第27話 『ノイズの終わり』





ミディはあちこちで煙が上がっている。
軍車によって町が破壊され
その軍車は自らの砲撃で破壊され
応援に来た国王軍の自衛兵の乗ったレッドフェアリーは
ピースの黒船によって破壊された。

この世界で言う戦争とは
武器を使って大人数で行うものだけではない。
スキルが武器となり
小数の者でも大戦を起こすことが可能であるからだ。
このピースとの戦いは
のちにノイズ国における戦争の歴史となって
残されていく。


現在の主な戦力となるのは
ノイズ国軍〜ライト、ガードシル、シェル、ラウド、(ヴィル)
ピース軍〜ダイヴァ、ハーツ、(スピードとか言う者)+戦艦
となっている。

『・・・って、おい!ダイヴァ
こいつらってよ・・・』

先ほどライトに殴られて睨んでいたハーツは
ライトから仲間のダイヴァの方に視線を移す。
そのダイヴァがゆっくり笑うと

『まずは、王子様のご登場のようだな』

シェル達のほうを向く。


『あなた方がここにくることは
極秘ではありますが事前に報告がありました。
ですが、私達の独立の件と七秘宝のあるコール地区の件は・・・』

ヴィルが先に出ると
ライトと同様に話し合いを試みようとする。
しかし、これには

『王子様よぉ?あの船が飾りに見えるか?
いや、あんたらノイズが消えてくれるっていうなら話は別だが』

ハーツがヴィルに近寄る。
それをまたダイヴァの腕でハーツの行き先を塞ぐ。

『俺はよ、事情がよく分かってないんだが
まず、町を破壊するのを止めろ。
じゃないと・・・』

今度はシェルがヴィルと並ぶように前に出る。
だが、それ以上先に行かせないようにヴィルが同じく手で制止する。


4人が向かい合ってしばらく時が止まる。
ほんの数秒ではあったが、その空気の重さがそれを感じさせなかった。

その空気を消すように二人がその間に入っていく。

『ヴィル様達は下がっていてください。
少なくともこの二人・・・いや、ピース達には話し合いは通じません』

ライトがヴィルとの間に入ると
そこに一本の大剣も割り込む。

『俺らに任せとけば、"心配ノイズ"ってな。
こいつらがどう言おうとこの国は守るぜ』

さりげないギャグ?と共に
ライトは背負っていた大剣を右手で軽々と持ち
ハーツの方に向ける。


『の・・・のり遅れた』

ラウドは状況が全く読めていなかったために
戦いの場に乗り遅れていた。
だが
その今にも戦いをはじめようとする状況に体が自然と向かう。


『ガードは顔色が悪い方を頼む』

ライトは片手でヴィルとシェルを後ろに下げさせると
ガードシルに命令を出す。
立場上総長であるガードシルの方が命令するものだが
実質的にはライトが最終的なまとめ役になっていた。

『って、ライトさんはボロボロじゃないですか。
一人といわず、残りは任せてくださいよ』

ガードシルがそう言いながら片手で大剣を一周させる。

『選手交代って事で、
俺はちょっとマシなほうを相手するぜ』

ライトの肩を叩くと
ラウドが遅れながらに戦場に加わった。

『ラウド・・・遊びじゃないんだぞ』

シェルがそのノリのいいラウドを見て心配するが

『あぁ。今までの相手と比べれば、なんでもないな』

そのノリが急に真面目モードに変わり
いつものように拳同士をぶつけて気合を入れる。

『ラウド君。勝手に協力してくれるのはありがたいけどな・・・』

一度はシェル達と同じく押し出された形のライトだったが
再びラウドの隣に立ち言葉を返そうとした。

『"勝手"だからよ、ほっといてくれよ。
俺もこの状況はよく分からないけどさ
あの港町を破壊してるしよ、
何より俺らが乗っていた乗り物ごと爆破したしな。
普通許せないだろ?』

その言葉を聞いたライトが逆にラウドの肩を叩くと

『ありがとう。ラウド君』

ヴィルとシェルと共に山側に下がった。


こうして戦いは
ガードシル対ハーツ
ラウド対ダイヴァという形になろうとしていた。


そのシェル達がミディに到着する少し前。
レスの城にて。

『城周辺異常なし』

『城内異常なし』

城内の中庭で自衛兵軍長代理となった
テルとキールが会話している。
この二人は以前城門で警備していた二人である。

その様子をある男が見届けていた。

『あ、クロバ様。警備は万全です』

『外も異常はありません』

二人は愛想を振り撒いていたのだが
クロバは特に何も言うわけでもなく城の中に戻っていった。


『なぁキール。最近クロバの様子変じゃねェ?』

いなくなったのを確認して素で二人は会話する。

『一応クロバ様って言っておけよ。
ファラウェイ"ズ"に嫁いだだけで
様付けで呼ばないといけないのは、ちょっと嫌だけどさ。
それに変なのは昔からだぜ』

『噂じゃ、今回ピースをここに呼んだのはクロバじゃないかって話だぜ』

テルの一言にキールはやや驚く。

『は?
なんでだよ?』

それをわかっていたかのように
テルは続ける

『どっちかというとクインさんが政権復帰に積極的じゃないから
クロバがファラウェイ"ズ"の"為"とか言って頑張ってるらしい。
それにもともとクインさんだって
ノイズ国になる直前まで別の国に行ってたらしいしさ』

なんでそんなことを知ってるのか?
そういう不思議な顔をキールはしていた。
この二人は同い年なのだが
テルはキールよりも博識だった・・・
というよりはキールが余りそういう情報を知らなさ過ぎるだけだった。
テルの話は続く。

『あとさ、クインさんは塔に熱心だろ?
あれはさ、そこにある七秘宝を・・・』

と言いかけてテルは話すのを止めある場所を見た。

『テル、どうした?』

そう言ってキールもその場所を見る。


『あら?続けてもいいのよ』

その場所は城内にある別荘の方角で
そちらからクインがゆっくり歩いてくる。

『これはクイン様。先ほどの話は・・・あの〜
近頃そういうデマをいう自衛兵がいて困るなぁということでして・・・』

テルは明らかにしどろもどろになっていたが
クインもそれをとがめる様子もなく

『確かに、私はファラウェイズの正後継者としては失格よ。
国を作ること以上に惹かれるものがあるからね』

『い、いえ。
決してそんなこと・・・』

テルが弁明しようとしたがそれを聞く振りもせず
クインも先ほどクロバが戻っていた城の中に進んでいった。


『やばいぞ・・・この話は絶対クロバにも伝わってしまう。
そうなったら俺はここにいられなくなるかもしれない・・・』

クインがいなくなったのを確認したテルの顔は青ざめていた。

『こんな時にそんな話をするからだぜ。
でもよ、自衛兵の管理はヴィル様がやっているから大丈夫だって』

笑顔のキールはテルの肩を軽く2度叩いた。
だがテルの表情は変わらない。

『キールも俺がおしゃべりだと思ってんだろ?
他人事だと思って・・・』

テルは完全に自虐モードになっていた。
それをみかねたキールは懐から写真のようなものを取り出すと

『ほら、ミーシュアちゃんの"生カード"を一つやるから元気出せよ』

その写真のようなものをテルに渡した。
それを見たテルは表情が一変した。

『おいキール!いつの間に撮ったんだ?
ミーシュアちゃんはなかなかカードに残してもらえないっていうのに』


このミーシュアという女性はノイズの中でもけっこうな美人で
しかもティープで自衛軍長もしている。
頭もそこそこいいらしい3拍子揃った女性ではあるのだが
性格がちょっと変わっているのが欠点で
なかなかカードに残してもらえないのもその一つである。
ちなみに、
カードとは写真がカード化したものと思ってもらっていい。
カメラのようなもので対象を撮るとカードのようになって写されるのである。
カードに残すとは写真に写るという意味合いで使われる。
さらに彼女の話はあるのだが、後ほど紹介することになるだろう。


『新人自衛兵のマイルって男がカードマニアでな、
そいつから"お仲間の印に"いくらか頂戴したんだ』

懐から別のカードを取り出し、自慢げにテルに見せる。

『ナンパ隊長の異名はだてじゃないな』

嬉しそうにテルは貰ったカードを大事に懐に入れて
持ち場の城外に戻っていった。
それを見てキールは

まったく、現金な奴だよ・・・

と思いながらも警備に戻っていた。




城の中
あれからノイズは会議室から出ず
落ち着かない様子で
イスに座ったり立ち上がったりしていた。

−忘れていた頃に戻ってきやがった・・・。
奴からの手紙には"時間が来た"と書かれていたが
15年も経った今ごろ何があるというんだ?
奴の性格ならすぐにでもここを取り戻すはずだ。
それをせずに15年。
・・・。
考えたって始まらん。
しかもバカな事に息子達を港に向かわせてしまった。
奴の復讐は始まってるんだ-


会議室のドアが開いた。
クインが会議室に戻ってきて
まっすぐ奥にいるノイズの方に向かう。

『ミディからの情報は聞きますか?』

クインは会議室に行く途中にミディ港と通信を行っていた。
ミディ港の通信はライトがいた監視施設との通信である。
ライトは港に向かったがそこには情報を伝えるため
数名の自衛兵が残っていた。

『聞かない方がよさそうだ』

ノイズは奥のイスにゆっくり座ると
隣のイスを引いてクインを座らせようとした。

『私は立ったままでいいですよ。
それよりバーディスの動きですが
どうやらコールに向かっているようです』

クインの表情は強張っていたが
ノイズはバーディスの言葉を聞いて
それより引き締められている。

『クインは分かるか?
奴がここを出て行って15年。
この時間の空白は何の意味があると思う?』

ノイズは下を向き右手で後ろの髪を軽くつかんだ。


『私が悪いのかもしれません。
バーディスの目的は、あなた方と七秘宝なのかもしれません。
つまりコールに行ったと言うことは塔にある七秘宝を奪いに行ったと。
何より私が塔を作っているのは七秘宝の力も関係ありますし・・・』

『・・・それは変じゃないか?
クインは、まだ塔を完成させていないんだろ?
完成しないと七秘宝も"拝むこと"が出来ないって言ってたよな?』

二人は間を置かずに話を続ける。
しかしノイズは下を向いたままで
一方的に話をしているような状況になっていた。

『確かに。
でも次の工程で完成は近いんです。
その情報をバーディスが知っていたとすれば
15年の空白という理由も分かるかもしれません』

『・・・つまり、俺たちをここから追い出すのと同時に
七秘宝も自分の手にするつもりか。
だが、七秘宝は不動のスキルポーションだろ?』

『・・・ええ。
おそらくそうでしょう。
おそらくですが
七秘宝そのものを動かせる何かを用意していると思います』

クインが言い終わったあと
ノイズは顔をあげ立ち上がりクインのほうを向く。

『七秘宝は動かせんことは奴は承知のはずだ。
それよりも、クイン・・・お前はこのときを待っていたんじゃないのか?
ジョカーがこの国を取り戻しにくるこの時を』

さらに表情が険しくなるノイズに対してクインはやわらかくなる。

『それは私がファラウェイ"ズ"だからですか?
塔作りのためにこの国に戻ってきた私が
政権を取り戻そうとでも?
前にも言っている通りに、私にはこの国の事は興味はありません。
それはクロバに任せておりますから・・・』

『なら、なぜS・D症患者の子の件は渋っていた?
いくらピースが来ているという事態とはいえ
許可を出すのは難しい事じゃなかったはずだ』

これにはクインの表情も険しくなっていく。

『私はクロバの指示通りに行ってきただけです。
無責任といわれるかもしれませんが
私の意志なら許可なしでも通してあげました』

『・・・何を怒っている?
自分が思ってる通りにやればいいんじゃないのか?
クインが・・・ぐっ・・・』


話をしていたノイズの腹に何か鈍い音が響く。
何かがノイズのみぞおちを直撃したようである。
そしてノイズはその場に倒れて気絶した。
クインは一瞬困ったような顔をしたが
すぐにイスを手に取ると
そのイスがまるで生きているかのように変化を始めて
長い鉄の棒になった。
それを何度か繰り返してかなりの量の棒が出来上がった。

一方
その間に倒れていたノイズが
奥の壁に吸いつけられるように足から移動し始める。
それは誰かが片足を引っ張って壁に移動させているような光景だった。

クインが棒を持ちノイズに近づくと
その壁の近くにあった本棚の裏の方に手を伸ばす。
すると本棚が左に移動して、本棚があった場所に鉄の隠し戸が登場した。
その扉はかなり頑丈で、クインがやっとの事で開くことが出来た。
そこは真っ暗で4畳もない小さな部屋があった。
そこには二人の自衛兵が気を失って寝かされており
その二人をそこから出した。
その次に持ってきていた棒を触ると
全ての棒が勝手に動き出しその棒が
2人ぐらいが入れそうな小さな檻に変化した。

その檻にノイズを入れて
その檻を隠し戸のほうに移動させそのまま奥に入れ込んだ。


『何を聞こうとしたんだ?あんな奴に?』

クインしかいないその会議室に別の声が響く。
するとそこに七色に輝くサングラスを手に持ったクロバが突然現れた。
さらにクロバが寝ている自衛兵の方に移動し
その二人を触っている仕草をする。
するとそこにいた自衛兵が突然消えた。
その時クロバはサングラスかけて
左中指でサングラスを抑えており
右手でその自衛兵を触っていた。
そして、左手をサングラスから離すと再び自衛兵が突然現れた。


『便利なスキルポーションね。そのサングラス』

クインはそう言いながら隠し戸を締めてその戸にある突起物を触る。
すると先ほどとは逆に本棚が隠し戸を隠すように右に移動した。
これは仮にノイズが気がついて声を出したとしても
ほぼ聞こえない状態と言える状態だった。


『このカメレオングラスだろ?便利ともいえないな。
色を変えるには常にメガネをかけて顔に押さえつけてないといけないしな。
おかけでノイズを運ぶのも片手で苦労したぜ』

かなりベタな名前の七色のサングラスだが
かけると本当にカメレオンの目玉のようになる。
これはその名前の通りに触れた対象の色を変化させる事が出来るものらしい。
ただ
それには条件が必要らしく
常にメガネを顔に抑えていないといけないという
なんとも間抜けなスキルポーションである。
しかも
押さえ続けていると普通にスキルを消費するので
使える回数(時間)はスキル使いなどによって変化する。
ちなみに
会議室にはクインと共に入ってきたが
そのときから透明になるためにサングラスを抑えていた。

クロバは気絶している自衛兵に近づき
懐からナイフを取り出すと、突然そのまま突き刺す。
これはもちろん即死だが
死んだのを確認してクインに合図を送る。

『ノイズも俺の手で殺れれば言うことなしだったんだが』

そう言い残し後ろに下がる。
クインはそこにゆっくり座ると
二つの死体を触りその人を変化させた。
一人がノイズそっくりに、もう一人がクインそっくりになった。
このクインのスキルはちょっと説明が難しいが
物の材質はそのままで別の物に変化させて
新たな物を作り出すスキルというところだ。
【同質物変化】というスキルらしい。


『じゃ・・・頼む』

クインがうつむいてゆっくりと立ち上がると
カメレオングラスをかけたクロバが腕をつかむ。
それと同時に悲鳴とも絶叫ともとれない声をクインがあげる。


その声で近くにいたキールが会議室のドアを開いた。

!!

『国王!クイン様!』

キールの目の前には
心臓にナイフが刺さっているノイズと刺された跡のあるクインがいた。
もちろんこれはクインが作った偽者で本当は自衛兵に過ぎない。
そして本物のクインは透明になっており
クロバと共に"自動で開いたドア"から移動した。


『医者はいないか!大変な事が起こった!誰かこい!』

キールの声で城内が騒然となり
クイン達が移動する音も悟られない状況になった。
しばらくしてテルもそこに駆けつける。

『な、なんでこんな状況に?
・・・おいキール!
クロバ・・・様は?』

それにはキールも他の自衛兵も首を横に振る。
それを見てテルの表情が一気に凍りつく。

『疑いたくないが、こういう状況になって得をするのはクロバ様だ。
まだ城の中にいるはずだ!探すぞ』

周りの自衛兵に命令するが、誰も賛同するものはいない。

『テル。落ち着け。
こうなった以上クロバ様の身柄も危ない可能性がある。
意味合いは違うが皆でクロバ様を探すぞ。
医術班は国王とクイン様を頼む』

テルの肩を叩き、部屋を出る。
テルは半分納得できない顔だったが
何かを思って同じく部屋を出た。


この騒動の中透明になったクインとクロバは
小型のレッドフェアリーのある場所に来ていた。
そこに来る手前にクインだけが透明を解除して姿を出したと同時に
今度は先ほど殺した自衛兵の一人に自分を変化させた。
ただ
人間のような動くものを変化させ続けるのは
ひどくスキルを消費するため普段はあまり行う事はない。
そういう状況でその部屋にいる自衛兵に"事情"を話す。

『怪我をしている以上
変に動かすよりログ"ス"を連れてくる方が早い。
扉を頼む』

出口がそこにいる自衛兵によって開かれると
自衛兵に変化したクインと透明のクロバが乗った
小型レッドフェアリーはログレスに向けて走り出した。


城から見えなくなるところまで進むと180度回転し
ミディの方角に向けて走り出した。
しかもその時クロバによってレッドフェアリーも透明になった。


城の中ではクロバ捜索が続いていた。
テルは犯人がクロバだと思い込んでいるため逃げると想定し
少し前にクロバ達が乗った小型レッドフェアリーのある部屋に向かった。

『おい!ここにクロバ様がこなかったか?』

そこの自衛兵は扉を閉めたあとだった。
それを見てテルがレッドフェアリーの数が少ない事を感じる。

『誰か今ログレスに向かったのか?』

『はい。マイルがログレスに向かいました』

キールが指示を出したのか。と思い
それ以上はテルはその自衛兵に話をしなかった。
そしてその部屋を飛び出して
いるはずもないクロバ捜索を続ける。


『レスは後はジョカーさんが本当にノイズを殺っておしまいだな
残りはミディにいる生意気な子供だけだ。
だが、スピード達がいれば問題なしだな。
フフ・・・これで、ノイズも終わったな』

メガネを外し透明を解除したクロバは不気味に笑い
クインは

『私には関係ないけどね』

そう言いながらもクロバとは別な笑みを作っていた。
そしてそのレッドフェアリーはコールに向かっていく。




レスでそういうことが起こっていた事も知らず
ミディではライトとハーツ、ラウドとダイヴァの戦いが
今始まろうとしていた。







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