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あ れ こ れ 考 え る 17
 小説マガジン 『パコを憶えているか』 新編酒中日記 『饗宴』 『異邦人』 名古屋古書市報告 『悪夢氏の事件簿』 『銀杏坂』 『生きにくい』

 小説マガジン 2001/10/11(木)

 今日の古本購入は、
 『月刊小説マガジン』終刊号(昭52年10月号)1000円
 たまに見る雑誌だけれど、実は、買うのは初めて。もちろん少年マガジンとは縁もゆかりもありません。執筆陣は横田順彌、鏡明、森真沙子などのSF陣にタモリや高信太郎などを加えた空飛ぶ冷やし中華的面々。
 創刊は昭和52年5月号なので、6号で終わってしまったのね>月刊小説マガジン
 6冊ぐらいだったら集めてみようかな。

 今日の新刊購入は、
 『時間とタイムマシンの哲学』千代島雅(2001年10月北樹出版)
 かくれた名作でご紹介している『さらばタイムマシン』の全面的書き直し版。あいかわらず似たようなタイムマシン批判をやっているのだとは思いますが、やっぱり買ってしまいました(^^;)

 『バルーン・タウンの手品師』松尾由美(2000年10月文藝春秋)
 今頃になって『バルーンタウンの殺人』を読み始めたのですが、これがえらくおもしろい。さっそく続編も買っておくことにしました。でもこの続編ですら1年前の作品だったのね。


 『パコを憶えているか』 2001/10/10(水)

 えっ、今日が10月10日だったの?!
 10月10日なんか、この前の3連休でとっくに通り過ぎたと思ってたよ。
 ねっ、みんなそうだよね。 (えっ、違うって?(^^;) )

 『パコを憶えているか』シャルル・エクスブライヤ(昭42HPB)読了
 リューヒ刑事は、スパイとして送り込んでいたパコを殺され、その復讐を決意する。一方、パコを殺した一味の主犯に「パコを憶えているか」の脅迫状が届き、その部下たちが一人一人殺されていく。
 フーダニットの本格推理。かなり暗い展開の作品だけれど、エンディングの鋭さで読後感は意外と爽やか。ああ、やっぱりやられました(^^;)
 でも、このストーリーの作品だったら、もう少しページ数が必要かも。あらすじだけを読まされてると感じる部分も少なくないからね。

 

新編酒中日記 2001/10/9(火)

 新刊書店をのぞいてみると、
 『陰陽師ときがたり絵巻』(2001年9月角川書店編)が平積みされています。映画版『陰陽師』の解説本であります。だから言わんこっちゃない。今後も、『千と千尋』なみに続々と出版されると思います>映画版『陰陽師』解説本 (-_-)
 これは気を引き締めておかないと、えらいことになりかねませんね。
 もっとも今回は買っちゃったけどね(^^;)

 家に帰ると、『新編酒中日記』三橋一夫(昭30和同出版社)1800円が送られてきていました。表題から日記か随筆かとも思いましたが、大山太次を主人公とする連作短編9篇にその他の短編3篇を加えた短編集。
 まあ、どうせ読む気はないからなんでもいいんだけどね(^^;)

 『パコを憶えているか』を読み始めたのだけど、なんか暗い話なんじゃないの。もう少しがまんして読んでみるけど、途中で投げ出してしまうかもしんないなあ。


 『饗宴』 2001/10/8(月)

 本日の古本購入は、
 『ターザン』児玉数夫(平元 平凡社)1000円
  サイレント映画から現代にいたるターザン映画全作品を解説したシネアルバム

 『2001年哲学の旅』池田晶子(2001年3月 新潮社)1000円
  めあては、「帰ってきたソクラテス」の新作。 ファンなんだよね>池田晶子のソクラテス
  久しぶりに池田晶子のソクラテスシリーズも読んでみたいけど、どこにしまいこんでしまったのか全く不明。やっぱり古本屋で買ってきた方がはやいよね、だはは... (^^;)

 『対談・ドーベルマンの飼い方』愛犬の友編集部編(昭52発行 昭54第三版 誠文堂新光社)400円
  以前ご紹介した『ドーベルマンの飼い方』という本について、先月メールをいただきお譲りしたのだけど、この本は、それをきっかけにして存在を知った本です。どうして犬の飼い方なんかで対談する必要があるんでしょう。別にいらない本だけど、見かけるとつい買っちゃうんだよね。状態はあまりよくないけど、これもいる?

 新刊購入は、
 『別冊宝島 もっと知りたい陰陽師』
  岡野玲子版コミック『陰陽師』の解説書。
  映画化に伴い、まだまだ、じゃんじゃん出てくるんだろうな>『陰陽師』の解説書

 『饗宴 ソクラテス最後の事件』柳広司(2001年10月原書房)読了
 表紙のカバーでは、ソクラテスがパイプを咥えている姿がユーモラス。
 はたしてギリシャ時代を舞台にして推理小説が成り立つのか疑問でしたが、冒頭出てくる訴訟板の蝋板が解けてしまった事件や、生まれたばかりの赤ん坊の口の中から蜂の巣が見つかった事件など、逆に、この時代でなければ成り立ちえないものでした。もちろん、メインの事件もその例にもれません。
 さて、ソクラテスの探偵像は近代的な、事件の傍観者たる探偵像とは異なります。むしろ現代的探偵像、すなわち明らかにされた真実によって、なんらかの態度を要請される探偵として描かれます。
 そこで描かれている社会も、人々は神々の物語を信じられなくなり、何が善で何が悪なのかも分からなくなっている社会、また若者にとっても、その民主制は、自らの手で勝ち取り、守り抜いた経験がないだけに、うさん臭い矛盾に満ちた制度と感じられている、そういう社会です。
 そういう社会を元凶として起きた事件、これをきっかけにアテナイが取るに足りないものとなろうとする時、ソクラテスは、アテナイが今後も誇り高きアテナイとしてあるために謎を解くと宣言する。
 こうして本作は、古代を舞台にしながら、そしてストーリー自体は古代でなければ成立しないものであるにもかかわらず、その探偵像と取り扱うテーマによって現代的な推理小説になったのだと思います。

 

 『異邦人』 2001/10/6(土)

 古本屋でふだんどおり本棚を見ていたら、突然、一人の客がぐんぐん近づいてきました。踊ってるよ。店内に流れている音楽に合わせて、踊りながら本を物色しているようです。昔ながらの古本屋だったらまず目にすることはない風景だと思いますが、ここは量産店系の古本屋なので誰もなんとも言いません。

 なんとなく落ち着かない気持ちのまま買った本は、
 『求婚者の夜』殿谷みな子(昭54ハヤカワ文庫JA)150円
  1977年刊行の、れんが書房新社版の文庫化。文庫化のきっかけは、川又千秋氏の「SFマガジン」紙上での書評だということです。
 『華麗なる幻想』福島正実編(昭52講談社文庫)30円
 『イラスト・エッセイ あなたとミルクティーを』みつはしちかこ(昭56集英社文庫)50円
 『因果応報』フレーザー(昭55講談社文庫)30円
 『サーバーのイヌ・いぬ・犬』ジェームズ・サーバー(昭60ハヤカワ文庫NF)190円
 『ゴーストハンターズ』アドベンチャーノベルズ(1987年JICC)80円
 『推理クイズ』山口琢也(昭54梧桐書院ヤマタク・フォトクイズシリーズ)100円
  写真を用いた推理クイズです。
 『探偵推理入門』加納一朗(有紀書房)100円
 『長州力』『藤波辰巳』『アントニア猪木』(学研アイドルコミックス)各100円
 『バルカンの火薬庫』『アルセーヌ・ルパンの第二の顔』『ウネルヴィル城館の秘密』(新潮文庫)各30円
 私が店を立ち去る頃は、くだんのお客さんは静かに立ち読みしてました。


 『異邦人』西澤保彦(2001年10月 集英社)読了
  主人公が、父親が死んだ23年前にタイムスリップする。父親の死によって姉が不本意な人生を選択したことを知り、姉の人生をやり直させるため父親を救おうと決意するが、その日はもう目前に迫っている。頼る者もいないそんな時に、姉の「恋人」である14歳の少女と出会う。
 一種のタイムパラドックスものなのだけれど、こういうのって、あまり割り切れちゃうとかえって凡庸な感じがするんだよね。また、タイムスリップものは過去に送られた瞬間から普通小説に変貌してしまうことも多いよね。
 本作では、四日間という限定がついているため緊迫感を失わないし、23年前に死んだ父を救おうとする目的自体がタイムパラドックスを構成するものであるため、小説全体を通してタイムパラドックスと向き合って展開していかなければならず、かなりオリジナリティあるものに仕上がっています。タイムパラドックスものの傑作といってもいいんじゃないかな。

 今日の新刊購入は、
 『夢枕獏と安倍晴明』志村有弘(2001年10月桜桃書房)
  安倍晴明本は掃いて捨てるほど巷に氾濫しているけれど、夢枕獏の『陰陽師』がテーマでは買わないわけにはいかないよね。なお岡野玲子の『陰陽師』にも言及しています。

 『夢野久作著作集6』(2001年7月葦書房)
  巻末にある夢野久作作品年表がすばらしい。初出はもとより、葦書房版、ちくま文庫版、三一書房版収録の状況が一目でわかる表になっています。各著作集の収録作にはかなりの異同があるため、全集収録の全ての作品にあたるためには3つとも揃える必要があるようです。
 知らなかったなあ。葦書房版に加えて三一書房版も揃えなきゃいけないのか。もっとも、三一書房版はそこらへんで売ってるので、買おうと思えばいつでも買えるんだけどね。

 『饗宴 ソクラテス最後の事件』柳広司(2001年10月原書房)
  『贋作『坊ちゃん』殺人事件』で朝日新人文学賞を受賞した柳広司氏の受賞後第一作。冒頭からソクラテスが、名探偵よろしく推理しちゃってますが...

 

 名古屋古書市報告 2001/10/5(金)

 今月は即売会が3つもあるので各書店も本を用意するのが大変なのではないでしょうか。こういう時には、毎回、同じ本を展示するような店も出てくるよね。でも客層もそんなにかわらないのだから、そう簡単に売れはしないようだけどね。
 というわけで、今日は10月最初の古書市であります。
 『続・街の博物誌』河野典生(昭54早川書房)800円
  これはダブリ
 『アニメ実力クイズ』(昭57朝日ソノラマアニメ文庫)300円
  ドラえもんとドラミちゃんはなぜ兄弟なのか?答は、同じオイルが使われているから。
  って、知ってました?
 『日本最強悪役列伝』(1987年朝日ソノラマ宇宙船文庫)500円
  これは持ってるはずだけど、どこかにいってしまって出てきません。今まで1ページたりとも開いたことがなかったけれど、やっと内容を確認することができました。
 『007&スパイ・ムービー大作戦』(1998年BNN)1000円
  刊行年からみて、まだ現役本の可能性大か?
  007はどうでもいいけれど、スパイ映画の解説書としておさえてみました。


 『したたるものにつけられて』小林恭二(平13年9月角川ホラー文庫)読了
 小林恭二の自選恐怖小説短編集。9編収録。
 美貌の女形田之助は、多くの女性と浮名を流したが、二十を過ぎると現世の女性には興味がつき、幽霊に心奪われるようになる。(「田之助の恋」)
 歌舞伎役者を題材とした「田之助の恋」と「葺屋町綺談」は秀逸。まだ、著者の『カブキの日』は読んでいないのだけれど、近いうちに読んでみたいな。


 新刊購入は、
 『文学外への飛翔』筒井康隆(2001年11月 小学館)
  筒井康隆の演劇エッセイ集
 『異邦人』西澤保彦(2001年10月 集英社)
  さっそく読み始めました。主人公が23年前にタイムスリップする話のようです。すでに23年前の自分にも出会ってしまっていますが、さてこの先は?


 『悪夢氏の事件簿』 2001/10/3(水)

 今日届いた目録には「みちのく国際ミステリー映画祭協賛」などとと書かれてあったので、内容を期待してしまいましたが、うーん、さほどほしい本はないなあ(^^;) ところで「みちのく国際ミステリー映画祭」って、なにかなと思ったら、けっこう大きな催しなのですね。 私は盛岡まで行くことはできそうにありませんが、パンフレットくらいなら買ってもいいかな。

 『悪夢氏の事件簿』小林恭二(1997年 集英社文庫)読了
 1991年集英社刊行の文庫化。このタイトルには覚えがあるので元版も買ってあるような気がします。ひとたび眠りにおちれば悪夢を見ずにすまないという悪夢氏が事件を解決する連作短編集。4編収録。
 タイトルから、悪夢によって事件を解決するのかと思いましたが、別にそういうことではありませんでした。だいたい悪夢氏の悪夢じたいの描写もほとんど出てきません。すると、主人公を悪夢を見つづける人物にしたというこの設定は、雰囲気づくりみたいなものなのかな。小説としては十分おもしろかったからいいけどね。


 『銀杏坂』 2001/10/2(火)

 今日届いた目録には、けっこういい本が載っています。
 さほどほしくはないけど値段だけ高いという本を載せている店は多いけど、ここの目録はかなりほしい本が載っているのです。でも、高いのはいっしょ(;_;)
 例えば、羽化仙史では、『鬼女無銭旅行』95000円、『女神男神』95000円、『新ナポレオン』95000円、押川春浪では、『世界水陸大競争』120000円、『千年後の世界』120000円
 あるところにはあるんですねえ。私が買うのは無理だけど、どなたでもけっこうですので今後も大事に保存していただけますようお願いしたいと思います。って、そうか、今まで大事に保存していただいた保管料を考えれば、ある程度値段が高いのも納得いくかも。


 『銀杏坂』松尾由美(2001年9月 光文社)読了
 中年の刑事が、香坂市で連続して起こる奇怪な事件を解決していく連作短編集。5編収録。

 幽霊の住むアパートで200万円のブローチが盗まれる。犯人はアパートの住民でしかありえず、ブローチもアパート内から外には出ていないはずなのだが、どこからも発見されない。幽霊なら鍵のかかった部屋にも出入りは自由だが、しかし幽霊は物体をつかむことができないので犯人ではありえない。(「横縞町綺譚」)

 これぞまさしくフーダニットの本格推理ではありませんか。第2作以降も、予知能力、生霊、念動力、人間消失というテーマはありますが、きちんと本格しています。これは、まだまだ続けてほしいシリーズだと思っていたら...
 そんなに甘くはありませんでした>松尾由美
 シリーズ探偵という枠をみずからぶち壊してしまう、その壊し方には賛否が分かれるところだと思いますが、私としては、否かなあ(^^;) だって、もったいないんだもん。


 『生きにくい』 2001/10/1(月)

 『生きにくい』中島義道(2001年7月 角川書店)読了
 「恩師の葬儀に出席するより、友人の見舞いに行くよりも、家で「死ぬこと」について考えることのほうが大切だ」 中島義道というと、「死」に関する考察、及び「騒音」との対決、というイメージが強いのですが、本書もその例にもれません。

 「なぜ歳をとると、時間はだんだん「速くなる」のか?」 この問いについても他の著作でとりあげられたことはありますが、おもしろいと思うのでご紹介します。

 我々は鮮明な記憶を「近い」とみなし、ぼんやりした記憶を「遠い」とみなす。
 歳をとると日常生活は定型化し、新鮮な感動が薄れる。我々は習慣の蓄積によって、あまり考えなくても新しい事態に対処できるようになる。
 そのため毎日の生活は定型のうちに埋没し、そんな中で、印象的なわずかな光景だけが鮮明に浮かび上がるようになってくる。
 ほかの部分がぼんやりしているから、その記憶だけが「近く」感じられる。5年前のその事件、例えば父の死や息子の入学式が「近く」、あたかも昨年のことのように思えるのである。そうして、昨年のことのように思えるという主観的な時間「1年」で、客観的な時間である「5年」を割り、5倍という速度で時間が進んだように感じられるのだ。

 子どもの時間がゆっくり流れるのは、まだ彼らが人生の定型化を学んでおらず、そのつどの記憶がはっきりしているためだ。彼らにとっては些細な記憶はほとんどなく、何でもかんでも大切な記憶なのだ。このため、彼らにとっては主観的時間と客観的時間の齟齬が生じないのである。

 そして中島氏はここで人生の妙味を語る。
 苦労なく、工夫なく、苦しみもなく、感動もなく、平板に能率的に人生を送れば送るほど時間が早く流れるのだ。逆に、危険に身をさらし、過酷な生き方をするほど人生は長くなるのである。

 いかがでしょう。歳をとると時間が短く感じられるのは、どなたも実感されることだと思いますが、その理由についての説明を聞いたという経験はあまりないんじゃないでしょうか。かなり説得力もあると思うのですが>中島義道


 今日買った本は、
 『SFエロチックス』福島正実編(三一新書)250円
  って、別に珍しい本じゃないんだけどね(^^;

 新刊では、
 『創元推理21 2001年冬号』(2001年 9月 東京創元社)
  『創元推理21』になって2号目。今号の特集はヴァン・ダインだという。
  もっとも私のめあては、大倉崇裕の「やさしい死神」なんだけどね。
 『銀杏坂』松尾由美(2001年9月 光文社)
  さっそく読み始めました。連作短編集のようです。5編収録。
 幽霊の住むアパートで200万円のブローチが盗まれる。幽霊であれば鍵のかかった部屋にも入れたはずだが、幽霊はブローチをつかむことができないので犯人ではありえない。
 うーん、なかなか、いい滑り出しじゃないですか。これはけっこう期待できそう。


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