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第34話 『ノイズ国と4つの町』
異父兄弟。 表向きはこの事実を気にしていない様子のシェルだったが 本当は悩んでいた。 『この話を今することが、正しいとは思っていない。 だが、何故こういう事態になったのかシェルにも分かっていて欲しい』 ヴィルの言葉にシェルは軽く頭を縦に振った。 『さっきの親父が元HKだったとか言う話なんだけどさ』 『ああ。 それについては一度家に帰ってから、本人に話してもらう。 今概要を話したのは、家に帰ってから真実を言うと 困惑しかねないと思ったからだ』 つまり、気持ちの整理する時間を与えてくれた。 そうシェルは解釈した。 そしてヴィルに従うように宿舎に戻っていった。 『ライトはミディの復興に力を注いでくれ。 ガードシルは私達と共に城に来てくれ。 一応だが、一度ティープに立ち寄り 場合によってはガードシルはそこで待機してもらう。 二人ともまだ怪我が酷いとは思うが この地に住む者のために使命を全うしてくれ』 宿舎にライトたちを集めるとヴィルは指令を出した。 本来ヴィルは護衛兵の指令を出す立場ではないのだが 非常事態の場合にはヴィルも指揮をとることが多い。 『ヴィル様。 再びこのミディが襲われる心配は無いでしょうか? 今の私では指揮は取れても戦うのは・・・』 『ノイズに入り込んだと思われるピースが またここにくることは考えにくい。 可能性は残りのティープ、コール、レスの町だろう。 それにライトがほとんどの軍車をここで押さえつけてくれたから まだこの状況が完全に収まるとは思えないが 被害は最小限に抑える事はできるだろう』 そうしてヴィル達はディルが乗ってきた 小型のレッドフェアリーに乗り込んだ。 宿舎に戻ってきてから シェルの様子が少しおかしいとディルは分かっていたが ここで何か話すわけでもなく共に乗り込んだ。 意外にも最後にラウドが乗り込んだ。 ラウドとしては早く七秘宝のある場所へ移動したいのだが この状況でなんともいえない気持ちになっていた。 ノイズ国は4つの町で構成されている。 以前にも説明したように 独立する前はそれぞれが国としての機能をもっていた。 港町のミディ 首都になったレス その間にある商業地ティープ この三地方はティープを通じて お互いに行き来しやすい場所にある。 そして外れにある町が工業地になっているコールである。 コールは山岳地帯にあり、 唯一ティープから行くことのできる町である。 行けるといっているが 道がない場所を歩けばレスからもミディからも行くことは可能だ。 そして舞台は 商業地ティープに移る。 そこにいる自衛兵が待機している宿舎がある。 監視塔とも言われており 名前の通りにその町一番の高さを誇る塔が備わっていた。 その塔のてっぺんで1人の人物が寝転んでいた。 てっぺん、つまり屋根上であり そこに行くには窓からよじ登っていくしかない。 そのてっぺんのすぐ下にある窓から 1人の自衛兵がその人物に声をかけている。 『軍長!指令がおりてますよ! 早くそこから降りてきてください!』 声をかけた人物はティープ自衛兵軍長補佐のラッセルである。 そして軍長と呼ばれた屋根の上の人物は 以前さわりだけで紹介した、ミーシュアである。 『え〜? 誰が呼んでるの?』 声のトーンはいたって通常なのだが かなりなげやりな態度である。 『レスの軍長代理キールからです』 『キール? 誰それ?』 『誰って・・・。 軍長いいですか? 直ちにコールへ移動してくれとの事です』 『コール? ねぇ、今コールって言ったよね?』 そう言うと ミーシュアは突然窓の方に顔を下ろしてきた。 それに一瞬ラッセルが驚く。 『うわっ! ビックリさせないでくださいよ。 というかどうやってそんな状態になってるんですか?』 と言いつつよく見てみると 上のサンを両腕で掴み屋根と平行に体を寝かせて 顔だけを窓に登場させていた。 『で、コールに行けって言うんでしょ? そのカールって言う人が』 『い、いえ。 キール軍長代理ですよ。 って、私のほうが混乱してきましたよ。 と、とにかく レス軍長代理キールからコールに行けって入る命令が出てます』 『ま〜どっちでもいいんだけど。 でも、それだけはお断りよ。 あんな機械ばっかりのド田舎なんかに な〜んで私が行かないといけないの?』 -この人は・・・- ラッセルはミーシュアの幼馴染でもある。 役的に軍長補佐というクラスではあるが これはミーシュアの性格を理解しているラッセルの適役で ラッセル自身の戦力等の力は並の自衛兵以下である。 しかし ミーシュアの性格意外がずば抜けて優秀なため その性格を補修する意味でセットのように補佐をしていた。 ちなみに 幼馴染であるにも関わらずラッセルが敬語なのは その方が"スムーズ"に会話になるからである。 『あと、追加ですけど このキール軍長代理の命令の元はヴィル様からですけど それでも命令違反するんですね?』 『え?』 それを聞いてミーシュアはサンを掴んでいた手を交差して 体を窓の中に入れてきた。 そして窓の側にいたラッセルは また驚いてしりもちをついた。 『何でヴィル様が命令を出してるの? あの駄洒落オヤジじゃなくて? それなら当然行かせてもらいますよ。 ・・・で。 ところでその話ウソじゃないわよね? ウソだったらどうなるか分かっていて話してるのよね?』 ヴィルの話をすると表情が緩み 駄洒落オヤジことガードシルのときは無表情 そしてラッセルへの確認の時は笑っていはいるが 声のトーンはそれは地の果てから出てくるような雰囲気であった。 ラッセルが聞いた命令はキールからであった。 ヴィルからという下りは全くのウソである。 ミーシュアがヴィルに惚れている事を利用したのであるが 以前にもこの手を使って、あとで半殺しに近い状態になったことがある。 それだけに、今回は"殉職"覚悟での大決意であった。 ちなみに、これは後にラッセルが知る事になるのだが キールが出した命令の主は本当にヴィルであった。 ヴィル達は現在ティープに向かっていて そこで一度ガードシルに護衛を任せ 警備が3つの町よりも弱めのコールにミーシュアを向かわせる。 このティープにはスキル使いクラスの強さを持つ者がミーシュアしかいないため 自衛兵の数はレスよりも多く配置されていた。 そこでガードシルがそこを守る事で レスとミディに人員を移動させることをヴィルは考え付いた。 それだけガードシルの役割は大きいのである。 とりあえずミーシュアとラッセルとあと少しの自衛兵が レッドフェアリーに乗り込んでコールに向かっていった。 ミーシュア達と入れ替わるように ヴィル達がティープに到着した。 宿舎にレッドフェアリーを停めると 待ち構えていたように自衛兵が整列しヴィル達を迎えた。 降りてきたヴィル達に向かって 一人の自衛兵が前に出て敬礼をした。 ちなみに この出来事に関連がないラウドとディルは レッドフェアリーに乗ったままである。 『ヴィル様。シェル様。自衛軍総長ガードシル。 ご無事で何よりです。 お待ちしておりました。 私はティープ自衛兵護衛総長ノーウェルです。 なお、すでに軍長ミーシュアはコールに向かいました』 『そうか。ノーウェル一同ご苦労だ。 ミディの方は自衛兵に犠牲者が出てしまったが 何とか住民には被害を与えずにすんだ。 しかし、これで全てが終わったわけではない。 ティープにピース兵が来る可能性は0ではない。 普段以上に護衛に力を注いでくれ。 尚この事態により護衛配置が変更になる。 詳しくはガードシルから説明を行なう』 ヴィルが神妙な面持ちで話を終え その後ガードシルより護衛配置についての話になった。 そしてガードシルと入れ替わるように ノーウェルがレスに行くことになった。 『ここの兵隊はずいぶんたくさんいるな』 レッドフェアリーでやり取りを見ていたラウドは ディルにノイズ国のことを聞いていた。 『地域性というのもあるな。 ここティープやミディはここ数年で町同士の関係が強くなっているが コールについてはいまだ独立性が強いとも言われてる。 俺がいなくなって2年経ってるから変わったかもしれないが』 『ふーん。 でさ、さっき言ってたけどシェルの様子が変だってどういうことだ?』 『オレの思い過ごしかもしれないが 俺も含めてこういう形での争いは初めての経験なはずだ。 兵器やスキルで人が簡単に命を失っていく状況もな。 シェルは年齢の割には大人くさい雰囲気を持っているが まだ子供だからな。 ショックも大きいんだと思う』 そう言ったディルも 実はショックを隠しきれていない様子ではあった。 ラウドもそのショックの感情は分かることは分かるのだが そこまで落ち込む気分にはらなかった。 そうこうしているうちに3人が戻ってきた。 3人のうち、ガードシルとノーウェルが入れ替わった形である。 そうしてレスに向かって走り出した。 一方 コールの町には一台のレッドフェアリーが到着していた。 国王ノイズらの偽造殺人をした クインとクロバのファラウェイ"ズ"である。 ここコールは、クインが塔の関係で拠点をおいていることもあり ノイズ国の管理というよりは 未だにファラウェイ"ズ"の管理に近いものがあった。 よって、"いいよう"に偽造するのも分けなかった。 二人はクインの仮家に入っていた。 『さて、私は塔の建設に戻るけどクロバはどうするの?』 『ジョカーさんが始末を終えるまで ここでのんびりさせてもらうさ』 そう言うとそこにある来客用のソファに横になる。 それを見てクインは表情を変えることなく後ろに振り返った。 『クロバは、今回の件についてどこまでご存知なのかしら?』 そこを出て行くのかと思いきや 突然クロバに問いかけをはじめた。 『・・・。 オレは、ジョカーさんとは直接関係ない。 ある人からの話が縁で お前と"仮面"結婚までした。 そしてその人から 今回ジョカーさんがこの地に復讐にやってくる事を聞かされた。 オレにとって、ジョカーさんの復讐などどうでもいいことだ。 ノイズがいなくなれば政治に興味のないお前に変わって 俺がこの地を仕切ることが出来る。 それだけのために協力するだけだ』 『ある人?』 『ふ。 さすがにお前さんにもそれは言えないな。 わざわざノイズにも分かるように お前さんにジョカーさんがここに来る事をチクってやっただけでも感謝しろよ』 『ええ。そういう事にするわ』 その言い回しが気に入らなかったのか クロバは起き上がると逆に問う 『お前さんがファラウェイズに拘らずあの塔に拘るのは ノイズと話していたあの会話の関係か?』 クインはすぐには答えようとせず 奥にあるキッチンの方に歩いていく。 『何か飲みます? 紅茶しか置いてませんが』 『ふ。 そういう事と捕らえていいんだな。 オレがノイズとクインを殺した犯人に仕立ててまで ファラウェイズと縁を切りたいんだな』 クインの返事には答えず再び横になった。 そのクインは紅茶の入った2つのコーヒーカップを ソファの横にある机に置いた。 『クロバが何故この偽造殺人に賛成してくれたのかは ここでは問わないわ。 別に私はファラウェイズであることが足枷になってるわけはないのですよ。 国王が殺害されたとわかれば あの状況ではかなり混乱を起こすのは必死。 偶然にもヴィル君が城を抜けてくれたことも大きかったわね』 それを聞いたクロバは再び起き上がり 『ああ。すまんな』 紅茶を口にすると続ける 『お前さんの作戦を聞くまでは誰も賛成しないだろ。 明らかにオレが犯人になってしまうんだからな。 だが オレは政権さえ取り戻せば、周りから何を言われようと関係ないのさ』 『私には理解できない事ね。 でも、おかげで こう言っては失礼だけど あなたが犯人だと疑われれば疑われるほど この作戦は有利に働くわ』 クロバはまた紅茶を口にしたあと 苦笑いをした。 『お前さんの作戦は オレがファラウェイズとして政権を取り戻したがっているのは周知の事実 という事を利用するものだよな。 その事実をジョカーさんが利用したことにして、 俺が犯人かのように仕立てるように偽造殺人を起こす。 わざわざオレのニセの死体を作る事で、さらに疑いは深まる。 だが、実際の俺はピース兵に捕まっているわけだ。 結局 "全ての真実"はジョカーさんの恨み返しで、それでノイズがいなくなれば 最終的にオレの疑いも晴れて、政権復帰というわけか。 しかし、このことをジョカーさんは知らないんだよな。 どうやってつじづまをあわせるつもりなんだ?』 クインも一口紅茶を飲んだあと うっすらと笑う。 『私が、逆転の塔を建設している事は知っていますよね。 ジョカーは七秘宝を得るのと同時に、その塔も消そうするわ。 この逆転の塔はノイズ国建設のシンボル的なものになりつつあるからね。 おそらくジョカーはそれを気に食わないと思うわ。 ・・・ つまりジョカーも消すのよ。 いいえ。この国の者たちに消してもらうのよ』 『相打ちって事か?そう、うまくいくのか? ジョカーさんはそれなりに力のあるスキル使いなんだろ?』 『その点は心配ないわ。 目星をつけている人がいるんですよ・・・ それに、今コールにはあの属団も偶然滞在しているようですし』 『ほぉ・・・。 お前さんが味方で良かったよ。 全く別の地域からやってきた現在の国王共。 その国王に裏切られた復讐の男。 そしてその裏切りの間に犠牲になった1つの一族。 最後に笑うはその一族って事さ』 紅茶を飲み干したクロバは、そう言うとまた横になった。 それを見てクインは、またうっすらと笑った。 『そういう事で、私は塔を完成させに行ってきます。 のんびりとノイズの終焉をご覧ください』 そうして クインは再び逆転の塔の建設に向かった。 ヴィル達は数時間後、レスに到着した。 そのまま城に到着する。 そこに軍長代理のキールとテルが駆けつける。 『キール、テルご苦労だ。 今後はノーウェルの指示に従ってくれ。 国王は大丈夫なのか?』 ヴィルは降りると同時に指示を出す。 『現在は寝室でお休みになっております。 しかし、よくご無事で戻られました』 テルがそう言うと改めて二人が敬礼をする。 そこでノーウェルとも別れて シェルとディルとラウドと共に城に入っていった。 『お、レビン。 という事はここにレナもいるのか?』 城に入ると広間にレビンが待っていた。 それをラウドが見つけて今の言葉になった。 『レナは奥の救護室で寝とるわ。 そっちは問題なく終わったようやな』 それを聞いてディルはすぐその部屋に向かった。 それを見てなのかヴィルも2階に向かう。 その後を追うようにシェルも続いた。 ラウドはそれを見届けると返事を返す。 『まだピースはいるらしいけどな。 とりあえず港にいたピースは倒したぜ』 『ま、この国が大変になるのはこれからやろな』 『ん? どういう意味だ?』 『ラウドは七秘宝を探し取るんやろ? だったらあまり関係ないことや』 『ふ〜ん。 俺としては早く七秘宝のある塔に行きたいんだけどさ。 レナも助かったようだし、とりあえず俺も休むぜ』 そう言うと遅れてディルが向かった救護室に進んだ。 仕方ないようにレビンもその後についていった。 先に救護室に行ったディルは 部屋の奥のベッドで寝ているレナの所に進む。 『レナは"助けられた"・・・。 だが、俺にはまだまだ救えない人が多い』 近くにあった椅子に腰をかけ 下を向き呟いた。 『考えすぎだよ』 突然の声にディルは顔をあげる。 『起きてたのか?』 『今さっきね』 『・・・。 どこか痛い所とかないか?』 『大丈夫だよ。 それに ありがとう』 ディルにとって、このありがとうが一番心に響いた。 というより心を重くした。 『ん? さっきの救えなかった人のことを考えてるの?』 『あ・・・あぁ。 とりあえずゆっくり休んどけ。 すぐには動けないからな』 レナに気持ちを突っ込まれた事で そう言い残すと部屋から出ようとした。 『待って。 今度は私の番だよ』 その言葉でディルはレナの方を振り返った。 何の事だ? そういった表情である。 『私は助けられてばっかりだしね。 私も、生命石探すの手伝うよ。 ・・・。 一度"ホーム"に帰ってからだけどね』 レナの言ったホームとは レナは元々、南地区にある義賊「キャッツ」の一員であり 表向きの行き先はそのアジトに戻る事だった。 そのアジトのことを指している。 『・・・。 オレのことは・・・』 そう言ってディルは言葉を止めた。 彼にはレナを救っても 未だにクレセアを失わせてしまった後悔の念がある。 生命石を求めているのも ありえないと分かっていながらも クレセアに会えると思っているからであり レナがいる事は 彼にとってはクレセアでないクレセアが側にいる事であった。 しかし、その思いと同時に クレセアでないクレセアの事を大事にしていかないという気持ちもあり 一緒に手伝ってくれる気持ちを否定する事もできない感情もあった。 『あ、ゴメン。 ディルのこと何も考えてなかった。 足手まといになりそうだったら、断っていいよ』 『いや そういうことじゃないんだ。 足手まといとかそういう意味じゃない』 『あっ、そうか・・・。 ゴメン。何勘違いしてたんだろ。 今の話はナシでいいよ』 少しの沈黙の後 レナはバツが悪そうにそう言った。 彼女が思ったことは ディルが自分とあまり行動したくないのでは? そういう事であった。 彼女としては自分の命を助けてくれた恩人になったディルであり その彼が自分の姉を求めて生命石を探そうとしている。 それを手伝いたいと思うのは当然の気持ちだった。 それともう1つ。 このまま離れてはいけないという気持ちもあった。 彼女は面食いで色男には弱いのではあるが そういう感情ではない、助けたいという気持ちがあった。 その後、黙ってしまった二人の所に ラウドとレビンがやってきた。 『・・・?おお! レナ起きてるのか? 生きてたんだな〜』 そのラウドの言葉でその場が少し和んだ。 『生きてた・・・って 勝手に殺さないでよ! 私を手術したお方に失礼だよ』 先ほどの空気を打ち消すように レナが笑って言葉を返した。 ディルはその言葉で一瞬顔を曇らせかけたが すぐにレナに同調した。 『さて、あとは七秘宝だけだけどよ ディル達も来るのか?』 今度はレナの顔が一瞬曇った。 しかし 『私も行きたいけど・・・ これじゃしばらく動けないしなぁ・・・』 『なんだよ。 レナも行くのか? ならちょっとしばらくここに滞在しないといけないよな・・・』 ラウドはレナが秘宝に興味があると以前言っていたことを思い出しのだが それでも七秘宝を見つけに行くことは意外だったようで それと同時にディルの方を向いた。 『どちらにしても、この国からはすぐには出れない。 港が復港するのは3月あたりだからな』 『そういえば、海が凍るんだったっけ? まぁそれなら時間もあるし、レナが元気になるまで待とうか』 そう言ったラウドは そこにあった椅子にドカッと座る。 ところが様子の違う男が一人いた。 『この国には現在ピースがいるんや。 おとなしくできる余裕があればいいけどな』 レビンはそう言うと先に部屋を出ようとする。 『レビンも七秘宝のところに行くの? というか私達と一緒に行くって事?』 レナにはレビンがここまで一緒にいる事が不思議であった。 当然ラウドとディルは理由が違えどわかっている。 それには"意外"にも振り返らずに返事を返した。 『そやな。 七秘宝のある塔に用があるといっておくわ』 そう言うとそのまま救護室を出て行った。 レビンの言動は 今までの彼の行動からは考えられない事だった。 しかし、レナの事や、ディルのことを知った今は 少しではあるが心を開きつつあった。 『なんか、レビン変わった?』 レナが不思議そうにそう呟いた。 一方 二階の王室に向かったヴィルとシェルは 部屋をノックすることなくそのまま入る。 『国王』 『親父!』 そう叫ぶように二人は部屋に入ったが そこで二人は唖然とした。 『なんだ?そんなに慌てて まさか本当に俺が死んだとでも思ったのか?』 そこにはややダラケた服装の ベッドに横たわってのんびりしているノイズの姿があった。 『親父!』 シェルがあまりのそのノイズのダラケ具合に 拳を向けようとするが 『国王! この際だから言わせてもらいますが! 今この国には! あなたの命を狙ってると思われるピース兵が侵入しているんですよ! それに他の自衛兵たちも、命を賭して! この国を守ろうとしている! あなたが今している行動は! 彼らに対する侮辱そのものだ!』 普段は冷静なヴィルがもの凄い剣幕で ノイズに向かって怒り出した。 シェルは今度はヴィルを見て唖然としてしまった。 一方の問題の本人だが 驚く様子もなく悪気の様子もない。 ただ広げた右手をヴィルの方に向けて その場に留まるような仕草を見せた。 『侮辱か・・・。 ヴィル。 お前のいう事は正しいよ。 ・・・。 分かってくれとは言えないが オレは国のトップに立つ器じゃないんだよ。 ・・・。 情けないけどな。 オレには、これ以上この場で黙っている事はできん。 ・・・。 なぁ、ヴィル。 この向けることのできない拳はどこにぶつければいいんだ?』 今度はきちんと起き上がると 最後は下を向いた。 その言動でヴィルは再び冷静に戻った。 というより半分諦めた表情になる。 『シェルに昔の話をしました。 ただ・・・』 『もう一人のノイズの話だろ。 この際だ。ヴィルも知らないこの国の事実を話しておく』 ノイズはわかっていたようにヴィルの言葉を返した。 そして続ける。 『この国がノイズと呼ばれるようになって15年。 それ以前は4つの国に分かれていた。 それが、レス、ミディ、ティープそしてコールだ。 オレはミディに20年ほど前にHKとして派遣された。 ヴィルから聞いていると思うが この国がは4つの国だった頃は世界政府の支配下にあった。 その4つの国を連合国としてまとめていたのが ファラウェイズ。そしてそれを事実上操っていたバーディスだ。 この当時のHKは現在のシステムとは多少異なるが 政府が委託して支配下に派遣しているのは今も変わらない。 人によってはHKそのものが職だと考えるものもいるが オレは元々南地区で別の仕事をしていた。 HKはあくまで臨時の職だと考えていた。 それでも全く道の地域に行くことに決めたのは 俺自身が北地区に興味があったからだ。 余計な話を混ぜたが HKとしてミディにやってきた。 その時の上司が今ここに来ていると思う バーディスの者だ。 ジョカーといって、その当時10歳にも満たない少年だった。 そんなガキにオレは従っていたわけだが ジョカーにとってはそれが当たり前の事だったんだろうな。 自分は偉い親元の者で、俺らはその使い捨てのコマ。 当時の俺はそんなことを考えた事もなかったが 言ってみれば金のためにHKの仕事を行なっていた。 仕事っていうのは、主に未開発地域の開発。 表向きは北地区って言うのは発展途上という事にされているからな。 そこを俺らHKが行って、発展国にしようというのが名目だ。 だが。 事実は違った。 この国には七秘宝がある。 他にもログスがいたり、コールの製造技術は 南地区でも通じるほど独特の技術を持っていた。 政府は結局その技術や物を全て支配したかった。 それが15年前までは普通だったらしい。 ただその開発や支配と別に今となれば概要は分からんが 極秘である実験を行なっていた。 スキル使いによる人体実験だ。 その実験になる人はこの地域に住む者だ。 なぜ、そんなことをするかは知らないが ジョカーらはそれが当たり前だと主張した。 それに俺らHKのほとんどが反抗し その人体実験が行なわれている事実をこの4つの国に広めた。 それによってこの4つの国と俺らHKが ジョカーらを追い出す小さな戦争がおこった。 その時のリーダーになったのが俺ともう1人のノイズ。 スクイド・ノイズという男だ。 スクイドは俺と同等の力を持ち、なおかつ頭も切れた。 スクイドのおかげでその戦争は俺らHKが勝利した。 そしてその戦争の事実は南地区や政府にも広まり 結果的にこの地は政府が関与せず 「1つの国」として独立する事を認められた。 国と言ってもよ 今まであった4つの国とは北地区で決めた決め事で 世界政府としては国として認めていなかったんだ。 それを認める決断を示した。 オレはそういう政治事には疎かったから その当時はそんなに実感がなかったが この北地区に住む4つの地域の人達からすればおかしな話なんだよな。 で、なぜか流れで俺が国王として決められたんだよ。 4つの国の国王クラスの者は何故か 「自分らが4つの国を統べる器じゃないといい 俺らHKの者がこの地に住んで、全く新たな国として治めて欲しい」 そんな感じで、俺かスクイドが国王候補に上がった。 お前らも分かると思うが当然俺なんかは器じゃないと主張したさ。 だが、スクイドはジョカーが許せなかったらしくてな 逃げるようにこの地を追われたジョカーを含む バーディスを追求する事に目を奪われていた。 そして あいつはオレにバーディスとの事が終われば ここに帰ってくることを約束して、この地を去った。 一方で 戦争に負けたジョカーは その当時、何がなんだか分かっていなかったはずだ。 親が言うようにしただけのことで、俺らが反旗を翻し、 自分らが悪者扱いされた。 ジョカーが今回 俺らが作り上げた、このノイズ国を滅ぼそうと考えるのも あの時の年齢を考えれば仕方ない気がする。 だが、ジョカーのしていることは人道的なことじゃない。 あいつの話は聞くつもりだが、ジョカーは話でなく 力でこの地・・・いや、俺らフォラミュースを滅ぼすつもりだろう。 かつて俺らがバーディスを滅ぼしかけた時のようにな。 長くなったが、これが今回の事件のきっかけだろう。 悪いのは俺だ』 休憩することなくノイズは一気に話し終えた。 ヴィルは半分は知っている話で、シェルはほとんどが初めての話だった。 二人は一時返す言葉を失った。 『確かさ、ファラウェイズもバーディス側の者なんだよな。 でも今も親父の補佐をしているって言うのは、問題にならないのか?』 シェルが何か喋ろうと疑問を話す。 『特にコールだが あそこは未だに政府色が強い地域でな ノイズ国自体を良くは思っていない節がある。 人体実験なども、俺らが作り上げたでっち上げだと思っている者もいるらしいしな。 そういう者達をまとめるために バーディスの裏方で元々4つの国をまとめていたファラウェイズの力が必要なわけだ。 クインが塔のためにコールに行っているのも ただ塔を作りに行っているだけではないという事だ。 あとは、当然オレの力が足りない事もあるがな。 そのせいでヴィルにも迷惑をかけている』 それにもノイズは淡々と答えた。 ヴィルは相変わらず何も言わない。 『でも、俺らに恨みを持っているなら 何でここにやってこないんだ?』 『恨みがあるからこそ、俺が困る事をすべて実行するつもりだろう。 クインが作っている塔もジョカーは気に食わないはずだ。 アレはノイズ国建国のシンボルになる。 だから奴はコールに行っている筈だ。 政府色が強く、塔もあるしな。 そしてもしかするとコールの者達を見方にして 恨み返しをするつもりも考えられる』 『そのことですが、 テイ―プの軍長ミーシュアを手配してあります。 今は、ガードシルが行くべきだったと後悔しております』 『ヴィル、それは今オレの話を聞いたからだろ? もっと早くヴィルには言っておくべきだったな』 『いいえ。 国王の事情が事情ですから 先ほどは感情的に言ってしまいすみませんでした』 ヴィルの冷静な態度を見て ノイズは一つ深呼吸をした。 『それと、先ほどのオレの態度は別物だ。 今でも俺が前線に行くことはダメと言うだろ?』 ヴィルははっきりと縦に首を振った。 それと、ノイズの先ほどの態度は 決してダラケたくてしていたわけじゃないという事も分かった。 ノイズが自分でジョカーの所に乗り込みたい気持ちも分かっているし それをすると国としての問題になるという事も分かっている。 そのモヤモヤをどうする事もできず、感情を抑えるために あえてああいうダラケ方をしていたと分かったのである。 それで先ほどの謝罪となったのである。 『親父、心配するなよ! 今ここにはスクイド並の頭脳の兄貴と 親父の血を受け継いだ俺がいる! ジョカーの奇行は俺らが止めるぜ!』 そう言うとシェルはいても立ってもいられなくなってか部屋を飛び出した。 それをヴィルが追おうとしたが、ノイズが静止した。 『あいつはオレの子だからな。 止められんよ。 だけどよ、ヴィル。 オレはシェルを失ってもヴィルを失っても悲しい事に変わりはないんだ。 俺は動かん。だから全力でジョカーを止めてきてくれ。 今はこういう事しかできない。すまん』 そう言うと再びうつむいたノイズにヴィルが近づく。 『私は、まだ確かにわだかまりがあります。 でも、この国のために全力を尽くします。 私も前線で戦う事はできませんが、 これ以上被害を増やさないように全力で戦います』 そう言うと一礼をし、部屋を出て行った。 ノイズはヴィルがいなくなった事を確認し 右拳をベッドに強く打ちつけた。 |