第11話 『宝探し』





ディルのとった作戦は
心理作戦である。

先程のグローバー達から見ればディル達は
どこにでもいる冒険家である。

だてにここまで残っていない奴らだらかこそ、
ディルが姑息な真似をしようと全然動じない。
それだけの面子しかこの山には残っていない。
ディルにはそういう確信があった。

そして、実際に"仕掛け"をしたのは、
最初のグローバーの体格がデカイ男と、
あと数人だけである。
あとは全てフェイクである。

あの不自然な行動は
素人冒険家が少しは出来ると思わせる"フリ"である
と思わせることである。
つまりは素人冒険家のフリを演じているわけである。

そして、それをわざと気付かせる事で
ディルが只者でないということを思わせることもある。

しかしディルはそれと逆の
素人が素人のフリをする演技に徹していた。

そこでグローバー達は、
ディルの行動が隠れた挑発であることを知りながら
わざとひっかかっていたのである。
それは、いつでも、お前みたいな冒険家もどきは
"カモ"に出来るという自信の裏返しでもある。

ディルがついたのはまさにそこにある油断であった。

もちろん他にもわざとらしい行動をとることは出来る。
そして、仕掛けを壊そうとするヤツも当然にいる。
そのデメリットをあえてディルは利用したのだ。
たかが2年のハンター経験であるが、
洞察力はかなりのものがあった。
そこで、わかる範囲で仕掛けを壊そうとする奴には
ダミーを仕掛けていた。

ところで
グローバーの体格がデカイ男は
仕掛けが肩につけられていることを悟ってはいたが
先程の強気な挑発が気になっていた為
わざとそのままにしておいた。

他の"仕掛け"を受けた者も約半分近くは
そのままにしていたが
そのうちの半分は
不自然に思っただけで壊してしまっていた。

だいたいはディルの予想通りに動いたということになる。
とはいえディルは少しのハンター経験があるものの
ラウドは本当の素人冒険家である。
そのことが吉と出るか凶と出るか。




今まではラウドに道案内してもらっていたが、
今回はディルが率先してリーダーとなっていた。
それはラウドが素人冒険家であることを
見ぬいていたからでもある。

ディルは周りに注意を払いながら奥に入る。
それはいつ、グローバーのような盗賊に襲われても
逃げれる様にである。

しばらく行くと少し小高い丘のようなとこの、
木の数も少ないとこで立ち止まった。

『ここら辺か』

そういうとディルはマントを脱いで
マントの中に隠して持っていた
小型のアタッシュケースの様な箱を取り出した。

『おお。なんだその箱』

ディルが何故、ここで止まったのかより
持っていた箱にラウドは夢中になる。

一方でディルは冷静にその箱を開ける。
そこ箱は2段構えになっており上には医療品
下には携帯などの機械がしまってあった。

『なんだ、この機械は?』

携帯電話などの機械は
今までの人生の半分を山で過ごしていた
ラウドにとってはものめずらしかった。

『これが、さっきの不自然な行動の正体だ』

そうディルがいうと機械を立ち上げ始めた。
昔の携帯電話のような大きな携帯を持ち
横についているダイアルのようなものを回して、
何かを聞き取ろうとしていた。

『ラジオ・・・?』

一応ラウドでもラジオの存在は知っている。
それを聞いたディルは少し笑いながら

『まぁ似たようなものかもな』

というと何かの音声が聞こえてきた。




一方、ディルの"仕掛け"にわざと引っかかったグローバーは
山の中に入った他の集団を狙っていた。
もちろん盗賊としてである。

彼らはここの宝にも興味はあるが、
最初の仕事は他のグループを"カモ"ることである。
ちょうど今その時であった。

『このバンダナを知らねぇとは言わねぇだろうな』

と剣士の風格の男がそのグループを脅している。

『金目の物を全て出して、さっさと家に帰んな』

と体格のデカイ男がとどめを刺す。

そのグループもここまで残っただけあって、
さすがに引かない。
しかし、引かないと見た風除けのガードを口にした男が動く。


パ・パ・パ・パ・パン!!


銃声が山に響いた。
その集団のメンバーは即死であった。

『シャキールは気が短いぞ』

と金色の髪が長くそれを立てている男が
その光景を見て感想をこぼした。

『シャキールがやらなくても,ガロンさんがやるんでしょ?』

と剣士の風格の男が
当たり前の様に言葉を返す。

『エルファは何を言ってんだよ?
俺らはグローバー、
そこらへんの遊びの盗賊じゃないだろうよ』

体格のデカイ男も当たり前のように話し、
剣士の風格の男の頭を叩く。

『痛てェぞ、ゴードン!
ンなことはわかってるさ』

と体格のいい男につっかかる。
そんなやり取りを面白がってみる
金色の髪の毛の男が口を挟んだ。

『ところで、ゴードンよ、
あの冒険家二人組のほうは来る気配はないか?』

体格のデカイ男に問いかける。

『あぁ、そういえばなんにもしてこないですね。
というか、これ盗聴機だろ?小型だけどよ』

と剣士の風格のほうを向き
左肩を揺らす。

『これを作った奴は、結構器用なヤツだな』

とその"仕掛け"を見て関心していた。




ディルが仕掛けたものとは
小型の盗聴機であった。
それは蟻ぐらいの大きさであり
服などに刺さるように出来ていた。
刺さるといっても肌に感じるとこまで
刺さってはいなかったが、
ちょっとしたことでは外れないようになってもいた。

それよりも、問題がある。
山の中に入れば
電波が途切れるはずである。
しかし、山と森の木の部妙な角度で
ギリギリながら電波が届いている様である。

その為に少し小高いとこに
ディルは移動していたのである。
そして、聞こえてきた音声も
グローバーの今の会話である。

『この声って・・・さっきのデカイ男だよな』

ラウドはその会話を聞き
自分の中で何か抑えられないものを感じていた。

『人を殺してまで・・・
物を奪うのが・・・盗賊なのか』

ディルの言葉には重さが感じられる。
気持もラウドと同じであった。

『こいつらの居場所わかるか?』

と言ったときには
ディルはまたダイアルを動かし、
何かを見ている。

『この山では正確な電波は取れないが
位置を予測することが出来る。
多分海側のほうだ』

というとかばんをマントに隠し
マントを羽織ることなく持ったまま走り出した。

『お、おい!そっちはまずい』

とラウドはディルと止めようとして必死に追いかける。
ラウドが止めるには訳があった。
今までいた小高い丘からグローバーが
いると思われる海側を抜けるには
マルグマの生息地を通らなければならない。

マルグマは基本的に行動は一人行動であるが
子供を持った母親となると話は別である。
その地点にディルが乗りこむのを
ラウドは防ごうとしている。

さすがのラウドでも、
生息地にいるマルグマ全てを相手にするのはキツイらしい。
生息地にいるマルグマは60〜80匹は軽くいる。


先に行ったディルは妙な匂いを感じていた。

『この匂い・・・どこかで・・・』

その匂いは懐かしさと、悪寒を感じるものだった。

『・・・血か』

と気付いた頃には
周りにマルグマの死体が転がっていた。

『うっ・・・』

あまりの多さと、全てが死体である状態に
少し吐き気を覚えたが
それでもディルは平然としていた。

そんなディルを見つけラウドも、
辺りの様子がおかしいことに気付く。

『ひどいな・・・銃で一撃かよ』

ラウドはさすがに気分が悪くなり、
その場を離れかけた。
マルグマ全てが銃によって一撃で殺されていた。
今までは山ごもりな格闘の相手として戦ってきたラウドも
これにはさすがに胸を締め付けられた。

ディルはそのマルグマが
特に多いほうに移動し始めた。

『お・・・おい』

ラウドは一応声をかけようとしたが
ディルの様子の変化に戸惑っていた。
その、ディルは何かを見つけていた。
ちょうどマルグマが何かを守っている様でもあった。

『石?』

その中心に一人のハンターらしきな人と
藍白い石があった。

そのハンターはその石を取る為に
マルグマを殺した様である。
しかしそこまで行くまでに
マルグマにやられたようである。

『何故、ここまでして・・・』

ディルはそこに腰を下ろして、
その藍白い石を握り締めると、
そのまま地面をその拳で叩きつけた。


ラウドもなんとか
ディルの近くにいくことにした。
よくよく見ると、何人かのハンターが
マルグマと共に死んでいた。

ラウドは一瞬ガンプのことを思い出していた。
あの男ならやるかもしれないと。

『ラウド・・・
これが・・・おそらく・・・
アクセスポイントってものだ・・・』

ディルが低い声でそう呟いた。

『その石を取る為にマルグマと共に心中したのか?
俺は、違うと思うぜ』

ディルの目の前までラウドは来る。
そしてディルから、藍白い石を受け取る。

『俺の勘だが、ガンプじゃないと思う』

ラウドが言おうとしていたことの
逆を言ったディルに
少し戸惑いを感じたラウド。

『そしたら、誰が・・・』

ラウドは藍白い石を強く握り締める。
それを見たディルの答えは

『自然の力だ・・・な』

と上を向き空を眺めて答えた。

『宝を求めた者が死んで、
そこをアクセスポイントと知らずに通った者が宝を手に入れる。
皮肉なもんだな・・・』

ディルはそう言うと立ちあがる。


ラウドは石を眺めていた。
ここでラウドは変な矛盾を感じていた。
戦う以上死んでしまうのは仕方ない。強い者が生き残る。
そう思っていた。

でも今に気持ちは全く逆であった。
マルグマは生きる為に人を選ぶ。
もちろん他の動物も選ぶ。
ラウドはその事を知っている。
おそらく、ここにいる誰よりも
マルグマを理解していると自負している。
ラウドは成熟したマルグマを格闘相手に選んできた。
決して、子供や、母親は戦わなかった。
それは、ラウドの中に家族というものが
何かを引っかけていたからである。

これでは、ただの弱いものイジメじゃないか?
父親を好きではないラウドだが、
母親を思う心はいまいち良くわからない。
自分はそう思っていたが、本能は好きなのだろう。
母親というものを知らないラウドにとっては
複雑な心境であったのだろう。


そして今回ディルは、
ハンターらを弔うことは無かった。

ディルは、自分の中で、何か決まりを作っていた。
勝手に殺されたものは弔う、自分で望んだ者は弔わない。
それは周りから見れは身勝手なことである。
しかし、ディルはそれを信じて、先に進む。

これはラウドが変に感じたのは言うまでも無い。

『こいつらは弔わないのか?』

とディルが先に行くのを止める様に言うが

『マルグマも弔わないといけないしな、
それに、ムリヤリ殺されたわけじゃないだろうしな』

この言葉にはラウドは怒る。

『ムリヤリじゃなかったらいいのかよ!
マルグマは・・・』

といいかけて、やめた。
ラウドは感情より体が先に反応する性格である。
すでに拳がディルの顔面スレスレに伸びていた。

ディルはその伸びたラウドの手を取り

『なんか、互いにらしくないな』

とディルが呟き、手を下ろさせると
それぞれが行動に移した。

ディルはハンターらの墓を
ラウドはマルグマを集めて近くに穴を"波動"で作りだし
それぞれ弔った。

『ディルの気持ちが少しわかった気がする・・・かな〜』

とラウドが少し気分を和らがせようとして
ふざけて言ったが
ディルは何も返さず、先に歩いていった。







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