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古本屋探訪日記 2005年5〜6月
 犬川柳 『四日間の奇蹟』 『君の名残を』 ミセス・コロンボ 『都立水商』 豊橋は鬼門 よくわからないうちに次回幹事 昨日のおまけ 白い巨塔 古書店は長時間労働 弥富は不発 本山でも廃業 古本屋のミニ即売会 プラモデルを組み立ててしまう客 『警察犬物語』 蘭郁二郎を売っている店

 犬川柳 2005/6/28(火)

 今日は半休を取ったので、まずは新刊書店へ。大倉崇裕『白戸修の事件簿』を購入しようとして、それが『ツ−ル&スト−ル』の改題であることがわかってがっかり。
『押川春浪集』伊藤秀雄編(2005年6月ちくま文庫)だけ購入。

 古本屋では、『SFイズム』10号、11号、12号、『SFワールド』5号が各100円だったので購入。どれもダブりなことは間違いないけど。


 ブックオフでは引き続きミステリーコミックスを探してみるが、こんなにたくさん出てるのですね。内田康夫とか夢枕獏、建築探偵など、おびただしい数が出ているものまで買っているときりがないので、以下のものだけ購入。
『覆面作家は二人いる1』原作・北村薫/美濃みずほ(1994年角川書店アスカコミックス)105円
『覆面作家は二人いる2』原作・北村薫/美濃みずほ(1995年角川書店アスカコミックス)105円
『人形はこたつで推理する1』原作・我孫子武丸/河内実加(1996年ソニーマガジンコミックス)105円
『人形はこたつで推理する2』原作・我孫子武丸/河内実加(1999年ソニーマガジンコミックス)105円
『YAKATA 1』原作・綾辻行人/作画・田篭功次(カドカワコミックスA)105円
『時をかける少女1』原作・筒井康隆/漫画・ツガノガク(2004年カドカワコミックス・A)105円
『幽霊病棟 放浪探偵信濃譲二の事件簿』原作・歌野晶午/作画・風祭壮太(平16年秋田書店サスペリアミステリーコミックス)105円
『化粧した男の冒険 メルカトル鮎の事件簿』原作・麻耶雄嵩/作画・風祭壮太(平13年秋田書店サスペリアミステリーコミックス)105円

 シナリオ本を買ってみる。これもノベライズまで手を拡げると収拾がつかなくなりそうなので、とにかくシナリオ本に限定。
『夏樹静子サスペンス 関西テレビ月曜サスペンスシリーズ』(1991年関西テレビ放送)105円
 関西テレビで放映された5作について、それぞれ原作とシナリオを併載するという趣向をこらした本でした。
『シナリオ ラブ&ポップ』薩川昭夫/庵野秀明(平10年幻冬舎文庫)105円
『NIGHT HEAD TV版シナリオ全集』飯田譲治/笠井健夫/高山直也(1994年竹書房)105円
『NIGHT HEAD THE TRIAL』飯田譲治/笠井健夫/撮影・小林ばく(1994年徳間書店)105円

 他にどうしても買いたくなったのが、
『犬川柳 ニッポンの犬ごころ編』(平16年辰巳出版)550円
 川柳付きの写真集。すごくかわいい。
 「マテ言われ 俺じゃないなと 一気食い」
 「柴犬の 久本雅美でございます」(似てるんだ)
『猫川柳 純情編』(平16年辰巳出版)600円
 こっちもかわいい。
 「コドモ猫 母探す姿 人に似て」
 「子を産んで 母の貫禄 身につける」


 『四日間の奇蹟』 2005/6/21(火)

 新刊購入は、
『ジャーロ 2005年夏号』(光文社)
 第5回本格ミステリ大賞に『天城一の密室犯罪教程』が選ばれているとなると、その各選評を読むためには、この雑誌はどうしても買わなければならない。「EDS緊急推理解決院 完結編」も掲載されていることだし。
『島崎警部のアリバイ事件簿 天城一傑作集2』日下三蔵編((2005年6月日本評論社)
 この本もデフォルト購入。

 ブックオフでコミックスの棚を見てみると、いやあミステリー原作のコミックスって、こんなにたくさんあるんですねえ。しかも100円で売ってるんだ!ちぇっ、先日、大枚はたいて購入した本まで100円だぜ。でもこのあたりの本も早晩なくなってしまいそうな気がするので、今のうちにぞろぞろと買っておく。

『冬のオペラ』原作・北村薫/漫画・南天佑(2002年角川書店アスカコミックス)100円
『名探偵・巫弓彦 蘭と韋駄天』原作・北村薫/漫画・南天佑(2001年角川書店アスカコミックス)100円
『渋柿信介の事件簿 歯なしの探偵』原作・二階堂黎人/作画・河内実加(平15年秋田書店サスペリアミステリーコミックス)100円
『緑の我が家』原作・小野不由美/作画・岸田あつ子(1999年角川書店)100円
『緋色の囁き』原作・綾辻行人/漫画・児嶋都(2002年角川書店アスカコミックス)100円
『人喰いの滝 火村英生のフィールドノート1』原作・有栖川有栖/漫画・麻々原絵里依(2000年角川書店アスカコミックス)100円
『朱色の研究 火村英生のフィールドノート2』原作・有栖川有栖/漫画・麻々原絵里依(2001年角川書店アスカコミックス)100円
『朱色の研究 火村英生のフィールドノート3』原作・有栖川有栖/漫画・麻々原絵里依(2003年角川書店アスカコミックス)100円
『魔界転生』原作・山田風太郎/漫画・九後奈緒子(2003年角川書店アスカコミックス)100円
『きみにしか聞こえない』原作・乙一/都筑せつり(2003年角川書店アスカコミックス)100円
『コズミック・コミックス AND』原作・清涼院流水/漫画・蓮見桃衣(2003年角川書店アスカコミックス)100円
『コズミック・コミックス END』原作・清涼院流水/漫画・蓮見桃衣(2004年角川書店アスカコミックス)100円
『ミステリー民俗学者八雲樹1』原作・金成陽三郎/漫画・山口譲二(2002年集英社)100円
『ケイゾク/漫画』原作・西荻弓絵/漫画・新井理恵(2000年第1刷、同年第5刷カドカワコミックス)100円
 ぐったり...... 他に小説も買ってるんだが省略する。


『四日間の奇蹟』浅倉卓弥(2003年宝島社)読了
 なんとなく今まで読む気がわかなかった作品だが、『君の名残を』に続けて読んでみた。
 私は、奇蹟が起こる前までの部分が好きだな。すばらしい傑作だと思う。それだけに奇蹟が起きたときは、ここで「あの奇蹟」を使うか?とあっけにとられた。もっと千織と真理子との交流を見ていたかったし、できたらその延長上にある、千織がもっと活躍するような奇蹟が起きてほしかった。なんでこんな、そこまでの話を中断するような奇蹟にしたのかな。


 『君の名残を』 2005/6/18(土)

 ネット書店から注文していた本が届く。新刊書店でコミックスの棚を見ることはほとんどないので、買う気になったコミックスはネットで注文することが多いのだ。
『ミステリークラシックス ブラウン神父編1』森本さとる(2005年4月講談社)
『時をかける少女2』原作・筒井康隆/漫画・ツガノガク(2004年角川書店)
『名探偵夢水清志郎事件ノートvol.1 そして五人がいなくなる』原作・はやみねかおる/まんが・えぬえけい(2004年講談社)
『名探偵夢水清志郎事件ノートvol.2 魔女の隠れ里』原作・はやみねかおる/まんが・えぬえけい(2005年4月講談社)

 その他、届いた本は、
『料理で読むミステリー』貝谷郁子(平15年NHK出版生活人新書)
 著者には他に、『ミステリーからひと皿』という著作もあるようだ。
『探偵小説と日本近代』吉田司雄(2004年青弓社)
 現物を見てみたら、なんか覚えがありそうな本。持ってる本だったかなあ。


 今日は名古屋古書会館の2日目。期待はしてなかったが、やっぱりだめ。
『ほんものの魔法使』ポール・ギャリコ(1976年初版、1986年新装大和書房)500円
『スペース・オペラの書き方』野田昌宏(1988年早川書房)
 どっちも持ってるよな。

 その他の古本屋で買った本は、
『冬のオペラ』北村薫原作/南天佑(2002年角川書店アスカコミックス)350円
『人喰いの滝』原作・有栖川有栖/漫画・麻々原絵里依(2000年角川書店アスカコミックス)350円
『朱色の研究』原作・有栖川有栖/漫画・麻々原絵里依(2001年角川書店アスカコミックス)350円
『エキストラ・ジョーカー JOE』原作・清涼院流水/漫画・蓮見桃衣(角川書店アスカコミックス)100円
『エキストラ・ジョーカー KER』原作・清涼院流水/漫画・蓮見桃衣(角川書店アスカコミックス)100円
 アスカコミックスっていうのも、なかなか、ばかに出来ないなあ。他に何が出てるんだろ。
『四十一枚目の駒』藤沢恒夫(昭51年講談社)800円
『妖精は花の匂いがする』藤沢恒夫(昭27年東成社)500円
『怪物弁護士・遠藤誠の事件簿 人権を守る弁護士の仕事』(1999年社会批評社)100円
『ベスト・オブ・ドッキリチャンネル』森茉莉(1994年ちくま文庫)400円


『君の名残を』浅倉卓弥(2004年第1刷、2005年第3刷宝島社)読了
 あまり感心できる作品とは思えませんでした。以下、ネタに触れています。

 著者は、源氏と平家の戦いを革命として捉え、革命史観を言明している。源平の争いを、貴族階級から権力を奪取する階級闘争と見るこの立場はいたって常識的なものだが、それにもかかわらず、小説の全編は英雄史観で貫かれてしまっている。しかも、タイムスリップまで起こさなければ歴史が正しく進まないという、英雄史観の極北とも言えるものだ。
 著者のこの歴史観の混乱は、そのまま小説の構成の混乱となっている。最後まで偶然と必然の関係が整理されることはなく、すべては宿命で説明される。
 この小説に出てくる神的存在は、世界には日本しかないかのように、微にいり、細にいり、日本の歴史の展開に口をはさみ続ける神である。また封建制度の土地関係がその社会から必然的に生まれたものではなく、現代の知識を拝借した制度だとして、世界の歴史をも切り捨てる。
 革命史観に立てば、できあがった土地関係を政治的に保障するため、権力を奪取する階級闘争と見なければならないはずなのに、著者はそれを逆立ちさせる。そしてその逆立ちの媒介として、史実どおりに物語を進行させていくためだけの神的存在が必要となるのである。(ここでいう史実とは、小説の中における史実であり、それが創作によるものか否かは別問題。為念)
 これを便宜上言い換えると、1回目の歴史では不要だった神的存在が、2回目の歴史以降で必要になったということになる。(1回目の源平の争いが終わっていなければ、未来から人間を連れてくることはできないから)
 しかし物語の構成に十分な考察がないため、著者は、なぜ史実どおりの進行に支障が生じたかについてまったく説明できないでいる。
 偶然と必然の関係についての考え方は、単純には次の3つに分かれる。
(1)すべては偶然、(2)すべてがあらかじめ定まっているという、いわゆる宿命論、(3)偶然を通して必然が貫かれるという常識的な考え方。
 人は必ず死ぬものだがどのように死ぬかは決まっていないと見るか、死ぬ時期や場所まであらかじめ定まっていると見るかについて、この作品が(2)の宿命論に立っていることは疑いない。しかし、十分な考察もせずに安易に宿命論に立つことが、この物語の根底をくつがえすことになることを、著者が認識していないのは致命的だ。
 それにしても、わざわざ未来から連れてきた二人が、剣道を習っているただの高校生だという誰でもよかったような理由しかないのにはあきれた。

 

 ミセス・コロンボ 2005/6/16(木)


 先日、上前津の古本屋で、「ミセス・コロンボ」が3冊並んでいるのを発見。
『ミセス・コロンボ1 殺人ネットワーク』W・リンク/R・レビンソン(二見書房)840円
『ミセス・コロンボ2 殺し屋の声が聞こえる』L・スレイト/R・シモンズ(二見書房)840円
『ミセス・コロンボ3 殺しの夜は雨・・・』S・ウィレンズ/H・バーク/R・シモンズ(二見書房)840円
 今、新刊で出ればこの位の金額ではないかと自分を納得させて購入したが、テレビ番組の出来がよくなかった「ミセス・コロンボ」だけにどうだったのか。もっともだから本だって売れなかったのだろうし、見かけるチャンスも多くはないのだが。


 今日は久しぶりに、「まんだらけ」に寄ってみた。
『ケイブンシャの大百科 完全大百科PART1 300さつ大集合!!』発行者・伊藤充広(2004年)630円
『ケイブンシャの大百科 完全大百科PART2 No.201からNo.696まで大紹介!』発行者・伊藤充広(2004年)1050円
 わけのわからなかったケイブンシャの本の全貌を明らかにした同人誌。いや、たいしたものです。なおPART1はNo1〜No.200までなのですが、No.1は各年度版で8冊、No.2は各年度版で21冊というように複数の巻があり、No1〜No.200まででちょうど300冊となるのです(為念)。
『リビング・デイライツ』(1987年朝日ソノラマ宇宙船文庫)315円
『仮面ライダー立体資料集』(1986年朝日ソノラマ宇宙船文庫)315円


 新刊購入は、
『輝く断片』シオドア・スタージョン 大森望編(2005年6月河出書房新社)
『陰陽師 鉄輪』夢枕獏=文/村上豊=絵(2005年6月文藝春秋)


『雨の午後の降霊会』マーク・マクシェーン(2005年5月創元推理文庫)読了
 「比類なき傑作サスペンス」という帯の言葉にだまされた。こんな稚拙な誘拐で成功するとはとても思えず、成功するか否かで読者がハラハラすることもない。「最終7ページの衝撃!」も、とりあえずきれいにまとめたな、くらいの感想しかない。しかも、この結末にするなら避けられなかったこととはいえ、後味も決してよくないし。


 『都立水商』 2005/6/12(日)

 外国には日本人が理解しがたい法律があるらしい。『世界のトンデモ法律64』世界法律研究会(2004年双葉文庫)にはそんな法律がいろいろ紹介されている。
 「生後72時間以内なら、赤ちゃんを捨てることができる」(アメリカ・テキサス州ほか)
 「自転車で時速110キロ以上出してはいけない」(アメリカ・コネチカット州)
 「郵便局員は犬と目を合わせてはいけない」(イギリス慣習法)
 「魔法の使用は違法である」(カナダ)
 「秘密に踊りを教えてはいけない」(韓国)
 目から鱗が落ちるというか、なんというか。

 古本購入は、
『ダイイングメッセージ オールカラー謎解きコミック1』出題・長谷部忠親/画構成・幡地英明(1990年集英社ジャンプコミックデラックス)250円
 スーパージャンプ平成元年2月号〜平成2年1月号掲載分12編を収録
『漫画家殺人事件 オールカラー謎解きコミック2』出題・長谷部忠親・倉田洸二郎・小野寺紳/画構成・幡地英明(1991年集英社ジャンプコミックデラックス)250円
 スーパージャンプ平成2年2月号〜平成3年1月号掲載分の12編を収録
『ファンタジーとフモール』堀切直人(1989年沖積舎)1200円
 フモールはドイツ語で、諧謔という意。

 新刊購入は、
『電送怪人 ネオ少年探偵』芦辺拓(2005年6月学研)
 『5年の学習』2002年11号〜2003年3号連載。
『謎のジオラマ王国 ネオ少年探偵』芦辺拓(2005年6月学研)
 『6年の学習』2003年10号〜2004年3号連載。
『脅迫状であてましょう 他』小説推理編集部編(2005年3月双葉文庫)
 『推理力』(2001年双葉社)を改題、加筆訂正したもの。


『都立水商』室積光(2001年小学館)読了
 おもしろくなりそうな雰囲気はあるのだが、結局、筋書きだけを読まされた感じで読了。
 水商売の高校という舞台を設定した割には、内的にも、外的にも、敵らしい敵がいない。生徒も、教師も、父兄・マスコミ・政治家・大衆も、みんな物分かりがよすぎて、こういうドラマでは定番の、読者が怒りをぶつける相手が存在しない。とにかく登場人物たちの一体感だけが強調されて、個性のぶつかりあいもなく、盛り上がりのない平板な話が淡々と綴られている。
 また、端々に教育界への提言らしきものが語られているのだが、それが主人公や学校に対する理解者の言葉のみで語られているため、たえず著者の存在が意識させられたのにも閉口した。エッセイではなく小説なんだから、著者のおしつけがましさを意識させるようなこんなストレートな語り方ではなく、無理解な登場人物たちにも割り振るなどして、もう少し小説らしくしてもらいたかった。
 この小説はマンガ化もされているようだが、おそらくこの点については改良して、話もふくらませているだろうから、きっと原作よりはおもしろくなっているはずだ。買うつもりはないけど。
 それから、生徒にたまたま野球や柔道の逸材がいたおかげで学校の名が挙がるというストーリーを何度も繰り返しているのも疑問。そんなの、この高校の特殊性と全然関係ないだろ。もうちょっと設定を活かしたストーリーにしてほしいものだ。


 豊橋は鬼門 2005/6/8(水)

 今日の新刊購入は、
『ルパンの消息』横山英夫(光文社カッパノベルス 著者サイン本)
『雨の午後の降霊会』マーク・マクシェーン(2005年5月創元推理文庫)
 なんのことはない。昨日買って、どこかで置き忘れてしまった本の買い直しだ。とんだ二度手間だぜ。

 昨日は豊橋に行ったのだが、私にとって豊橋はろくな所ではない。前回豊橋に行ったときは、そこで買った古本をJRの車両に置き忘れて失ってしまっているし、またその後、通夜に出席するために豊橋に向かった時も、乗る新幹線を誤り京都まで行ってしまい、名古屋に戻ってきてそのことを駅員に告げたところ、京都への往復料金として1万円近くを請求されてしまったのだ。(通夜には出ることができなかったので、香典は払わずにすんだが)
 そして昨日、行くつもりだった豊橋の3軒の古本屋のうち2軒は廃業、残りの1件は休業。そのうえ名古屋に戻ってきてから買った新刊も、おそらく地下鉄のホームに置き忘れてしまったのである。
 もう豊橋なんか行くもんか。

『猫の舌に釘をうて』都筑道夫(2003年光文社文庫)
 「猫の舌に釘をうて」だけ読了。都筑道夫の代表作品にもかかわらず初読である。以前も何度か読み始めたことはあったのだが、それほど長い作品でもないのになかなか読み続けることのできない作品だったのだ。
 それはおそらく、この小説の最も重要な要素である、主人公の動機「塚本有紀子への愛情」に感情移入できないところにあるのだろう。塚本有紀子に全く魅力を感じられないため、彼女への愛情に基づく主人公の行動のすべてに共感できず、そのため、ただただ退屈な文章を読ませ続けられる気分なのだ。
 今回はなんとか最後まで読み通したが、私にはやはり性の合わない作品だった。


 よくわからないうちに次回幹事 2005/6/4(土)

『古本的』坪内祐三(2005年5月毎日新聞社)の第2部「ミステリは嫌いだが古本は好きだからミステリも読んでみた」のみ読了。
 著者は、こんなタイトルを付けていてもミステリはほとんど読まずに済ませている。「ミステリ嫌いの私が堪能した都筑道夫」でも、著者が堪能しているのは都筑道夫の評論の方で、小説についての言及はほとんどなく拍子抜けさせられた。
 そんなわけで、古書会館の即売会では通常購入することのない(そして何冊持ってるかも不明な)『別冊新評 都筑道夫の世界』(新評社)500円
を購入してパラパラと読んでみる。ああこれこそミステリ評論だよ。
 これに比べたら坪内本はなんなんだろ。ミステリ評論でもなければ、古本の解説本にもなってない。まあ、「ミステリは嫌いだが古本は好きだからミステリも読んでみた」というタイトルが良すぎるので、それだけ失望感も高くなるのだろうけれど。

 古書会館を出て、これからオフの夕方までもうやることはない。しかたなく別の古本屋に行ってみても買いたい本はない。やむを得ず、
『都立水商』室積光(2001年小学館)100円
『カーニバル』清涼院流水(1999年講談社ノベルス)100円
『カーニバル・デイ』清涼院流水(1999年講談社ノベルス)100円
を購入。

 今からオフなのに、荷物を重くしてどうする。あとは喫茶店で時間をつぶすことにするが、
『賢者はベンチで思索する』近藤史恵(2005年5月文藝春秋)を読了しても、まだ時間が残っているのでやっぱり新刊書店へ。でも、できるだけ本を買わないように心がける。購入したのは、
『パンプルムース氏の晩餐会』マイケル・ボンド(2005年5月創元推理文庫)
『君の名残を』浅倉卓弥(2004年第1刷、2005年第3刷宝島社)
『駆け出しネット古書店日記』野崎正幸(2004年晶文社)
 著者の「文雅新泉堂」から、以前本を注文したことがあるのだろうか。定期的にメールで目録を送ってもらっているのだ。立ち読みしたらこれが結構面白いので、この本も購入することにした。辛辣な文章が好きな方なら楽しめそうな本です。

 ようやくオフの時間。
 私の知らないうちにネット社会はまた別のものになっているようだ。そうか、いつのまにかクローズのサークルが主流になってたのか。へえ。 

 それにしても、これは何回言ってもいいと思うが、今回のオフの幹事は私である。オフ開催日を、ある方の出席できない日に設定するという荒行を行っただけでも、充分責務を果たしたと自負している。
 しかも本交換会でも罰ゲームを逃れている。「ああ、これで次回の幹事はやらないで済んだ」と安堵したはっきりした記憶があるのだ。
 ところがその後の記憶がはっきりしない。王様がなんかまわりくどい罰ゲームを提案してるなとは思ったが、気付いてみたら次回の幹事はまた私になっているではないか。いったい何が起きたんだ。どうして、今回の幹事としての私の功績が、正当に評価されていないんだ!


 昨日のおまけ 2005/5/31(火)

 昨日のおまけで、白い巨塔(選挙編)


 白い巨塔 2005/5/30(月)

 ブックオフでの購入は、
『兄弟!尻が重い』山上龍彦(1996年講談社文庫)105円
『それゆけ太平』山上龍彦(1997年講談社文庫)105円
『小説 遥かなる時空の中で 2』近藤史恵(2002年コーエー)105円

 新刊購入は、
『チャット隠れ鬼』山口雅也(2005年5月光文社)
『賢者はベンチで思索する』近藤史恵(2005年5月文藝春秋)
『剣が謎を斬る 時代ミステリー傑作選』(2005年4月光文社文庫)

 DVDで「白い巨塔」(平成版)全巻を見直してみましたがやはり面白いドラマでした。
 そこでここに、白い巨塔(プロレスラー編)を捧げます。


 古書店は長時間労働 2005/5/21(土)

 今日は古書会館即売会の2日目。文庫が1棚並んでいたので必死に確認。もっとも購入したのは、
『クルンバーの謎』コナン・ドイル(1959年初版、1964年5版創元推理文庫)200円
『死にいたる火星人の扉』フレドリック・ブラウン(1960年初版、1961年再版創元推理文庫)200円の2冊のみ。
 他には、
『コナン・ドイル殺人事件』R・ギャリック‐スティール(2002年南雲堂SSKノベルス)250円を購入。まあこんなもんだな。

 H2さんの店へ寄ってみると、久しぶりに店が開いていた。聞いてみると開店時間を午後3時から8時までに変更したとのこと。業務時間5時間とはうらやましい、と思いきや、1日のタイムスケジュールを伺ってびっくり。
 まず午前中に、ブックオフなどの古本屋に5軒ぐらい廻って買出し。戻ってから買ってきた本の整理とビニール包装。閉店後もまた買い出し。深夜に戻ってから2時間くらいで本のビニール包装や注文のあった本を郵送のため梱包。そしてようやく深夜2時から4時までを余暇時間として、DVD鑑賞や読書に充てているのだという。それってすごい長時間労働じゃないですか。
「でも、好きなことを仕事にしているんだから幸せですよ」
そうなんだ。
『ふたごの復讐』(主婦の友社TOMOコミックス)を1000円で売ってもらいましたが、これってひょっとして瑞穂区のH書店からの流れ商品?

 その他の店で購入した古本は、
『ドラキュラ学入門』吉田八岑・遠藤紀勝(1992年現代教養文庫)200円
『空蝉処女』横溝正史(昭58年角川文庫)200円

 新刊購入は、
『クロノス・ジョウンターの伝説』梶尾真治(2003年ソノラマ文庫)
『IN POCKET 2005年5月号』(講談社)
 特集は、「文庫で翻訳ミステリーを読もう」


 弥富は不発 2005/5/16(月)

 久しぶりに弥富の「超書店」という古本屋に行ってみたら、店の様相が大幅に変わっていた。マンガと玩具が中心となっていて、文庫本がわずかに置かれているだけで、単行本などはすっかり姿を消している。こりゃあきませんわ。買うものはないが、むりやり角川文庫の有明夏夫『大浪花諸人往来』240円、『狸はどこに行った』210円を購入。もう1軒行くつもりだった店も開いておらず、まったくの不発だ。

 その後、私はなぜか黒川に降り立っていた。新しくできたゲオは1階が古本屋になっている。最近、ゲオ各店のほとんどが古本売り場をなくしている中で、珍しい店である。まあ、だからといって掘り出し物があるというわけでもなかったのだが。
『シャーロックホームズの鉄道学』松下了平(2004年JTBマイロネBOOKS)500円
 鉄道の知識をもとに、ホームズ物語の疑問点、矛盾点を解釈する。これに関連して、鮎川哲也『黒い白鳥』や江戸川乱歩『鬼』などのトリックの妥当性にも言及。
『プロレス八百長論者撃滅宣言!』椎麻芳生(1998年文芸社)100円

『となり町戦争』三崎亜記(2005年1月集英社)読了
 主人公が住む舞阪市が、となり町と戦争を始めた。日常的には何の変わりもなかったが、周期的に送られて来る市広報誌の「町勢概況」には、「死亡 23名(うち戦死者12名)」と記載されていた。さらにやがて主人公あてに、町役場から「戦時特別偵察業務の任命について」という通知が送られてきて......
 行政の執行実務を、町役場の戦争業務遂行というSF的な設定の中で、批評的に描くことに成功した怪作。淡々とした文章と、ところどころに差し挟まれる公文書のパロディが、作品に不思議なバランスを与えていて見事。


 本山でも廃業 2005/5/14(土)

 本山に行ってみると、1軒古本屋が廃業していた。結構、穴場の店だったので残念だ。
本山で購入した古本は、
『定吉七は丁稚の番号 定吉七番シリーズ1』東郷隆(昭60年角川文庫)190円
『ロッポンギから愛をこめて 定吉七番シリーズ2』東郷隆(昭60年角川文庫)190円
『ワンダー暗号ランド』長田順行編(昭61年講談社文庫)150円
『ターザンの復讐』エドガー・ライス・バローズ(昭46年ハヤカワSF文庫)100円

 百萬文庫という文庫専門店に行ってみると、お客さんが、店主に別のお客さんのことについて尋ねている。
「さっきのお客さん、1万円位も買ってましたけど、どういう人なんですか」
「一宮の人だそうですよ」
「旺文社文庫ばかり買って、きっと集めてるんですね」
と、人のことなのになぜか得意そうだけど、まあまあ珍しいといっても、旺文社文庫を集めてるってことはないんじゃないかな。教養文庫など資料的価値が高いものが他にもいくらでもあるのだし。

 猫又文庫では、本山の古本屋が廃業した話をする。不景気の時には古本屋は儲かるんじゃないかとも思えるんだけど、古本屋の経営もたいへんとのこと。鶴舞でさえ廃業した店があるくらいだから、やはり楽ではないんですね。
 普通の新古本で儲けて、その金で価値のある本を買うのが古本屋の王道とのことだが、その新古本がブックオフで売られるようになったこともかなり影響があるのだという。

 新刊購入は、
『ヒート アイランド』垣根涼介(2004年文春文庫)
 先日読んだ『君たちに明日はない』が格段に面白かったので、別のものも読んでみることにした。
『ジャーロ No.19 2005.SPRING』(光文社)
 ジャーロはほとんど買ったことがないが、合作長編「EDS緊急推理解決院」に惹かれて購入。執筆者は、黒田研二、小森健太郎、松尾由美など9人。
『大槻ケンジのプロレス格闘技世紀の大凡戦』(2005年6月洋泉社MOOK)
 猪木VSアリ戦などの「マイ凡戦」を各論客が熱く語る。


 古本屋のミニ即売会 2005/5/7(土)

 一昨日、上前津の古書店に「2階にてミニ即売会実施中」の貼紙があったので、何をやっているのかと上がってみたが、ただ商品を売っているだけ。考えてみれば古本屋で即売はあたりまえ。どういうつもりの貼紙だったのだろうか?

 今日は名古屋古書会館即売会の2日目だったが1冊も買うものがない。しかたないので千種の古本屋へ行ってみると、店主から「ベルヌ全集が入りましたよ」と声をかけてもらう。全24冊で48,000円だが今はちょっとそれだけのお金を出す余裕がないので、形而上学的推理小説という帯に惹かれた『巴』松浦寿輝(2001年新書館)900円で勘弁しておく。

 その他の店で購入したのは、
『シャボン玉ピストル大騒動』ポール・ギャリコ(昭52年早川書房)300円
『ドージョー010』世紀末プロレス道場論(1998年光進社)400円

 新刊購入は、
『メディア・シンドロームと夢野久作の世界』田畑暁生(2005年3月NTT出版)
『奇天烈!古本漂流記』北原尚彦(2005年4月ちくま文庫)


 プラモデルを組み立ててしまう客 2005/5/4(水)

 今日は久しぶりに四日市の店に行く。
先客が、プラモデルのレア物(5000円)を買って嬉しそうにしている。
「帰ってすぐ組み立てます。でも、これ組み立てたら値打ち下がっちゃいますかね」
 えっ、本気?レア物のプラモデルを組み立てちゃう人がいるなんて小説の中だけの話かと思ったよ。そのお客さんは、他にも漫画などあれこれ合わせて10万円位買ってました。すげえなあ。

 それに比べて私はしょぼい。先日、1だけが復刊された『大映テレビの研究2』竹内義和(昭62年たる出版)600円を買うと、
店主が、「これは3まで出てるんですよ」と教えてくれる。
持ってるから知ってますよと言うわけにもいかず、「ああ、そんなんですか」と答える。ほんとは2だって持ってるんだし。

 その他買ったのは、
『マニア林蔵の収集家日記』TBS「マニア林蔵」編(1996年ワニブックス)400円
『面白本ベスト100』北上次郎(1997年本の雑誌社)400円
『推理百貨店別館』新保博久(1989年冬樹社)500円
『女優志穂美悦子』責任編集山根貞男(芳賀書店)700円

 新刊購入は、
『古道具 中野商店』川上弘美(2005年4月新潮社)
『スピノザの世界』上野修(2005年4月講談社現代新書)

 レンタルで借りた『真説タイガーマスク』を視聴。船木、タイガーの役で結構苦労してるなあ。映画だから何とかなってるが、実戦でタイガーマスクをやるのは無理だな。共演の佐山聡もやきもきしたのでは。ちなみに映画の内容は古くさすぎて全く駄目。


 『警察犬物語』 2005/5/3(火)

 がーん!
『警察犬物語』三木孝祐原作/石川サブロウ漫画(1980年集英社ジャンプスーパー・コミックス)が4冊並んでいたので、てっきり1巻から4巻だと思って1900円も出してまとめて買ったのに、今見たら1巻がダブっていて、そのかわり2巻が欠けてるじゃないの。
 いや、私が勘違いしただけでお店には何の責任もないんだけれど、さっきまで読むのが楽しみだったのに、もう読む気が失せてしまったよ。どうせ2巻を買う頃には、今日買った本の所在が分からなくなっているに違いないし。

 その他の古本購入は
『隠密同心』九鬼紫郎(昭40年久保書店)200円
『校舎うらのイレブン』ちばあきお(1979年集英社ジャンプスーパー・コミックス)500円

『弥勒の掌』我孫子武丸(2005年4月文藝春秋ミステリーマスターズ)読了
 妻を殺された刑事、妻が失踪した教師の二人が、新興宗教団体を捜査する。しかし「我孫子武丸、渾身の本格捜査小説」という帯は伊達じゃない。いつのまにか、捜査する側と捜査される側という立場が混沌とし、大団円を迎える。やられた。

『黒笑小説』東野圭吾(2005年4月集英社)
 『快笑小説』『毒笑小説』に続くダークユーモア短編集、13編収録。特別、新味のあるネタを用いているわけではなく、描き方の巧さで小説に仕上げている短編集。


 蘭郁二郎を売っている店 2005/5/1(日)

 昨日、猫又文庫に行った折に、以前王様に教えてもらった瑞穂区の古本屋の話題になる。
「先日初めて行ってみたのですが、蘭郁二郎始め錚々たる本が並んでいて驚きました」
「ガラスケースに入っている本ね。どうも買い取りのお客さんがついたらしいですよ」
「亡くなったコレクターの家族とか?値段は聞けなかったなあ、どうせ買えないから。ポプラ社の『推理小説の読み方』とかもあったけど、そちらは別ルートなんでしょうね」
「ああ、ポプラ社も二冊並んでましたね。もう1冊は忘れたけど」
「私ももう1冊の方は覚えていません。『推理小説の読み方』は4200円でした。私が買うには高すぎるけど、売るならその位付けても不思議じゃないですね」
 実際、私が売るんだったらもっと高くなるはず。だって売りたくないもん。

 今日の古本購入は、
『ルパン小僧1』モンキー・パンチ(昭59年大都社)250円

 新刊購入は、
『君たちに明日はない』垣根涼介(2005年3月新潮社)
『小説以外』恩田陸(2005年4月新潮社)
『爆笑問題のふざけんな、俺たち!!』

『君たちに明日はない』垣根涼介(2005年3月新潮社)読了
 これは面白かった。リストラ請負人とリストラ候補者との壮絶なバトル! と思いきや、八方塞のリストラ候補者の前途に光明をもたらす、意外にもさわやかな連作集。5編収録。この作家の作品を読むのはこれが初めてだが、別の作品も読んでみるつもりだ。

『羊の宇宙』夢枕獏作・たむらしげる絵(2005年4月文藝春秋)読了
 カザフ族の少年が物理学者に宇宙の真理を語るというもの。ここで語られている内容は、メインストーリーが別にあれば説得力を持たせることも可能だっただろうが、テーマが宇宙の真理だけというこの作品では核心からそれてるという印象はいなめない。



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