![]()
第8話 『時と魔剣』
ディルはガンプに向かいながら 上着に来ていたコートを抜き捨てた。 さらに何か妙な短剣を取り出していた。 それをガンプは冷静に観察したいた。 『魔剣だね・・・』 そしてまだ間合いではないところから ディルは剣をガンプに向かって振りかざした。 『なんだあの剣!』 ラウドは魔剣の妙な変化に驚いた。 というのも、ディルの持っている魔剣。 それは持つ者のスキル素質を引き出して 剣になんだかの効力を示す武器である。 "魔"剣と言う名が指すように 魔城と呼ばれるところの秘剣である。 で、ディルが使うとその剣は 短剣から長刀へと変化した。 急に変化した剣の動きで ガンプも少しだけ戸惑ったように見えた。 剣はちょうどガンプの右肩に突き刺さる。 『なかなか。驚くことをするね』 ガンプは剣が刺さっているのを 分かっていないような余裕である。 と、その瞬間である。 さっき刺さったはずの剣の動きが 巻き戻したかのように少し短くなって、 さらにガンプの右肩に刺さった時に 血が出ていたはずの傷も治ってしまった。 さらに瞬間、その剣はまた伸び始めた。 しかし今度はガンプが軽くかわす。 『な・・・なんだ今の動きは?』 これは魔剣を使ったディルが一番驚いた。 『もとに戻ってまた動いたぞ?』 ラウドもこの奇妙な光景に驚くしかなかった。 『クソっ!』 クレーブが悔しさを顔全体で表した。 『そんなに驚くことは無いんだよ。 僕は少しだけなら戻すことが出来るからねぇ』 そう言いながら右腕を回す。 その光景に まだディルたちは信じられていなかった。 『戻す?だと』 『そう。僕のスキルの性質は 【時】なんだよ。 僕が触れたものなら 時間をある程度戻したり 速くしたり出来るんだよ』 説明を聞いたディルは 驚きから変に納得してしまった。 一方ラウドは妙な気分になっていた。 『サガは確か、ガンプはスキルを持たないで ここの七秘宝を手にしたって言ってたよなァ。 でもガンプはスキルを持ってんじゃん。 サガめ、また嘘ついたのかよ』 とぶつぶつと独り言を言っていると 『嘘じゃないよ。ラウド君。 僕はスキル使いではないからね』 と今度はラウドのほうを向く。 『なに言ってんだ?お前は』 ラウドは完全に混乱状態になっていた。 さらにガンプはダメ押しのことを言う 『それでもまだ解決しないことがあるでしょ?』 ラウドだけは頭を抱えてしまったが 確かに、 とディルは納得した。 動きの速さを自由にするだけなら クレーブの動きを止めた理由が解らない。 『こういうことだよ。ディル君。 時間を操作するのは スキルを持続させない限り無理だけど "ある程度"なら僕が"精神的"に時を操作させれば 動きを止めることも出来る事もないよ』 とディルの疑問を分かっていたかのように ガンプが説明する。 その一方で 『それなら なんとか解く事が出来るかもしれないな』 ガンプのある意味とても聞きやすい説明で クレーブは自信顔になった。 スキル性質を良く理解しているからである。 それは、クレーブがスキルを持っているからである。 精神的なスキルは高等な技ではあるのだが その分、能力者の手を離れると 効力が弱くなる傾向があるのだ。 それさえわかれば クレーブの動きはもとに戻る。 スキルの効力を解くのも また精神力に委ねられるからである。 『ま、そういう事だから 今度はあんまり時間をかけられないんだよ』 と言うとクレーブの方を向いた。 『行かさないぜ!』 今度はラウドがガンプに向って行くが ガンプは軽くラウドの動きをよけて グレープのほうに移動する。 しかし速く移動しようと思えば、 先ほどのように瞬間的に移動できるのに わざと見えるスピードで移動したのだ。 『ガンプめ!わざとだな!』 単純なラウドはガンプに向かっていった。 『ディル。その剣でガンプを攻撃して!』 向ってくるラウドを見てクレーブが叫んだ。 さらに ガンプがクレーブの間合いに近づいたその時 ガンプの後ろに一瞬にして回りこんだ。 クレーブは ガンプの"時"のスキルを解いていたのである。 完全に後ろを取られたガンプではあったが その表情はまだまだ余裕すら感じられる。 しかも別の角度からはラウドも近づいている。 ディルの魔剣は角度的にはちょうど クレーブを挟んでガンプに向う状態になっていた。 ディルはこのままだと、まずいと思ったが すでに魔剣は伸び始めている。 一方でクレーブは両腕をガンプの肩につけた。 『消滅!』 叫ぶとガンプの両腕が一気に破壊された。 これには流石のガンプもちょっと痛い顔をした。 『うぐっ』 破壊されたのを見たラウドは クレーブもスキル使いであったことに驚いた。 一方でディルの角度では 何か起こったぐらいしかわからなかった。 『クレーブ避けてくれ!』 このままでは クレーブに突き刺さってしまう魔剣の事を 知らせるために叫んだのだが、 クレーブは振り向くところか避けようともしない。 『まさか、またガンプに止められたのか?』 ディルはそう思って剣の動きを クレーブの手前をギリギリで止めた。 『なぜ私を刺さなかった!』 その瞬間クレーブがそう叫んだ。 その出来事の隙にガンプは時を戻す。 そのため腕の破壊がもとに戻り クレーブの破壊から逃れてしまった。 さらにクレーブのほうに振り返り ラウドが到着する寸前で クレーブに銃撃をあびせた。 『パァン』 その銃はクレーブの"シン"を突いた。 そしてクレーブは倒れる。 『ガ・・・ガンプ!お前!!』 ラウドはなにふり構わず ガンプの顔面目掛けて一撃を食らわせようとした。 が、ガンプは軽く避ける。 それどこか、ラウドの腕を軽くつかんだ。 『ま、焦らないことだよ。 言ったでしょう。 僕はルールを守らない人を 相手にしに来たんだよ』 『グ・・・その手をよけろ!』 ラウドの腕は時が止まった様に全く動かない。 事実に、ガンプはラウドの腕の動きを スキルで止めていた。 『それにまだ、クレーブは死んでいないしね』 『なに?』 見ると微かにクレーブが動いているのがわかった。 ガンプはラウドがクレーブを見るのを確認して その腕から手を離した。 『ラウド君。解ったらちょっとよけてくれないかな。 クレーブにとどめを刺さないといけないしね』 『なんだと!いい加減にしろよ!』 そんな興奮状態のラウドが うるさいと感じたガンプは逆にラウドを殴った。 不意に出てきた拳に ラウドは顔面まともに食らってしまった。 そして倒れる。 それを見てガンプは クレーブの服を持ち体を持ち上げる 『"仲間"の様にしてやろうか』 というと先ほどの男の死体のほうに投げた。 ディルはガンプらの動きを見ていた。 そして投げ飛ばされたクレーブを見て怒りに達した。 『お前はなぜルールを守れないと言う理由だけで人を殺す!』 ディルの目は鋭くなり ガンプに威圧をかけている。 が、ガンプは全く感じていないようである。 『それは違うよ、ディル君 それだけで充分な理由だと思わないかい? このイベントはお遊びじゃないんだよ』 それよりもディルを茶化すようにも思えるセリフである。 当然にこのセリフにディルは過剰な反応をする。 『ふざけるな! そんな理由で人を殺していいわけがないだろ!!』 だがディルの怒りを無視して ガンプはクレーブのほうに向って行った。 一方のグレープは 投げ飛ばされて少し意識を取り戻した。 そしてそこにいる殺された人物を横目で見て、 ガンプの言った仲間という意味が理解できた。 『そうか・・・』 納得した様子でガンプが手を出すまでもなく クレーブは息をひきとってしまった。 それをガンプはクレーブをのぞきこんで確認した。 『僕が手を出すまでもなかったね』 この言葉にディルは完全に怒りに達した。 『お前だけは絶対許せない! 俺の目の前で人を殺した!!』 冷静なほうだと思われていたディルは 完全にふっきれてそう叫ぶと ガンプに向っていく。 ガンプは何度も似た光景に 少しうんざりした表情をし 理解できないよといった感じで 両腕を使ってジェスチャーをした。 ディルの声でラウドも立ち上がる。 そして冷静さをやや欠けているディルと アイコンタクトをしてガンプに向っていく。 『そういえば・・・。 なんでディル君は魔剣を持っているんだい?』 と向ってくる二人にガンプが問い掛けるが 『お前に言う必要はない!』 また同じようにガンプに向って剣を振りかざす。 『魔城にあるべき剣なんだんだけどね』 というガンプの言葉も無視している。 だが ガンプが少しよそ見をしたおかけで また魔剣が肩に刺さる。 しかし今度はガンプが時を戻す間もなく ラウドの右腕がガンプのあごにヒットした。 ―さっきクレーブが刺せといったのは こういう意味があったんだな。 いくら時を戻すといっても それは結局対象は一つだけにしか効果がない。 だから、2箇所で少し時間をずらして攻撃すれば たとえ片方の時を戻しても、 もう片方でヒットする訳だ― と、ディルは考え納得した。 しかしあごにヒットさせたラウドは また、妙な気分だった。 『なんか軽かった』 と思ったその時 あごにヒットして少しぶっ飛んでいたはずの ガンプが消えた。 『なんでだ?』 疑問を持つラウドに対して やられたと言う表情のディル。 『・・・そうか』 『どう言うことだ。ディル?』 そして消えた様に見えたガンプは 始めにラウドらがいた所に移動していた。 『ナイス・コンビプレイと言いたいところだったけど まだまだ70点ってとこだね。 確かに僕のスキルは 一つの対象にしか効果はないから 二人の別々の攻撃には対応できないけど でもそれは、 "その場所"に僕がいるという条件ででしょ?』 つまりガンプはディルに攻撃を食らった時には 別の場所に移動していた。 しかしその動きは速すぎて ディルの目にはそこにまだガンプがいるように見える。 だが、そのままでは消えてしまうので 残像として残るように ガンプはラウドに攻撃を食らう前には 再びその位置に戻り ラウドの攻撃を食らったかのように見せたのだ。 そういう非常識な動きもガンプのスキルでは出来る。 ガンプは自分自身にスキルを使うことによって 自分そのものに時のスキルをかけた。 まずはディルの攻撃をよける 時を速くするスキル。 そしてよけた瞬間に元の位置に戻る 時を速くするスキル。 ちなみにこの時にラウドも攻撃している。 あとは、攻撃を食らったようにぶっ飛んだような残像を残した。 そこまでディルも理解はしていないが その場にいない相手を攻撃しても 意味が無いことは理解できた。 『なんだか良くわからんけど くらって無いんだな』 ラウドは その変な光景に頭をかかえた。 『そうだね。 くらったように残像を見せただけだよ』 とガンプが応えると 『ちくしょう。 あたったらお前なんか一撃なのに』 ラウドはその場で 地面を思いっきり右拳で叩きつけた。 「ドゴォォォ!!」 すると勢いよく地面がえぐれた。 しかし、その威力は普通ではない。 ラウドの2メートル近くはあるだろうか まわりの土が掘り起こされた。 『すごいぞ。ラウド』 それを見たディルが 一瞬呆然にそう言い放つ。 『ほう・・・』 ガンプは関心的にその威力を見届けた。 −波動・・・か?− 『ラウドもスキル使いだったのか?』 というディルの問いには 『い・・・いや、 今までこんなこと出来なかったぜ』 と使った本人が一番呆然としていた。 そんな、自分の突然的な力に呆然とするラウドに 『そうだね。 ラウド君はスキルを使いこなせる 素質はあるみたいだね。 でも、まだ使いこなせるまでにはなっていないね』 とガンプは解説する。 だがしかし、 『って言うかそんなことはどうでもいいんだよ とにかく俺は お前を許さない!』 『ああ。まだいけるぞラウド』 と、今のラウドのスキルを見て二人 は俄然やる気になった。 「PiPiPi」 だが、突然どこかららベルが鳴り響いた。 それはガンプの"携帯"であった。 『残念ながら時間の様だね ピスカの山で待ってるよ』 と言うと その場からガンプが去ろうとした。 『待てよ、そうはいくかよ なんだよ時間って』 ラウドは今度こその思いで ガンプを止めようとする。 『予選の"コマ潰し"の時間だよ。 それに今の君達じゃ僕に傷すらつけられないよ』 と、ガンプは冷静に言葉を返す。 ラウドは先程の突然の威力が 過去にギルバードに言われていた事だと 思い出していた。 だから急に納得していた。 そしてそれが自信となっていた。 『なんだと、やってやるって言ってるだろ!』 そう言った瞬間ガンプが消えた。 逃げられたと感じたその時 『な!』 ラウドのすぐ目の前にガンプが現われた。 また突然に現われたことにより 少しラウドはビビっていた。 それをガンプは分かっていた。 『今のが半分ぐらいの力かな? 見えてないでしょ? 次からはこの僕と戦ってもらうよ。 フフフ』 完全になめられたと思ったラウドは すぐさまガンプに殴りかかったが 当然の如くガンプは消えた。 『く、くそぅ』 というとまた地面を叩きつけたが 今度は地面がえぐれることは無かった。 『なんて非常識なスキルを持った男だ・・・』 ディルは半分絶望感に襲われたように呟いた。 先ほどは希望を持っていたのだが ディルは分かっていた。 スキルを使える素質があっても その効果を出すには スキル使いと呼ばれる能力者でないと かなりムラが出来ることを。 先程のように とてつもない破壊力のときもあれば 今のようになんもない時もある。 だからラウドがガンプの言うように 素質があるだけだとわかって そう感じたのである。 悔しがるラウドをよそに ディルは残された二人に近づき 森の中にある小さな広場で墓を作ろうとしていた。 ラウドとは別の悔しさを噛み締めながら。 ―ピスカの森編― 死亡者 ローズン・クレーブ 謎の覆面 |