第20話 『対スパイダー戦〜ピスカノイズ海編』





【スパイダー】も"世界6大属団"と呼ばれる
属(賊)の一つである。
彼らは海賊であり活動範囲は
南地区に限られていた。
しかし今ここにいないはずのスパイダーが
不審船から旗を掲げて登場した。

その数は数人だったが
旗が掲げられると数十人に膨れ上がった。
その中で3人のリーダー格な人物が前に出ると
すぐに後ろの者達が立ち上がり
近づいていた客船『ビッグウェーブ号』に板を掛けて道を作った。

3人のリーダー格のうち
両端の二人が指示を出したようで
両端からスパイダーの一員が客船に乗り込んでいく。
一員が乗り込むと両端のリーダー格もゆっくりと乗り込んだ。
真ん中のリーダー格はズボンに手を突っ込んだままボーとしている。


一方船内。

船長はそのスパイダーの光景をじっと見ていた。
そしてスパイダーが乗り込んでくると
先ほどまでの重さが一気になくなった。
それを確認して船長はまだ何とか動けそうな船員に命令を出し
乗客の安全の確保につめようと指示した。
しかしその安全が厳しいものだとすぐに思い知らさせれた。

先ほどのリーダー格の一人と
その連れ2人が操舵室にやってきた。
リーダー格の男は黒のサングラスをかけていて
上着は厚めのコートを着ている。

操舵室には船長とあのリードの二人しかいない。
いや、正確には動けるものが2人しかいなかった。

『な・・・なんだよ。
や・・・やるのか?』

リードは体をびくつかせながらも
スパイダーの3人に近づく。
しかし、その3人のリーダー格の一人は
リードを無視して船長に近づく。

リードは当然にいい所を見せられず
スパイダーの一人にナイフで脅されて
両腕を後ろにやられて捕まえられてしまう。

『てめぇが船長か?』

リーダー格の人物はやや大柄な体の男で
その船長よりは一回り大きかった。
そして武器を使わずに右拳だけを船長に向ける。

船長は少し考えた後

『金が目当てなら持っていくがいい。
だが人に手は出すな。
もし手を出せば・・・』

という途中でリーダー格の男が
突きつけていた拳を右手で掴む。
それに何かを感じ取ったようで

『てめぇの言う事に従う必要は無いな』

といったかと思うと
拳を強引に自分の方に引き戻す。
船長はとっさに手を離したが
その一瞬にその男の左足が船長の溝落ちに当たリ倒れる。
さらにその男が近づき左腕を取ると
逆方向に無理やりに曲げる。

『俺らの言う事だけを聞いていろ。
人がどうなろうがそれは俺らには関係は無い』

と言うとリードを脅していないもう一人の一員に目で合図を送る
その一員は懐から青色をしたロープを取り出すと
リーダー格の男が左腕を押さえつけたまま
体をその縄で縛り付けた。
するとその船長は力を失ったかのように
そこに膝をつきそして倒れた。

『船長に・・・な・・・何をした!』

リードは両腕を取られているが精一杯に叫んだ。
そして意地でもがく。

『こいつ!』

押さえつけていた一員は
先ほどまでビビっていた男の抵抗に少々油断していた。
リードの腕が離れてしまう。

『ここはいい!乗客を守りにいけ』

船長はうつ伏せになっているが
リードが自由になったのを察知して叫んだ。
それをリードはそれを聞いてか
すぐに操舵室を出る。
というよりはやはりビビっていて
逃げる事で頭が一杯だった。
そして当然に押さえつけていた一員がすぐ後を追いかけていく。

それを悠然とリーダー格の男は見届けて
うつ伏せになっている船長の腹を軽く蹴リ上げた。
船長は今度は仰向けになる。

『くだらない事をするな。
俺らを挑発するとどうなるかぐらい想像できるだろ?』

というと仰向けになった船長の腹に腰をおろした。
一方の船長は力が入らない感じで目をつぶり何も言わなかった。




ところでラウド達だが
重さがなくなると
あたりの悲鳴などで海賊が入り込んだのを確信した。

『その"スパイス"って奴らはヤバイ海賊なのか?』

と言うと軽くなったことを実感しながら
ラウドが立ち上がる。
船内の状況を把握していないような暢気な会話をするラウドに
慣れたようにディルは呆れ顔をしていた。
それとは裏腹に窓側に移動したレナの顔は青かった。

『本当に・・・?』

窓を見て振り返ると続ける。

『間違いなくスパイダーだよ。
スキル使いが沢山いるし、
世界6大属団っていう一つの世界勢力にもなってる海賊団だよ』

レナはそこにゆっくりと腰をおろした。
かと思うとすぐ起き上がって
ほどまでいたソファーに置いてあったかばんを急いで掴む。

『焦るなって、レナ。
6属がどうだかしらないけどよ、
ノイズの七秘宝探しの前にいい準備運動だぜ』

と、ラウドはいつものように拳をぶつけると
その両腕を頭の後ろで組む。
そしてそのまま出口の方に向かっていく。

『おい、待てよ。
まさか、戦うつもりなのか?』

その行動を冷静に見ていたディルは出口に向かうラウドを見て
少し焦る。

『怪我も回復したようなもんだしな』

そっちの心配ではないという顔をディルはしたが
ラウドは構わず出口に向かう。
ドアを引こうとすると叫び声と共に勝手にドアが開いた。

『大丈夫ですか?
いや、大丈夫だよな。
生きてるか?
い、いや、俺が来たからもう安心・・・
あ!』

その人物は一方的に話しをしたかと思うと
ラウドの驚きの顔を見て言葉が止まる。

『リードじゃないかよ。どうした?』

ラウドだと気づいたリードは一気に安心した。
かと思うとラウドに寄りかかる。

『いや〜、マジでやばいよ。あの海賊は。
だってよ、周りに何もない海で
こういう船をカモるんだぜ。
普通じゃないって、あいつらは』

ラウドをみて安心したのか
一気に気が楽になったようなリード。
ラウドは半分その行動に半笑いしながらも
リードの話を聞いている。
その後ろでレナとディルが唖然としている。

『確かスパイダーとかいう海賊らしいぜ。
そこにレナがいるから詳しい事は聞いてみろよ』

とラウドはわざとにレナの方に話しをふる。
しかしリードはそこにレナがいることなど知るよしがなかった。

『何?ここにレナちゃんがいるのか?』

というとラウドから離れすぐに見つける。
そしてまたラウドに近づくと小声になる。

『おい・・・あの横にいる男がレナちゃんの男なのか?』

リードはチラッとディルのほうを向く。
その本人はレナにリードの事を聞いているようだが
レナもたいした記憶に残っている人では無いらしいことを話す。
リードにはそのやり取りに嫉妬を覚えた。

『確かにあいつは"少し"背も高いし
"少し"は俺よりもかっこいい顔してやがるけどな、
男っていうのは最後は中身なんだよ。
なぁ』

と勝手にラウドに話しをふるが
ラウドの表情は歪んでいる。
しかしすぐにニヤついた。

『まぁ、これも運命だあきらめろ』

と肩を叩いて励ました。
それが影響したかは分からないが
リードはラウドのほうを見ると一度うなづくと
ディルとレナの方に向かう。
そしてディルの前に立ったかと思うとじっと顔を見上げる。
その光景は親子並の身長差があるため
リードの睨みも全然迫力がなかった。

『どうした?』

ディルは不可解な顔をするが
そこにラウドが入り込む。

『というよりよ、海賊が来てるんだろ?
こんなところでのんびり話ししていていいのか?』

そう言うなり、リードの肩を持ちそのまま出口に2人で歩いていく。
さらにラウドは小声でリードに何かを話す。

『向こうから海賊がやってくる感じだから
ここはお前が男だって所を見せ付けてやれよ』

ラウドはそしてリードの肩をポンと押した。
しかし
その押す勢いがあまりにもリードには強すぎて
押し出されるように出口を出た。
さらに間がいいのか悪いのか
押し出されたリードと誰かがぶつかる。
しかも
リードは急に押された形だったので
両腕を海側に出す形になっており
そのぶつかった人を海に押し出してしまった。


その後すぐに
スパイダーと思われる一味から
アクアさんが押し出された!
隊長が誰かに海に突き落とされたぞ!
などの怒号が聞こえてきた。

どうやらリードが押し出したのは
スパイダーの中でもリーダー格の一人だったようだ。
その状況をラウドが認識すると

『よし、作戦通り』

とリードに笑顔で応えた。
そのリードも一瞬何が起きたかわからないようだったが
その"作戦"という言葉に言葉を合わして

『も、もちろん!
俺が船員でいる限り
海賊に好き勝手はさせないぜ』

と後ろを向くとレナの方を意識して親指を立てた。

思いっきり偶然でしょ。
そういう表情をレナとディルはしていたのだが
リードは完全に"酔い"はじめていた。
しかしラウドはまた肩をポンと押すと

『あとの雑魚も頼むわ』

と言うとラウドは勢いよく部屋を飛び出していった。

残されたリードの前には
5・6人のスパイダーの一員がそこにはいた。
一気に顔色が青くなるリードだが
またレナの方をチラッと見たかと思うと

『男の生き様見せてやるぜ!』

と意味不明に捨て台詞を残し
その集団に突っ込んでいった。


数秒後
声から察するにリードは捕まえられたようで
ディルたちのところにもスパイダーがやってきた。
その声を聞いてというかラウドの作戦で
一度逆に行った様に見せかけて
スパイダーが部屋に入った瞬間に
走って戻ってきたかと思うと
その勢いでとび蹴りをしてその一員を蹴散らし
反対から逃げろと言わんばかりに手招きをした。

そうして3人は何とか部屋から逃げ出した。
リードも逃れる事が出来たのだが
リードとは、はぐれてしまった。

『ディル達は見つからないように
どこかに隠れていていいぞ。
俺はこの海賊らをぶったおしてくるからよ』

と言うと

『待てよ!
相手にスキル使いがいるって事を分かってるのか』

ディルが注意をするのを待たずに
ラウドはいなくなった。
ディルはとりあえずレナと共に
一度海賊が入り込んだ部屋を見つけて
そこで隠れる事にした。
その部屋に着くとすぐに
隠し持っていたアタッシュケースを開けた。

『レナはここに残れ。
俺はラウドをなんとか止めに行く』

だが、そう言うと
ケースから珍しい光の石を取り出して
すぐに部屋を出ようとする。

『ディル・・・一つ勘違いしているよ。
私はここまで安全にやってきたわけじゃないんだよ』

と言うとレナも立ち上がり
一つ笑顔を作るとレナが先に部屋を飛び出した。

『お・・・おい』

ディルは一瞬戸惑ったがすぐレナの後を追った。




ラウドは食堂も兼ねたホールまで来ていた。
そこにはスパイダーが捕まえた乗客と
宝が置かれていた。
あのリードや船長もそこにはいた。

-やっぱり捕まってるのかよ。リードは-

少し苦笑いをすると
隠れるのをやめて堂々と正面から登場した。
それにはスパイダーや乗客ガざわめく。

『何だてめぇは』

先ほど船長を捕まえたリーダー格の一人が
ラウドに近づく。

『あんたらがスパイダーとか言う海賊かよ?』

ラウドは両拳をぶつけてすでに戦闘体制である。
一方のリーダー格の男は
首を左右に振ると厚めのコートを後ろに脱ぎ捨てた。
何故かその男は上半身裸である。
その服装にはラウドも首をかしげた。

そのコートが落ちた場所には
先ほど外でボーとしていたもう一人のリーダー格の男が
やはりポケットに手を突っ込んだままボーとしていた。

『スカイさん。手は出さないで下さいよ』

上半身裸の男はそう誰かに言うように言うと
ラウドのほうに向かっていく。

『ほどほどにな。ロック副船長』

その様子を見てボーとしていた男が口を開いた。
この男は海賊という割にはとても服装がファッショナブルで
やはりレナが見れば一目ぼれしそうな美形であリ
2メートル近い長身であった。
額には十字架傷のようなタトゥーがついている。

ラウドは上半身裸のロックという男と殴り合っていた。
しかし
ラウドの攻撃は全て腕でかわされて
逆にロックの左足の蹴りがラウドの右ひざに直撃する。
普通の蹴りにも思えたがラウドには激痛が走る。

『無理をするな。
お前のひざは俺が破壊(ロック)した』

そう言うとロックは元の場所に戻りコートを着た。
ラウドはそれを何も言えずに
ただ右ひざを押さえていた。


その様子を
別の角度から見ている2人がいた。
一人はディルで
もう一人はレナ。

この2人はどうやら
宝をある程度集めきったスパイダーの一員が
ホールに集合していたために
見つかることなくホールに侵入できていたようである。

このホールというのは入り口が10個以上も各方面に散らばっていて
スパイダーから見ると裏側の部屋には見張りもいない状態だった。
レナとディルはそこから入ったが
ラウドはスパイダーから見て正面の部屋の前で隠れており
ホールに現れたときは正面から堂々と出てきたというわけである。


さらに先ほど海に突き落とされたリーダー格の一人が戻ってきた。
ずぶ濡れになっているその男を見てスカイが笑う。

『もう12月だというのに海水浴か?アクア?』

アクアと呼ばれた男は首を大きく横に振り
ラウドを見つけると声を出した。

『この男を俺が"けじめ"つけていいですか?副船長』

とロックの方を向くとロックはうなづいた。
それを見たアクアは
濡れた服を脱ぎ捨てて手を床につけた。

それを見てか
スカイはポケットに手を突っ込んだまま

『あとはロックに任せるよ』

と言うと外に出ようとする。
それにはラウドが

『逃げるのかよ?』

と精一杯の笑顔で返す。
もちろん嫌味を込めているのだが
やられているラウドが言っても意味は無い。
うっすら笑うだけで構わず外に出て行ってしまった。


『お前、スカイさんが相手するなんて100億年早いぜ』

アクアは床に手をつけたままそう言うと
アクアの手の周りから液体が現れる。
ラウドはそれを不気味に思ったが
動くにもロックにやられた右ひざのせいで思うように動けない。

だが、別に動いた人物がいる。
レナがアクアの液体がスキルの効果だと気づき
裏からすばやく人質の方に移動した。
レナは100Mを11秒台で移動できる機敏さを持っていた。

偶然にもレナのすぐ前にはあの船長がいた。
船長はレナがきた事をすぐに察知していた。
ほかの人質もわかってはいたが
反応は船長が最初であった。

『見張りにばれないように縄を解いてくれ』

船長は小声でレナに聞こえるように言った。
レナもその声を聞いた瞬間に
その近くいたスパイダーの動きを読み
船長に縄に手をかける。

その一方で様子を見ているだけのディル。
慎重になりすぎてレナの行動にもまだ目が届いていない。
ラウドが危機だと感じて少し立ち上がろうとはする。
ところで
レナの後を追っていたはずのディルではあったのだが
レナが予想以上に速かった為に見失っていた。
そのため2人は
別々にホールにやってきていたのである。


ラウドはアクアの液体に足を取られていた。
その液体はまるで氷のように固まっている。

『その様子なら
副船長にもケンカを売ったような雰囲気だけどよ
お前はスキル使いをなめてるな。
ついでに俺らスパイダーもなめているようだな』

そういいつつラウドに近づく。
ラウドもそれに挑発されてか
右腕で殴りかかろうとするが
固定された足のせいでその拳も床に着く。
結局、左腕以外が床に固定された状態になってしまった。

『これがスパイダーの極意。
ただ物を奪うそこら辺の海賊と一緒にするなよ?
動けなくなったお前は
まさしく蜘蛛の巣にかかった餌そのものさ』

アクアは強引にラウドの左肩を床に押し付ける。
そしてついにラウドの体全体が
床の液体に固定させられてしまった。


その状況を見てディルがついに動く。
後ろから出てくると
見張りの一人を人質に取る。

一瞬あっけに取られるスパイダーの一員だが
その瞬間にレナが船長の縄を急いで解く。

ディルはその時にほかの船員によって捕まれてしまうが
その瞬間、無人船もといスパイダーの船後方から
突然の竜巻が起こる。

ロックらには誰かの仕業だと予測できたが
自分達の船が大事と見て
宝を持ち出すように指示し
そのまま一気にスパイダーは退散した。


スパイダーが消え去るのを確認した船長は
立ち上がると

『皆様にはご迷惑をお掛けしましたが
とりあえずは海賊はここからいなくなりました』

そう言うと
先ほどの竜巻があっさりと消えてなくなった。







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