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先に建物に入ったレビンは
ある個室に案内された。
そこは病室のような造りになっており
大きいベッドが1つ窓にそって置かれていた。
そのベットに腰をかけると
一つ深呼吸をし、目を閉じた。
実はレビンにとって
このノイズは思い出の場所でもあった。
レビンは生まれたときから国を移動して生活していた。
それは、親が遺跡探索の旅に出ていた事が理由である。
親に連れられ、物心ついたときに訪れたのが、
ここノイズであった。
当時はレス国と呼ばれていた。
このことから分かるように現在のノイズの地域名は
かつての国名だったのである。
そしてそこでレビンにとって
運命の人に出会うことになる。
祖父に当たる世界的に有名な建築家
レオナル・ガウディである。
ガウディの描いた意匠は
レビンの何かを呼び起こすきっかけになった。
その後、数年世界を回った時
レビンはある国で両親と別れることになる。
それは、父親が最大の歴史を求めるため
魔城に行くことを決心したからである。
魔城には、現在解明されていない、発見されていない
さまざまな歴史が存在すると言われていた。
実際存在しているそうだが、この時のレビンには
親に捨てられたという気持ちのほうが大きかった。
しかし、親としては
物心がついているとはいえ、
レビンにはまだ荷が重い場所だと知っていたから
連れて行くことはしなかったのだろう。
と、時を経てその時は納得した。
捨てられたといっても実際は父親の兄
つまりレビンとっては叔父の所に預けられた。
ただ、そこでの待遇は最悪な物であった。
レビンの存在は異質であったのだ。
それは、
レビンがピュアスキルであったからである。
叔父にとっては、厄介者に他ならない。
「魔心眼」という特殊な眼球を生まれ持っていたことも
要因であった。
それでも、叔父は国の方針で学校には通わせてくれた。
というより、その頃のレビンは叔父達に反抗するようになっており
叔父達もピュアスキルであるレビンを恐れて、仕方なくという感じだった。
ピュアスキルとは
生まれつきスキルを使える体質であること以外は
他の人と変わりはない。
しかし、一般的にどこか異常をきたしている事が多く
凶悪な犯罪を起こすケースもあった。
ただ、、レビンにはそういう気質があまりなかった。
そもそもピュアスキルとは、遺伝的なもので
例外なく親のどちらかまたは両方がピュアスキルである。
しかし、レビンの親は違った。
父親は逆にスキル性質を持たない
「アンチスキル」と呼ばれる体質で
スキルとは縁がなかった。
母親の方は
「トランスレッド」と呼ばれる特殊体質ではあったが
それはピュアスキルではなく、肉体的な異常であった。
このままでは
ピュアスキルの子供は生まれることはない。
だが、父親があるものを手に入れていたのである。
それがレビンが生まれ持っていた
「魔心眼」である。
父親は自分がアンチスキルであることを知り
それをハンデと感じてしまっていたらしく
遺跡発掘をしていた時に見つけた
魔城の産物である「魔心眼」を自分の目に埋め込んだのである。
「魔心眼」とは名前にあるように目に関係する道具で
元はコンタクトのような薄いレンズのような物である。
それが眼球につくことによって
視覚能力を最大異常に引き上げることが出来る。
それは、光の動線さえも
全て追うことができるものであった。
道具である以上
生まれもって魔心眼を持つことは不可能である。
しかし、レビンの場合は
母親の特殊体質が災いした。
「トランスレッド」は人間が普段使っている潜在能力を
100%フルに使うことができるというものである。
しかし、その100%とは
人間の肉体のことを無視したものであり
普通は肉体を破壊してしまう。
だが、トランスレッドにいたっては
肉体を破壊せずに100%を使うことができるのである。
そういう特赦な条件が揃い
レビンはピュアスキルとして誕生することになった。
だが、生まれたときにすぐにピュアスキルだと分かったわけではなかった。
それが判明した時は
親に捨てられた時とほぼ同じ時期であった。
レビンは、捨てられた理由を
このピュアスキルが原因であると今は確信している。
叔父の家にきて14歳になったレビンは
その国の学校に通うことになった。
そこでは年齢に関係なく
6年間勉学することが義務になっており
レビンはこれまでも独学をしていたものの、
14歳で始めて学校という場に行くことになった。
そしてそこで
もう一人運命の人に出会った。
魔心眼をもつレビンは、やはり学校でも異質であり
生徒はおろか、先生からも引いて扱われていた。
その中で一人、レビンに声をかけた人物がいた。
それが、クレセアである。
年齢は6歳も異なった同級生だった。
クレセアはそれまでは南地区に住んでいたのだが
両親が離婚して、母親に連れられてここにやってきたのである。
孤独になっていたレビンを
クレセアはなぜか楽しそうに興味を持った。
そんな不思議な雰囲気を持つもつクレセアに
レビンも少しずつ心を開いていっていた。
時間は流れ、4年後。
ひとつの転機が起こった。
クレセアの母親がS・D症により亡くなったのである。
といっても、この時はまだ原因不明の死だった。
そのことでクレセアも一人になり
このことでレビンは一つの決断をした。
この時のレビンは、
自分を捨てた理由を納得しつつも
親に復讐をしようと思っていた。
それがこの国を抜け出すきっかけにもなった。
そしてクレセアも抜け出すことに同意した。
本心はわからないまま。
そうして2人は世界を旅することになる。
レビンは親に復讐することを隠したまま、
あくまでクレセアの意思を尊重するフリをした。
そのクレセアはレビンとの話しから
世界の遺跡を見て回りたいといい、
そして二人の旅は始まった。
その旅で2人は互いに、
知らなかった事実を知ることになる。
レビンは親が自分を捨てた本当の理由を
クレセアは母親の病のことを。
たが、互いにそのことは話さないまま
2人はノイズにやってきた。
山岳地帯を歩いてきて
そこにある遺跡の前に2人はいた。
『レビン、ちょっと疲れちゃったよ』
その洞窟を見てクレセアはそこに腰を下ろした。
『確かに、見た目には何も無いけどな・・・』
レビンは嬉しそうにその遺跡の説明をしようとするが、
クレセアはその場で少し横になってしまった。
『・・・。
ただの塔でしょ?
どこにも見当たらないけどね』
本当に疲れているようで
クレセアの言いかたは少し乱暴だった。
それはレビンも同じだったが、これには反発した。
『お前が、見に来たいから
ここまで来たんやろ!』
『・・・。
そうだけど、洞窟だったとは思わなかったよ・・・』
クレセアはレビンの言葉を少し鬱陶しいように返した。
それをレビンは我慢できなかった。
『勝手にせいや!
大体そういうわがまま、見てられへんのや!
ちょっと歩いただけで、疲れたやと?
もうはっきり言うけどな
お前みたいなお嬢様のお守りはコリゴリなんや!』
そのときの感情で、レビンは吐き捨てるように言い切った。
それにはクレセアは何も答えなかった。
何も語らない背中を見て、
レビンはそのまま振り返り、一人その場を離れていった。
レビンが怒ったのは、クレセアの態度もあったが
それよりも、その遺跡は本当は遺跡ではなく
尊敬する祖父ガウディの作り上げていた
「バレンシア・スタータワー」だったからである。
レビンにとっては、祖父がバカにされているように
感じてしまったのだった。
それでも
あの時のセリフは本音半分だった。
半分はクレセアに言わされていた・・・。
それはクレセアが死んだことを知ってから
思ったことであった。
レビンは怒りのままノイズを旅立った。
一人になり、目的をやや失い始めていた。
そのときから自分を閉ざすように、さらに寡黙になり
魔心眼を隠すため、色眼鏡もかける様になった。
結局、2年間世界を回った。
だが、そのときに新たな目的も見つけた。
父親の目的を消すことである。
クレセアに出会い、ただの復讐では
その後に何も残らないことを悟り、学んだことを感じさせられた。
それだけの光がクレセアにはあった。
それを感じた時、再び
レビンはノイズに足を向けていた。
そして到着した日の夜
ミディのある酒場らしきところに入った。
『ん?
なんや?今日は休みか?』
思わず声に出してしまったほど店内は静まり返っていた。
そこにマスターらしき男と
ドリンクを飲んでいる子供が一人座っていた。
『あぁ、すみません。
お好きな席へどうぞ』
無理に明るく振舞うように
そのマスターはレビンの方に手を差し出した。
子供と一席空けるようにカウンターに座ると、
同じくドリンクを注文する。
『・・・ほんとうにクレセアは死んだのか?』
『・・・。
ディルがやったんだ・・・
仕方ない』
子供とマスターが辛気臭い話しをしている。
当然、レビンは"それ"に反応した。
『クレセアやと?
・・・死んだ?』
立ち上がるとその子供に詰め寄る。
『クレセアって言うのは、ロングで、目が印象的で
なんというか、天然な女で・・・』
やや興奮気味のレビンから
その子供を庇うようにマスターが飛び出して間に入る。
『き、君。
クレセアちゃんを知っているのかい?』
レビンは一瞬戸惑ったが
今までの経緯をマスターに話した。
『レビン君と言ったね。
確かにクレセアちゃんから聞いたことのある名前だね。
・・・でも、君には悪いが
クレセアちゃんはここにいてよかったと思うよ』
『ああ。今の話しを聞いて少し安心した・・・
やけど、ログスの話は別や。
その家はどこにある?』
今度はマスターに詰め寄り
眼鏡の奥から睨みつけた。
『落ち着きなよ。
今から行って、どうするつもりだい?
慰霊参りに行くのなら別だけど・・・』
その瞬間首元を掴み
『余計なことはええ。
どこに居るかだけ言えばいい』
そう言うとさらに強く片腕で締め付ける。
それを
その状況を見ていた子供が言葉を返す。
『・・・。
山のてっぺんだよ。
どうしてもって言うんなら、俺が案内するよ』
後ろからの言葉に一瞬手を緩めた。
『シェル君!』
マスターが静止させようと首を振るが
シェルは続ける。
『レビンだったっけ。
マスターの首、離してやってよ。
それに、レビンが怒るのももっともだよ』
そう言うとレビンの腕を掴む。
この当時のシェルはすでにレビンと同じぐらいの背丈があった。
というよりは、
レビンの背丈があまり高くないということも大きかった。
『お前が何できるんや?』
『俺はさ、一応、この国の王子なわけよ。
俺らの許可が無いと
ログスには行けないことになってるんだよね』
それを聞いてレビンは腕を離した。
シェルもそれを見て同じく離したが
それと同時にマスターがシェルに駆け寄る。
『シェル君。
彼は何をするか分かっているのかい?
もし・・・』
『マスター。
だからって言わなかったら
どうなるかぐらい分かるだろ?
俺に任せとけよ』
シェルはレビンを外に案内すると
その横においてあったレッドフェアリーに勧める。
『なんや?
屋根つきの・・・モービルか?』
薄暗くてよく外観は見えていなかったが
それに乗り、数時間でシェルの家がある
レスに到着した。
入り口には門番のほかに一人の男が立っている。
『また夜遊びか?
いいか、シェル・・・
って友達か?』
それは兄のヴィルである。
背丈だけで同い年の友達に見えたらしい。
『友達に見えるんか?
まぁ、ええ。
ログスの住んでいる家に案内してくれや』
今度はヴィルに詰め寄る。
しかしヴィルはそれを無視するようにシェルの方を向く。
『・・・いや、この方がね。
どうしてもログスに行きたいっていうもんだからさ・・・
それに、クレセアの知り合いらしんだよ』
どうやらヴィルはシェルに睨みをきかせてるようだ。
それで、シェルの言葉にもやや迷いがある。
『・・・。
今はクインさんが居ないから、
久ロバさんに聞いてみるが
どちらにしても今日は遅い、明日の出発になる』
そう言うと先に城に消えていく。
それを苦虫を潰した表情でレビンが続いた。
その陰に隠れるようにシェルがこっそり付いていった。
その日
レビンにログス行きの許可が出た。
そしてシェルは父親に説教を食らった。
次の日
シェルが運転をしログレスに向かった。
ログレスからは歩きになったが
すぐに奥から乗り物がやってきた。
そこでシェルと別れ
今度はその乗り物を運転しているクレイルに案内され
ログスの家にやってきた。
ちなみにこの時にも
途中の道でゴーレムは待機していたのだが
ログス関係者には反応しないようにもなっているので
今回は特に出ては来なかった。
ちなみに、ディルが襲われたのは、
ゴーレムの認識としては
関係者外として扱われていたからである。
『言っておくがあの女を手術したヤツはもういないぜ。
人ひとり誤った程度で、逃げ出しちまうチキン野郎だからな』
クレイルが吐き捨てるようにそう言うと
背を向けて中に戻ろうとする。
『待てや。
お前も手術に立ち合ったんか?
なら、聞きたい事がある』
言うと同時にクレイルに向けて銃をかざした。
その瞬間、クレイルと入れ替わるように一人やってきた。
『ここは人を生かす場で、殺す場ではないわよ。
その物騒な物しまってもらえますか?』
その言葉でクレイルも振り返り、
それを見た瞬間に舌打ちをした。
その態度で再び銃をあげようとしたが
その前にその女が銃を抑える。
『クレセアって子のことでしょ?
話をするから中に入って頂戴』
渋々、その女・・・もといアンにしたがって
中にある個室に入った。
そこは病室のような造りになっており
大きいベッドが1つ窓にそって置かれていた。
そのベットにアンは腰をかけると
一つ深呼吸をし、目を閉じた。
『あの子はS・D症って言う病だったのよ。
母親からの遺伝らしいわね。
治療する方法ああるけど、あの時は無理だったのよ』
その場に立っていたレビンに
一瞬電気が走った。
その後
S・D症の症状、治療法を聞き
2年前のクレセアの行動が当然なものなのだと納得できた。
ここにログスがいることを知っていて、
自分がS・D症であることもわかっていたのだろう。
自分もそうだが、肝心な所は言わない性格は
まさにクレセアらしかったと思えたのだった。
『何より、その妹さんのためって言うのが・・・ね』
話を終えアンはようやく目をあけると
レビンの方を向く。
一方でそのレビンはバツ悪そうに目をそらした。
クレセアの死の真相を知ったレビンは
もう一つ目的が出来た。
クレセアの妹、レナの命を救うことである。
そして今、その瞬間を待つ事になる。
『2年前のことでも思い出してるのかい?』
目をあけるとそこには
現実と"女看護士"が立っていた。
『レナは助かるんやろな』
下を向き、一つ息を吐いた。
その女看護士は肩を叩くと
『心配?
・・・でも、今回は大丈夫よ。
後は・・・ディル次第かもね』
下を向いたまま、すぐには動かなかったが
色眼鏡をはずすと、また一つ息を吐いた。
『あいつも2年、ここにおらんかったんやろ?
・・・手術させる気か?』
レビンには見えなかったが、女看護士はにっこりと微笑み
『当然ね。
それがあの子の望みでもあるんだから』
『あの子?』
誰のことかはわかっていたが
尋ねるように、女看護士ことアンの方に顔をあげた。
『あとは、信頼して待つしかないわね』
そう言うとレビンと少し離れたところで
ベットに腰を下ろし、上半身を仰向けにする。
『あいつ・・・次第か・・・』
つぶやくように再び下を向いて
その時を待つだけだった。
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