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はしらのはなし・営業日誌(2007年秋) その6

・営業その16

2007年10月の第三週。南武線沿線に出かけてみた。
武蔵溝ノ口駅に下車。
この町には書店が3つあるのだが、すべて同じチェーン店だ。

一軒目、ショッピングビル内にある店へ。
ここは出版社に営業して頂いたが、
注文をもらえなかったという。
それでは試しに自分でも行ってみようかと考えた。

書棚を整理中の男性店員に声をかけた。
誠実な受け答えで
「店長が休みなので、チラシを渡しておきます」
と言ってくれた。
後日、再訪してみると一冊が棚にさしてあった。
アリガトウ。

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・この本のジャンルは?

書店の棚を眺めながら、自分の本はどのジャンルなのか、と
改めて考えてしまう。

本作りの時、編集者の方から
「本を売るという観点から考えると、
どのような読者層にポイントを絞るか、ということは
大切ですよ」というお話があった。
それ次第で、写真にどのようなキャプションをつけるかとか、
カバーデザインをどうするかが決まってくるからだ。

「鉄道・廃線歩き」と考えるのが無難なのだが、
私の気持ちとしては「散歩」とか
「おはなし・エッセイ」の棚にあるといいなあと思う。

いわゆる「鉄道オタク」や、バリバリの廃線歩きの人に
強く勧めるほどの専門的な視点がない。
廃墟趣味というのも私は好きなのだが、私の本には
そういう感じをわざと避けている印象がある、とも指摘された。
結局、そういう視点も捨てきれないながら、
カバーデザインはほのぼのとしたイラストにした。

そして、自分で書店に本を売り込もうということになって、
やっぱり「このジャンルに置いて下さい!」と
ハッキリ言えなくて悩み続けております。

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・営業その17

「営業その16」で訪れた書店の本店へ。
溝の口駅から少し外れたところで、
割と最近に新しいビルへ引っ越したようだ。

レジの所に人が何人かいる。
年配の男性が話しかけやすそうに見えたけれど、
タイミングをつかめず。
結局、棚の整理をしている若い男性店員に声をかけた。

自費出版した本の紹介で来ました、と話すと、
さわやかなスマイルを浮かべつつ
「店ではそういうのは受け付けていないのです。
この先に本社の事務所がありますので、
そちらで話してもらえますか」とのこと。

ハイわかりました、と頭を下げて店を出たけれど、
本社へは行く気にならなかった。
実は、このチェーン店の小田急線沿線の店舗には
すでに数冊ずつを置いて頂いているのです。

本社に出向いて「本店に置いて下さい」と話しても、
会社としては売れそうな店舗に置いておけばそれでいいと
考えるのではないかなあと思い、望み薄のような気がしたのだ。

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・営業その18

南武線に乗り、武蔵中原駅で下車。
この町の書店は調べていなかったが、
改札を出てすぐのテナントの2階に書店があるとわかった。

最初、棚を整理している様子の男性に声をかけたら
「あーすみません、ここの者ではないので・・」と言われた。
どこかの出版社営業の方なのかと思う。

レジの横でモニター画面を見ている女性に
自分の本の紹介で来た旨を話した。すると
「社長か店長に話して欲しいのですが、
今日は店長がセミナーに出ているので不在です。
一社員では受け付けられませんので・・」
と、丁寧に話してくれた。

また今度来てみようと思い、チラシも渡さずに店を出た。

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・営業その19

武蔵小杉で下車。
ここは乗り換えのある駅だけれど、なんとなく町は地味な気がする。
開発中で、とんでもなく高層のマンションがいくつか建築中だ。

当てずっぽうに歩いてゆくと、商店街があった。
でもそこには書店はない。
そのまま歩いてゆくと、新丸子駅に着いてしまった。
小さい駅なのに、書店と名のつく店が4,5軒見えるのが興味深い。
昔は小さいなりに店に活気があったのかもしれないが、
今は棚が空いていたり、雑誌と児童書だけしか置いていなかったり。
店番をする人は道行く人を眺めるばかりだ。

中堅どころの1軒の書店に入る。
レジの男性に声をかけると、店長は不在とのこと。
でも、快くチラシを受け取ってくれた。

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・営業その20

東横線に沿って歩いて武蔵小杉に戻った。
南武線の反対側に出て、商店街を歩く。その途中に書店がある。
文房具も多少置いてある店だ。
誰に声をかけようかなとキョロキョロ。

権限を持っていそうな背の高い男性(店長?)が、
もっと権限を持っていそうなおじさん(社長?)から、
書棚の構成などについていろいろとアドバイスを受けている。
この人たちをつかまえればアタリかな、と思うが、
なかなかお話が終わらない。
唐突に割り込むわけにもいかず、結局はレジにいた女性に話しかけた。

「自費出版の本を置いて頂きたくて・・」と話すと、
「うちではそういう方がいらしても
一切受け付けていないんです」とのこと。

それでもひるまずに、続けて
「実は新風舎から出してまして、注文用のチラシもあるのですが・・」
とチラシを取り出すと、ちょっと風向きが変わった。
「ああ、新風舎さんなら取引があるんですよ。
担当にチラシを渡しておきますね」と、快く受け取ってくれた。

おもしろいのは、チラシをパッと見て
「ええと、絵本ですね?」と言われたこと。
表紙カバーに使用されている、モノレールの「はしら」の
イラストが、ほのぼのとしているせいだろう。

確かに、本の内容も、しゃべるわけがない「はしら」たちが
ひとりごとを呟くのだから、絵本みたいなものかもしれない。
子どもが読んでもいっこうに構わないと思うし。

でも、そういうあいまいなところが
売り込むためには欠点であるのだけれども・・。

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・営業その21

次に、スーパーの2階にある書店へ。フロアの隅の方にある、小さな店だ。
棚を一回り見て、もし私の本を置いてもらっても
売れないかもなあ・・と思ったけれど、
店員に声をかけてみることにした。

レジのところに、店員か関係者かわからないのだが
人が4人もいて、おしゃべりをしている。
誰に話しかけたらよいのかと思いつつ、声をかけた。しかし、
「店長がいないので」と言われた。私もあっさり引き下がった。
この日はこれでおしまい。