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第35話 『復讐』
ノイズ国コール 未だにここをコール国と呼ぶ者も多い。 ミディを港町、ティープを商業町とすれば ここは工業町といえる。 現に 地域同士の移動に使われる スノーバイクことレッドフェアリーの生産地であり 通信機、精密機械等ノイズで使用される物の9割以上が ここで生産されている。 気持ちとしてはノイズ国と思いたくない者が多いが 商売では別で、特にティープが唯一の交通ルートでもあるため コール以外の地区でも多くのコール製品が存在する事になっている。 中心街であるコールディアでは ティープからコール産の製品を買いに来るお客で、いつも賑わっている。 しかもこの地域は完全なアーケード地区で 年中雪を知らない所でもある。 ログレスもそうであったが、 この地域全体が大きなロードヒーティング地域である。 言い換えるならコールディアは大きなドームの中にあるということである。 そこに2つの属団が滞在している。 一つはジョカー率いるピース部隊である。 ジョカーが乗っていた軍車はコールに入ると ある倉庫に保管された。 そこはクインが所有している倉庫であった。 車から降りたピース部隊は軍服から私服に着替え ここコールディアに滞在していた。 ジョカーはクインが確保していたホテルに滞在している。 そしてそこで以前からノイズにやって来ていたピース兵と合流する。 ミディでの行動を見れば ノイズはすぐにでも自分を捕まえに来る。 もしくは自分が各地で破壊行為をすると考えるだろう。 しかし、それはフェイクで 実は慎重に行動を行なうことにジョカーは徹底していた。 ノイズをどういう方法が一番苦しませる方法なのか 彼はそれを中心に考えていた。 彼が最初に考えたノイズ国壊滅作戦は 軍力で徹底的に破壊するだけだった。 しかし、ある縁でファラウェイズとのコンタクトをとる事に成功する。 そこでクインと出会ってからは、考えが変わっていく。 まず自分がノイズに行く前に 一定数のピース兵を隠れて入国させる。 その当時はそうするしか出来ない状況があった。 15年前の戦争で国を追われたジョカーは 自分自身は少年である事から観察保護という形で 政府警察に保護されていた。 しかし、親元であるバーディスはこの件で 政府の上役が極秘に進めていた「とある計画」の事を知られる形になり その事実を知られる前に バーディスは政府によって消滅に近い形となっていた。 その時はそんな事を知らなかったジョカーは 警察では「今後の復讐」のために大人しくしており その甲斐あってか20歳になる頃には表向きは自由の身となった。 開放されてからすぐに バーディスの生き残りと出会い 現在の状況を知ることになる。 そこで彼は色々アドバイスを受け まず名前を「ネルソン」に改名する。 さらにピースに入隊するようにも勧められる。 入隊してから知ることなのだが、 そこにもバーディスの関係者が隠れて在籍しており その者の力を借り ようやくピース兵を率いる隊長クラスにまで昇格する事になった。 そのため復讐までにはここまでの年月を要する事になった。 しかしながら 隊長クラスといえども勝手にピース兵を派遣は出来ない。 しかも仲間といえる兵隊数も限られている。 それでもその少ない人数でも復讐はできると思えるようになったのは ファラウェイズ、特にクインの存在が大きい。 何よりノイズに関わっている人物だけに彼の思うところは大きかった。 そこでクインからの助言を受け 少ない人数で大きなことを出来るように工作した。 人数か少ないから情報や、潜入者が必要でもあった。 彼が最初に想定した 破壊だけというのは少人数では意味がないことだった。 そうしてピース兵を入国させると 今度は自分自身が入国する準備をした。 というよりも、ノイズに行くことが出きるようになった為 ピース兵を先に入国させていた。 ノイズは冬期間氷で封鎖されることを想定し、 冬に入国することを決める。 この封鎖というのは、仮に政府あたりに復讐をする事がばれても ノイズ国以外の人が手を出せないのでかなり都合がよかった。 だが 先ほども言ったが、ジョカーが勝手にピース兵を率いることは出来ない。 しかし、ある人物のおかげでそれが可能となっていた。 そういった人物の力を借りているうちに ジョカー自身も慎重さを増す結果になった。 そしてノイズにはその冷静さを想像できないように 自分が破壊だけをするように印象付けさせた。 それがミディでの戦いである。 こうして、今はこのコールで別の情報を収集している。 というのも到着するや否や 潜入していたピース兵からある情報を得たからである。 それがもう一つの属団。グローバーである。 グローバーは北地区で活動をする盗賊団である。 以前、ラウド達がピスカ山で戦ったあのグローバーである。 以前戦ったガロン同様に、今度のグローバーも少数精鋭のようで リーダー格の大男?を中心にその周りに3人の取り巻きがあり その他に10人弱の、部下と思われるメンバーで構成されている。 彼らの目的はラウドと同じ七秘宝である。 実はこの頭もラウドと同様に七秘宝を捜し求めている。 ただそれが普通の冒険家でなく盗賊であるという事だけのことである。 そして彼らは 泊まるホテルにてなにやらもめているようである。 『申し訳ございませんが、私どものホテルでは 犯罪集団であるグローバー様のご宿泊はお断りしております』 受付の者が怯えた表情をしながら 丁寧にお断りをしている。 そこに取り巻きの3人が半分囲むように覗き込んでいる。 リーダー格の大男?がいるがこの3人も2m近くある大男である。 そのリーダー格が人間とは思えない2.5mぐらいの大きさで 更に横にも大きい。 それゆえにこの3人が普通に見えてしまう。 だが普通の人から見れば巨人に違いはないのである。 『お金は持ってるって言ってるだろ?』 ウェーブがかかった赤髪の男がまず詰め寄る。 『待て待て、俺らが犯罪者だから泊めてくれないって言ってんだよ。 って、ここの物盗むわけでもないのに、お断りとは"ツレネー"ホテルだな』 その男を金髪をなびかせた男が制止する。 そしてそれを何も言わず青い短髪の男が見ている。 その3人の様子を見るように少し離れて 部下とリーダー格の大男?が覗いている。 そして彼らもグローバーの例にもれずに 紺色のバンダナをしている。 『というより、こういうのは普通 ザコにやらせるんじゃないのかよ?』 赤髪の男はイライラした様子で 後ろにいる部下の方を睨む。 『ま、フレイちゃんは牛乳でも飲んで落ち着きなさ〜い』 イライラの赤髪を見て大男?がオネエ言葉で声をかけ そこにやってくる。 『リーダー』 赤髪の男は急に恐縮したように横を向く。 『で? 何か問題でもあったの〜ォ?』 その巨躯な体からは想像できないそのキャラクターに 受付の者は一瞬固まってしまった。 『あら。どうしちゃったの? もし泊めてくれないんだったら、本当に暴れちゃおうかしらねぇ?』 喋るのと同時に手を受付のカウンターに乗せると そこにあったボールペンを握った。 『このお店がこうなりたくなければ返事二つくれないかしらねぇ?』 そのボールペンがまるで雪が解けるようにドロドロに変化した。 それを見て受付の者は受付準備を恐々はじめた。 『リーダーすみません。 俺らでこんな程度の話は・・・』 準備をしているのを見て横に移動した赤髪の男は 大男?に平謝りをした。 『別にフレイちゃんが悪いわけじゃないんじゃな〜い。 とりあえず、この周辺の情報は手に入れたのかしら?』 それには今まで黙っていた青い短髪の男が口を開ける。 『ここコールディアから北西にある洞窟に例の物があるそうです』 『へぇ〜。 まぁ、ゆっくり頂くとしましょうか。 と・こ・ろ・で、受付のあなた 警察さんとかに連絡してもいいけど そうなったら、どうなるかは分かってるよねぇ?』 実は受付の者は受付準備をしながら 隙を見て警備関係に通報をしようとしていた。 それを大男?が見逃すことなく追求したのである。 その事により受付の者は受付準備を終え その後何もすることなくグローバーを部屋に案内させた。 数日後 ティープからコールに向かっていた ミーシュアとラッセル達が到着する。 コールディアからやや南に外れた自衛兵宿舎に ミーシュアたちが合流した。 『で、状況はどうなってるわけ?』 ヴィルの命令だと思い込んでいるミーシュアだったが それでも、面倒な場所への移動なだけにイライラ感は隠せない。 その彼女の事をラッセルの次に知っている人物が答えた。 『ピースと思われる人間はほとんど表向きには登場していない。 それよりは、ここにグローバーが滞在している方が厄介だ』 その人物もラッセル同様にミーシュアの幼馴染だが ある時期にコールに移住していた。 立場的にはミーシュアより下になるわけだが 年齢が上という理由だけで、ミーシュアにも強気な態度で接していた。 『グローバー? って、盗賊じゃん。 この国をどうこうするってわけじゃないんだから、ほって置けばいいよ。 それよりも、ピースの動きが分からないって、ホント役に立たない人だね。ゼェル』 『・・・。 こっちはこっちのやり方がある。 ミーシュアはピースを追えばいいし 俺らは、グローバーの動き"も"牽制するさ』 そうゼェルが言うと そこに集っていた自衛兵を解散させた。 その行動を喜ばしくない表情でミーシュアは見ていた。 『軍長。 一応、ゼェル軍長代理もピース関連を協力してくださると仰ってますよ』 その表情を見てラッセルがフォローをするが ミーシュアの機嫌は全く変わらない。 『・・・。 べっつにいいけどねぇ〜。 こっちも何も無いことを願って、さっさとティープに帰れればいいしね』 そう言うとその部屋のある椅子にどっかりと座り窓を覗いた。 それを見て見ぬふりなのか ゼェルは自衛兵を解散させた後 ミーシュアの方を見ることなくその部屋を出て行った。 『軍長・・・これでいいんですか? ここは今のノイズ国をあまり良く思っていない地域でもありますし 変に目立つ言動は・・・』 ラッセルが、この嫌な雰囲気を感じミーシュアに問い詰めるが 『ねぇ、あんた。 ゼェルの言ってる事100パー信じてるわけ? 私にピースの動きを言わないのは それをいう事でコールの人らに不利益があるからでしょ?』 『え?どういう意味ですか?』 『・・・推測だけどさァ。 ここにピースの親元がいるとしてだよ その親元が何かしらをこのコールの人達に吹き込んでるってこともありえるでしょ。 ただでさえ、ここは政府色が強い地域なんだしさ。 ゼェルとしても、私らに変な行動を起こして欲しくないって事だろうってことよ』 『・・・あくまで私達は この地域の人達を守るための行動だけに徹しろってことですか』 『それが自衛兵としての、今の仕事って事ね。 ホント嫌な仕事を引き受ける事になったわねぇ』 そう言ったミーシュアは立ち上がり その近くにあったベットに横になった。 場所は数日前のレスに戻る。 ノイズ国王の話を聞き終わった後 シェルは部屋を飛び出していったが その後すぐにヴィルに呼び止められる。 『心配するなよ。 俺一人でコールに乗り込むほど、馬鹿じゃないさ』 シェルはそう言ったが ヴィルはその言葉に返すことなく ただシェルを見ていた。 『な、なんだよ・・・。 何かあるなら言ってくれよ』 『いや・・・。 この問題は、私達ノイズの問題だ。 彼らを巻き込む形になったことを考えていた』 『確かにディルはこの国の出身だからいいとしても レナとかには全く関係ない事だしな。 ・・・ん? つまりこれ以上は コールにいると思われるジョカーの所に自衛兵を送らないってことか?』 『送れないというのが正直な所だ。 むしろジョカーは自衛兵をコールに送ることを望んでいる気がするしな』 『・・・?』 『人数を多くすればそれだけ大きな国民の争いになる。 それは絶対に避けないといけない。 少数でそしてかつピースをこの地から追い出す。 難しい事だが、それをゆっくりでもやって行かないといけない』 『この状況は厳しいって事だよなァ』 『ゆっくり出来ればええけどな』 その独特の口調で二人の背後からレビンが登場した。 そして彼には珍しく話を続ける。 『港の件はもうおそらくジョカーの耳には入ってるやろ。 この国に復讐を考えてる奴が このまま黙っているようには思えんけどな。 ・・・ 俺はこの国はどうなろうが知った事やないが それでもお前らには協力する意味はあるかもしれん。 ジョカーの狙いの一つにコールの塔もあるって話やからな』 『・・・君はレビン君といったか。 ジョカーのことはどこで?』 『言う必要あるのか? ここの国王とも話はさせてもろうたけどな』 『・・・そうですか。 それでも、無関係な方を巻き込むわけには』 『それはお前らの都合やろうが。 俺は塔に用があるだけや』 そう言うとそのまま城外の方に向かっていった。 ヴィルはまだ意見を言い足りないようだが シェルはレビンの言動を少し考えていた。 『兄貴・・・。 親父はジョカーはすぐにここには来ないって言ってたけどさ 本当にそうなのかな?』 『ああ。 少なくともコールにあるバレンシア・スター・タワーを破壊するまではな。 後はミーシュア達がそれをうまく阻止して 次の援軍が行くまで維持して欲しい』 『ん? さっきはもう兵は出さないって言ってなかったっけ?』 『2段構えという意味だ。 一度に大量の兵士を派遣して戦いを大きくするという事じゃなく 少しずつピースを追い出せるように兵を送るという事。 コール以外にピースがいないのを確認でき次第 少しずつコールに自衛兵を固める』 『・・・よく分からんけど 結果が一緒な気もするんだけどな。 ・・・ところで話を変えるけど 俺は"道案内"という形でコールに行くけどいいだろ?』 一瞬、道案何の意味側からなかったヴィルだったが 意味を理解した後は苦渋の表情に変わる。 『レビン君にも言ったことだが・・・』 ヴィルが話している間に声が挟まる 『七秘宝のついでに、その"ジョーカー"とかいう奴も退治してきてやるよ』 そこには一人やる気になっているラウドと 表情をほとんど変えないディルが登場した。 『・・・。 ラウド君にはミディの件で本当に感謝しているが これで仮にこの地で命を落とす事にでもなったら 私たちは責任を負いきれない』 『責任なんてそんなことじゃなくさ 俺は、七秘宝を見つけたいだけだし。 その途中に邪魔な奴がいれば それを乗り越えていかないといけないしさ。 ・・・ 何よりも、もうすでに関わってしまってるのに ここで退いたら男じゃないぜ』 一人やる気に燃えているラウドだが その前にディルが出る。 『戦わずに済ませる方法は難しいのかもしれないが 犠牲を出さないように戦うなら戦って欲しい。 俺はラウドのように戦いで協力は出来ないが、医術の提供ならできる。 それに俺も七秘宝を探しているには変わりないから。 あくまで俺たちは七秘宝を求める旅人って事です』 ディルの口から意外なセリフがでた事に そこにいた一同驚いたが それが、逆にヴィルを決断させる。 『・・・。 君たちの話はわかった。 こちらは全く関与できないが 君たちはコールでどのような事になっても文句はないという事だな。 ただ、一つだけ言わせてくれ。 決して無理はしないことだ。 シェルを含めてな』 そう言うとラウドとディルに握手をしたあと ひとり2階の自分の部屋に消えた。 その言動にシェルは そこにいないヴィルの方を向いて一礼をした。 『しかし ディルが、そんな事を言うなんて思いもしなかったぜ』 シェルはその空気を変えようとディルの話に戻した。 『・・・。 ヴィルさんは気づいていたようだけどな』 『ん?何を』 『俺の覚悟を受け取ってくれたという事だ』 そう言うとディルは再びレナのいる救護室に引き返した。 『"ディル先生"の話だと、最低でも1週間は出発出来ないって話だぜ。 シェルはそんなにここに待機できるのか?』 『ピースのターゲットのひとりだからな、俺は。 馬鹿みたいに前線で戦うってわけにも行かないし ディルたちに合わせる形でコールに入るさ』 『・・・一般人のふりをするって事か?』 『バレルとは思うけどね。 それでも自衛兵と共に行くよりは数倍いい。 ただ、ラウド達には迷惑をかけるけどな』 『俺は強い奴と戦えるなら、それもありだぜ』 『・・・そういうものじゃないけどな』 『まぁ、とにかくレナが回復しだいコールに行くぜ ・・・。 そういえばレビン見なかったか?』 『メガネの事か? ずいぶん先に城を出て行ったな。 レビンもレビンで塔に用事があるらしいし』 『ま、七秘宝のところで合流できるか』 自体は少しずつ緊迫しているはずだったが ラウドだけはそれをひとつの試練として捕らえていた。 だから、ひとりだけ楽しんでいた。 時間は数日後に戻る。 救護室にはディルとレナがいる。 『ディル・・・。私をおいて先に出発してもいいよ。 ラウドはあんなんだけど、シェルも本当は早く行きたいんだと思うし ディルだって、自分の生まれた所だし、落ち着かないでしょ?』 『・・・どちらにしても 一人置いていくのは得策じゃない。 どちらにしてもコールに行くんだったら 共に行動したほうがいい』 その言葉に一瞬レナは目を丸くした。 『ディル・・・。 フフ。 ようやくディルがボディガードらしくなってきた』 『ボディガード?』 『キースとの約束忘れたわけじゃないでしょ?』 『・・・。 今は俺以外にもいるけどな』 レナは冗談に笑って言っていたのだが ディルは対照的に真面目の表情であった。 それを見てレナが焦る 『フフ。 冗談だよ。ディルはすぐ本気にするからさァ。』 『・・・。 "今は"一人では無理だからな』 最後に意味深な言葉を残して一度部屋を出た。 しかし レナには最高の言葉だったようで、一人喜んでいた。 |