第23話 『目指すところ』





ライブは終盤に向っていた。
いつ注文したのかわからないが
ラウドとレナはお酒を飲みながら
シェルらのライブを見ていた。

『・・・って話聞いてるの?』

レナが一人で話をしていると
すでにラウドは夢の中にいた。

『まだコップ一杯しか飲んでないじゃないのに・・・
弱いねぇ』

そういうとそこで寝ているラウドの頭を叩く。
そう叩きながらも
なかなか帰ってこないディルの心配もしていた。

−レビンもいないから
二人でどこかにいるんだろうけど・・・−




雪は段々強く降りつけていた。
膝をついたディルをレビンが見下ろしている。

『奪った?・・・
クレセアを手術したのは
やはりお前やったか』

レビンはディルを持ち上げると
再びその手を離した。
その反動でディルは腰から再び倒れた。

『クレセアは知らない。
いや・・・俺もわからない。
誰も、命を奪うなんて事は考えない』

倒れたまま意味不明にディルがつぶやきだした。
レビンも不思議そうに聞いている。

『嘘を言っても意味はない。
だが
俺はクレセアを助けるつもりだけで手術した。
しかし
俺はクレセアを・・・』

そういうとゆっくりと立ち上がる。

『クレセアはS・D症という遺伝病だった。
うちの技術では治せなくない病ではあった。
・・・。
だが
俺は知らなかった。
この病を治すには
同じ病の免疫を必要とすることを』

そういうと再び下を向く。

『何が言いたいんや?
殺すつもりのないクレセアを
殺したとでも言いたいんか?』

レビンはなかなか話のまとまらないディルに
苛々しているようだった。

『そうじゃない・・・。
じゃないけど
俺の意思でクレセアの命を奪ってしまったことは事実だ。
・・・だけど』

ディルがそう言うと
レビンの表情はさらに険しくなった。

『言っとる事がわからんて。
お前はクレセアを助けるつもりで手術したんやろ?
・・・。
今の話やと、殺すために手術したと言っとるようやな』

再び二人の距離が近くなる。
しかし
それを突き放すかのように
ディルが歩き出す。

『医術師は医者とは違う。
医者は人の病を取り除くことが重視だが
医術師は病を研究することを重視している。
ただ、結果的に医術師は人の病を治すことになる。
だが
その結果で助ける人物の命を奪うこともある。
不治の病の人も救うために。
・・・。
クレセアに俺がしたことは結果的に
クレセアを生かすためじゃなく
同じS・D症患者の為。
つまりは・・・』

そう言いかけてディルは止まった。
レビンはディルの言おうとしていることを
少し確信した。
だがそれ故に表情が強張る。

『・・・お前らの都合で
クレセアは死んだって事か?』


ディルは答えなかったが
この沈黙がレビンにとって答えになった。

『俺自身はクレセアを助けることしかなかった。
だから最後まで助けるつもりでその場にいた。
・・・いや、そのはずだ』

ディルは繰り返し
クレセアを助けることを強調する。
何かを思い出すように。
しかし
レビンの問いは答えない。
その様子を見てレビンが再びディルに詰め寄る。

『殴るなら、殴ってくれ』

ディルはそう言うとその場で目をつぶる。
だが

『S・D症のために
クレセアが犠牲になったということでいいんやな。
・・・。
お前がそういう事情の家庭で育ってきたという事実もある。
さっきも言ったが
別に俺はお前を恨んどらんで』

以外にあっさりと言葉を返すと
ディルから離れた。
しかし
すぐ止まると銃をディルに向ける。
その銃を取り出す音で
ディルが目を開ける。

『俺はまだ死ぬわけにはいかない。
レビンがその気なら、俺もやるぞ』

そう言うとディルも魔剣を取り出す。


二人がにらみ合って数秒が経った。
雪もやむ気配がなく降り続けている。

『お前は殺すつもりじゃなかったが
ログスはそうさせてもらえなかったのやろ。
それで、会いたいというのは
未練が残っとるのか?
・・・。
それとも違う何かか?
・・・。
なぁ・・・
なんの為に
この世にいない者に会いに行くんや?』

レビンが銃をおろさず
しかし口調はやわらかくそういった。


『・・・。
裏切ったんだ。
だから、それを詫びたい』

それだけ言うとディルは魔剣を落とし
また下を向いた。

それを見て妙に納得したように
レビンも銃をおろした。


『お前は家に帰るんやろ?
俺もログスに連れてけや』

突然話題を切り替えたレビンの言葉を聞いて
ディルが顔をあげる。

『確かに家には帰る。
2度と同じ事を繰る返さないためにもな。
・・・。
だが、患者以外は家に行くことは
国の許可が下りないはずだ。
だから
レビンが以前
俺の親に会ったというのも
ありえない話だ』

最初のレビンの言葉を
思い出したように付け足す。
だが
レビンは表情をほとんど変えずに

『それはお前が決めることや』


意味不明に一言つぶやき
酒場に戻っていった。
ディルは
その言葉の意味を理解できないまま
レビンの後を追うように戻っていった。




ライブは無事終了した。
ラウドは早めに酔いつぶれ
レナは一方で結構な量のお酒を飲んでいた。
そこにライブが終わったばかりのシェルがくる。

『レナ、今日の俺のライブはどうだった?』

相変わらず似合わない
黄色のサングラスをかけている。
上半身は真冬だというのに肌着だけを着ている。
しかし
一応シェルなりに気を使っているようで
本来なら上半身は裸になっていたようだ。

『ん?
っていうかディルは?』

レナの酔い加減に一瞬戸惑ったシェルだが
確かにディルがいないことを確認する。

『ディルはここにいないのかい?』

いないことを悟り唖然とするシェル。
さらに隣で寝ているラウドを見つけてさらに落胆する。

『まったく!こんな寒いのにどこいったんだ!』

なぜかレナはシェルにあたっていた。
それ以上にお酒で人格が変わりつつある。
そんなレナをなだめつつシェルは出口を見る。
すると二人の人物が入ってきた。

『何してたんだ・・・』

シェルはその二人を見てそうつぶやいた。
その二人とはディルとレビンである。


レナも出口のほうを向くと
ディル見て瞬時に出口に移動する。

『ディル!どこ行ってたんだよ!』

まずは突然レナに腹をパンチされる。
しかもそれが止まりそうにも無い。
普段と様子が違うレナを見て
二人は何かを思い出すたかのように
表情が緩む。

『すまなかった。
だが、ちょっとこういう場は苦手なんだ』

シェルのほうを向かないように
ディルはレナに言い訳をする。
しかし
レナはほとんど聞いている様子も無く
今度はレビンにあたる。

『レビンもレビンだ。
二人して外に行って
別のところで暇つぶししてたのかい!』

レビンは特に驚く様子も無く
ただレナの話を聞いていた。

『というか、ラウドはどこだ?』

ディルはラウドがテーブルで寝ていることをわかっているが
レナの気をそらすために
ディルはラウドの話を切り出す。

『ラウドもラウドだ!
向こうで余裕で寝てるよ!
・・・。
って、久々に4人がそろったねぇ』

レナは一転して感情が変化した。
ディルはもう耐えられないといった感じで
シェルに目線を送っている。
それをシェルも見つけて出口に向かう。

『まったくさぁ〜
俺のライブは見飽きたって事か?』

軽めにディルに嫌味を返す。

『そういえば
シェルが今日泊まるところ用意してくれてるんだよねぇ。
なんか飲み疲れちゃって眠くなってきたねぇ』

レナは一人でハイテンションに話を続ける。
その話にシェルもついてはいく。

『そうだな。
あそこで寝てる"熊"も起こして行くか。
ん・・・
そういえば、メガネも知り合いなのか?』

シェルは
レナからディルに話を降る。
メガネと言われたレビンは少しだけ反応する。

『俺も連れて行ってもらおか』

意外なレビンの言葉に
シェルは一瞬とまどう。
なによりも
ディルとレビンが一緒にいたということが
気になっていた。

『悪いが、俺からも頼む。
レビンとはピスカで出会ったんだ』

ディルがそのシェルを見て
すぐに言葉を返した。

『ディルがそう言うなら
しょうがないな』

半分不安ながらもシェルはそう言うと
ラウドのほうに向かいラウドを叩き起こす。


『ん?
あれ?
おう、シェル・・・
演奏は?』

起きたかと思うといきなりそれかよ。
そんな表情でラウドの頭を軽く叩く。

『もうとっくに終わってるって』

そう言われてようやく
自分が寝ていたことに気づいたラウド。

『まぁ、いい子守り唄だったって事だ。
それより
この後はどうするんだ?』

『どう聴いたら子守唄に聴こえるんだ!
・・・と
音楽もわからない"熊"はおいといて
まずはさっきのバイクのところに行こう』

最後にもう一度頭を叩いて
シェルは出口に向かう。
先にディルとレビンが外に出て
それを追うようにレナが出て行く。
その後ゆっくりシェルが出て行く。

『熊・・・って俺のことか?』

一人残ったラウドは
頭を押さえつつ
さらにゆっくりとして最後に外に出た。




−ちょっと飲みすぎたかなぁ?−

レナはいつもと違う変化を感じていた。
お酒は結構飲むほうで
自分でも酒豪だと思っている。
だが、そういう理屈以前に
体の変化が微妙ながら起きていることを感じていた。

−まぁ・・・寒い地方のお酒は
アルコール度が高いって言うから
きっと、飲みすぎたんだね−

だが、そんなに気にしているようではなかった。

『レナ、眠いんだったら俺が負ぶっていくぜ』

シェルが早速と言うべきかレナに近づくが
レナは笑ってそれを拒否した。
本音はどうなのかは別にして。


ラウドが遅れて合流し
5人は先ほど中にだけ入った
通称スノーバイクに乗り込んだ。

『しっかりベルトをしておけよ。
結構スピード出すからな』

シェルはそう言うとエンジンをかける。
体に響く重低音が車内に響く。

『おい、壊れないのか?』

その揺れ方にラウドは不安になるが
シェルは首だけ後ろを振り返ると
笑いながらではあるが
"黙って乗ってろ"
という表情をして再び正面を向く。
操縦器を動かすとスノーバイクは最初はゆっくりだったが
次第に高音も混ざり急にスピードが上がる。
それに平行して揺れも激しくなる。

『ラウドじゃないけど
あんまり安心できる感じはしないね』

レナが最後にそうつぶやいた。


すると本当にほんの10分程度で
港にあった建物とは遥かに違う
大きな建物に到着する。
建物があるのはわかるが
周りが暗いので全体を把握することはできなかった。

『ちょっと乱暴だったけど、着いたぜ』

シェルは運転席を降りると先に外に出る。
その運転には慣れているのか
ディルも何事もなかったように続く。
レナとラウドは気分悪そうにゆっくりと降りて
最後にレビンが降りた。

『本当に乱暴だよ・・・
先に休ませて貰っていいかなぁ?』

レナはシェルにそう言うと
先に建物に入ろうとする。
焦ったシェルは
フォローをしようと話しかけようとしたが
その前に建物から人が出てきた。

『シェル様。
お帰りなさい。
そちらの4名様がお連れの方ですね』

大人の雰囲気を感じさせる口調の男が出てきた。
その人物は見た目にアクセントがあり
額に【L】と言う文字のようなあざがあった。
しかし
シェルはその対応を快く思っていないのか
不満そうな顔である。


『だ〜か〜ら
"様"付けはやめろって
ライト』

そう言うとその人物の肩を軽く叩く。
するとそのライトと言われた人物も
雰囲気が一変する。

『ま、一応の形式って事でさ。
まぁ、いろんな砂利達がいるな・・・
ん?
お前はもしかしてディルじゃないのか?』

今度はかなり言葉使いが雑になった。
どうやらライトと言う人物は
こちらのほうが本性のようだ。
しかし
変装しているはずのディルだが
ライトにもその正体はばれていたしまったようである。

『・・・
わかるんですか?ライトさん。
お久しぶりです』

そう言うと軽く会釈をする。
それを見てシェルとライトは
顔を見合わせて笑う。

『その生真面目な雰囲気と
その格好を見れば嫌でもわかるぞ』

ライトはディルに近づき肩を軽く叩く。
それと同時にすぐ近くにいたレナを見て

『譲ちゃんはお疲れのようだね。
ここには部屋はたくさんあるから
好きな部屋で休むといい』

そう言うと今度は
レナの肩を軽く押して中に連れて行く。
その様子にシェルが

『おいおい、それは俺の役目だって』


ライトの間に入ろうとするが

『シェル"様"に任せると
そのまま部屋に消えそうですしねぇ』

とわざと様付けをして
半ば強引にレナを連れて行った。


『なぁ、
寝ろって言われても
目が冴えてるんだよな』

ラウドが突然シェルに話しかける。
それだけ寝れば当然だ。
そんな表情をシェルはするが
すぐに何かを思い出したかのように
3人を中に案内する。

中の外装は
どこかの宮殿のような作りになっているが
最近作られた様なものではない
歴史を感じさせる建物であった。
これには意外にもレビンが興味ありげに観察している。

『ここはファラウェイ"ズ"の別荘か何かか?』

レビンの質問に驚いた表情のシェル。

『よく知ってるな。
今は俺の親父が所有してるけどな。
昔、このミディが独立した王国だった頃に
ここら辺に城とかがあったらしくてさ
この別荘はその王の兵士のための宿場だったらしいぜ』

シェルの解答を聞くと
納得した様子で勝手に奥に進む。
シェルはそれを一瞬止めようとしたが
そのままレビンについていく。
それを見てディルは何かを察知したようで
ラウドに

『奥に行けば
暇つぶし程度はできるかもな』

とだけ言うと
ディルも奥に向かう。
ラウドは歴史についてはまったく興味がない様で
ただ、古い家だな。という程度に見ていた。
そう思いながら
ディルについていく。




奥の部屋は扉がほかの部屋と違い
結構な大きさである。
その扉をシェルが引くと
そこは訓練場のような施設になっていた。

『ここで俺と遊ばないか?
さっきも言ったように
ここはかつての兵士の宿場。
訓練場があって当然なのさ。
まぁ、俺は格闘に関することなら
まず君ら3人に負けることはないだろうけどさ』

その思いっきり挑発的なシェルの言葉に
ディルの暇つぶしの意味を理解したラウド。
だがやる気満々のラウドを横目に
シェルは入り口近くに置かれていた剣を手にする。

『まずは、ここの常連のディル君どうぞ』

そう言うとシェルはディルに剣を向ける。
剣はいいや。
そんな表情をラウドはした。
レビンは特に興味を示さず
その訓練場を見渡している。
ディルはやや渋々前に出る。
ちょうど剣術の訓練をしていた跡地があったため
そこに二人は進む。

『レビンはどっちが勝つと思う?』

まったく向こうを向いているレビンに話を振るが
特にいうことはないといった感じでラウドのほうを見た。


『勝つのは当然シェルだろうな。
なんせ俺が見届けた決闘で
シェルが負けたところは見たことがない』


レビンの代わりに
レナを送ってきたライトが割り込んできた。

『挑発するだけあるってことだな
だけどよ、ディルもそれなりに強いと思うぞ』

ラウドはディルの魔剣を知っているので
それを超えるとは簡単には思えない。
しかし

『頭はいまいちだが
格闘に関することなら
ノイズ国王の才能以上だぜ』

そうライトは自信を込めて言う。

『頭は余分だぜ。ライト』

そう言いながらもシェルの表情は嬉しそうである。
だが、それもすぐに表情が引き締まる。
ディルが魔剣を取り出し
シェルの剣と同じぐらいにまで剣を伸ばす。
一瞬互いが止まるが
勝負も一瞬。


ディルが先に仕掛けるが
ディルの剣の動きを読みきったシェルの剣の峰が
ディルの左脇に当たる。
軽い痛みが走り魔剣が手から落ちた。

『俺も2年間、外の世界でもまれてきたんだがな・・・』

やや左脇を気にしたが、痛みはそれほどではない。
それよりも、シェルがさらに強くなっていることに笑うしかなかった。
ラウドはそのシェルの動きに圧倒され
レビンも少し驚いているように見えた。

『ま、ディルも強くなったよ。
そんじゃ、次いくぜ』


余裕のシェルを見て意外にもレビンが動く。

『向こうに的があるようやな。
剣はいけても銃はいけるんか?』

やや挑発的な言葉でシェルに向かっていく。
だがシェルもあっさり受けて立つ。

『互角まではいけると思うぜ』

そう言うと
的の方に向かい
ルールを説明する。

『ここには10個の的がある
それを走りながら
正確に命中させるだけの勝負だぜ』

そこには横一直線に丸い的が壁に配置されていたが
それは大きさも異なれば高さや間隔も異なっている。
レビンが左利きであることを考慮して
右に向かって走って撃っていくことになった。
2人の命中数が同じ場合の為に
時間も計測することになった。

まずはレビンから。
走りながらとなると
やや命中率は下がるものだが
レビンはそれをいとも簡単にこなしていく。
終わってみれば10の的すべてを命中させていた。

これにはレビン以外が唖然とする。
だが
シェルは時間タイムを計測していたディルに時間を聞くと
うっすらと笑みを浮かべた。

『5秒か・・・やっぱ移動しながらはきついよな』

そう言うと計測器をレビンに渡す。
これは公平を期す為に
シェルとライトは計測しないという約束からである。
そういう意味ではレビンも計測しないのが普通なのだが
それはシェルの一種の余裕であった。

シェルがスタートするが
これにはレビンが一番驚く。
ほとんど全力疾走で全ての的に命中させてしまった。
時間を見るまでもなくシェルの勝ちだった。

『やるやないけ』

そうだけ言うと、後は黙ってしまった。
シェルの快進撃にラウドは俄然やる気になる。
するとラウドは奥に置かれていた瓦を見つける。


『瓦割りで勝負しようぜ』

ラウドはそう言うと拳同士をぶつける。
シェルは意外な表情をしたがすぐに笑みに変わる。

『何十枚でやるんだ?』

の問いには

『何百の間違いだろ?』

とラウドも挑発をする。
そうするとシェルは
その瓦を手に取りそのまま下に落とす。
その瓦は鈍い音だけを立てて割れずに床に落ちる。

『これはカーボンタイルという瓦でね
昔は南の国などに輸出していた特殊な瓦なんだ。
とにかく普通の瓦の強度の10倍以上はあるから
10枚で普通の瓦が100枚あるのと同じだな』

シェルが説明している間に
先を急ぐようにラウドは瓦を積み上げ始めた。
さらに

『シェルが先にやれよ』

と止めをさした。
これにはシェルも笑うしかなかった。

『この熊め・・・
びびるんじゃないぞ』

そして
気合の一撃でシェルは6枚の瓦を割った。
全部割れなかったのは不満そうだったが
それでもどうだと言わんばかりにラウドを見る。

『たった6枚かよ』

そう言うとラウドは
深呼吸をして一気に瓦を叩く。

『オッシャ!』

気合とともに全ての瓦が簡単に割れた。
この10枚(100枚分)は
かなり肉体を鍛えても壊すのは不可能な数である。
これは
ライトがラウドを"スキル使い"と勘違いしてしまう
結果を残した。

『俺の勝ちだろ?』

と再び拳同士をぶつける。
さすがにこれは

『凄いな、ラウド。
これは、俺の完敗だぜ』

シェルは降参したかのように
床に仰向けになり大の字になった。
ディルはこうしてみると
改めてラウドの力加減の凄さに
納得させられていた。
スキルの力が関係していることを考えてもいた。

『早くここの七秘宝を探しに行きたいな。
まぁ、まずはディルらの用事が終わってからだけどさ。
そういえば部屋は勝手に借りていいんだよな。
運動したら眠くなってきたから寝るわ』

腕を回しながらラウドは訓練場を出て
部屋のあるほうに戻っていった。
それを見てか
レビンもその後を追うように出て行った。




『あいつ何物だよ・・・』

そこにいたディルにシェルが尋ねるが

『さぁな。
・・・。
俺が聞きたいぐらいだな。
正直シェルに勝つとは思わなかった。
だが、戦いに関しては俺らよりも貪欲な男だな』

そう言うとディルもそこに座る。

『それにあいつ、七秘宝を探してるんだろ?
【H・K】にでもなるつもりなんか?』

『あぁ。そう言ってたな。
だけど、その【ホーリー・ナイト】かどうかは
わからないけどな』

するとシェルがゆっくりと起き上がる。

『もしかして、【聖剣】のほうか?
・・・
あのタイプならありえるかもな・・・』

するとそこで見守っていたライトが間に入る。

『伝説の剣士たちの総称だな。
しかし、またなんでそんな伝説級の者を
目指しているんだろうな』

3人は考え込むと
一瞬止まってしまったが
何かを忘れるように立ち上がると
それぞれ部屋に向かっていった。

部屋の前に立ったディルが最後に

『ライトさん。
俺がここにきたことは内緒にしてもらえますか』

とライトに話し掛けるが
少し笑ったと思うと

『俺が言わなくても
他の誰かが言うだろうな』

と言うと
ライトも部屋に消えていった。

ディルは少し上を見たが
首を軽く振って
ディルも部屋に入っていった。







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