第28話 『対ピース戦〜ノイズ国ミディ編』





『兄貴・・・俺は船に行くぜ』

ラウドとガードシルがピース兵であるダイヴァとハーツと対峙しているその後ろでは
シェルと、ライト、ヴィルがその戦況を見るかたちになっていた。

『シェル。やつらピースの狙いはフォラミューズらしい。
気持ちは分かるが、あの戦艦は俺に任せておけ』

戦いで傷を負っていたライトはその場に座っていたが
ゆっくりと立ち上がる。

『ライト、それも危険だ。
あの砲台ならここも射程圏内だ。
だからといってこれ以上港に向かうと戦いに巻き込まれてしまう。
おそらく向こうが砲弾を撃ってこないのはライトの能力を把握しているからだ』

ガードシル達の方を見ながら額に指を当てて考え込むヴィル。
それを聞いてライトは何もいえなくなるが
シェルはある決意をした目になっていた。




『ラウド君はまず見ていてくれよ』

大剣を一周させたガードシルは
それを雪の上にまっすぐ刺した。
さらにその剣を両手で持ち腰を落として構えた。

『何する気だ?』

速攻でマシな方とラウドが思っているダイヴァに攻撃をしようと思っていたが
ガードシルが何か仕掛けているのを見てその足を止めた。

するとガードシルが雪に刺した大剣から何かが出始めてきた。
それは港の近くにいるダイヴァとハーツに向かっていく。
その動きが港に近づくと大きくなり正体が現れた。
なんと土が隆起していた。
その隆起は狙いすましたかのように二人のピース兵のほうに向かっていき
衝突した。
その隆起を受けてハーツは空に打ち上げられるが
ダイヴァの周りだけは何もなかったようにそのままであった。

『・・・。
ライトさんが言っていた意味はこういうことか』

大剣を雪から抜くとガードシルはそれを持って
空に打ち上げられて雪に落ちたハーツの方に走った。
ラウドはガードシルのスキルにやや驚きを見せたが
一瞬で遅れただけでダイヴァのほうに向かっていく。


『土のスキルは厄介だが、まずはこの少年が先だな』

ダイヴァは上着を脱ぐと向かってきたラウドの拳を拳で受けた。
次はダイヴァが右足で蹴りを入れるが
ラウドは一瞬下がってそれをかわす。
かと思うとそれを反動にしてまた右拳をダイヴァにぶつけようとする。
それをやや斜めになっていたダイヴァの左足が器用に蹴り上げる。
その蹴りでラウドが後ろに腰を打つ。

『お前、結構やるな』

起き上がるとダイヴァに拳を向けた。
そのダイヴァは首を左右に振り、準備運動のような仕草をした。

『君もこの国の自衛兵か?
相手にならないな』

『自衛兵じゃないけどさ、
あれぐらいで相手にならないって決め付けるなよ』

やや苦笑いをしてラウドも上着を脱ぐ。
そして拳同士をぶつける。



ハーツの方に向かったガードシルはその手前で止まると
再び剣を雪に刺した。
その瞬間ハーツが一気に起き上がると
ジャンプをしてガードシルに飛び掛ってきた。

『ダミーに引っかかったら"ダミ"だな』

すぐに剣を片手で抜くとその剣でハーツを叩く。
そのハーツも一瞬の動作で両腕でその剣をガードし
叩かれて倒されたが、すぐに手をそらせてバク転して起き上がる。

『くだらねぇギャグ言ってんじゃねぇぞ』

ハーツは少し後ろに下がると
左のポケットから赤色のサングラスを取り出し顔にかけた。
この行動にはライトが動く。

『二人とも目をつぶれ!』

ライトがシェルとヴィルに言うと
3人とも下を向いて目をつぶった。

一方で一番の被害となりそうなガードシルだが
彼にはサングラスがあるためほぼ無効であった。
それでもハーツは足を広げて
両方の人差し指と中指をこめかみのほうに持っていき
奇妙なポーズをとる。

『サン・ナックル!!』

ハーツは何かとスキルに技名をつけるのが好きらしく
この奇妙な技にも名前を付けて、いつも叫んでいた。
そう叫んだハーツ自身が強い光に包まれて
その姿を直視で見ることが出来なくなっていた。

しかし、ガードシルにはほとんど効果はなく
その奇妙なポーズを続けるハーツに向けて
再び雪に剣を刺して土を隆起させる。

だが、その瞬間ハーツはその構えをやめて、隆起に合わせるようにジャンプをした。
ジャンプといってもその土の隆起は5m以上にもなり
とても飛び越せる高さではなかった。
それでもハーツはその隆起している土にうまく乗って今度はそのまま着地した。

『同じ技を2回も食らうかよ!』

着地したその場でハーツは右ポケットに手を突っ込み何かを持つ。
するとその拳が強く光りだす。
ポケットから出すと光ったままの拳でライト達のいる方にそれを投げつけた。

『サン・ニードル!!』

ガードシルはその物を止めることは出来ず
後ろを振り返り下を向いたままのライト達に

『ライトさん!何かそっちに行ってます!』

というのが精一杯で剣を抜くと
投げ終わったハーツに向かっていく。


ガードシルの声ですぐ顔をあげたライトだったが
その目の前に光が差し込んで何かがライトを刺した。

その何かは近くのシェル、ヴィルも襲ったが
シェルは目を瞑る前にとっさに黄色のサングラスをかけていて
顔をあげた時その物がヴィルにも襲い掛かりそうになったのを見て
とっさにヴィルごと横に押し飛ばして雪に倒れこんだ。

ライト達を襲ったのはただの針であった。
しかし、それはスキルを使った攻撃であり、通常のダメージではすまない。
しかも光を直視したためにライトはそのまま前に倒れこんで起き上がらなかった。

『ライト!しっかりしろ!』

ヴィルを押し倒したシェルはすぐ起き上がるとライトの方に駆け寄った。
そのライトを仰向けにすると顔はかろうじて傷はなかったが
体のあちこちに針が刺さっていた。
それを急いで抜き取る。

『しっかりしろよ!俺らは大丈夫だからな』

気を失っているライトを何度か揺らすが
目を覚ます気配はなかった。
しかし"シン"の音は聞こえており、とりあえずはほっとした。


それを見てハーツは少々苦笑いをしたが
奇妙な笑い声を上げた。

『この針は俺特製の無数の光の剣。
例え致命傷を避けても、その針を抜いても、その熱がその傷に襲い掛かるぜ』

シェルの表情は一気にきつくハーツを睨んだが
当人のハーツはそれを見て笑い
そしてまた右手をポケットにつっ込んだ。

ライト達の状況を見るために
一瞬振り返っていたガードシルは
再びハーツの方に振り返り剣をハーツに振りかぶった。

しかし、それは軽く避けられ
逆にハーツはガードシルにその針を投げた。

振りかぶったあとだったためそこから動けなくなっていたガードシルだが
すぐに剣を雪に刺すと
ガードシルの目に前に巨大な土の壁が出来上がった。
ハーツの"針"は全てその壁に刺さった。
だが、その瞬間

『サン・バースト!!』

ハーツは拳同士はぶつけるとその土の壁が粉々に爆発した。
その粉々の土の塊はガードシルに当たり
前のめりになっていたためそのまま前に倒れこんだ。



ちょうど光を背中に受けるようになっていたラウドは
後ろがまぶしいという感覚だけで、ダイヴァにとにかく肉弾戦を仕掛けていた。
一方でもろに光を受ける方角のダイヴァはかなり戦いにくくなっていた。
それでもラウドは一度も攻撃を当てることが出来なかった。
ラウドにも格闘経験はあったが、それはほとんどがマルグマであり
人間のしかもスキル使いとの戦いはほとんど未知であった。
一方のダイヴァは、こういう戦いに慣れており
スキルに毛が生えた程度のラウドの攻撃は問題がなかった。

『もう止めたまえ。
君がいくら攻撃しようとも、私には当たらないよ。
私は格闘のエリートなんでね』

こういうことを言う人に限って、実力はたいしたことはない
そうラウドは思っていたが、この男は実力も備わっていることを実感していた。
しかし、弱気にはならずに、さらに強気になる。

『攻撃が当たれば、お前なんてたいした相手じゃないぜ』

また拳をぶつけると、笑みを作る。
だが、それにはダイヴァが逆に笑みを返す。

『当たらないから、君は弱いのさ。
まだ、相手が控えているのでねここでおしまいにするよ』

ノーガードの状態のダイヴァはそのままゆっくりとラウドに
間合いを無視して近づいてくる。
ラウドの間合いに入ったことでラウドは
すぐ拳をダイヴァにぶつけようと動かした。

それはノーガードのダイヴァが軽く避けて
逆に無防備になったそのラウドの脇に拳をぶつけた。
さらに連続してガードが甘くなっている部分をたたみかけて殴りつける。
ただ、唯一ラウドが救われた点は
ダイヴァの攻撃力はそれほど高くないということだった。
そのため連続攻撃を受けてもなかなか倒れるまでにはならなかった。
それでも最後に顎にアッパーを食らいそのまま後ろに倒された。


『なかなかしぶとかったね。
というより、国に関係ない者が
突っ込んでいい戦いじゃなかったってことだね』

倒れたラウドを横目にダイヴァがシェルの方に向かっていく。
そして完全にラウドを通り過ぎた時

『確かに俺はこの国には何の縁もないさ・・・
でもよ、一ついえることは・・・』

ゆっくりとラウドは立ち上がりダイヴァのほうを向く。

『何も関係ない人や町を平気で壊すことのできる
お前らには腹が立つってことだぜ!』

うしろ向きになっていたダイヴァに再びラウドが殴りかかる。
今度は不意打ちに近かったため
振り向きざまに手のひらでラウドの拳を受けた。
だが、受けきれずに飛ぶようにダイヴァが倒れる。

『よっしゃ!やっとでたぜ』

拳同士をぶつけたラウドは
ようやく波動のスキルが出たことを喜んだ。
今までは普通の打撃だったので仮にダイヴァに当たっても
普通に受け止められていた。
そのことでダイヴァもラウドがスキル使いではないことを認識しており
スキルでの攻撃はないと思っていた。

そのため突然のスキル攻撃で
スキルを無効にすることが出来るダイヴァだったが
そのスキルをもろに受けてしまった。

攻撃を受けたダイヴァがゆっくり起き上がると
シェル達の方には行かず、ラウドのほうに戻ってきた。

『驚いたよ。まさかスキルを隠していたとはね。
さすがの私もちょっと効いたね』

波動を受けた左手のひらを振りながら
笑顔でラウドに詰め寄る。
だがその笑顔は不自然なモノにみえた。
それを見てラウドは片腕を使って挑発した。

『君は先ほど、何も関係ない人と言ったが
私達ピースの保護を受けるのを拒んだだけではなく
世界的価値のある七秘宝までも独占しようとしている。
それはこの国の者にとっては当たり前かもしれないが
世界から見れば犯罪なのです』

ダイヴァはあえて挑発に乗るように構えをすると
自分の間合い手前までラウドに近づいた。

『自分達の思うようにならなかったら力づくかよ?
保護って言えば聞こえはいい感じだけどさ
あんた達ピースは俺ら北の者を支配したいだけじゃないのか?』

ラウドも構えをしたが
すぐに左腕でダイヴァに殴りかかる。
それをダイヴァは軽く避けるが
ラウドは最後まで振り切らないで逆に右でダイヴァの顔面を殴りつける。
だが今度はスキル攻撃とならずにただの打撃になった。

先ほどまであれほど攻撃が当たらなかったラウドだったが
立て続けに攻撃をヒットさせた。
それにはダイヴァのスキルが関係していた。
彼のスキルはスキル攻撃を無効にすることが出来るのだが
そのスキルを使うにはある程度のタメが必要だった。
それは見た目にはほとんどわからないほどの時間ではあったが
ラウドの攻撃を避け続けるにはそのタメをする余裕がなくなっていた。
しかも不規則なスキル攻撃なため、突如として波動攻撃を受けることを警戒してしまい
それがダイヴァの防御に迷いを生じさせていた。
加えてラウドはスキル使いではないので
意識してスキル攻撃をする事は出来なかったが
ダイヴァはそれを演技と勘違いしていた事も要因になっていた。



もう一方で
ハーツのスキルによって倒れたガードシルだったが
ゆっくりと立ち上がると雪に刺した大剣を片手で抜き
ハーツの方に向けた。

『もう"それ"は投げさせないぞ』

再び剣を雪に刺したが今度は今までより前に刺さっており
しかも片手で剣を持って構える形になった。
その構えにやや警戒してハーツは少し後ろに下がると
再び右ポケットに手を突っ込んだ。
その瞬間ガードシルは刺さった剣をハーツの方に振り上げる。
それと同時に今までとは違う土の隆起が
高波のようになってハーツの方に向かっていき
3メートル以上の土の波がハーツを襲いつけた。
ハーツはそのまま土に埋もれる形で後ろに倒された。

『・・・あとはあの船だな』

大剣を肩に担ぐと黒船の方を向き
苦い表情をした。


『サングラスのおっさん!そのスキルで俺を攻撃してくれ!』

突如後ろから声がかかった。
ラウドが横目でガードシルの攻撃を見て何かを思いついたようである。
ガードシルは一瞬シェル達の方を向きその言動を確認するような表情を取ったが
気絶したライトのそばにいたシェルは
やや苦笑いをしてうなづいた。
そして先ほどハーツに食らわせた時と同じように片手で剣を持ち雪に刺した。

『後ろだから気をつけろよ!』

ガードシルはラウドの背中に向けて剣を振り上げた。
しかし当のラウドはそれを聞いていない様にダイヴァの方に構えをして動かない。
それをダイヴァは不気味に感じていた。


土に波がラウドに襲いかかろうとしたとき
別の方でも動きが起きた。

『兄貴。ライトを頼む』

ヴィルのほうを向かずにシェルは立ち上がるとそのまま黒船に向かって走り出した。
それというのも、黒船の砲台がちょうど先ほどハーツが倒された時に動き始めていたからである。
砲台の狙いは自分とヴィルであることは分かっていた。

ライトが気絶したことで砲弾を受け取るスキル使いもいなくなっていたため
その場に二人でいるのは危険と感じたのようである。
ヴィルはそう思ったからこそ何も言わずライトの方に行くと
剣を振り上げたガードシルの方にライトを引きずるように背負い向かった。
その行為はガードシルの援護を受ける事と、砲台の射程範囲から外れる事を狙いとしていた。
ヴィルはシェルと違いほとんど戦闘技術はもっていなく、スキルも持っていない。
弟をおとりにするのは胸が痛んだがこればかりはどうにも出来なかった。

だが
ヴィルの考えとは別にシェルはそのまま黒船に乗り込む考えがあった。
今までは黙って戦いを見ていたが本来シェルも前線で戦うタイプであり
何よりも共にレッドフェアリーに乗ってミディ港にやってきた自衛兵達が
その砲台によって殺されていった事も我慢できなかった。
砲台が自分の方に向いた事を確認すると
その場に留まり土の波が襲い掛かりそうなラウドの方を見た。


ダイヴァはラウドが土の波をギリギリまで避けずに待ち
その場にいる自分も巻き込む作戦だろうと考えついてた。
仮に波が来る前に移動しようとしてもお互いの間合いな為
その一瞬の動きがラウドの攻撃を与えるきっかけになる危険があった。
それよりはラウドの作戦を実行させて無傷の方が効率はよいと考えたのである。
ダイヴァは土の波はスキル攻撃であるため無効にすることが出来るのである。

そして予想したようにギリギリでラウドがそこから横に避けたが
その瞬間何故か土の波に向かって拳をぶつけた。

それはラウドにとっては物凄い賭けだった。
土を破壊するには同じくスキルの力でないと拳が逆に破壊されてしまう。
しかもダイヴァに背中を向けることになる。

それはラウドの戦いの勘なのか、それとももともとの力なのか
ラウドの拳は土の波を破壊し、その塊はダイヴァに襲い掛かる。
土の波を避ける事は予想したものの破壊した事には虚をつかれ
避けるにも避けきれない塊が襲い掛かってきた。
これはダイヴァの戦いの勘で瞬時に両腕で防御の形をとることになってしまった。

土の波のスキルはほぼ無効になってしまったが
ラウドは初めから土の波をダイヴァに食らわせることは考えていなかった。
彼がスキルを無効にするということを分かっていたわけではないが
土の塊を浴びせる事でダイヴァが防御体勢になる瞬間を狙っていた。
塊全てを防せごうとしたその時
破壊したあとにすぐに走りこんできたラウドが
拳をがら空きになっていたダイヴァの腹に炸裂させた。
しかも先ほどの勢いそのままにスキルによる波動攻撃になった。
走りこんだ勢いと波動でダイヴァは3,4メートルほど殴り飛ばされてそのまま気絶した。

『土の攻撃を防いでも俺の攻撃は受けれなかったろ?』

最後に拳同士をぶつけてガードシルのほうを向き親指を立てた。
それを見てガードシルは大剣を一周させた。

『あれ?そういえばシェルは?』

ラウドは戦いを終えて周りを見るとシェルの姿がない事に気づく。
それに気づかされたようにガードシルとヴィルも周りを見渡す。

『あいつ・・・まさか』

そう言いヴィルは黒船の方を見た。



ヴィルの予想通りに
ほとんどの人の目はラウドとダイヴァに向けられていたが
シェルだけはラウドが土を破壊した瞬間に一気に黒船の方に走り出していた。
黒船にはまだ数十名のピース兵が残っていたが
彼らはスキル使いの戦いを見て出るに出られない状態で
船を守るという名目で居残っていた。
そんな程度ではシェルの相手にならない。
入り口いた数名のピース兵を一撃で倒すと
中に入り込んだ。

『レッドフェアリーを打ち落としたやつ!出てこい!!』

かなり頭に血が上っていたの
か誰彼構わずシェルはピース兵をのしていく。
その奥に入ると操縦桿のある部屋についていた。
そこにもピース兵しかいなかったが、
明らかに他の人物と違う格好のした一人のピース兵がいた。
シェルは直接見ていないので分からないが
ハーツとダイヴァと同じタイプのヘルメットを被っていた。

『お前がここのリーダーだな』

そこで上着を脱ぐとシェルは構えをする。
だがそのピース兵は特に構える事もなくシェルに近づいてくる。

『表じゃずいぶんやってくれたようだな。
でも、王子がじきじきに来たら
護衛達が戦ってた意味はないわな』

そのピース兵は話しながらシェルに近づき
肩を触ってそのまま操縦桿室を出ていった。

『・・・?』

シェルはそのピース兵に触れられた瞬間に違和感を感じたため
一瞬気を抜かれてしまったが
すぐにそのピース兵を追いかけるために部屋を出ようとした。

ところが押し出されるように部屋に押し戻された。
何かのスキルで部屋から出れなくなってしまったようである。

『とりあえずこれで砲撃はなくなったけど・・・
スキルの性質さえ分かれば、こんなところさっさと出れるのに。
兄貴達大丈夫だろうな』

シェルはどうにもならないといった感じでそこに座り込む。
その瞬間、また違和感を感じた。
その違和感が嫌な予感に変わったのはすぐだった。
シェルはそのまま立ち上がる事も出来なくなった。

−船にくっつけられている感覚だ・・・−



シェルを何かのスキルで閉じ込めたピース兵は
一番地下にあるの火薬室にきていた。
そこである仕掛けをしたのちその黒船から最後の軍車に乗って外に出た。
そして一度軍車から降りると船に触れ
何かの力を腕から船に伝えている動作をした。
ちなみにシェルが操縦桿室で座り込んだのはこの時であった。

『帰りはどうするかねェ』

黒船を見つめて意味不明にそうつぶやき
再び軍車に乗ってラウド達のいる港町へ向かった。

一方で
ラウド達もその軍車の機械音で誰かが出てきたことを感じていた。
しかも
その音に合わせるように倒れていたハーツがゆっくり起き上がった。

『クソ遅せェよ』

軍車の方を向きながら同時に気絶状態のダイヴァも見た。
その状態を見て意外にも納得したような表情をした。

ヴィルは軍車が出てきたことには驚かなかったが
シェルが帰ってこない事に不安を感じた。
それをガードシルの方に目で伝える。

ガードシルも不安そうな表情になったが
すぐに引き戻しヴィルとライトの前に立ち二人を守る構えをした。

ラウドはハーツのほうを横目で見て
起き上がらないダイヴァも少しだけ見たのち
軍車の方に目を向けた。
その軍車がダイヴァが倒れている付近で止まると
中から一人のピース兵が降りてきた。

『思ったよりも苦戦してるんじゃないのか?』

ハーツのほうを向くとヘルメットを外しニヤリと笑った。
その人物はさわやか系の顔立ちで
見た目には善人ぽい感じの男だった。
その正反対徒も取れるハーツは嫌悪感を顔に出した。

『るせぇよ。ここはいいからさっさと合流しとけ』

ほぼ満身創痍のハーツだったが
それは強がりではなくそれでもまだ勝つ事が出来るという
余裕から来る言葉だった。
それをその男は感じたのか分からないが分かったという表情をして軍車に戻ろうとした。


『ちょっと待て。シェルはどうした』

ガードシルはヴィルを代弁するようにその男に言うが
黒船を見てニヤリと笑っただけでそのまま軍車に戻ろうとした。
それでガードシルらはシェルが黒船に残っている事を認識した。

『待てよ。どこに逃げる気だ?』

ラウドが今度はその男に絡むように軍車に近づく。
だがその男が話をする前に

『ラウド君。船にいるシェルを連れてきてくれ!』

珍しくヴィルがそれを防ぐように叫んだ。
ラウドにはシェルが助けを必要なのか分からなかったこともあり

『サングラスだけで大丈夫かよ?』

とガードシルのほうを見て苦笑いしたが

『ラウド君。それは心配"ノイズ"ってことだよ』

ガードシルのかなり厳しい強引なギャグ?によって
ラウドはかなり不安になったが
片手を挙げるとそのまま船の方に走っていった。


『なぁ・・・行っても王子は助けられないと思うぜ』

軍車に向かった男がラウドに助言したが
ラウドはその男を睨んだだけでそのまま黒船に向かっていた。
本当なら相手をしてもいいところだったが
自分の事より相手の事を考える事をラウドは学習したようである。
それは、適わなかったガンプ戦であり
ノイズに来る前のスパイダーとの戦いで実感していた事でもあった。
その男が強いと感じたわけではなかったが
自分の身勝手で、もしかしたらシェルが大変な事になるかもしれない。
そう思った。

しかし、その男の言葉はちょっと引っかかった。
もしかしたらもう手遅れなのかもしれないとラウドは直感した。
それでも目の前に見てみない事には分からない。
そう思い直しその男を無視するように船に乗り込んだ。


軍車に乗っていた男の助言はガードシル達には聞こえていなかったが
ラウドの様子を見て、あまりよくない現状である事を感じ取っていた。
いなくなりそうな雰囲気ではあるが
実質2人を相手しないといけないわけで
ガードシルはちょっと焦りも感じていた。


『あ、そうだ言い忘れるところだった。
国王はもういなくなったよ』

軍車に乗りかけて思い出したようにガードシル達に言うと
そのまま乗り込んで山に向かっていこうとした。

それにはガードシルは動揺した。

『国王がいなくなった・・・だと!』

剣を雪に刺し軍車に攻撃をしようとしたが
ガードシルの疲労度合いを見てヴィルが制止する。

『国王のところにも自衛兵はいる。
急いだところでティープに行くのがやっとの時間だ。
向こうの煽りに惑わされるな』

ガードシルを説得するように言っていたヴィルだが
これは自分にも言い聞かせていた。
何よりハーツがそれを聞いて無気味に笑っていた事も気になった。







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