第29話 『対ピース戦〜ノイズ国ミディ編決着』





状況はまた少し変化していた。
ミディ港で戦うノイズ自衛兵とピース
現在立ち上がっているのはガードシルとヴィル。
ピース兵ではハーツと戦艦から軍車で現れた男。
ライトとダイヴァは倒れている状態で
シェルは戦艦の操縦桿室に閉じ込められ
その戦艦にラウドも入ろうとしている。


その戦艦に入ったラウドは
あちらこちらで倒れているピース兵を横目に奥に入っていく。
一方でラウドが入ったことを確認した軍車は
何を思ったか半回転して戦艦の方に砲台を向けた。


『おい・・・まさか』

ガードシルがそう言わなくても
軍車が何をしようとしているかは判明できた。

『あの軍車程度では戦艦を沈めるぐらいがやっとだ。
なぜ戦艦から出て来ないかは分からないが
シェルのことはとりあえずラウド君に任せよう。
それよりもこの男をどうにかしないとな』

ヴィルは自分では動けない苛立ちから
最後は唇をかみ締めた。

そしてその時
軍車から何発の砲弾が軍車に向けられて発射された。


『ったくハデに壊すよなスピードの野郎はよ。
とにかくこれで王子一人は終わったか』

ハーツは軍車を見て攻撃を受けた戦艦を見る。
再び軍車のほうを見ると左腕で追い出すような動作をした。
それを見てか軍車は再び半回転して山の方に向かっていく。

だが当然に
山に向かわせまいとガードシルが大剣を雪に刺す。

『自分達の"武器"を壊す意味はわからないけどよ
これ以上先に行かせるわけにはいかないな』

隆起した土が軍車に向かっていく。
ところがその隆起は軍車の手前で消えてしまった。
軍車が走った後には雪煙が舞っていて
そこに誰がいるのかわからない状態だったが
その煙が消えた時、そこにはある男が立っていた。

『砲撃音で目が覚めたよ。
いくら土を操ろうが私の前では無効』

ラウドに気絶させられていたはずのダイヴァが
平然とした顔でそこにはいた。

ガードシルは驚いた表情と困惑した表情だったが
ヴィルはそういう状況を読んだいたかのように
軽く一呼吸した。

『シェルは・・・大丈夫なんですか?』

しかし、こちら側も
ヴィルの横にライトが立っていた。
だが、
ハーツの"光の針"によって全身が傷だらけであり
さらにその部分には熱を持っており
立つのがやっとの状態だった。

『ライトさん。
大丈夫なんですか?』

ガードシルはライトが立ち上がったことにさらに驚いていた。

『これ程度なら問題ない。
それよりもその二人を何とかしないとな』

『ライト、この場を切り抜けても問題はある。
一台の軍車が山を登って行った』

苦笑いするライトにそれと逆の表情のヴィル。
だがヴィルの言葉でライトも引き締まる。


『ったく、いいかげん終わらせないとな。
俺が"ケガ人"にとどめを"刺して"やるよ』

ダイヴァのほうを向き
首を2回左右に軽く振った。

『・・・船はスピードがやったようだな。
ということは本当にこんな所で時間を稼いでいる場合ではないようだ』

そのダイヴァは砲弾が撃たれた戦艦のほうを少し見て
すぐにガードシルのほうを向く。


『向こうはこちらの相性を考えてくるはずだ。
ライトの所には光を使う男が来るだろう。
そこでだ・・・』

ヴィルがガードシルを呼びつけ
何かちょっとした作戦のようなことを言う。
とはいえ作戦と呼ぶよりも
そうするしかないという感じでもあった。

『俺は構わないですが、ライトさんは・・・』

『もう一発なら食らわせれる。
あの男は俺が立つのがやっとだと思ってるだろうからな。
ガードがそう思っていたように』

ライトはニヤリとすると
右腕でガードシルを追い出す動作をする。
ガードシルはそれ"も"演技であることは感じていたが
その場をライトに任せて
ヴィルの作戦を実行することにした。




場所は戦艦の中に戻る。
ラウドがシェルを捜しながら各部屋をまわっていた時である。
とてつもない砲撃音が下部分から響いた。
それも数発続く。
そう、これは先ほどの軍車が戦艦に撃った砲撃である。

『地下が自爆したのか?』

その音で一瞬ラウドはそこに立ち止まってしまったが
とにかくシェルを見つけて脱出することを考える。

『オイ!どこにいるんだ!シェル?』


ラウドの声がすることは分かっていたが
シェルは自分が船にくっつけられている感覚から
ここにいたリーダー格の男のスキルが関連していると感じていた。
おそらく部屋全体に動けなくなる性質のスキルがあると考え
ラウドを安易に部屋に入れないように
あえて何も言わなかった。

しかし
その状況は変わりつつあった。

操縦桿室で何故か火災が起こりはじめていた。
どうやら戦艦に砲弾を打った男ことスピードが
船を出る前に火薬を仕掛けていたようで
砲弾を打ち込んだところが火薬庫だったらしく
さらにその火薬庫のすぐ上がこの操縦桿室だったようだ。

『ラウド!!
早く船から出ろ!』


シェルの声が下から聞こえた。
しかし早く逃げろといっている。
だが
すぐさまシェルのいる場所に向かっていく。

戦艦に砲撃を受けた"ショック"で
先ほど学んでいたはずの
自分の事より相手の事を考える事をすっかり忘れ
シェルの言うことを無視してしまっていた。

『って焦げ臭いな・・・って燃えてるじゃんか!』

煙が上がっていることを不審に思わないのもどうかとは思うが
その火事の現場に遭遇したラウドは
そこにシェルがいることを感じ取った。

『シェル!そこにいるんだろ?
何してるか分からんけどさっさと出てこいよ!』

『ラウド
それ以上来るな!
スキル使いによって俺は動けない!
どちらにしてもこの戦艦は沈むだろうから
俺の脱出は今は無理だ!!
・・・。
それより兄貴たちのほうは大丈夫なのか?』

『向こうは心配"ノイズ"って言ってたぜ。
それよりもスキル使いがなんだか知らないけどよ
ここまま何もしないで火と海でやられちまうのか!』

言うのと同時にラウドは燃えている部屋に突入した。
そこは意外なほど火が強くなく
シェルはただ座っている状態でラウドの方を見ていた。

『何座ってるんだ?』

『・・・ラウド、俺の言ったこと聞いてたか?』

二人とも意味は違うが互いに呆れ顔である。

『この部屋に入ったら出れなくなるんだぞ!
これで唯一の脱出方法がなくなったよ』

『ん?
そりゃこれだけ出口に火が燃えてたら
普通は出れないだろうけどよ』

『そういう意味じゃない。
俺が動けないのもその理由だぜ』

『どう見ても俺にはただ座ってるようにしか見えないんだが・・・』

それにはシェルが言いたいことを我慢して
表情で表した。

『とにかく動かすぞ』

ラウドはシェルの腕を持とうとするが全く動かない。


『理解できたか?
俺はこの船にくっついた状態なんだよ・・・
ってちょっと待てよ』

その瞬間下の火薬庫で比較的大きな爆破音が響く。
それは上にいたシェルたちにも伝わる。

『ラウドはこの部屋にくっつけられる感じはしないか?』

さっきから妙なことを言っているなとラウドは感じたが
首を横に振るだけで少し妙な顔をしている。

『とにかく、シェルが動けないのは
スキル使いのせいってことは分かったけどさ
このままじゃ丸焦げかもしくは沈没するかだよな』

状況はピンチであるのにラウドはなぜが明るい表情をしている。

『まずは火を消した方がよさそうだな』

ラウドは燃えている方の壁の方に行くと拳をぶつけはじめる。

『って熱いな、これ』

当然だ。
という表情をシェルはしたが
それしかないという感じで半分安心した。


だが、下ではさらに爆破音が響き
船が動いているのも感じ取れていた。
ラウドも何箇所か壁を破壊し
今度はシェルの近くに来ると

『下は火の海だろうけどこれしか方法はないだろ!』

シェルの足の間にうまく拳をぶつけると
下が火で脆くなっていたのか簡単に破壊された。

だが
ラウドは下に落ちそうになるが
シェルは重力に逆らうように上にいこうとする。
その瞬間シェルはラウドを掴みそのラウドは壊した床にしがみつくかたちで
しかし、シェルが浮こうとするのでラウドも床に並び
その瞬間、足を床とその間にうまくはさんで
まるで橋のような感じでうつぶせになった。

『今度は上にひきつけられてるな』

『下は火が消えて助かったけどよ
もう、海だぞ』

火薬庫は完全に浸水しており
ラウドの橋も沈められるのも時間の問題だった。
そしてその状況を見たシェルは自分から離れた。
シェルは背中から操縦桿室の天井に衝突した。

『ぐっ・・・
ラウド!
悪いが横の壁を壊しまくってくれ』

『ここの壁を壊しても天井が落ちるとは思えないけどな』

そう言いながらまだ火がついている操縦桿室の壁を
片っ端から壊し始める。
しかし
浸水のスピードが早まりもうすでに体半分が海になっていた。

『ラウド・・・もういい。
お前は泳いで兄貴たちに合流してくれ』

『諦めるなって。
俺がスキルを使いこなせれば天井の壁も壊せるって』

すると何故かラウドは下に潜った。


そのラウドにはある作戦があった。

自分のスキルが何かを破壊するものだと思うが
それを水中で行えばある程度の威力は半減されるだろう。

そういう予想を立てて
あえて動きが鈍くなる水中でシェルに向けてパンチを繰り出す。
だが当然に威力は弱くなり
上にパンチを出すため、さらに半減される。
ラウドの理屈から言えば成功なのだが
肝心のスキル効果が現れない。


5度目
すでに息継ぎが限界になっていたラウドは
次が最後の力になると感じていた。

天井にいるシェルは
海から何か空気が出てくるのは見えたが
ラウドが何をしているのかは分からない。
それよりもシェルがいる天井まで海が迫っていた。

−これが最後だ!−

ラウドは渾身の力で上に拳を振り上げた。




地上でもその音は響いた。
戦艦から爆発音が響いており、沈んでいるのも見えていた。

『ヴィル様、これじゃシェル達は・・・』

今にも沈みそうな黒船の方にガードシルは向かおうとする。
しかしその行動は"作戦外"であり
ヴィルがそれを制止する。

『何のためにライトがいると思う。
まずは目の前のピース兵を黙らせる方が先だ』

ガードシルの肩を2回叩くと
一人だけになっているライトの方を向く。
ガードシルも同調するように向いた。


ピースの二人は同時にヴィル達の方に向かっていた。
ハーツがライトをダイヴァがガードシルとヴィルの方に向かっている。
ここまでは両陣営とも作戦通りである。

『ボロボロのくせにしつけぇんだよ!』

『お互いにな』

ハーツが間合に入ると動きを止め
ライトとにらみ合う形になった。
それを見て
ガードシルは大剣を向かってくるダイヴァの方に刺し
また土を操ろうという構えに入った。
その瞬間向かってきたダイヴァは走りを止めその場に立ち止まる。

-予想通りだな-

『スキルが効かないと思い込んでるようだな』

ガードシルがニヤリと笑うと
片手で大剣を何故か斜めに振り抜く。
ダイヴァは一瞬動きを止めてしまうが
すぐに狙いが分かる。
しかし、分かったところで彼には止めるすべはなかった。

土の隆起はハーツに向けて進み
そのまま防御できずに激突した。

その瞬間にライトもゆっくり前に倒れ込む。


『囮だったのか・・・あの男は』

『いや、どうだろうな。
ライトさんは時間さえあれば復活できるからな』

やや動揺しているダイヴァに
ありもしない嘘をガードシルが続けた。
ダイヴァはライトのスキルをわかったつもりでいたが
今の一言で、また何かを考える。


『ついでに言うとよ、俺のこの大剣は飾りみたいなもんだから
お前のような格闘タイプは俺の得意とする分野だぜ。
ラウドの時のように気絶で済めばいいけどな』

大剣をおもむろに横に刺すと
腕を回して準備運動をガードシルははじめた。
だが一方のダイヴァはその言葉が嘘であることを見抜いていた。

『無理はしないほうがいいよ。
おそらくスキルを使い果たしたってことだろ?
あれだけ大掛かりのスキルは
そんなに使えるもんじゃないからね』

ガードシルは言葉にこそ出さなかったが
表情でその事実を認めてしまった。

それを見てダイヴァの表情が硬直する。

『そこの王子以外は眼中に無い。
さっさと俺の拳で寝ろ。
これ以上のつまらん茶番は必要ない』

言うと同時にガードシルではなく
ヴィルめがけて一気に走りこんできた。
その急な変化に今度はガードシルの動きは一瞬止まり
その隙を逃さず
ダイヴァの拳がガードシルの顔面をとらえた。
しかも
走りながらであるためその威力は通常の比ではない。
防御体勢が全く取れなかったガードシルは
ヴィルより後ろまで飛ばされる。

ダイヴァはそれで終わらず
迷わずヴィルの目の前まで走っていく。
ヴィルも一応防御の型を取るがかなり弱弱しい。

その型を見てかダイヴァは目の前で動きを止め
間合いを詰めていく。


しかし
そのダイヴァの動きが急におかしくなる。
何故かダイヴァの足には光の針が刺さっていた。

『どういうこと・・・だ?』


そのはるか後ろ
つまり港から一人の男が登場した。

『兄貴に手を出してみろ。
ここからは帰れなくなるぜ』

戦艦と共に沈められたはずの
似合ってはいない黄色のサングラスをつけた
シェルがそこにはいた。

『貴様・・・スピードに"はめられた"筈じゃ・・・』、

『あぁ。ラウドがいなけりゃ
今頃、船と共に深海だったろうぜ』

シェルの右腕はハーツと同じように光り輝いている。
それをダイヴァが不思議そうに見ている。

『確かこの"針"は熱がどうとか言ってたよな。
ライトの痛み感じてみるか?』

シェルはダイヴァがスキルを無効にすることを分かっている。
だから今現在
足に刺さっている光の剣の熱効果も効いていないと思っていた。
しかし実際は
ダイヴァは無効に出来ていなかったため
この状態でもダメージは蓄積されていた。
それが自然と表情にも表れる。

『くっ、
北のサルごとぎにこんな所で・・・』

その表情を見流さなかったシェルは
ダイヴァに向かって走り出し
右腕の光が消えたと同時に拳をぶつける。
すると完全にダイヴァが防御したのにもかかわらず
勢いよく吹き飛ばした。


『ラウドのスキルって、結構面白いな』

使った右腕が痺れているのか
シェルは手首を何回か振る。

そして言葉の通りに
今度はラウドのスキルをシェルが使った。
シェルのスキルはかなり特殊であり
自分で"受けた"スキルなら
ある程度使いこなすことができる。

【ものマネ】

というスキルらしい。

ちなみに
ハーツのスキルは受けていないようで
光の針を最初にライトが受けたときに
少しだけ攻撃を受けていたのだった。


『シェル。
ラウド君はどうしたんだ?』

『ん?
ラウドなら港で寝てるぜ。
俺を助けるために力を使い果たしたようだし』

ヴィルが尋ねると当時に気が抜けたように二人とも座り込んだ。
ガードシルもライトも倒れてはいるが拳を上げて
まずは戦いを終えたことを喜んだ。




港ではラウドが寝ている。

あのあとラウドはスキルの力を発揮することになった。
その波動によってシェルがくっつけられていた天井は壊れ
シェルはようやく動ける状態になった。
壊れたというもののその衝撃はそれほどではなく
シェルも軽い腹痛程度のダメージで済んだ。

一方でスキルを使ったラウドは
息を吸い込んだ時に水を飲んでそのまま気を失ってしまった。
それを動けるようになったシェルが助けたというわけである。




港の戦場はシェル達の活躍により一応の終幕を迎えた。
まだ残っていたピース兵はいたが
すでに戦う気は失せていた。

『この港はライトとガードシルに任せる。
とは言ってもお前らも治療してもらわないとな』

ヴィルはやや苦笑いしながらも
山のほうを向き厳しい表情をした。

『多くの犠牲も出してしまった・・・。
自衛兵といえども、この国の住人なのだ』

『兄貴。
仕方ないって言葉は嫌いだけどさ
今生きている人たちで、残していくしかないだろ。
今日の悲しみもさ・・・
それより、まだピース達はいるんだろ』

『・・・それもそうだが、早く城に戻らないと。
ピース兵の一人が妙なことを言っていた』

『・・・親父がいなくなったってことか?』

『ああ』

そう答えたがなぜが首を横に振る。

『シェル。
これから監視施設に向かおう。
城の状況を聞きながら今後のことは考えるしかない』

『・・・いや、もう少し待ってみようぜ。
山を見てみろよ』

シェルは山のほうを指差すと
一台の小型のレッドフェアリーが港に向かっていた。

それはログレスに向かったディル達が乗っていた物であった。




―ノイズ国・ミディ港編―

敗者 ハーツ【ピース】
     ダイヴァ【ピース】

 被害 ミディ港・港町  
    レッドフェアリー
    ノイズ国自衛兵
ピース兵







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