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客間
奥にドク
入り口側にギルバードが
それぞれソファーに座っている。
ラウドは入るなりギルバードの横に座る。
『おまえには関係ない。外にいってろ』
ラウドに向かって手で追い払う動作をするが
『別にもうここから居なくなるからいいでしょ?』
とラウドが返す。
仕方ないという表情でドクが話をはじめる。
『それで、見つかったのか?』
ドクの表情は少々硬いが
逆にギルバードは嬉しそうにしている。
『ええ。
7つめも見つけて
これで晴れて正式な"ホーリーナイト"の仲間入りですよ』
それを聞いてドクも表情を和らげる。
『そうか。
俺は・・・見ての通りだが
ギルは何とかやってるようだな』
今度は逆にギルバードの表情が硬くなる。
『まぁ、俺の夢になりましたから』
横で聞いたいたラウドには
わけのわからない話であった。
しかし、ホーリーナイトという言葉が妙に気になった。
『なぁ。ホーリーナイトってなんだ?』
ラウドが聞いてきたことで、
またドクの表情が硬くなる。
『ラウドが知らなくてもいいことだ!』
とドクが返したが、
『・・・
いいじゃないですか?
どうせそのうち知ることになるんだし。
それに何よりもドクさんの子供でしょ?』
ギルバードは半分からかったような口調で返した。
ラウドも興味津々に
ギルバードの話を聞こうとしている。
『ドクさん。心配ないですよ。
子供に夢を与えるのも一つの仕事なんですから。
"ホーリーナイト"って言うのはな
強き者に与えられる称号みたいなものだ』
ドクは、もう何も言わんと言った表情をしている。
というよりはギルバードの行動に
あきれていると言った感じである。
さらにギルバードは続ける。
『なぁ?おまえ
"ホーリーナイト"にならないか?』
横にいたラウドのほうに笑顔を向ける。
しかし、これにはドクが反論した。
『ギル。お前なぁ。
うちのガキに変なことを吹き込むな。
こいつは俺の大事な”後継ぎ”なんだからな』
『後継ぎですか・・・』
そういうと
ギルバードは少し考えて
笑う。
『ってことはこいつも
"ホーリーナイト"を目指すってことですよね?』
と意味不明なことを言った。
『あほか。
家の後継ぎのことだ
それに"ホーリーナイト"など
遠くの昔に忘れたこと』
と言うと葉巻を一つ取りだし、吹かす。
『なんだ!父さんもホーリーナイトになろうとしてたんだ。』
ラウドが話が見えていなかったものの、
ドクがホーリーナイトを目指していたことだけは
わかったらしい。
『忘れる?忘れないでしょ?』
ギルバードはまた謎めいたことをいう。
『忘れ物をしているのに・・・』
と言いかけてドクが口を挟む。
『お前はどうしていつも余計なことをしゃべる!』
しかし、ギルバードは少し裏のある微笑みで
ラウドに勧誘を求めようとする。
『よし、俺もホーリーナイトになる。
父さんみたいな人が目指せたんだから、
俺に出来ないわけがない!』
単純にラウドは強いという事だけで
ホーリーナイトに夢中になった。
『バカか!ラウドには絶対無理だ!』
ドクはいつにまして怒鳴り声が大きくなっていた。
『やってみないとわかんないよ!
それに俺はもうこの家を出るつもりだったし。
そうだ、ギルバード。
俺も連れていってくれよ』
だが、ラウドは全く我関せずであリ、
ギルバードのほうを向いて反応を持っている。
『おお。いいぜ』
そう当人はあっさりと返事を返す。
ドクはそれを聞いて
もう何も言うまいという表情に戻った。
また葉巻を吹かす。
『ただし、条件を達成出来たらな』
とラウドに念を押した。
『それじゃ、息子さんお借りします。』
とドクにいいラウドもギルバードに続いて客間を出た。
ドクは何を思ってか上を向きもう一度吹かす。
『この日がきたか』
と、天井に向かって呟いた。
数時間後
ラウドはギルバードに連れられ
ピスカ山の麓までやってきた。
そこは冷水が流れている
周りはほとんど林になっており
その林がピスカ山の入り口になってもいる。
その林は昼間でも薄暗さを演出していた。
富士の樹海ほどではないもの、
何か別次元に入りこむ感覚があった。
人の声はおろか鳥の声すらない。
風が音を立てるだけで、
夜にそこにいるとどうなるかわからなくなるほどである。
そこにラウドを連れてくるとギルバードは腰を下ろす
『ここで、今日1日一人暮しをしてみろ
だが、ただの一人暮しじゃ駄目だ
お前はこの林のどこかにいる俺を1日以内に探し出せ
それが出来たら連れて行ってやる』
と言われたラウドは
この麓に来るまでは全然気楽に思っていた。
しかし、実際麓につくとまず林だけしかない環境に驚く
そして、この中で居ることを想像すると、
少し怖くなる。
そこはまだ8歳だからだろうか?
そして、ギルバードはその恐怖の中で1日を過ごし
さらにギルバード自身も探せと言った。
いまさら、怖いとは言えなかった。
ここで弱音を吐けば
父親に何を言われるかわからないと思ったからだ。
『俺一人なのか?』
しかし不安が口に出る。
『"ホーリーナイト"になるって言うんだから
これぐらい出来て朝飯前だぞ
それに、出来ないんなら
ドクさんにも勝てないってことだぜ?』
とギルバードが言うと、
ラウドはやる気をおこした。
『あんな遊び人の父さんに負けないよ!
やってやるよ』
『そしたら10数えろ。
目をつぶるんだぞ
その間に俺は林に消える』
ギルバードは、ラウドに目をつぶらせて、
10を数えさせた。
『1・2・3・・・・・4』
ラウドは気配が無くなったことを悟り
目を開ける。
『もういない。』
それはラウドが
産まれてはじめて感じる孤独感だった。
そしてそれと同時に恐怖感も沸いて来る。
もし、ホーリーナイトになるって言わなかったら、
今にでも逃げ出したいぐらいの恐怖である。
しかし、自分の父親に負けないという思いだけで
ラウドは林に入る。
ギルバードを探すために。
まだ日は上がっているはずだが、
そこは薄暗く、もう夕方のような感覚であった。
その中をラウドは一人ギルバードを探し、歩く。
しかし、全く手かがりがない。
どこかギルバードが移動しているのなら、
移動している音が聞こえるはず
ラウドはそう思っていたが、
聞こえるのは風の音。
どうしたらいいのかわからず、
ラウドは泣きそうになる。
その時である。
何か歩いてくる音がする。
『ギルバード!!』
と心の中で思い、フッと安心になる。
しかし、その音は人が歩く音より
はるかに大きい音を立てている。
またラウドは不安になる。
そして、不安は的中する。
大きい影が映った。
自分の倍以上はありそうな熊。
そう、マルグマである。
そのマルグマは子供であったが
それでもラウドの3倍以上はある体であり
ラウドを見つけると
4足歩行から立ち上がり襲いかかろうとする。
ラウドはその動きにビビって動こうとしない。
それでもマルグマの第一撃は
ギリギリでかわす。
しかし、かわした拍子に腰をついてしまい、
動けなくなる。
マルグマは完璧にラウドをとらえた。
ラウドは目を閉じ、死を覚悟した。
『もうだめだ!』
『バゴッ』
とても鈍い音がした。
『俺はもう死んだのか・・・』
『これが死?』
ラウドは死んだ感覚に襲われていた。
目は閉じたまま。
体はまるで石の様にピクリとも動かない。
しかしその体を触られた。
『なんだ?死神か何かか?』
ラウドは口には出せず、
心でそう思っていた。
『おい、起きろ』
どこかで聞いた声だった。
ラウドは恐る恐る目を開ける。
そこにはさっきまでいたはずの
マルグマが倒れており
そばにはギルバードが立っていた。
『ギルバード!!』
ラウドは安心のためか
かなり上ずった声でそう叫んだ。
しかし、ギルバードは
ラウドの方を向かず話し始める。
『お前には、まだまだ無理のようだな。
マルグマにビビってるようでは
お前の親父にすら勝てないな』
『父さんにか?』
『そうだ。最低でもこの木を
片手で倒せるようにならないとな』
というと、直径が30センチはあろうかという木を
右腕だけで倒して見せた。
『ゴゴゴォ・・・』
勢いよく木が倒れる
ギルバードはラウドの方を向き、続ける。
『ということでお前は不合格だ
俺についてくる資格はない』
ラウドはギルバードの凄さにビビってしまい
声が止まってしまった。
『もし、お前が"ホーリーナイト"になるんだったら
マルグマぐらい一撃で倒せるぐらいにならないとな』
ラウドはうなずくのがやっとで、
体も止まってしまった。
『いつかお前もわかる時が来る
力が急に凄くなる時がやってくる
それは俺があの木を倒したようにな』
と言うと倒した木を右手で軽々と持ち上げて
左手でその木を粉砕した。
!!
ラウドはギルバードの強さに
改めて憧れを持った。
『俺が目指した強さとはこれだよ』
ラウドは心の中でそう確信した。
『これぐらいの力がついたとき、
ここを出て旅をしろ
そしてどこかにいる俺を見つけ出せ
見つければお前は"ホーリーナイト"になれる
そしてお前の親父を越えることが出来る』
そう言うとまたラウドの後ろに向き
最後に
『何より、今の弱い自分も超えることが出来るからな
ラウド』
そう言うとギルバードは歩き出した。
ラウドはこの時初めて
名前で呼んでもらったことで
勝手に信頼感を感じた。
そして、今までの不安が全て吹き飛んだ。
『ま、待ってくれ!
俺は絶対強くなる!
父さん・・・いや親父にだって負けない!
そしてギルバードを見つけて
絶対ホーリーナイトになってやる!』
ラウドは全力で立ち上がりそう叫んだ。
ギルバードは足を止め振り向いた。
そして少し口元が緩んだ。
『忘れるな。ラウド。
お前は"ホーリーナイト"になれる男だ』
そう言うとラウドに近づき
全力で立っていたラウドを支えて
背に背負わせる。
『な、何するんだよ!
自分で帰れるよ』
とラウドが照れ隠しにそう怒っていたが
ギルバードは、また少し口元が緩んだだけで
そのまま林の外に向かって行った。
そして現在
ラウドはこの麓で肉体的に強くなり
18歳になった。
そして何を思ってか、
彼の父親ドクの家に向かっていた。
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