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乗客はスパイダーからの開放感と共に
不満を一気に爆発させた。
それを船長らがなだめている。
ラウドはうつ伏せになったまま動かない。
別に気を失っているわけではないが、動けなかった。
ディルはそのラウドを見つけ肩を軽く叩く。
『無茶しすぎだ。ラウド』
慰めかと思いきや、思いっきり攻めの攻勢のディル。
そのあとに続ける。
『今回は偶然に竜巻が起こったからみんな助かったんだ。
ラウド一人の暴走がここにいる人に
どれだけの悲劇を与えようとしていたのか分かるか?』
その言葉にはラウドもゆっくり起き上がって反論する。
『じゃ、何か?
このまま黙ってみていればよかったのかよ?
結局俺らだって身包みはがされて、それでオシマイだぜ?
海賊ごときに、なめられてたまるかよ!』
お互いかなり興奮している。
理由は違えどお互いのやり方が気に食わないようである。
レナはディルのほうに行こうとするが
口論になっている2人を見て船長の近くから動けないでいる。
船長達がようやく乗客をなだめ終わったあと
残ったのは口論をしているラウドとディルだけになっていた。
それをリードが見つけて船長に話をしようとするが
船長は手で静止して自分からその口論に入っていく。
『若造らが、よくやってくれたモノだな』
2人は同時に船長の方を向く。
『何だ?白ひげジジイ?』
確かに船長は年齢の割には似合わない
白ひげを生やしている。
それをラウドはストレートに返した。
『じじぃか・・・
フン。
確かにお前よりはじじぃだが
こう見えてもまだおまえらの親父程度だよ』
そう言うとラウドとディルの頭を掴んで
顔を無理やり自分の方に向けて続ける。
『いいか?竜巻は偶然じゃねぇ。
俺のスキルだ。
でな、この黒頭がやったことは早死にするだけの行為だ・・・。
だがな、俺はそういう奴は嫌いじゃねぇ・・・
分かるか?色男?』
そう掴みながらディルの方を向く。
それにはディルはすぐ反論する。
『あなたは乗客を運ぶ船長ではないのか?
客のことも考えない行動を取ることがいいとは
俺にはとても考えられない。
金がなくなろうとも
生きていることが一番いいことに決まっている』
ディルは船長を睨みつけるように言い返すと
同時に掴んでいる手を無理やり振り払う。
だが、その行動で船長は何故か笑い出した。
『フッ。
確かに生きていれればな。
だがな、お前は大きな勘違いをしている。
・・・というかガキの理論だな。
生きていれば正解だ?
お前に何かできたのか?
少なくとも動こうとしたこの黒頭の方が
俺には生きようという意思が伝わってきたぜ?』
そう言うと二人の髪の毛を離して続ける。
『一人は周りを考えない暴走野郎・・・。
一人はエセ平和主義で、理想だけにとらわれているロマンチスト野郎』
そう言われると2人の反応は正反対になっていた。
ラウドはその通りといわんばかりに黙り込んでしまっているが
ディルはくってかかる。
『俺の考えのどこがエセ正義だ?』
そういう反応が返ってくる事を予測していたように船長が言葉を返す。
『フッ。
だからこそ、成長のしがいがあるんだがな・・・。
というかよ、色男は過去とかを気にするタイプだろ?』
というとディルを見てうっすら笑う。
ディルもそれには何も反論できずに、ただ、船長を見ていた。
それを見てか、船長を二人の肩を叩くと
『とりあえず、ノイズには間に合わせるから心配するな。
ゆっくり航海を楽しんでいけよ』
そう言うと船長はホールから姿を消した。
その状況に2人は呆然としていたが
お互いの顔を見合わせると
ディルがまずラウドに
『とんでもない船長に乗せられてきたみたいだな。俺ら』
と言うとラウドは
『いや、確かに俺は周りを考えてなかったぜ。
状況を把握してから行動するようにするぜ』
というと手をディルのほうに差し出す。
それにディルも応じて、とりあえずは仲直り?した感じになった。
それを見たレナはようやく二人に近づく。
『とりあえず、みんな生きていたから良しって事で』
そう言うと
2人の後に移動して肩を叩き
そのまま肩を押さえつつ二人をホールから追い出させる。
『とりあえず、ラウドの膝は診ないとな』
ディルがラウドの膝を見てそう呟いた。
場所はノイズへ。
ノイズは世界的に最北の地と言われており
数年前に通称"南地区"から独立したばかりの国である。
しかし、独立以前からこの地はいろんな歴史を歩んでいた。
そして何よりも『七秘宝』がこの地には存在する。
ラウド達より一ヶ月先にこの地に旅立った男がいた。
レビンである。
レビンは、ノイズの港町の『ミディ』という場所の
ある酒場らしきなところに滞在していた。
『このチラシを見て来たんやけど
ここで働かせてもらえへんか?』
レビンは求人募集とか書かれているようなチラシを手に
そこのオーナーらしきな男と交渉をしている。
この酒場、酒場というよりはホールに近く
どちらかというとライブハウスのような雰囲気すらある。
現実にライブができそうなステージもきちんと用意されている。
『まぁ・・・別に人手が足りないってわけじゃ
・・・ないんだが』
どうもそのオーナーは
レビンの風貌に一歩引いている感じがある。
レビンもそれを感じたようで
『なら、他あたるわ』
というと荷物を持ち出口に向かった。
だがその時
そこから2人の男が入ってきた。
『オーナー!
ちょっとステージ借りるぜ』
少し慌てている様子で
その男はレビンとぶつかり
レビンを無視したままステージに向かう。
その後からゆっくりともう一人が機材を持ち歩いてくる。
『オイ、待てや』
レビンはぶつかっても無視した男に詰め寄る。
一方でその男は不思議そうな顔でレビンに返す
『ん?
なんだ、俺達のファンか?』
何言ってるんだ?
という困惑した表情に見えるレビン。
しかしすぐにその表情が凍る。
『人にぶつかっておいて、返事なしか?』
その表情で、ようやく事態を認識したような表情をその男はした。
『ぶつかった・・・か。
悪いな。悪気は無いんだ』
とあっさり言葉を返すと
再びステージに向かおうとした。
しかし、すぐレビンの方に振り返った。
『ん?
君・・・どこかで会ってないか?』
そう言われると
レビンも何かを思い出したようにその男に詰め寄る。
『この喋り方・・・あの時の奴やな』
そう言うと色眼鏡を外す。
それを見てその男は少し驚く。
しかし、すぐに言葉を返した。
『あの時の君だったのか。
確か・・・レビンだっけ?』
そう言うと
レビンを近くにあった机に案内して席につかせる。
それに向かい合うようにしてその男が座る。
『レビンは、何でまたここに?』
レビンはメガネをかけ直すと
黙ったままになった。
一方でその男はあたりを見回すと
床に求人募集のチラシが落ちていることに気づいた。
『あ・・・、ここでバイトしようと思ってたのか?
理由は・・・どうでもいいよな』
と勝手に話を進めると、オーナーの方を向き
『レビンをここで働かせてくれよ。
俺の頼みなら聞いてくれるだろ?』
そう言われたオーナーは渋々ではあるが了解したようである。
『でも、ここにきたって事は・・・』
その男が言う途中で
レビンが口を珍しく挟んだ。
『俺は、お前の事をよく覚えてへん。
馴れ馴れしく、俺の名前を呼ぶな』
そう言うと席を立ち再び荷物を持ち出口に出ようとする。
『クレセアは医者のミスじゃないぜ。
レビンはどう思ってるかは勝手だけどよ』
クレセアの言葉にレビンは一瞬足を止めた。
そして振り返る。
『真実は、聞いとる。
・・・やけど
俺がここに来たのは別の用事や』
そう言うと再び歩き出す。
それを見てかオーナーが一言、
『レビン君と言ったか。
一ヶ月程度なら、ここで働いても構わないぞ』
そう言ったかと思うと
レビンよりも先に出口に行きドアを閉める。
レビンは一瞬戸惑った顔をしたが
荷物をゆっくりと床に置いた。
そうして
レビンはその酒場でバイト生活をすることになった。
ただ
何故、ここでバイトをしていたのかという事については
よく分からない。
再び場所は船に戻る。
ラウド達の部屋に戻った3人は
ディルによるノイズについての説明が行われていた。
『ノイズは大きく分けて4つの地域がある
今向かっているノイズの港町"ミディ"
俺の一応の故郷の最北地"レス"、
ここに俺はに用事がある。
あとは"コール"という山岳地帯。
ここには七秘宝があるらしいという話だ。
最後は商業地と言われている"ティープ"という場所の4つだ』
レナは一通り理解しているようだが
ラウドは七秘宝と言った「コール」にしか興味がないようである。
『ラウドは当然コールに行くんだろ?』
それを分かっているかのようにディルが尋ねた。
それにはラウドの当然の様に首を縦に振る。
『そうか・・・。
それじゃラウドとはミディでお別れだな』
ディルがそう言うと
ラウドは少し考えて、何かを思い出した。
『病院で言っていた、別の用ってやつだな。
・・・ん?
と言うことはレスだっけ?そこにいくってことだよな?
そういえばレナはどうするんだ?』
それにはレナは笑って
『私もディルといっしょに行くんだよ』
とだけ言うとソファーに寝転がった。
ラウドは一瞬わけがわからなくなったが
そうなの?といった感じで2人を見た。
『また、俺一人かよ。
まぁ、しょうがないよな』
と言うと腕を頭の後ろに組んで
天井を見つめた。
『だったら、ラウドも来ればいいじゃん。
それに私もちょっと秘宝には興味あったりするんだよね』
そうレナが言うと、ラウドもあっさり納得した。
そして、頭の後ろにあった腕を外すと
『なるほどね。そんなに急ぐ必要もないよな』
と言うとディルの方を向いた。
しかし、ディルの表情はあまりすぐれない。
『レスに行くだけなら、誰でも行くことはできるが
俺の用事は更にその北にある"ログレス"と言うところにある。
ここはノイズ国王らの許可がないと行くことはできない場所だ』
しかし
ラウドはその事を聞いても、動揺はしない。
『でもよ、そのログレスってところがディルの故郷なら、問題ないだろ?』
そう言ってもディルは更に深刻な顔をする。
『俺は、家出したようなものだからな。
関係者扱いは無いに等しいな』
『え?そうなのか?
なんか俺と似たとこあるんだな〜』
ラウドは家出と言う言葉で
ディルに妙な親近感を感じたようである。
『というか許可貰うのは大変なのか?
何とかなるだろ?』
そう言うとラウドは立ち上がり小窓から外を眺める。
それを聞いたディルは
半分呆れながらも表情ななぜか笑っていた。
数日が経ち
ラウドの足は超人的な速さで回復をみせていた。
ラウドは再び操舵室に行っていた。
だが、今回はあっさりその中に入る事ができた。
それはリードの計らいでもあったが
船長も公認してはいたからである。
『なぁ、リード、一度でいいから運転させてくれないか?』
今日はリードが操舵手だった。
その運転を見ているラウドがリードに詰め寄っている状態である。
『また、お前か!』
その声にラウドはあえて反応しなかった。
船長だと言うことが分かっていたからである。
船長もその反応を分かっていたように続ける。
『リード、ちょっと席をはずせ』
さすがにリードは上司である船長には逆らえないらしく
すぐに操舵室を出て行った。
その隙にラウドが操舵盤を触ろうとするが
すぐに船長の手が伸びラウドを遮る。
『お前は全く何を考えてるんだ。
そういう行動は父親そっくりだな』
と言うとラウドのほうを軽く見て、そっと笑う。
逆にラウドの表情は硬くなる。
『お前、俺の親父を知っているのか!』
船長はあえて間を置いた。
『俺の名はドリアン。
おまえの親父、ドクとはちょっとした知り合いだ』
そんなことはどうでもいいという表情のラウド。
何故、自分を見てドクの事を分かったのかが知りたかった。
『お前の事は、なんとなく聞いていた。
実は、スパイダーにこの船が襲われた時に、ピンと来てた。
こんなにそっくりな親子も珍しいって、その時は思ったけどよ』
そう言うと、また笑った。
だが、それがラウドには逆に腹が立った。
『あんな親父と同類にするなよ!』
近くの机を叩くと
ラウドをそこを出ようとする。
しかし、すぐにドリアンが言葉を返す。
『お前はまだ、本当の事を知らないだけだ
俺が知っている限り、お前の選んでいる道は辛い道だな』
ラウドは一瞬止まったが、その言葉に返すことなく
操舵室を出て行った。
それをドリアンは見て複雑な表情をした。
『恨んでいる間が幸せなのかもしれない・・・な』
そうつぶやくと再び操舵盤に手をやった。
ラウドはその後
操舵室に行くことはなかったが
船の中を色々探索していた。
そして屋上に出た。
『お!島が見えてきた!』
ついにラウドにとっては初めての航海が終わろうとしている。
季節はすでに1月になろうとしていて雪が舞っていた。
しかし、ラウドには、その寒さを感じさせなかった。
それよりも同じ空間にて飽き飽きしていた事も大きかった。
-早く、外に出たい-
それと同時に、この航海で起こった
スパイダーの事、そしてドリアンの事は
頭に残ったままではあった。
一方で部屋に戻ると
こちらもディルが神妙な面立ちで小窓から外を眺めていた。
いつも何か考えてるよな。
とラウドは思いつつも
『なんか気にかかってる事があるみたいだな』
そう言うと
ディルは「お前もな」と言う表情をした。
それを見てラウドは、右手で頭をかいた。
『色々あるからな。
ここには。
色々・・・』
ディルが最後にそう呟いた。
そんな雰囲気の中
レナが部屋のドアを勢いよく開けて入ってきた。
『なんか2人とも、重たい雰囲気だねェ。
それよりももう着くよ』
そう言うと再び部屋のドアを開ける。
2人にはなぜか冷たい風が吹いていない気がした。
『やっぱ、最北の地だけあって寒いねェ。
・・・って、2人とも大丈夫?』
あまりにも反応が鈍い2人を見て
レナは再び二人のもとに戻り
腹に軽くパンチを入れる。
それによって二人にもようやく現実が戻ってきた。
『うぉ!何すんだよ、レナ』
そう言いながらも表情は嬉しそうであった。
そしてディルも
『よし、行こうか』
と珍しくリーダーシップをとった。
ビッグウェーブ号は
スパイダーに襲われながらも
一日遅れでノイズ国ミディに到着した。
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