かくれた名作31 2002/9/11

 BOOKMAN
 (1982年10月〜1991年6月 トパーズプレスイデア出版局

 潔い2年前の終刊宣言!

 瀬戸川猛資編集の雑誌。探偵小説、SF、ホラー、古本屋特集など、様々なテーマが取上げられている。

 第30号で終刊となったが、終刊宣言が出たのは第25号、終刊2年前の1989年8月のことである。これだけ早く終刊宣言が出た雑誌も珍しいだろう。瀬戸川猛資のそのときの文をとりあげておこう。

 BOOKMANを終刊にする。
 今号でとか、次号でといった性急な話ではない。30号をもって完結・完了する。現在25号だから、あと5号の命だ。順当にいけば、終わりの日は来年の暮れぐらいにやって来るだろう。しかし、そこはそれ予定を守れないBOOKMANのこと、ダラダラと延びて、1991年の3月ぐらいになるかもしれない。

 実際に終刊したのは1991年6月だから、ほぼ予言どおりである。なんか知らんが偉いぞ>瀬戸川猛資

No 発行年月 特集の内容  
1 1982年
10月
<特集 なぜかいま岩波文庫が読みたくなった!!>ブックマン1

「座談会 老舗のパワーと面白さと」 矢口進、呉智英、荒俣宏、深野有、瀬戸川猛資
「ぜひ再販してほしい岩波文庫の面白本20冊!!」
「岩波文庫夜話」
「図説・岩波文庫揺籃期」
「岩波文庫絶版リスト」
<コメント>
 呉智英は主張する。呉智英
 面白本ばかり読んでいた連中が、三十歳を過ぎる頃になってハードなものを読みたくなる。
 しかし、えてして渡辺昇一とか、山本七平の「論語の研究」のような教養本ふうだが、上っ面を撫でているだけの安っぽい本に行くことが多い。
 「論語」なら「論語」の原点にあたれ。
 まさに至言だ。

 ところで岩波文庫は、頻繁に再版、絶版を繰り返しているから、絶版リストはあまり役に立たないよね。

2 1982年
12月
<特集 見えない図書館−恐怖のブックハンター列伝>

「見えない図書館、そしてその館長たち」本野虫太郎
「BOOKMAN列伝 ジャンル別・七人の館長たち」近代文学/山下武、エロチカ/長谷川卓也、美術書/七木田麻簑臣、食味本/中村雄昂、ミステリー/今朝丸真一、漫画/野口文雄、イラスト入り洋書/早川清美
「この恐るべき愛書狂たち」瀬戸川猛資

<コメント>
今朝丸真一 ミステリー部門のブックハンター、今朝丸真一氏が、最近川口文庫の名で大量のコレクションを放出して下さったことは記憶に新しい。
 私もかなりの恩恵を受けました。この場を借りて御礼申し上げます。

3 1983年
2月
<特集 書棚から消えていった作家たち!!>

「”時代”に密着した文学」本野虫太郎
「アルツィバーシェフとサーニン」山下武
「「新思潮」出身の”失恋作家”」(久米正雄)矢口進也
「凡作が代表作とされていることの不幸」(木々高太郎)石川正三
「わたしの佐藤紅緑」小沢信男
「冒険と感動の使者」(南洋一郎)二上洋一
「リアルタイムが仇になったプロパガンダ文学の雄」深野有
「”やさしさ”や”平和運動”が忘れたつもりになっている名著」呉智英
「現在、文庫で読むことができない作家小リスト」
<コメント>
 石川正三「凡作が代表作とされていることの不幸」で、凡作とされているのが、木々高太郎の「人生の阿呆」である。
 木々高太郎が推理小説の文学化をめざしていたことと関係あるのだろうか。読んだことがないから、わからないけどね(^^;
4 1983年
4月
<特集 完全版・神田古書店カタログ>

本の聖地の徹底ガイド
  
5 1983年
7月
<特集 岩波&中公・新書ハンドブック>

「岩波&中公新書お薦め本ベスト20リスト」
「岩波中公新書実用百科」
「岩波&中公新書歴史年表 新書で読む歴史」
「岩波&中公新書絶版リスト」
「岩波・中公以外の主な教養新書」
 
6 1983年
9月
<特集 おお探偵小説大全集>
ブックマン6
「探偵小説 説明しようのないその魅力」本野虫太郎
「座談会 翻訳ミステリの知的興奮」菅野圀彦、戸川安宣、白井久明、折原一
「ポケ・ミスと創元推理文庫のおかげで」小泉喜美子
「トリックにひかれて」松田道弘
「編集者・ジャーナリストが選ぶこの3冊」
「絶版本ベスト100」奥野秀尚、深野有
「早川ミステリ・創元推理文庫と戦後文学」瀬戸川猛資

<コメント>
 参考に、創元の絶版本に関するBOOKMAN編集部の評をあげておきます。
『チューダー女王の事件』(ブッシュ)タイトルは魅力的だが、内容がそれに伴わない凡作
『誰が駒鳥を殺したか?』(フィルポッツ)絶版が惜しまれる秀作
『首のない女』(ロースン)本格としては今一つピリッと来ない。
『俳優パズル』(クェンティン)創元文庫の本格物の中では最悪の一つ。お粗末なかぎり。
『殺す者と殺される者』(マクロイ)異常性格を扱ったものだがマーガレッ
ト・ミラーほどうまくない。
『追われる男』(ハウスホールド)スパイ・スリラーの傑作。
『フレンチ警視の最初の事件』(クロフツ)佳作。
『水平線の男』(ユースティス)最後に犯人の話す一言に驚かない人がいるだろうか。

 なお私の創元推理文庫の感想リンクは、創元推理文庫
7 1983年
12月
<特集 ザ・ベストブック1983>

読書のプロが選んだこの1冊 
 
8 1984年
3月
<HOW TO洋書 読み方・集め方の徹底探求>

「未知の読書領域へ」本野虫太郎
「洋書を買う」
「Fictionを読む」
「ペーパーバックSFをどう読む」浅倉久志
「黄金郷の逸楽」大瀧啓裕
「Nonfictionを読む」
「日本語を通しては得られない情報の宝庫」井坂清
「HOW TO本に実利を求めてはいけないのだ」鏡明
「ヒッチコックは読む前に見よう」深野有
「Magazineを読む」
「ミステリ雑誌の読み方と編集のしかた」菅野圀彦
「『エクスワイア』のダンディズムはひとつの憧れだった」岡田英明
「洋書を集める」
「趣味の洋古書入手法」加瀬義雄
 
9 1984年
6月
<特集 一生の読書計画>

「長い人生、何を読むべきか」本野虫太郎
「文明の衰亡を考える」紀田淳一郎
「再読の価値のある文学を」矢口進也
「読書人をめざす若者のために」呉智英
「<黄金の12冊>5種」
「生涯一万冊読破計画」
<コメント>
 「生涯一万冊読破計画」でポイントとなるのは、通勤時の読書なのだという。
 行きに15ページ、帰りに15ページ、合わせて30ページ読むとし、一冊のページ数を300ページとすると、年間30冊。34年で1000冊に達する。
 一万冊の1/10は電車で読めることになあるというのだ。
10 1984年
10月
<特集 書斎の秘密 文筆家の書斎テクニック図鑑>

「人の書斎を覗いてみたい」
「紀田淳一郎さんのコンピュータ書斎を探検する」
「川又千秋さんのファンタスティック書斎」
「上野昂志さんのクラシック書斎」
「木村二郎さんのハードボイルド書斎」
「取材のためのオフィス書斎」
「書斎暮らしの手帖」
<コメント>
 「書斎暮らしの手帖」で紹介されている書斎小道具のうち、情報カードを有効に利用しているのは、本誌の常連執筆者のうちでは、呉智英一人だけだったという。
 さすが几帳面だ>呉智英
11 1985年
2月
<特集 ザ・ベストブック1984>

何がいちばん面白かったか
 
12 1985年
6月
<特集 幻の探偵雑誌[宝石]を追う>

「幻の探偵雑誌「宝石」を追う」本野虫太郎
「雑誌「宝石」・十九年の軌跡」
「<座談会>「宝石」とその時代」大坪直行、宮本和男、山本秀樹、戸川安宣、瀬戸川猛資
「「宝石」掲載短編ベスト20」宮本和男。山本秀樹
「別冊宝石、十六年の不正規軍としての履歴」松坂健
「世界探偵小説全集 単行本未刊行長編採点表」針尾一良
「「宝石」と大坪砂男と『天狗』」インタビュー・都筑道夫
復刻・大坪砂男『天狗』
<コメント>

  宝石をめぐる人々
13 1985年
11月
<特集 これが決闘文学だ!>

「決闘文学とはなにか」本野虫太郎
「強い同士はどちらが強いか」秋山協一郎
「剣豪小説決闘場面集成」嶋崎薫
「『宮本武蔵』読みくらべ」
「「強さ」と「勝利」の社会学的考察」鏡明
「「ウイルマおばさんの勘定」を読む」
「深夜の決闘」稲見一良
「「女」か「龍」か」柿沼映子
「決闘と文学」宮本和男
<コメント>
 本誌があげている決闘文学の要件を掲げておきます。
1 決闘の行為が具体的に描かれていること。その際必ずアクションをともなわなければならない。
2 主人公は一人で対決すること。
3 人間同士が対決すること。
4 決闘のテクニックや、虚々実々の闘いぶりが描かれていること。

 ただし「決闘文学」という言葉じたいは、ただの思いつきだそうです(^_^)
14 1986年
2月
<特集 ザ・ベストブック1985>

面白い本がなかったなんて本当ですか
 
15 1986年
6月
<特集 「辞書」はすばらしい>

「読書人よ、辞書に注目せよ」
「日本六大辞書列伝」
「INTERVIEW・どんな辞書をお使いですか」呉智英、英真寿美、佐藤敏雄
「コラム・辞書で小説を書いた作家の話」内藤理恵子
「ジャンル別大ガイド」
<コメント>
 辞書で書かれた小説というので「水素製造法」のことかと思ったら、アントニー・バージェス『どこまで行けばお茶の時間』のことだった。
 辞書のEの頁から、おびただしい語をピックアップしつつ、物語を作り上げていったというのである。
 主人公の「エ」ドガーが「エ」ドマー先生の講義を聞いている。「ああ退屈」だと思うやいなや、「イ」ースター島行きの船に乗っていた。
 その後も、エドモンド、エドワード、エコー、エクリプス、エッケルマン、エガリテ、エッケ・ホモ、エクレジアスティカル、エデンなど...洪水のようにEのつく語が続く。
16 1986年
10月
<特集 SF珍本ベストテン 謎の名作、噂の怪作>

「座談会第一部 日本編」横田順彌、鏡明、會津信吾
「座談会第二部 洋書編」伊藤典夫、浅倉久志、鏡明
「コラム・すぐ手に入る古典SF読書案内」會津信吾

<コメント>
 座談会第一部でSF珍本とされたものをあげておきます。
<単行本>1位元々社《最新科学小説全集》、2位『アメージング・ストーリーズ』(誠文堂新光社)、3位東光出版社《海野十三全集》、4位室町書房《空想科学小説全集》、5位講談社《S・F・シリーズ》、6位栗田信『発酵人間』、7位加治木義博『落・奈落』、8位南沢十七《有瀬留伴》物、9位矢野徹『甘美な謎』、10位『宇宙人フライデイ』
<雑誌>1位『星雲』、2位『宇宙と哲学』、3位『実話』増刊、4位『洋酒天国』SF特集、5位『宝石』夏の増刊号
17 1986年
12月
<特集 読書術・秘中の秘>

「他人はどのように読んでいるのか」本野虫太郎
「月に20冊、私はこうして読んでいる」手嶋政明
「本は酒の肴である」平館啓次郎
「雑誌は読まずに”見る”のが一番いい」二代目一条さゆり
「「週刊宝石」編集者読書目録」秋山協一郎
「ストップ・ウォッチを使って読む」平尾隆弘
「番外・怪しげな読書術」
「時代小説を鞄につめて富士五湖めぐり」小松敏宏
「読前・読後の13の心得」鷲田小彌太
「ペーパーバック読書のテクニック」深野有
「ひじ鉄砲で夜は長もち」荒川洋治

<コメント>
 新井素子の夫、手嶋政明の「月に20冊、私はこうして読んでいる」に出てくるデートの話が素敵。
 「手嶋さんが本を読みながら待っている。新井素子さんが、本を片手に入ってくる。向かい合って座り、コーヒーを呑みながら二時間黙々と読みつづけ、それで帰ったこともあるというのだ。」
18 1987年
4月
<特集 みんな欲しかった中国名著カタログ>

「古典名著年表」
「四千年の歴史を読む」
「哲学と思想を勉強する」
「冒険・怪奇・エロチシズムに浸る」
「異色の名著を楽しむ」
コラム・猿田明彦「美女・傾城カタログ」、「悲運!皇帝カタログ」、「悪党・奸臣カタログ」
 
19 1987年
7月
<特集 本物のホラーを! エセ恐怖ブームを斬る>

「スティーブン・キング・ホラーの憂鬱」本野虫太郎
「INTERVIEW・紀田順一郎」
「幻想怪奇のシリーズは貧乏と苦闘の歴史だった」ゲスト・荒俣宏
「とっておきの傑作怪奇短編6コ」長谷川並一
「日本の幻想怪奇小説は一級品を読むべし」本誌編集部
「INTERVIEW・石上三登志」

<コメント>
 編集部の掲げる、似非ホラー五つの特徴は、
1 想像力がない
2 美学がない
3 面白くない
4 怖くない
5 大人でない
20 1987年
10月
<20号記念 ブックマンたちに捧げる特別号>

「読者ブックマンたちに捧げる」瀬戸川猛資
「予見と錯誤」呉智英
「表と目録に魅せられて」矢口進也
「3.5坪の快適な空間」白井久明
「サンリオSF文庫ベスト10」萩原真弓
「さよなら旺文社文庫」谷口真一
「街角の怪人二十面相」松村恒雄
「ブックス・ミヤ工藤泰博氏インタビュー」
「本の寿命と酸性紙ショック」小林嬌一
「”活字ファン”の弁」松坂健
「黄金の鉱脈−泰文社の一週間」水沼黄司
「EE切府でみちのく探書行」平七郎
「マンハッタンの稀覯本」植松黎
「ここに処女あり」荒川洋治
「「本屋さんのカバー」作法」小駒公子
「映画『薔薇の名前』は本好き必見」宅和宏
「コーヒーを求めて」小田嶋伸幸
「大人の皆さん、絵本のススメ」英真寿美
「貧乏読書人の場合は」中原涼
「詩歌、都市へ侵入」藤原月彦
「ミニコミの矜持」編集部
 
21 1988年
3月
<特集 東京古本屋帝国ベスト店>

地図とガイド
 
22 1988年
7月
<特集 読書日記をつけましょう>

「編集日記」
呉智英日記「「気分は億万長者」でもあれこれ怒りながら読む」
横田順彌日記「『明治怪人伝』を書きつつ明治の本に読み耽る」
一条さゆり日記「ガイドブック抱えて香港旅行」
「新聞記者濫読日記」吉弘幸介
「ハネムーン読書日記」茶木則雄
「日記コラム」
 
23 1988年
11月
<特集 関東古本屋帝国ベスト店>

東京・横浜・千葉・埼玉
 
24 1989年
4月
<特集 世の中、マンガ 80年代精選傑作漫読大会>

「マンガの時代とマンガ評論」呉智英
80年代精選傑作漫読大会
「その1・学園・スポーツetc」秋山協太郎
「その2・ギャグ」いしかわじゅん
「その3・女の世の中」藤田尚
「その4・男の世の中」高見沢秀
「その5・ベテラン作家」呉智英
「その6・SF・怪奇」小田嶋伸幸
「絵の読み方」
「マンガファンの贅沢な悩み」
「大友マンガ」
<コメント>
 小田嶋伸幸推薦のSF・怪奇マンガは次のとおり
「ヤマタイカ」星野之宣
「西遊妖猿伝」諸星大二郎
「童夢」大友克洋
「ワン・ゼロ」佐藤史生
「日出処の天子」山岸凉子
「新今昔物語−鵺−」花輪和一
「草迷宮」内田善美
「美しの首」近藤ようこ
「吉祥天女」吉田秋生
25 1989年
8月
<特集 BM式必携文庫目録 絶版時代がやってくる> <コメント>
 創元推理文庫のうち、入手が難しいとしているものは次のとおり
『幽霊屋敷』ディクスン・カー
『殺人者と恐喝者』カーター・ディクスン
『チューダー女王の事件』ブッシュ
『殺す者と殺される者』マクロイ
『俳優パズル』クェンティン
『ある大使の死』マニング・コールズ
『怪盗レトン』シムノン
『港の酒場で』シムノン
『オランダの犯罪』シムノン
『アルザスの宿』シムノン
『メグレ警部と国境の町』シムノン
『追われる男』ハウスホールド
『ひらけ胡麻!』マイケル・ギルバート
『ペテン師まかり通る』ヘンリー・セシル
『クルンバ−の謎』ドイル

 現在では、このうち『怪盗レトン』と『ペテン師まかり通る』は容易に読めますね。
 また、つい最近『追われる男』は改訳復刊しました。
26 1989年
12月
<特集 秘密のベストセラー>

[硬派]の売れ行き
 
27 1990年
4月
<特集 本への”熱視線”−ヴィジュアル読書の時代>

「<装幀額ブチ説>と日本の全集・叢書・単行本」
「本の心が伝わる表紙−装幀家・荒川じんべい氏に聞く」
「”ペーパーバック革命”のゆくえ」松原健
「遠近法と見ることの逆説」佐藤和博
「書店における視線の技術」
「視る読書−目次考」
「なぜ小説には地図がついているか?」
「「もう一つの読書」−イメージを喚起するヴィジュアル本10冊」小田嶋伸幸
「ヴィデオをめぐる大いなる冒険」福田淳


 
28 1990年
10月
<特集 よくわかる現代詩 −知られざる世界の面白さ>

「白い目に浮かぶ「馬鹿野郎!」」荒川洋治
「わたしにとっての近代詩、あるいは現代詩のゆくえ」福田知子
「戦後詩の中の「出会い」」神山睦美
「コラム・詩集の入手法」
「ハイパアを超える”新しい”詩」小原眞紀子
「極私的現代詩人カタログ」岡崎武志
「”現代詩”が何回とはこれいかに?」関口涼子
「「し」的パッチワーク」青土百合
「魔法の詩」金関寿夫
「インタヴュー・ぽえむぱろうる 小田康之店長」
 
29 1991年
3月
<特集 オール未発表企画 終刊前の「特集」サービス特集>

オール未発表企画
「その1 日本の書誌学と森銑三翁」矢口進也
「その2 懐しの児童文学 これが、講談社版《世界名作全集》だ」
「その3 古本屋帝国・番外編 知っていそうで知らない古書店の常識」
「その4 発禁本とエロス文学 最近猥本事情」長谷川卓也
「その5 難解本に挑戦! トマス・ピンチョン「X.」を読む」
「その6 文学論争の研究 『太陽の季節』論争の分析」
<コメント>
 「知っていそうで知らない古書店の常識」は、古本屋の開業にあたっては、町の規模や、時間帯による人の流れ、不動産物件の良し悪しを、総合的に判断する必要があると指摘した、古本屋側へのアドバイス。
 開店時に自分の蔵書を売る場合、おうおうにして甘い値になっているとも、注意を喚起している。
 よけいなこと言わないでね(^_^)

 『太陽の季節』論争は昭和31年に同書が芥川賞を受賞した際に起こった論争の紹介。
 同書を批判したのは佐藤春夫。  文芸として低級なもので、作者の時感覚もジャーナリストや興行者の域を出ず、文学者のものではない。また、この作品から作者の美的節度の欠如を見て最も嫌悪を感じ得なかった、と手厳しい。
 亀井勝一郎も、
 わたしががまんならないのは、自分の世代に甘ったれていることである。当るかか当らないかといった賭博性も文学の敵だ、と批判しているが、これはその後の石原慎太郎の賭博的な生き方を言い当てて妙だ。
 政治家への転身や都知事出馬(昭和50年にも都知事に出馬したことがあるが、その時の賭けははずれ)、また最近裁判で負けた「外形標準課税」のように、賭博のような政策ばかり打ち出しているしね。

30 1991年
6月
<特集 <いい本>とは何か −最後のメッセージ>

「連続討議その1 定番の名著はどこにある」呉智英、矢口進也、小田嶋伸幸
「連続討議その2 面白い本について厳粛に語り合おう」松坂健、白井久明、仲原涼
「連続討論その3 稀覯書の美しさと楽しさ」荒俣宏、新田満夫
 


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