第36話 『バレンシア・スター・タワー』





一足先に城を出たレビンは
レスの城下町といえる場所でバス代わりに運行している
大型のレッドフェアリーに乗り込み
コールに行くためにティープに向かった。

商業の町であるティープで何日か滞在する事にした。
すぐにでもコールに行けばよかったのだが
ミーシュアらがコールに行った後
ガードシルの先導でコールへ行くのに許可制を取っていた事が一つある。
それとも一つは、コールについての情報がある。

いつものように酒場で情報を得ようとしたのだが
どうもコールの状況がうまく聞き出せなかった。
レビンがよそ者である事も要因であったが
それ以上の何かがあるように思えた。

そしてこの日
何を思ったか自衛兵宿舎に向かっている。


『何だお前は。ここは自衛兵宿舎だ』

宿舎前にいた自衛兵の一人が
ヤリのような武器を片手にレビンの方に向けて威嚇する。

『ここおる軍長に用がある』

『何者かわからない者を通すわけにはいかん』

『別に中に用はあらへん。
軍長を呼んでくれば分かる』

中に入る様子がないと分かったのか
渋々一人の自衛兵が軍長のガードシルを呼びに動いた。
その行動をあまりレビンは快く思っていない表情だった。


数分後
ガードシルがレビンを見てすぐ入り口に方にやってきた。

『お前は確か・・・シェルと一緒に
女の病気の関連で付いてきた男だったな。
どうかしたか?』

ガードシルの言葉を聞かずに
いきなり銃をガードシルの額に向けた。
周りにいた自衛兵が瞬発的に武器を構えて緊迫する。

『な・・・何のマネだ?』

『・・・。
俺が仮にピースの者やったらどないするんや』

『・・・!
お前ら武器をしまえ。
早くしろ』

何故かガードシルは武器を納めるように命令する。
そしてレビンの方を見てにやける

『まだまだガードが甘いって事だな。
気をつけて"ガードシル"(ガードする)よ』

『・・・。
まぁ、これはちょっとした遊びや。
で、話は
一つ頼みがあるんや』

『コールに行きたいのか?
シェルから連絡を受けてるしな。
許可したい所だが、一人で大丈夫か?』

『少なくとも、お前らにガードされるよりは安心や』

『こ、これは一本取られたな。
分かった。
許可書を出すから関所になってる所にある
"バイク"を使ってコールに向かってくれ』

『ずいぶんあっさり許可を出すんやな。
オレのことを疑いもせんのか?』

『シェルの知り合いだからな』

『・・・。
一つ忠告しとくわ。
お前らが身内やと思ってる奴も怪しいかもしれん。
そんなに簡単に信用はせんほうがええ』

『君は疑いすぎなだけだ』

そう言い、許可書を渡すと
笑いながら宿舎の中に帰っていった。
どうやらレビンとガードシルの考えかたは真逆のようである。

『お前らも大変な上司を持ったな』

半分同情するように最後に言い捨てた。


少し歩いて
ティープの関所に到着したレビンは
許可を得て一人乗りのレッドフェアリーに乗り込み
コールへと走り出した。




ジョカーらがコールに着いてもう1週間以上が経過していた。
未だにコールディアに滞在している。
それというのもグローバーが先に
バレンシア・スター・タワーに向かっていたからである。
彼らの目的はそこにある七秘宝であることはわかっていたが
その塔を破壊しようとしているジョカーにとっては
これ以上敵を増やすのは面倒だと考えていた。
しかし、一つの案をクインより提案され
そのためにコールディアを出ようとはしていなかった。

一方で、ティープからコールに来ると思われる
ノイズ関連の者を減らすため
コールの手前にある小さめの林に一定数のピース兵を配置していた。
そこの指揮を取る人物は
以前ジョカーとともに軍車に乗っていた巨躯の男だった。

レビンの乗っているレッドフェアリーと
自衛兵のレッドフェアリーはタイプが違うため
ピース達はあくまで自衛兵だけをターゲットにしているため
レビンをそのままコールに進ませる結果になった。


そうして何もなかったようにレビンはコールに到着する。

-ティープが商業地なら、ここは工業地やな-

雪のないコールディアを見て
そういう感想を持った。
その地で再びピースや塔の情報を得るために
数日滞在する事になる。




レナの手術が終わってから10日後
本来なら、まだ休んでいるべきだったが
レナの体力の回復が思った以上に早かった事もあり
本日コールに向けて出発することになった。

国王である、ノイズをはじめ
ヴィルや軍長代理であるノーウェルらが城の前に出迎えしていた。

『とりあえず一度コールディアに寄って
軍長のミーシュアに状況を聞いてから塔に向かった方がいい』

ヴィルがそうアドバイスすると
自衛兵専用のレッドフェアリーにシェル達は乗り込んだ。

『シェル・・・。
ジョカーと会ったら戦おうとするな。
お前も俺も手が早い方だが、まずは冷静に話し合うことを忘れるな』

ノイズが落ち着かない様子で運転手のシェルに話し掛けるが

『親父は国王らしくドンと構えていろよ。
俺だってもう大人の一員だぜ』

シェルは昨日、ひとつ年を取っており
16歳という年齢になっていた。
ノイズ国というかこの地域では16歳を成人として扱う風習がある。
そのためこういうセリフが出た。

ノイズは何も言えずただ頷くだけで
シェルはエンジンを始動させ、コールに向かって走り始めた。

ちなみに自衛兵専用のレッドフェアリーに乗っているシェル達には
通行許可は必要なくティープの関所もレッドフェアリーの存在でパスできた。
というよりは、シェルの存在だけで良かったのである。


『いよいよ七秘宝だな。
ピースとかがいなければ気楽にいけそうだけど
これぐらいの障害があったほうが宝探しにもいい』

一人拳をぶつけて気負いを入れるラウド。

『まだ病明けなんだから休んでおけよ』

ディルはレナの状態を気にする。

『うん。
今回は着いてから倒れることのないように、寝ておくね』

原因はレッドフェアリーではないのだが
そういう事にしてレナは睡眠をとる。

『俺の変装はいい感じか?』

シェルは一応シェルだとばれない様に
黄色の似合わないサングラスに
どこにでもありそうな私服に着替え
一般人オーラ―を出しているように見せかけた。

『その趣味の悪いメガネは辞めた方がいいよ』

寝る前にレナがそっと呟いた。

『え?えぇ?
これ趣味悪いっかな?
ちょっとした田舎者の兄ちゃん風に決めたつもりなんだけどなぁ』

『俺は服装とかに興味ないから分からんけど
逆にその趣味の悪さがいいんじゃないのか?』

ラウドが笑ってシェルをからかう。

『・・・ラウド。
お前だけこっから歩け』

冗談で減速をしてラウドを降ろそうとする素振りをシェルがした。
その様子を呆れ顔でディルが黙って見ていた。


シェル達を乗せたレッドフェアリーは
無事ティープに到着する。
関所をシェルの顔パスで通り
そのまま今日のうちにコールに向かおうとしたが
ディルがレナの様子を見て
今日はティープで一泊することを提案し
シェル達も賛同した。

彼らはティープで一日を終えることになる。




再び夜のコール。
コールディアで宿も見つけたレビンは
お決まりのように酒場で情報収集しに出かけて
とある情報筋の人物と合う事ができた。

『よそもんには話せん話か?』

『いや、そんなんじゃないさ。
俺も余所者だしな。
今、バレンシア・スター・タワーに行くのはやめておけ。
俺のつかんだ所だと
グローバーと共にノイズの関連の者を埋めるって話さ』

『グローバーも来とるんか?
それは厄介な話やな。
・・・で、"奴ら"は少ない犠牲で大きな利益を得たいてことか。
ネタとしてはオモロイな』

『オイオイ。
レジェンド訛り君
ネタといってくれるのかい?』

『この地域の者にとってピースはノイズよりも信用できる軍隊やで
変な噂は流さん方がええで』

レビンは何故かこの情報筋の話に乗ってこなかった。
それよりも馬鹿にしている素振りを見せていた。
だが、それはレビンの作戦である。

『せっかく面白い情報だと思ったんだけど
お前のような奴とは話せないな。
向こう行ってくれよ』

『待てや。
信じとらんわけやない。
俺もちょっとこの国に絡んだ経緯があるんでな
その話は分かる気もせんでないんや』

『だったら、何でそんな言い方になる?』

『ここに"ソレ"の息が被った奴がおるって事や。
俺の部屋に来へんか?
そこでならゆっくり話せるで』

『・・・。
成る程な。それは俺が悪かった。
もう少しお互いに詰めた話をしようじゃないか?』


酒場を出た二人は
レビンの宿泊場に移動した。

レビンは先に彼を部屋に入れると
ゆっくりと部屋のドアを閉めた。

『一人で泊まるにはもったいないぐらい広いな』

部屋の広さを確かめるようにあたりを歩き
レビンの後ろ向きになった。
その瞬間にレビンが彼の後頭部に銃を当てる。
それはティープでガードシルにしたことと同じである。

『な・・・何のつもりだよ』

『変な動きをしたら撃つで』

『待て・・・何か勘違いしてないか?
それにこんな所で銃音をさせたら、お前・・・』

『後の事を心配するなや。
それより、お前もよそもん言うたよな?
・・・
ずいぶん詳しい情報を持っとるのは
怪しいのや』

『・・・。
まさか、俺がピース関連の者と思ってるのか?
お前、この国の関係者か?』

『ちゃう。
ピースなどどうでもええ。
俺とお前は同じ雰囲気があるんや。
それがまず怪しいんや』

『・・・。
どうやら話さないと殺すようだな。
銃をおろせ。まずそれからだ』

『俺はこの国に来てから、ピースとは別の情報を得取るんや。
噂程度しか聞いたことのない属団の事や』

『・・・。
確かに、俺の親元はその属団だ。
だが、俺はフリーという条件で情報屋を受け持ってる』

『それだけか?
オレのことを初めから見つけておった節もあるんやけどな』

『・・・。
君も情報屋か?
同業者なら話せない事もあることぐらい分かっておいた方がいい』

『口を割ったら殺されるって事か?
それなら黙秘するのもいいやろ。
オレに先にやられるか、後かの違いやからな』

『・・・。
確かに、お前のことを監視しておけって言う命令を受けている。
だけど、それはお前を殺すとかそういうのじゃない。
お前を審査しているだけだ。
・・・。
これで満足か?レオナル・レビン君』

『・・・。
審査・・・やと?
どこまで本気で言っとるかわからんが
俺の敵というわけや無いようだな。
だが、先に言っとくで。
俺は一人や。誰とも手を組む気はない』

『ここの王子達とも全く関係はないと?』

『・・・そこから・・・いや
もしかするとピスカから付けとったのか?
どちらにしろ
ここで関わってる奴らがどうなろうが、俺には関係ないわ』

『・・・なるほど。
まぁ、そういう事を報告しておくよ。
いずれまた会うことになるだろうけど
その時まで死ぬんじゃないぞ』

『・・・勝手な忠告"ありがとう"な』

レビンはそう言うと銃をおろした。
情報屋の男はすぐ振り返ると

『俺の名はテラ。
ダラスを拠点とした情報屋だ。
ごくたまに、こういう仕事もしているがな。
それにしても久々にスリルのある仕事になったぜ』

というと一枚の名刺のような紙を渡す。

『そこの店が俺のアジトだ。
今回は顔見せ価格で無料だが
次回からの情報は金が必要だ。』

『・・・。
俺の情報を掴んでるって事は
ダヴィンの事も掴んでるって事やな?』

『・・・。
ある程度はな。ただ無料ってわけにはいかんぞ』

『情報の内容次第や』

『これぐらいは知ってると思うから先に話しておくが
お前の父親のダヴィンは"トゥーリティー"の幹部の一人だ。
そしてお前の予想通り、ロジャー"ズ"を追っている』

『それ以上の情報を持っとるって事やな』

『一度俺の情報を買ってみてから
今後を考えてもらってもいい。
今回は100でいいぞ』

『そんな額という事は
たいしたものじゃないって事か?
まぁええわ』

そう言うと
持っていた100万ダイアの小切手を渡す。

『・・・。
確かに受け取ったよ。
で、重要な情報だが
ロジャーズの一人のガンプが今年の夏にダラスで行なわれる
"スキルアテネス"に出場するため来るらしい。
その情報をダヴィンも知っているはずだ。
それにこのイベントはトゥーリティーが暗躍しているイベントとしても有名だ』

『スキルアテネスか・・・。
ガンプはええとして、ホンマに来るのか?』

『8割方だろうな』

『・・・。
ま、色々試してこちらもすまんかったな。
ダラスに行ったときにはまた世話になるで。テラ』

『ま、お互い生きてこの国を出よう。
話はそれからになるな』

『・・・。
あとは、テラに俺を追跡するように依頼した
親者の正体だけやな』

『残念だが、それだけはいくら金を詰まれても教えられん。
じゃあな』

そういうとテラはその部屋をゆっくりと出て行った。


こうしてレビンは
このテラからピース関連以上のの話を得ることに成功した。

そしてこの日も暮れていく。




次の日のティープ。
シェル達は今日こそコールに向かって出発した。

『ここからは何が起こるか分からない。
気を引き締めていこう』

シェルが3人にそう言うと
レッドフェアリーはコールに向けて走り出した。


その時間と同じ頃
コールディアのとある所に待機しているジョカーのもとに
一匹の耳が鳥の羽のように進化した緑色をした鳥の様な生物がやってきた。
そして以前と同じく片言の言葉を話す。

『タイヘン。タイヘン
港でダイヴァとハーツ、ヤラレタ』

それを聞いてジョカーの表情が一気に凍り
噛んでいた風船ガムも途中で割れる。

『以前スピードから連絡を受けていたが
本当にノイズの奴らにやられたとはな。
この塔を潰したら、次はノイズらの全てを潰してやるよ・・・。
俺の正義でな』


そこにはミディの戦いの後
ジョカーに合流していたスピードもいた。
まさかあの状況でダイヴァとハーツが負けると思っていなかったらしく
衝撃を受けていた。
しかし
ジョカーはある程度想定していた。
この日数になっても彼らが港からやって来ないことは
港で負けたことを意味していると感じていたからである

当初の作戦は港を制覇したあと
バレンシア・スター・タワーでスピード達とは合流することになっていたのである。
ただ、ジョカー側の予定もずれて
最終的にはこのコールディアで合流する予定になった。
だがそれが見事にはずされたことで
ややジョカーに焦りの色がでてきた。

『予定より早いが
バレンシア・スター・タワーをぶっ潰すぞ』







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