![]()
第24話 『封鎖された国』
レナは先に床につくと すぐにそこにあるベットに横になった。 -体は楽になったけど なんか心が辛くなってきたなぁ- レナはお酒を飲むと 昔の事を思い出すタイプらしく そのせいで少しナイーブになっていた。 -私は花を見つけるまでは どんな事があっても絶対生きなくちゃ。 ピスカで大切な仲間を失った・・・。 でも そこで新しい人たちに出会った。 そしてクレセアを知っている人にも出会った。 クレセアはもういないけど だからこそ、私がその分もしっかり生きなきゃ。 アヤメおばぁちゃんの分と一緒に- 色々考えているうちにお酒の力もあり その後数分もせずにレナは眠りに入った。 それはちょうど ラウドがシェルに瓦割りで勝った頃であった。 次の日 その日は雪も降らない晴天だった。 外は放射冷却が起きており 体を刺すように空気は冷えていた。 それに慣れない者は 寒さで目が覚める。 『家の中だっていうのに寒いねぇ』 レナは昨日の調子も良くなり 早速シェルに文句を言っていた。 しかしながら 一応暖房設備は配置されているのだが 南地区に住んでいた本人には 耐えられない寒さだったようだ。 『レナ・・・悪いけどさ 今日はまだ寒くないほうだよ』 温度計を見ながら シェルは少しがっかりしたように答える。 ちなみに温度計は 10℃を示していた。 『というかラウド起きてこないんだけど まだ寝てるのかなぁ?』 それを聞いて 『"熊"は冬眠する季節だからな』 とシェルは笑みを浮かべながら返した。 少しだけだが笑いが部屋を包んだ。 その後 ディルがラウドを起こして 全員が目を覚ました。 『やっぱ雪国は寒いよな。 これだったら ピスカにいるマルグマも冬眠するよな』 と笑みを作ったラウドだが それを聞いてまた笑いが起こる。 本人だけは意味もわからず キョトンとしていた。 わけのわからないラウドは 唯一冷静だったレビンに尋ねると 『下らん事や』 とは言うが レビンの顔にも不器用ながら 笑みがこぼれていた。 そんな中 シェルはライトの二人が何か話しあって 何かを交換したあとに離れた。 『ほとんど何も出来なかったが ここでお前らとはお別れだ。 この別荘の裏口に "レッドフェアリー"の新型をおいてあるから それに乗ってレスに向かいな。 昨日乗ったやつとは比べもんにならないほど快適だぞ』 ライトがニヤリとしながら3人に話し掛ける。 どうやらレッドフェアリーとは 昨日乗ったスノーバイクの事のようである。 『昨日の乗り物だったら 俺は歩いたほうがましだったからな。 って、やっぱ乗ってみないとわからないよな』 ラウドは早速興味を示した。 シェルもライトと同じようにニヤリとすると 『ついてきなよ。 昨日とはまた違ったバイクだよ』 そういうとシェルは 昨日と同じく訓練場のほうに歩いていく。 それにラウドがすぐ付いて行こうとするが ライトに呼び止められる。 『君のスキルの使い方は我流かい?』 と小さな声でつぶやくように聞かれたが 『我流・・・かもしれないけど いまいち使いこなせてないんだ。 というか俺 スキル候補っていうものらしいし』 そう言うと 先にいったシェルを追いかけるように走っていた。 それをライトはやや悩んだ表情で見ていた。 -使いこなせない・・・か- シェルは訓練場の近くまでくると 何故か左に曲がった。 そこには昨日は気がつかなかったが 細くて暗い通路が続いていた。 出口を開けると そこにはもう一つ 天井が高い大きな部屋が登場した。 そこには昨日のスノーバイクとは違い 車体が長くずいぶん車高の低い 赤色の乗り物が置かれていた。 唯一の共通点は脚の前方がスキーになっていて 後方がキャタピラになっているぐらいで 後ろ側には6本の太い煙突のようなマフラーがあり 前のボンネットのような所には 羽が生えた人間のような エンブレムのようなものがついていた。 『なんか知らないけど凄いなこれ!』 そう言ったラウドは 一番目にそのレッドフェアリーに乗り込もうとするが 『って、入り口どこだよ』 ラウドの言うようにドアらしきな物もなければ 窓らしきな物もない。 シェルはニヤリと笑うと 乗り物の奥の方に向かう。 ガゴン! というやや大きな衝撃音がしたと思ったら 側面がやや斜めにずれて 両方とも上に持ち上がった。 持ち上がってから気づいたが デザイン的にドアの境目がわからないように ペイントされていたようである。 『これまた凄いけどよ ちょっと待てよ。 この部屋からどうやって出るんだ?』 疑問なラウドだったが 他の人は気が付いているようで ディルが乗り物の前方を指差す。 それと同時にシェルがその方向の壁に向かう。 『あ〜なるほど』 ラウドも納得したところで シェルがいる壁が重低音を出して移動を始める。 『さあ乗ってくれ。 俺の家までは5時間ぐらいで着く予定だよ』 壁は内から外側に移動して そこには白い風景が映し出された。 シェルとラウドが先に乗り込み その後をゆっくりとディルが続き それにつられるようにレナが乗り込んだ。 レビンは少しその乗り物を眺めて 最後に乗り込んだ。 エンジンをかけるとスノーバイクと違う重低音が響く。 昨日の様な壊れそうな感じではないが 雷が落ちるような音が響いている。 そこに高音が鳴ったかと思うと 一気にレッドフェアリーはレスに向けてぶっ飛んでいった。 レスという地域は ノイズ国の中でも最北にあたる。 そこにあるシェルの家というか城は それよりもさらに北にあるログレスを除いては 最北にあたる所に存在する。 その城にはシェルの家族である フォラミュー"ズ"の他に ファラウェイ"ズ"という先住一族が同居する形で存在する。 これは現国王 つまりはシェルの父親である ノイズが提案した方法である。 国がノイズだったら国王の名前までノイズなのだが これにはこの国が独立した事に由来される。 このノイズがノイズ国として独立したのは 今から約15年前。 ちょうどシェルが生まれた年でもある。 それまでは世界政府が管理するという名目で 事実上南地区の植民地であった。 その時にはファラウェイ"ズ"がレス、ティープ、コール、ミディと 4つの地域を纏め上げていた。 とはいえファラウェイ""ズはこの地域の出身者であり この地域の人々には王族のように慕われていたようだ。 だが 前ファラウェイ"ズ"指導者の時 今までは表向きには政府の支配がなかったのだが その時には政府の意向かは不明として 短期間に多くのH・Kを派遣して その4つの地域で勝手な開発などを行い始めた。 それがきっかけで 先住民と政府との対立が深まり 独立運動を起こし現在に至るのである。 現在のファラウェイ"ズ"は ノイズ国独立のために戦っていた。 つまりはファラウェイズ同士で争ったとも言える。 厳密に言うと政府同士でも争っていたわけでもあるのだが。 長くなったが ノイズ国という由来は 二人のノイズが国を独立に進めたからということである。 そしてシェルの父親がノイズ国初代国王になった。 ミディではほとんど目立たなかったのだが 実はこの国は自衛軍をしいていた。 ミディでは先ほどに出てきていた ライトが軍長として指揮していた。 ほかの地域でも微小ながらも自衛軍が滞在している。 そしてここレスでも自衛軍はいる。 城の門には何人もの自衛兵が警備をしている。 これも結局はノイズ国として 独立をしたことにはなっているが まだ完全に 支配を抜け切れていない現状があることが 最大の原因だった。 その自衛兵の中でひときわ大きく 何故かスキーなどで使いそうな 黒のサングラスをかけて 背中に大剣を背負った男がいる。 『お前ら〜? しっかり"ガード"してるか〜?』 その大男は門扉にいた二人に声をかける。 その二人はまたかという表情を一瞬したが すぐに"営業"フェイスになり、軽く会釈をする。 『ん? いくら俺の名前が"ガードシル"だからって ギャグじゃないからな?』 そういうと大きな声で笑った。 この男の名前はガードシル。 自称『親父ギャグを超えたギャグ』を使う男である。 こんなガードシルだが 自衛軍総長も勤めているという。 だが その笑いを止めるように 一人の男が城の中から 門のほうに近づいてきた。 『いいかげん そのつまらない言葉遊びは止めた方がいいぞ』 その男はきちんとした正装をして シェルに少し似た顔をしている。 そう この男はフォラミュー"ズ"の一人で シェルの兄でもある。 名前はヴィルといい シェルとは一回りも年が離れている。 ヴィルは財政大臣のような役割を持っている。 国王である父親は 国という機関については まったくわからないという感じだった。 ほとんどの国の王がそうなのかはわからないが 特にノイズは纏め上げるのが苦手だったようだ。 そういう意味ではノイズ国王はシェルと性格が似ている。 そういうことで 実際ノイズという国を動かしているのは ノイズ本人ではなくファラウェイ"ズ"の一族だった。 『ヴィル様。 これはどうも失礼致しましたでした』 言葉がかなりぎこちないガードシルだが どことなく表情もぎこちない。 『無理に言葉を選ばなくてもいいが 今日はシェルが帰ってくる日だから きちんと迎えてあげてくれ』 そういうとヴィルはまた中のほうに戻っていった。 『シェルが帰ってくるのか・・・ こりゃ、またここも騒がしくなるな』 ヴィルがいなくなって ほっとした様子のガードシルだったが その表情は穏やかになっていた。 門扉にいる二人も嬉しそうにしている。 ヴィル自身は 自分が嫌われてシェルに人気があることを知っている。 というよりはそうあるべきだと思っていた。 トップに立つものは人に愛されるべきだと思うが それを支えるものは厳しくあるべきだという信念らしい。 それが自分の生まれてきたこの国のためだと信じている。 中に戻ったヴィルは2階に上がり ある書斎に向かっていた。 『また勉強か。 お前もたまには息抜きをしたらどうだ?』 その途中にノイズと出会う。 ノイズは一応正装をしているものの それはかなり着崩されている。 『国王。 いくら城内とはいえ服装には気をつけてください。 あと、息抜きなら一時間に適度に行っております。 それに、今日はシェルも帰ってきますし 政府のほうも最近動きだしたという情報もありますし まだこのノイズは・・・』 と言いかけたところで ノイズ自身がいない事に気づくヴィル。 -しょうがない・・・- そう思うと ヴィルはそのまま書斎に入っていった。 普通の王と大臣の会話ぽくみえるが この二人は紛れもなく親子である。 ヴィルは公私混同を避ける意味で 任務と感じている時間は親子として行動をしなかった。 それがノイズにとっては 気持ちのいいものではなかった。 この不思議な親子関係だが これは母親が関係している。 母親はリーザといい、シェルと入れ替わるように この世からいなくなった。 リーザはヴィルのようなまじめさもあったが 意外にも遊び好きだったという過去もあったりする。 だが、根はまじめな為王族となることになってからは 現在のヴィルのごとくノイズなどを纏め上げていた。 ノイズは2階を降りる途中で 2人の人物を見かける。 『珍しいな、"イス"でも取りにきたのか?』 ノイズは階段を下りながらその二人に話し掛ける。 そこには背の高い女と背の低い男がいた。 その男が何かを言おうとしたが女が静止する。 『この国の方にとって、あなた"達"は英雄なんですよ。 いくら昔からいるとはいえ 私達は補佐にまわりますよ』 そう言うと軽く会釈する。 その女性は右目が髪で隠れて見えなく 白髪の青い目が特徴的である。 それとモデル並の背の高さが印象深くもある。 名前をクインといった。 一方の背の低い男は地味に見える。 髪も黒く特に目立った所もない。 この男はクロバといった。 だが この二人は夫婦であり あのファラウェイ"ズ"の者であった。 ファラウェイ"ズ"は一応同居している形ではあるのだが 滅多にノイズの所にくる事はなかった。 『そうかい。 まぁ、俺は神輿になっておくさ。 それよりも今日はどんな用だい?』 ノイズが話すと クロバが軽く笑みを作る 『のんきなものだ。 あんたらノイズが適当な事しかやらないから 結局は私達がこの国を支えているというのに 所詮は余所者よ。 国王様もいつかもう一人のノイズのように 国を出て行かれるのかな?』 明らかな嫌味であるが ノイズは別に気になっていないようである。 ファラウェイ""ズとしては植民地状態であったものの ノイズ国以前は自分達がこの地域を仕切って 生きたという伝統がある。 特にクロバはその後継者であっただけに ノイズに対する嫉妬は大きい。 彼にとっては国のためという認識は 自分達一族のためという認識でしかない。 『息子君には伝達してあったと思うのですが いよいよ裏の政府が動くみたいですよ』 そのフォローというわけではないが クインがすぐ話を切り替えた。 というよりは本題のようでもある。 『だが心配ないだろ? そろそろここは冬の孤島になるわけだし 言い換えれば封鎖された国のようなもんだしな』 ノイズは話半分な感じで答えた。 それはヴィルがすでにその話をしていた事もあったからである。 その態度にクロバは明らかな嫌悪感を顔に出しているが クインはうっすらと笑っていた。 『封鎖されるから問題なのですよ。 向こうはおそらく許可をえずにここにやってくるでしょう 戦力もそれほどとは思えませんが その分 私達は他の国の援護を受ける事も出来ないのです。 政府の対応は国王が一番良くご存知だとは思いますが 対策の方はどうなっていますか?』 クインはやわらかい口調ながらも 表情は厳しいものになっていた。 それを見て「まずい」とノイズは思ったのだが 何も言葉を返す事は出来なかった。 『向こうは何かの手を使って 再びこの地を自分達の支配下に置こうとしている。 それだけは絶対避けないといけない。 ・・・。 というか国王が仕組んだわけじゃないでしょうね?』 というクロバの言葉を またしても聞き流していたノイズだったが 3人の会話で時間がかかったこともあり その場に自衛兵がやってきた。 『それでは私達は隣の別室に戻りますので この後もよろしくお願いしますね』 来たのに合わせるようにクインが声をかけて それにクロバがついていく形で二人は城を出た。 ちなみに 彼女らが住んでいる隣の別室とは 高級ホテル並の宿泊施設になっていた。 場所は港町ミディに戻る。 シェルたちを見送ったライトは "スノーバイク"で町にやってきていた。 『このポンコツじゃ、いつ壊れてもおかしくないな』 降りたあとにライトはそのバイクを軽く叩いた。 町はいつものような光景で冬化粧である。 港は本日が最終日で これから約4ヶ月の閉鎖期間となる。 -ヴィル様から連絡を受けていたが この様子なら今日には無理だろうな- ライトはそう思うと 遠くの水平線を眺めていた。 一方で レッドフェアリーに乗ったシェル達も レスに向けて緩やかな登りを ものすごい速さで駆けて行く。 そして この数時間後 話は急展開をむかえる。 |