第14話 『対グローバー戦〜ピスカ山編決着





ディルが投げたビンには塩酸が入っていた。
左腕で叩きつけたガロンは
左腕が少し化学変化しているのに気付いた。

『くそっ』


ガロンがビンを割るところまでは
ためらっていなかったたキースだったが
その化学変化に少し驚いた。

しかし、すぐに気を取り戻し
隠し持っていた銃でガロンの左頭部を殴りつける。
これはもちろん、色眼鏡の男が銃を撃っても効かなかった為に
銃撃が出来なかった為である。

だが
やはりというべきか、鈍い金属音が響く。


『頭まで金属化しているのか?』

そんなことはありえないとキースは思いつつも
驚きと諦めが一瞬頭をよぎる。
しかし、ガロンの左腕に変化が起きているのを見逃さなかった。
それを見て、キースは可能性は残っていると確信した。

『何しやがる!このガキが!!』

殴られたガロンはすぐさまキースの肩を掴む。
しかし、キースは危機感を持つどころが逆に笑う。

『何がおかしいんだ!お前!』

そう叫ぶと
エルの時と同様に気合を入れる。

だがキースは
この時を待っていたかのように
先ほど持っていた銃でガロンの心臓部あたりを撃ちつける。
しかしそこはガロンもすかさず左腕でふさいだ。

『バァン』

ところが、
なんと今度は銃撃が効いたのである。


『やはりな・・・"この場"ではお前の能力はフルに使えない。
俺を金属化させるだけにスキルを集中するしか力が出ないようだな。
しかも先程のビンの中身で化学反応を起こした左腕は
スキルの効果はなくなってるようだしな』

話しながら無理矢理に肩を揺すり
ガロンを押し出すように離した。
その反動でガロンはそのまま後ろに倒れた。

それでも
キースに対するガロンのスキルは作動しており
金属化していくのが分かる。


その状況を見ていたディルとラウドは
すぐにキースに近づく。
そして少し、倒れたガロンから離れた。

『お前大丈夫か?』

ラウドがキースの体に触れようと手を差し伸べるが、
ディルがその手を止める。

『何・・・』

何するんだと言う前にディルが言葉を返す。

『触れるな。
酷だが、スキル使いに何かの力を加えられた時は
そのスキルが伝染する場合がある』

うつむいて膝から地面に下りると、右拳を地面に叩く。

『その男の言う通りだ。
俺もエルのようにもうすぐ金属化してしまうだろう・・・』

金属化しているエルの方を見て
キースは肩を落す。

『しかし、君のおかげであいつを追い詰めるところまでいけたよ』

半分の笑顔でディルに答えた。


少しだけ望みが出てきて、
ゆとりが出てきたと一瞬思ったそのとき

『まだあの男は生きてるよ!』

レナという女性が
走りながらこっちにむかい叫ぶ。

その声を聞いたディルとラウドは
奥で倒れていたはずのガロンの方を見るが
すでにその姿はない。

『レナ!いいからお前は逃げろ!』

キースはその状況を分かりながらも
最後の気力を絞って叫ぶ。


一方で少し離れたところにいる色眼鏡の男は
ガロンのいる場所を見ていた。
そのガロンは彼から見て
丁度キースらの左側になる位置に移動していた。
どうやらターゲットはディルのようである。

それに気付いていた色眼鏡は
ディルの近くに銃弾を放ったのだが、
ディルは色眼鏡の方を見てしまった。
その意図をわからなかったため
いまだにガロンの居場所がわからない。

同時にラウドは
とっさに銃弾の当たった位置を見た。
それと同時にこっちに向かってくるガロンを見つける。

『あいつ!』

体がすぐに反応すると
ディルの体を押しのけてガロンに向かう。
一瞬でディルは色眼鏡の方を見て体を押されたかたちになった。

ラウドが向かうとすぐに色眼鏡の2弾目が
今度はガロンの進行方向予定場所にと思われるほうへ放たれる。

『ボゥン』

なんと今度の一撃は煙玉だっのたが
ガロンとラウドはお互いに躊躇することなく
その煙のほうに向っていく。
位置的にはガロンはその煙から逃れないかたちでもあった。
そこにラウドが突進して行くことになる。

躊躇はしなかったものの
煙そのものは邪魔である。

『目くらましなど、効かねぇよ!』

ガロンは両腕でその煙を払う。
その一瞬の払って出来た隙を
ラウドの右腕で顔面にとらえた。

今度はガロンも金属化する余裕がなく
完全にヒットする。

走りながらの勢いで殴ったので
ガロンが少し派手に後ろに飛ばされた。
周りから見ると
煙からガロンが勝手に飛ばされたように見えた。

そのことを予測していたかのように
色眼鏡の男はガロンにめがげて銃を連発する。
それは誰が見ても分かるぐらい
ガロンは即死状態とになってしまっていた。


激しい銃口を聞いたラウドは
煙から抜けると、その状態にちょっと吐き気を感じたが
色眼鏡の方を向き両腕の拳を叩きつける




ラウドに押し出された後のディルは
金属化するキースと何かを話していた。
少しして、レナという女性が到着する。

『キース大丈夫?』

先程のラウドと同じように近づこうとするのを
ディルは同じように制止する。
が、しかし、
レナはその制止を振りきってキースに近づく。

『レナ。俺に触れるな。
もう俺も・・・エルと同じように金属になってしまう・・・』

キースは最後の力で右腕をレナのほうに上げて
それ以上近づけないように動作する。

『そちらのディルという男に・・・後は任せてある。
この後どうするかは・・・自分で決めろ・・・』

キースの顔色は完全に変わり始めていた。

『何言ってるのよ!死んじゃ嫌だよ!』

必死で呼びかけるが、
その願いも届かずキースも金属化してしまった。
それを見て
両膝をつき落胆するレナ。
そう状況を後ろから何も言えずにディルは黙って見ていた。


『なんで・・・?
いくら"覚悟"しているからって、
こんな終わり方するなんて・・・』

肩を振るわせながら、
金属になったキースを見つめ
また涙を流す。
かと思うとすぐさま振りかえる。

『ねェ!キースを助けてよ!エルも!サレムも!
ねェ!ねェ!ねェ!』

ディルに掴みかかり
そのまま泣き崩れてしまった。

その時丁度色眼鏡の連撃の銃弾の音が響いた。
それは対グローバー戦が終わった合図でもあった。




少し時間を置き、ディルが口を開いた。

『・・・レナというのか。
俺はキースにだいたいの事情を聞いた。
キースにはイイ人そうだから、レナのことを頼むといわれたが
正直、俺はレナのことを任せられるほどイイ人でもない。
それに今の傷ついたレナを慰められる言葉もない。
・・・それに誰も守れなかった』

最後の言葉は力なく、
キースのほうを向き両拳を強く握り締めた。
レナはその言葉に少し反応を見せたが、
ディルを掴んだまま動けなかった。


ラウドはゆっくりディルのほうに向かったいた。
ディルとレナという女性の様子を見て、
近づきにくい感じがしたためである。

色眼鏡は逆に素早くディル達のほうに歩き出した。

『おい。スキルポーションもっとるんやろ?』

レナの後ろに立ち問いかける。
しかし
当然のように返事は帰ってこない。

予想していたかのように少しため息をつくと
今度はレナの後ろ頭に銃を向けた。
さすがにそこはディルが反応を見せる。

『まだ殺したりないのか。
殺してまで奪いたいものか?
スキルポーションをよ!』

悲しみと怒りが混じった叫びで
色眼鏡を睨み付ける。


ディルの叫びにゆっくり歩いたいたラウドは
気まずい雰囲気と感じ取り
急いでそこに合流した。

『待てよ。俺らが奪い合うこともないだろ?』

その言葉に少し反応を見せた色眼鏡であったが
銃を下ろすことは無かった。


『分かってる・・・。
キースから言われていたからな。
お前にはちゃんと渡すよ』

ディルはうつむいたまま
レナに色眼鏡に"ソレ"を渡すように合図をする。

合図を貰ったレナは少し戸惑いながら
隠し持っていた"スキルポーション"を色眼鏡の方を向き手渡しする。


スキルポーションを受け取ったのだが、
色眼鏡はまだ何かまだ言いたそうである。

『これだけやないやろ?』

今度はラウドの方を尋ねるが

『あぁ』

あっさりラウドは答えた。

『でもさ、お前も結構強いよな〜』

実はスキルポーションを引き換えに
仲間にしようとラウドは企んでいた。
ラウドにしてみれば
、強いだけでも仲間にするには十分だったのである。
これにはディルは驚いた表情をする。

『俺の仲間になるんならあげてもいいぜ』

完全にラウドは引き込む気である。


色眼鏡は少し考えたようだが

『上に行くには一人は辛いからな』

意外にも弱気な言葉だった。


ディルはラウドの言動に不安を感じつつ
レナの様子を見ている。
そのレナはまだ少しうつむいていたようであるが、
心なしか落ち着き始めていた。




『よし、これで"4人"になったな』

勝手に仲間を増やすラウド。
そして手にもっていたスキルポーションを
色眼鏡に渡そうとする。

しかしそれをディルが止める。

『なんだよ、ディル』

ディルはラウドの腕をつかんでいた。

『ラウドな・・・
あいつにスキルポーションを渡したら、
仲間の話もなかったことにされるかもしれないぞ』

スキルポーションを持っている腕を強く掴む。

『そうか?疑り深いなディルは』

まったく人を疑うことをしないラウド。
その顔をみてディルは逆に呆れ顔で、
その腕を放した。


『確かに頂いたわ』

スキルポーションを手にした色眼鏡は
さっさと山の奥へ進もうとする。

『まぁ、焦るなよ。
一応自己紹介ぐらいしとこうぜ』

ラウドが色眼鏡に向かって自己紹介を勝手にし始めた。
その様子を見ていたレナも
何をを覚悟したように、その話に入っていく。

『私は、レナ
今は見ての通り一人身だけど・・・
まぁ、とりあえずヨロシクね』

先ほどまでの落ち込みが嘘のように
明るく振舞っていた。

そのあと
色眼鏡は少し考えるそぶりを見せたが

『レビンや・・・』

だけ言うと
また先に歩いて行ってしまった。
それをラウドが追いかけるようについていく。


その一方でレナはディルを連れて行くようにして
二人についていった。




少し進むと
ラウドがレビンにちょっかいを出すようになった。

『レビンはこの先の道を知ってるかよ』

ラウドにとってまだこのあたりは行動範囲だったので、
かなり先輩面でレビンの横について歩くが、
レビンは何も反応せずに先を進む。

しかし、進むにつれて
ラウドはだんだん落ち着かなくなっていた。

『なぁ・・・。
道わかってるのか?』

ラウドはレビンの肩をたたく。

『と言うかな・・・』

手を今度は止めて、少し顔が笑っている。

『そっち行くとよ、川の源のほうに戻っちまうぜ』

それを聞いた瞬間
レビンの足が止まった。

そしてそれを見たラウドは、あることを考えた。


-レビンって・・・方向音痴なのか?-

と。


とにかく、少し複雑ながらも
ラウドの"一応の仲間"は3人に増えたのであった。







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