第3話 『七秘宝とスキル





ドクの豪邸は昔より大きくなり
入り口には2人の門兵がついていた。

その豪邸はとても家と呼べる代物でなく
城の様でもあった。
今ではピスカの観光名所にすらなっている始末だ。

だからラウドは戻る途中の観光客に
不思議な感覚を覚えた。
自分が観光客になった感じである。
それほどドクの家は
さらなる轟々しさを示していた。

その家に観光客に雑じってラウドはいた。
そして我者顔で家に向かう。

『そこは私有地ですよ!戻りなさい!』

ガイドの女性に呼び止められるが
構わず家に向かう。

その声に反応したドクの家の二人の門兵が
ラウドにつめかける。

『なんだ貴様は?』

『お前こそ誰だよ』

門兵とラウドが睨み合う。
門兵は左腰にサーベルのようなものを携帯していて
今にも抜き出そうとしている。

『ここを誰の豪邸だと思っている!』

『くそ親父だよ』

そうラウドが言うと、
二人の門兵は顔を見合わせた。

『どいてくれ、帰ってきたんだからよ。』

そう言うと勝手に門を手で開いて
豪邸に入っていった。

『おい!待て』

その行動に門兵は唖然としていたが
すぐさま職務をまっとうしようとする。
だが、ラウドは全く構わず家に向かう。

門から豪邸までは100mぐらいでその間に警備の人はいない。
しかし豪邸の入り口に銀色のスーツを着て
少々スーツに合わない年齢の男がラウドを見ていた。

『誰だ?あれは・・・
ん?
まさか』

ラウドだということを確認できると
慌てたように入り口に入った。




最上階にドクの部屋はある。

そこは南側がガラス張りになっている。
しかし外側からは普通の壁のようにしか見えない。

窓からはピスカ山と海が見えるだけ。
最近ドクはそこを眺めるだけになっていた。

『ドクさん!ドクさん』

慌しく先ほどの男がドクの部屋に入ってきた。

ドクは10人は座れそうな牛革の大き目のソファーで
葉巻をくわえて一服をしていた。

葉巻を持つ手には財宝と言う財宝が
指にはめ込まれており
服装はいかにもブランド品という感じである。

少々の不精ひげがあり
髪は肩近くまで伸びている。
雰囲気はラウドに似てはいるが、
長い年月が二人を別人に見えるほど変えてしまった。

『なんだよ。俺は忙しいんだ』

その男のほうを向かずに
座ったまま窓を眺めていた。

『息子さんが、戻ってきたんですよ!』

息子という言葉で体が動いた。

『何?家出のラウドかが?』

ソファーから立ち、銀色のスーツの男のほうを向く。

『そうなんです』

その男はなんだか嬉しそうに話すのだが
ドクの表情は険しい。

『そうか、やっと帰ってきたか』

そう言うとまた後ろを向き窓を眺めた。




ラウドは片っ端から部屋を探す。
どうにかして最上階にたどり着いた。

『やっぱここにいたんか』

ラウドは目的を見つけると
半分疲れた声でそう言った。
ドクは先ほどと同じくソファーに座っていた。

『いまさら何の様だ?くそガキが』

そしてソファーから立ち上がり
ラウドの方を向く。

『あんたに引導を渡しに来たんだよ!!!』

ドクに右拳を向けた。
本人はその行動に一つため息をする。

『まだお前はガキだよ。
それに俺と戦っても絶対勝てん』

中指だけを立てて
こっちに来いと言わんばかりに手招きをする。
その行動にラウドは腹を立てる。

『なんだと?
金を数えているのが幸せなあんたに負けるだと?』

半分笑っている表情のラウド。
だが、その笑いがすぐ無表情に変わり
ドクに向かっていく

ラウドの鋭い右ストレートを
ドクは軽くかわす。
それでも次は左を出す。
ドクは全く動じずまた軽くかわす。

それが何回が続いたが
最後はドクが呆れてしまい
ラウドが右を出したあとに
左を出そうとした為に前のめりになった状態の右足を
ドクの左足で払った。
払われた足は宙を舞いラウドは腰を打った。


『それが強くなった?』

ドクは葉巻を取り出して一服する。

『なんだ、あの動き?』

ラウドはあのギルバードの時と同じ強さを感じていた。
今まで自分がやってきたことを否定するような動き。

『何、驚いてんだ?
お前が俺に勝てないのは当たり前だ
というか、お前ホーリーナイトになるんじゃなかったのか?』

驚きの表情をしているラウドに半分呆れたような顔をしている。

『そうだよ。
今日あんたぶっ倒して、ここを出て・・・』

右拳をまたドクに向けるが、そのまま顔を下に向ける。

『アハハハ』

ドクは思いついたように笑い出した。

『お前・・・?
もしかしてスキルも持たずにホーリーナイトになるつもりか?』

ラウドが攻撃しないと思ったのか
ソファーをまたいでそのまま座った。

『スキル?』

今まで聞いた事のない言葉にさらに困惑をするラウド。
それを解ってるかのようにドクは続ける。

『ってことは七秘宝なんてなおさら解らんだろ?』

また葉巻を吹かす。

『七秘宝・・・』

ラウドが黙ったことで
ラウドがなにも知らないことは確認したが
右手を頭に持っていき考えるような仕草をする。

『お前、ホーリーナイトに一生なれないな』

ため息と共にそう呟いた。

『なんだよ!
スキルとか七秘宝ってよ!』

呆れているのはラウドも解っていたが
このまま引き下がるわけにもいかないと思ったのか
子供らしい質問を親にぶつける。
それを聞いてドクはゆっくりと立ち上がる。
まだ後ろを向いたままだ。

『俺はな4つの七秘宝を見つけてる
お前もそれぐらい見つけれないと
俺に触れることすらままならねぇぜ』

そういいながら窓の方に近づき
ラウドのほうは振り返らずに

『もうお前はここの者じゃない、さっさと出て行け!』

右手で出口の方を示すと
そのあと腕を組んだ。

ラウドは何もいうことが出来なかった。

今までなにもしていないようにみえた自分の父親は
自分よりもホーリーナイトに近い存在であったこと
そしてあまりにも無知だった自分が情けなかったからだ。

『絶対・・・絶対・・・』

それでもラウドの感情は言葉に出る

『絶対あんたの顔に一発殴り入れてやるからな!』

ラウドはドクの部屋を飛び出した。
ドクは振り向かずに煙草を吹かすだけだった。




数時間後
ピスカ山の麓に戻ったラウドは
近くにある川に頭を突っ込んだ。

今までの強さはなんだったのだろう
自分が否定されているようで
悔しくてたまらなかった。

川から顔を上げるとティノが来ていた。
その場にラウドは座りティノは立ったままである。

『義父のとこに行ったんだって?』

またしても呆れ顔である。

『ああ。ぶん殴ろうとしたけどかわされた。
あのくそオヤジ・・・強ぇ』

と言うと右拳を軽く地面にたたいた。
それを見たティノは

『ラウらしくないセリフね』

苦笑いしながら返す。

『いいんだよ。
とりあえずはよ、旅立つぜ
あ、でもオヤジ殴りには帰ってくるけどよ』

ティノの言葉にも動揺せず、スッと立ち上がる。

『あ・・・そう』

ティノはまたいつもの呆れ顔でそう返す。

『止めるんじゃないぜ!
男足る者、いやホーリーナイトになるものは
こんな小さい島にいていいはずがねぇ』

何かに目覚めたかのようなラウドの言動。
そして拳同士を叩きつける。
これはラウドの気合を入れるくせである。

『止めるもなにも、
一度言い出したら聞かないでしょ?ラウは』

もう、完全に呆れてしまっているティノと
やる気に燃えているラウド。

『そっか、ん、じゃ行くぜ』

そしてまた港の方に下だり始めた。


『ねぇ、ひとついい?』

ラウドが少し歩いたところで、ティノが話しかけた

『今年、そう言えば
ピスカ山でイベントがあるよね?
それに出てから旅立てば?』

ラウドが振り向いたのを確認して
ラウドのところまで追いついた。

『ん?俺がいなくなるのが寂しいのか?』

だが、ティノはまた呆れてしまい

『勝手にしなさい。誰が寂しいのよ』

というと今度はティノが先になって下りていった。
ラウドも慌ててそれについてく形になり

『まぁとりあえずは七秘宝が先だからよ
そのイベントだったら何年かにやってんだからよ
その時に帰ってくるから大人しく待ってな』

ラウドはティノから逃げるように駆け足で町に下りて行った。

それを見るティノはため息をひとつついて
ゆっくり町に下りて行った。




ピスカはさほど大きくない島国である。

港も一つのみで、そこの唯一酒場は
ラウドのお気に入りのひとつでもあった。

ピスカから旅立つため
数週間後に港に着いたラウドは
その酒場にいつものように入る。
そしてカウンターの右端に座る。

『いつものね』

常連の居場所は右端のカウンターと決まっている。

ラウドは常連であるから
このような当たり前のセリフもある。

そしてその言葉を受けるのは
その酒場のマスター。
サガというオヤジである。

長髪の髪を後ろで束ねていて
頭には何故か花柄の派手なスカーフをつけている。
そしてドク以上にヘビースモーカーである。

サガはドクの友人でもあり、
ラウドのことを皆とに来た時には面倒している。

ラウドにとっては
愚痴などもきちんと聞いてくれるため
サガがドクの知り合いでも全然構わなかった。

『お?ラウドか?
オヤジと喧嘩したんだってな?』

小さな町は噂がすぐ広まる。
ラウドもそのことは解っているのだが

『そんなことはどうでもいいんだよ
それよりも聞きたいことがあるんだよ』

と言うとスキルと七秘宝の話をする。

いつもの酒をサガは出すと
一言ついて話した。


『それはただじゃ教えられんな
七秘宝を見つけるにはそれなりの強さも必要だしな』

というとまた、酒を勧める。

『そんなけちけちするなよ
まぁ・・・いいや。
どうせここには七秘宝なんかないだろうし』

酒がまわって来たのか
正直どうでもよくなってきたラウドだったが

『あるさ』

この言葉に、少し興味が出てきた。
ただ、それと同時に疑いの思いもあった。

『どこだよ?またからかってんのか?』

ラウドは酔っていないと自覚する為に
わざとこういうことを言ったのだが
すでに酒に酔わされ始めていた。

『ピスカトレジャーイベント』

サガは間髪いれずに答える。
そしてここから言い合いとなる。

『それが何の関係があるんだよ?』

コップをサガに差し出す。

『そのイベントに出たら解るさ』

また酒を入れる。

『ん?
確かにピスカトレジャーは宝捜しのイベントだけどさ
七秘宝が見つかったなんて話聞かねーぜ』

そういうとその酒を一気に飲む。

『ああ。噂だからな』

やっぱりからかったのかと思ったラウドは
それ以上は聞かず酒を求める。


『だが、このイベントはな
二度目の参加が出来ないといわれている』

酒を注ぎ足した後
サガが思いついたように付け足した。

『どういう意味だ?』

ラウドは意識は半分朦朧としていたが
興味津々になる。

『参加するときには
名前とか色々履歴を調べるらしいからだ』

サガは裏話的な話しをする。
それはラウドが次の日には覚えていないだろうと
思っているところがある。
あまり知られてない秘密を喋りたいらしい。

『何でそんなことすんだ?』

ラウドはそのことを知ってか、知らないか解らないが
付き合う様に質問攻めになる。

『さぁな、そこまでは知らん
知りたいんなら参加することだな』

そしてその秘密は全ては話さない。
それが、サガの優越感みたいなものでもあるし
ラウドを使って遊んでいる。

『七秘宝があるかも知れなんだったら出てみるぜ』

このイベントというのが
さっきティノが言っていたイベントのことである。

ラウドは必然的にピスカに滞在することになる。


『ところでスキルってなんだよ?』

ラウドはしつこく聞く。
サガは仕方ない様な表情で話し始めた。
そしてまた言い合いになる。

『七秘宝の持つ力で
人の特殊的な能力を引き出す
その力のことをスキルって言う』

『なんか良く解らないな』

『しょうがないヤツだ
簡単に言うと七秘宝を見つければ
スキルも使えるようになるかもしんないってことだ』

『スキルを使うってどう言うことだ?』

『つまり簡単に言うと
超能力が使えるようになるってことだな』

『すげェ、本当か?』

普段はあまり物分りのよくないラウドだが
酒の勢いもあり理解できているようである。
ある意味で天才である。

『ホーリーナイトについてはわかってるだろ?
だったら覚えといて当然な事だな』

ラウドはギルバードに教えてもらった以外にも
サガにもホーリーナイトの事を教えもらっていた。
しかし
ホーリーナイトとは本来二つの意味がある。

一つは『伝説の英雄』という
かつて起きた戦争などで活躍をした戦士の事を示しており
一般的には旧読みで聖剣(セイケン)と呼ばれている。
ギルバードが言った
『強き者に与えられる称号』の意味も含まれているが
こちらは伝説的な強さを表す言葉である。
もう一つは単純に言うと
ギルバードが言った『強き者に与えられる称号』
そのものである。
その中でラウドは
伝説の英雄の意味でサガに教えられていた。
なぜ旧来の意味を教えたのかは不明だが
それが後に少しだけ影響する事となる。


『そうか・・・ギルバードもスキル持ってるのか』

『ギルか。あいつは成ってるかもしれんな』

『そうか、よし!
とにかくは七秘宝を見つけてスキルを手に入れるぜ!』

そう言うとコップを勢いよくカウンターに置く。

『そう簡単には見つからんぞ』

からかうようにサガが笑う。

『いいんだよ、
あの山は俺の住家みたいなもんだし
みつかるぜ』

ここまでくると、何が何でもやるといった
ラウドの一本気である。
これはサガにも止めにくい。
だが、話しに間をおくことで気をそらそうと考える。

サガはここで一息つく。


『そうじゃない。物事には順序があるんだ
あの山だけはスキルを持ってないと無理なんだ』

??

『変じゃないか?
だって七秘宝が無いとスキル持てないのに
スキルがないと見つけれないなんて?』

完全に酔っているのか、話しをするたびにコップをカウンターに叩く。
それを見て、サガも少々カチンときていた。

『変じゃない。他の七秘宝を探せって言っているんだ』

ちょっと強めに言った為に、ラウドは少し我に戻る。

『絶対無理なのか?』


気がつくといつのまにか客がひとり
ラウドの隣に座っていた。

『無理じゃないさ。
僕はスキルを持たないで
この山の七秘宝を見つけたからねぇ』

とその男は話した。

その男は前髪をたらし白髪頭。
顔は妙に老けている感じもするが声はまだ若かった。

そしてその男を見たサガの様子も変った。

『お前もしかして・・・』

サガは口調をキツクそう言いかけると
その男が口を開いた

『ああ、そうさ。僕はガンプ』

そう言うと店の中は一瞬静まり返った。
ラウドが一人だけその雰囲気をつかめない感じであった。

その男はガンプ
ロジャー・ガンプ
ラウドにとって運命的な男の登場である







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