sat) 

少し前の事件。
事件というほど大袈裟なものでもないが、事件になりかねない話だ。
 
校舎本館地下、我々が使用している練習小部屋の隣にメールボックスがあった。
3月に1週間程の春休みがあったのだが、その際にこのメールボックスが『利用生徒の増加
を理由に新設別校舎に移転した。ボックス自体を大幅に増設するというのだ。

確かに学校の採っている奨学金制度が功を奏し生徒は年々増加の傾向にあり、
実際生徒の半分くらいは同じアドレスを別生徒とシェア(共有)している。

見ず知らずの人間とボックスをシェアするということは、万が一自分の手紙を共有主に間違って
持っていかれたりしても全く気づかない事になるし、その生徒のモラルが低ければ捨てられてしまう
なんてこともある。それどころではないトラブルも過去に何度ともなくあったらしい。
因みに、金庫のようにダイアルしなければ開けられない融通の利かない冷たいヤツである。
 

ただ、本館の地下にあったからこそ、それぞれがある程度自主的にメールボックスに赴いていた。
少なくとも週に2〜3日は本館での授業があり、各々が授業の合間にボックスを覗いていた。
しかし本館から離れた場所に、しかもメールボックス専用の場所に置かれてしまうとやはり
近くてもなかなか行きにくい。
よほど楽しい事があるなら話は別だが、前回のように召集令状であるとか、あるいはサークル
のチラシ・勧誘のビラ等何とも頂けない内容のものが殆どなのである。
 
そんなこんなで暫らくメールボックスを放ったらかしにしていたのだが、
久しぶりに覗いて驚いた。
 






何だ、この半端じゃないビラの量は!!
 






色とりどりのビラで私のボックスは大いに賑わっていた。
 









なぁ〜らんだぁ〜 なぁ〜らんだぁ〜 あ〜か〜 し〜ろ〜 き〜い〜ろ〜〜
 










憤慨しつつこのちょっとしたパーティ状態のビラ達をまとめて捨てようかとも思ったのだが、
取り合えず大学関連のものがないかどうかだけチェックしてみた。
すると4枚つづりになっている学校関連の手紙を1通だけ発見。
 

 
その手紙にはこう書かれていた。
 



あなたが参加している作/編曲研究(ポップ・ロック)の授業を病欠あるいは緊急の用事で欠席する場合、あなたの責任で同等の技量を持つ生徒をよこしなさい。そして、もし他の研究より参加要請があった場合、参加するように!
 




何と力づくな内容だろう.....。
自分の穴は自分で埋めろというわけですか。
兵隊として駆り出しておいてそこまでさせますか!?
 

 






仕方がない、こちらは雇われの身。(※詳しくは2/16・3/ 7の記事参照)
 

 





 

 

 
学長、身体で返せない分は人に返させろってことなんですね!?
 

 





 

 

 
いつも一方的な大学側。一言で言うと、殺生である。
気を取り直して続きを読んでみる。
 







以下はあなたの代役となりうる生徒の一覧です
 






ん? あ、2枚目以降の事か。
なるほどこれは親切だ。そりゃそうだ、友達のいない生徒にはただの告知でしかなくなる。
さしずめ奨学金を得ている生徒のリストってところだろう。
 

 
そしてページをめくった瞬間、私は凍てついた....。
 






そのリスト、苗字名前専攻楽器持替楽器メールボックス番号の他に、
何とレーティングIDナンバー電話番号が控えられた完全個人情報漏洩リストだった!

 


 













とことんやってくれますこのアホ大学!!

















そこには当然私の電話番号も載っていた...。
 
これは恐怖!
 
メール番号までは分る!
何で人に知られたくない情報(レーティング)、果ては電話番号まで載せるかな!?
考えられない!
確かに自分と同レベルの生徒を電話で手っ取り早く呼び出すことはできるかも知れない。
しかし悪用されんか!?
 
学校が責任を持って代役を立てるシステムを作り上げておけば、こんな恐ろしい状態に生徒を曝すこともないはずだ。
やっぱこっちの人たち、何考えてるかわかりません...。
 

しかし、ここは前向きに解釈。
 
これで、あいつとあいつを消せば私の活躍の場は増える♪
 
まあ冗談ですが。しかし、怖いよねぇ.....。

 
Apr. 21 (sun) 

 
18日の出来事です。
そんなわけで木曜日と言えば、兵隊の日。(※詳細は2/16の記事参照)
しかし依然殆ど仕事をさせてもらえない我々。
 
先週は寝坊して30分遅刻したにも関らず、結局着いた瞬間に授業終了。
サインアップだけして帰宅という何ともおいしい出席扱い。
アルトのYu上等兵に話しを聞くと、
 
結局今日も座ってるだけだった...
 
と苛立ちを隠せない模様。
あからさまに不可能だとわかる難解な譜面をただひたすら読まされる別働隊の噂も耳にしているが、
逆にこうも仕事がないのも考え物である。そう、ただその場にいるだけ。
 

今週はちゃんと時間通りに到着。
アルトのYu上等兵が軍曹(教授)と何やら話しをしている。
 
マウスピースを家に忘れたのだが、今日は演奏するのか?
 
普通の授業ならこんな質問しない。
どうやら今日こそは楽器を吹く機会を与えられそうだ。
軍曹(教授)は彼に取りに帰るよう命じた。
 
15分後、彼は道具を小脇に抱え持ち場に戻った。
その瞬間、授業は本日も演奏の機会を迎えることなく、しかも何事もなかったかの如く終わった.....。
 

 

 

 

 
こ、このチョビヒゲ野郎〜〜っ!!
 

 

 

 

繰り返し述べるが、彼の本日の授業はこれのみである。
以後、Yu上等兵は雑談といえどこの授業中に笑顔を見せる事はなくなった...。
 


Apr. 22 (mon) 

サイセイを散髪した。
人を散髪するのは生まれて初めてのことだ。
 


散髪前のサイセイ 我々を信頼できないのか笑いつつも若干引き攣っているように見える

 

最初はサイセイ、吉川くん(癒し系)に散髪をお願いしていた。
私もてっきり彼のセンスや風体からその手のことができる少年なんだと思い込んでいたが、
実は彼も人の髪を切ったことなど過去に一度もないという。
そして、期待通り彼は見事に失敗した。
大いに右のみを刈り込みすぎてサイセイに叱られていた。
可愛そうに吉川くん、『絶対無理です』と初めから主張していたのに....。
 



手際よく進める吉川くん(癒し系)散髪代を浮かせる為とは言え暴挙に出たと言い切ろう
 

耳の上&手前辺りに注目して頂きたい 頭と平行に刈り込まれているのがわかる

 

そして何故かピンチヒッターで私が代わりに切る事になった。
私とて人の髪など生まれてこのかた扱ったことが一度もない。
ただ、私が切れば失敗しても怒られないので思い切ってバッサリいくことにした。
 


完成の図 成功したかどうかは想像にお任せいたします

 

切っていくうちに慣れてくるもんですね、こういうのって。
最後はバリカンに梳きバサミをも駆使して仕上げた。
鋏の使い方って基本的には楽器と同じ。
 
吉川くん、しっかりフォローしたぞよ?
 
 

Apr. 23 (tue) 

以前、アパートの玄関に南米人風のみすぼらしい老人がよく一人で煙草をふかしていると
書いた事があるのを憶えておいでだろうか?(※3/4日分の記事参照)
 
その後も暫らくは彼を見かけていたのだが、ここ1ヶ月ほど突然見かけなくなったのだ。
国にでも帰ったのだろうか?
あの草臥れた、しかし余裕のあるあの雰囲気は人を寄せ付けぬ何かオーラめいたものがある。
が、反して私は彼に何かこう親近感みたいなものを感じていた。
異国の地にて逆境に耐える私や私の友人の姿とオーバーラップするものがあるのかも知れない。
 
身寄りを訪ねてアメリカに渡って来ていたのかも知れないな。
 
いつの間にか勝手にそんな想像をしていた。
彼は私の中で既に、色々な事を想像させる興味深い人物と化していた。
彼の家族の事や今までの人生など色々。
ほんの挨拶程度の間柄ながら、見かけなくなると一抹の寂しさを覚える。
 

 

 



私とその老人の住むアパート。外観・屋内共白を基調にデザインされている。

 

 

 

そんな彼を久々に見かけたのは昨日だった。
その相変わらずの風貌・表情には安堵すら覚えた。
そして、初めて挨拶以外の会話を交わした。
 

 
そして、また今日も挨拶を交わす。
 

 
昨日分った一つの事実。
それは彼が『生まれも育ちもバリバリのボストン人』だったって事だ。
 



想像は、その人の人生を軽く越えてしまう・・・。
 

  
Apr. 27 (sat) 

一人で耳掻きをしていると突然咽(むせ)るのは何故でしょうね?
 

Apr. 30 (tue) 

 
普段我々が利用している食材屋。
 


自宅より徒歩約5分の距離にある。

 

某大手大型スーパーマーケットよりも値段は若干高め。
ただ、最近その某マーケットで食材を買い求めるのが非常に怖い。
リンゴなどは白く粉を噴いており、牛肉などは1週間ほど冷蔵庫に放置してても色が変らない。
確かに激安なのだが、利潤追求もここまで来ると恐らくどこかで間違ってしまうのだろう。
そう、現在のアメリカで消費者に求められているのは『買い物上手』ではなく『本物を見極める力
なのだと感じてしまう。
農薬で汚れた果実や防腐剤で鮮度を保っている肉類などはいくら安くても購入すべきではない。
 

しかし全ての食材店がそういった半ばインモラルとも取れるシステムを採っている訳ではない。
我々が通っているこの小型スーパーは『シンプル・オーガニック』がモットーだ。
当然値段は若干高いものの、安心を買うと思えば大したロスではない。
 

正直、アメリカの消費スタイルがここまで歪んだものだとは思わなかった・・・。
 

 

May 1 (wed) 

 
気候も大分穏やかになり、野球シーズンもそろそろ本格化するこの時期。
 

1月頃の日記に『球場が非常に近いんですよ』って感じの記事を載せてたと思います。
ア・リーグの球団ボストン・レッドソックスのフランチャイズであるFENWAY PARK STUDIUMです。
そう、去年日本人投手野茂や大家がいたことで話題になってた球団ですね。
で、ア・リーグと言えばイチローや佐々木のいるマリナーズや常勝球団ヤンキースアスレチックス
エンゼルス、カナダのブルージェイズなど有名球団がズラリ。
 

それでこの球場、どれ位近いかと言いますと『同じ住所の番地違い』徒歩約5分の距離です。
それがどんな具合かというと、こんな具合です。
 


日曜のデーゲームともなるとDJやオルガンの音が聞こえてくる

 
部屋から見えるもう一つの風景でした。

 



May 5 (sun)  

 
最近友人A君の引越しを手伝った。しかも、それは夜中だった。
 
来週からテストなのに何故この時期に、と思われる方もおられるかも知れない。
先ず言っておくと、『
一つの悲劇が連鎖を起こした』結果であり緊急を要する引越しであった。
今日の日記、アメリカへ留学される予定のある方には特に読んで頂きたい話である。
そう、キーワードは『
サブレット』。
この話の全ては彼がサブレットで住み始めたことに起因する・・・。
 

 
話の核心に触れる前に、その『
サブレット』について簡単に説明しておこう。
サブレット』とは、アパートの転貸しを意味する。また貸しともいう。
つまり『
代理入居者』としてそのアパートに住むことを指すと考えてもらっていい。
 
具体的に言うと、そのアパートの権利の持ち主が数ヶ月〜数年そのアパートから帰国や長期出張
等で出払わなければならない場合など、家賃(同額あるいはそれ以下)を別の人に払ってもらい
その人にそのアパートで生活してもらうというシステム。
例えば夏休みに三ヶ月間日本に帰る持ち主が、観光で来ている人や夏期講習のみを受講する生徒、
或いは新しいルームメート・アパートを探している最中の人等を仮に住まわせるといったところだ。
 

 
因みにこの彼は私たち一家(私・サイセイ・吉川くん)と大学同期入学。
語学学校時代は寮に住んでいたという。
そして彼はサブレットというカタチでアメリカでの独立した生活をスタートさせていた。
 
もともとはアメリカでの生活の長い
日本人女性二人が住んでいたのだが、一方の女性がサブレットを
希望したのを受けて、彼が代わりに五ヶ月の契約でそこに住むことにした。
彼は学校に通う傍ら新しいアパートとルームメートを探す予定だったという。
確かに日本では普通なかなか考えられない発想かもしれないが、アメリカではそれまで全く
面識のない男女が一つ屋根の下一緒に暮らし始める事など特に珍しい事でも何でもない。
ただし、当然互いの生活やプライバシーに干渉しない調和を求められる。
 
ただ、セメスター(学期)途中にルームメートやアパートを探してもなかなか見つからない。
彼もまた苦戦していた。
実際にセメスターが終了間際になるまでは動きにくいというのが現実である。
しかもセメスター終了間際は学期末テストを控えやはり身動きが取りづらく、
結局テスト終了日から10日ほどまでの期間をこのアパートに住めるよう交渉したらしい。
つまり、期限延長の申し立てを彼女との電話でのやりとりで成立させていた。
テストが終わってからゆっくり新たなアパートとルームメートを探すことにしたのだ。
 

 
数日後、彼女の一本の電話から状況は急変する。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すみませんが、やっぱり今すぐその家を出て行っていただけませんか?
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
始めは何を言われているのか分らなかったと彼は語る。
唐突過ぎるタイミングそして内容、理解できない。

彼女の突然の心変わりの理由はこうだ。
 
もうすぐ日本に帰らなければならないの。最後の思い出にもう一度そのルームメートと暮らしたい
 
一方的な要求。
分らなくもないが、人にはそれぞれ生活というものがある。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
い、今すぐと申されましても・・・。
家も同居人も決まっておりませんし、
せめてテストの終わる週の日曜日まで待っていただけないでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
当然の主張だ。
約束は約束。守ってもらわないと予定が全て狂ってしまう。
しかも彼は期限を繰り上げて交渉し直したのだ。
とりあえずはその条件で合意に達した。
 
が、
何か負に落ちないと感じるのは私だけだろうか?
 
はっきり言って、生活がかかっている場面である。
その日までに住む場所が見つからなければ家財道具一式抱えて路頭に迷うことになる。
いや、最大の違和感は『
彼女と住みたいから今すぐ出て行って』という理由である。
一体どういう神経をしているのだろうか。
自分の欲望が達成されれば人の生活などどうでもいいとでも思っていそうな口ぶりだ。
そんな、まるで子供のような女のわがままに付き合わなければならないのだろうか?
 

 
その後も彼女からの電話は絶えない。
その都度、こちらの都合を丁寧に話し電話を切っていた。
 
まるでサブレットには何の権利も与えられていないような扱い。
サブレットといえど住んでいる人間に権利はあるはずだ、と思われるだろう。
しかし覚書き、或いは契約内容にサインされた証拠がないと、立場は圧倒的に不利になる。
悲しい現実。
そう、彼はあくまで『電話での交渉』に終始してしまっていた。

この国で口約束は厳禁である。
そう、権利と裁判の国なのだ。
 

 




私が、彼がこういう深刻な状況に陥っていると知ったのは悲劇が起こる直前だった。
そして悲劇は起こった・・・。
 

 
その日、彼らは語学学校時代の友人を集めてパーティを開いていた。
そしてタイミング悪く彼女から電話がかかってきた。
既に険悪な雰囲気を増した彼と彼女。
その騒がしさを彼女が彼に問い質したのだが、別に危ないもので盛り上がっている訳ではない。
ただのピザパーティだったのだが、ここで彼女が激しく彼を怒鳴りつけた。
 

人の家に大勢の人間を入れて騒ぐって、一体どういう了見なの!?
 

残念ながら、わがままもここまで度が過ぎると話のできる相手だとは到底思えない。
ただ、友人が家に遊びに来て晩飯を食って話しているだけの何が悪いのだろうか?
サブレットは常に一人で飯を食わなければならないのだろうか?
おまけに彼女の持ち物はそのアパートには何もない。
 

一時間以内に解散しないとホントに今日中に出て行ってもらうわよ!
 

何と横暴な勧告だろうか。
人の弱みに付け込んで大鉈を振り回す彼女。既に冷静ではない。
しかし、久しぶりの再会に大きな盛り上がりを見せるパーティが一時間やそこらで終了できる
訳がない。しかも遅れてくる人もいる以上場所の変更も出来ない。
何度となくかかってくる電話。
そしてとうとう彼女は彼に通告してしまった。
    


今すぐ出て行って!!! 

 
皆さん、これがどういうことだか分かりますか?
 

 

 

 

 

 

 

 
万が一彼を助ける親友がいなければ、或いは人にものを頼めない性格であれば、荷物は路上に放り出され、彼自身相当危険なこのアメリカで野宿を強要されるということなのですよ!?
 

 

 

 

 

 

 

 
ここは日本ではない。
夜中のボストンがどれだけ危険な場所かを「忘れてました」で済ませる気でしょうか?
 

 

 

 

 

 

 

 
そうすると選択肢は二つに一つ。
 

家財道具を選ぶ』か『身の安全を選ぶ』か
 

一瞬でもその場を離れると、家財道具は丸ごとなくなる。
人がそこにいないと落ちてるものだと都合よく解釈されてしまうのだ。
しかし、路上にある家財道具を守るということにどれほどの危険が付きまとうかは簡単に想像できよう。
 




つまり、を覚悟させる『出て行け』なのだ!!
 




決して大袈裟な話ではない。
事実、法的に彼をフォローするものは何もないのだ。
 

 

 
彼は我々の家に涙ながらに飛び込んできた。
我々がその事実を知ったのはこの時だった。
 
引越し、手伝ってください・・・。
 
既に時計は0時を回っていた。
我々がアパートに着いた時、既に残った三人が荷物をまとめ始めていた。
他の連中は既に帰っていた。
そしてパーティに参加していた友人二人が部屋を提供する事になっていた。
その後、彼らの家に全ての荷物を運び始める。ほぼ夜逃げ同然の姿だ。
終了したのは夜中の三時を大きく回っていた。六人で二往復。


これだけの労力で済んでよかったと心底思う。
これからの話はさておき、とりあえず彼を危険な目に遭わさずに済んだのだから・・・。
 

 










少なくともしっかり相手を見て選び
些細な事でも覚書を取らないと酷い目に遭う
そういう要素を孕んでいる事を読者に知っておいて頂きたかった
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
翌日、彼女は彼に直接頭を下げに行った。
涙混じりでの謝罪だったそうだ。
権利とかそういう問題ではなく、人としてしてはならない事だろうと彼は告げたという。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日耳にした話
彼女は引越しの度、そういうカタチでアパートの権利を放出せずサブレットを入れ続けていたという。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
この夏私は三ヶ月間帰国するのだが 現時点でサブレットを入れることを検討していない.....
 

 

 

(※友人A君より、偽名でならこの記事を載せてもよいという許可を頂いております)
 

 


May 6 - 10 (mon - fri) 

 
そんなわけで学期末テストが始まっております。
手応えの方はそこそこいい感じです。
要領は前回の中間テストとほとんど同じなのでお話することも特にないんですが。
 
まあ強いて言えば『
レーティング・オーディション』ってのを受けたくらいです。
そうです、以前お話したあの4桁の自分のレベルを表してる数字。
あのテストを1学期に1度受けられるので受けてきました。
 
自分の
やりたい曲(つまり自由曲)と指定される曲(つまり課題曲)2曲を演奏。
ボランティアの他の楽器の生徒とセッションをするって感じです。
その生徒達に思いっきり足を引っ張られたのですが(サイズ飛んだりロストしたり)、
何とか2レベル分上がりました。
来学期からは少し選択できる授業の幅が広がりそうです。
 

そんなわけでとりあえず今学期の全ての行程を無事終了しております。
 


いつもの練習場所・ホーンルーム 1畳分くらいの小部屋です 時々耳が痛くなります

 


May 11 (sat) 

 

明日帰国します。3ヶ月ちょっとの長期休暇。
 

夏の授業を受講しないとするとこれくらいの長さになります。
基本的に夏の授業は取捨選択制なので今回は見送る事にした。
というのも夏は受講科目がぐっと減り、よい(とされる、或いは人気のある)講師も
ボストンを離れる人が多いためです。
 
学校の授業登録の優先順位として、卒業の近い(つまり、取得単位数の多い)生徒から科目を
選択できるシステムなので、我々入学間なしの生徒が貧乏くじを引くのは目に見えている。
休暇が長いと勘や語学力等が鈍りそうではあるが、大金をはたいて残るメリットは無い。
捨てれば当然学費は払わなくてよい。
 

 
そんなわけで、ボストンとは暫らくお別れ。
印象的な風景が多い街なので写真を撮って帰ることにしました。
 


 

家の前 爽やかな気候になってきてます



時々綺麗にしてあるガーデンがあったりします



学校に行く途中の道 ケイジン邸の真ん前



通りを示す表札 このバーバンク通りにも多くの学生が住んでいる



大学より1本南の道 奥にはプルデンシャル



最近できたメールボックスの隣にある建物 教会を改装してある



学校の南側にある広場 奥にある尖った屋根は教会



中世建築と現代建築が同居する街 1番奥はジョン・ハンコック



最後に 玄関から1枚

 
また、3ヵ月後に。
 

 
  

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