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はしらのはなし・営業日誌(2007年秋) その2

・営業その1

2007年9月下旬。都心の書店街、神保町へ。
出版社から来た「注文データ」によると、
この街の2店の書店から注文が入ったとのこと。
そのうちの一店の鉄道関連コーナーへ行ってみた。
十数冊の平積みにびっくり、うれしい。
他の本を立ち読みしながら、心の中で
「ガンバレヨ」と自分の本に声をかけた。

同じ街の、小さな書店へ。地方の本が集まっているのが好きで、
たまにゆっくりと過ごす店だ。
ここで営業をもくろむ。
客がいない時を見計らい、レジの女性に声をかけた。

「新風舎から出版した自分の本を置いていただけたらと思い、
うかがいました。」と言うと、
「うちは新風舎と取引がありますが、センターを通してということに
なるので、店頭でこのような売り込みは受け付けていないんです」
とのこと。
注文用チラシは受け取ってもらった。少し残念。
でも、意外と緊張せずに話しかけられました。

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・営業その2

2007年10月上旬。東京駅内の書店へ。
以前に客として行ったとき、鉄道本の品揃えがものすごくて
ビックリしたのだった。その中に、モノレールの専門的な本
(でも小さな本だったと思う)があり、向ヶ丘遊園モノレールの
古い写真(他の資料では見たことがなかったもの)があって
うれしかったのを憶えている。書名は残念ながら忘れてしまったけれども。
その古い写真の印象から書いた「はしらのはなし」も1つあるのです。

ダメでもともと、と思いつつ、レジにいる男性に声をかける。
「店長が3時頃戻るから、またその頃に来られますか?」と
予想外のことを言われて頭が回らなくなる。
とりあえず注文用チラシを渡し、本も見てもらう。
「鉄道の本が多いこちらの店に、ぜひ置いて頂きたいと思いまして・・」と言うと
私の本を見ながら「鉄道とは少し違う感じもするね」と言われる。
でも冷たい感じではない。
頭を下げて、いったん去る。

他の店へ行ってから、3時過ぎにもう一度顔を出した。
注文はもらえないかもしれないな、と思うが、
「店長さんにご挨拶だけでもと思いまして、また来ました」
と声をかけると、すぐにわかってくれた。
店長さんは、俳優の藤岡琢也さん似で、塩辛い声のおじさんだ。
先ほど渡したチラシを取り出してきた。何気なく見ると冊数のところに
「30」とある。エーッ! そんなに!  まあ、本は返品できるから
なぁ・・なんて思いながらも、うれしい。

「こういう本は趣味で出さなくちゃダメだよね。
売れないだとか、『本屋にまともに営業してくれない』と出版社を
訴えるなんておかしいと思うよ」との店長さんの話にうなずく。
「新風舎の営業はたまに来るけど、
この本のことは言ってなかったなあ」とも。
たぶん、私がこの店への営業をリクエストしなかったことと、
モノレールのあった地域と離れていることから、この店への営業は
考えなかったのだろうと思う。

「本が来たら、どうかよろしくお願いします!」
と、心からお礼を言ってチラシを受け取って去る。
幸先が良すぎです。
(下の写真は後日撮影)
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・営業その3

「営業その2」の書店へ3時に再訪するまでの時間に、
他の店へ足を伸ばす。小田急線の下北沢駅で下車。

書籍と雑貨が混沌として並ぶお店。
あの空間に、自分の本が並んだらうれしいなあ、と思っていた。
そうして、モノレールとか鉄道に特に興味のない人にも
「なんだろ、この本は?」と
手にとってもらえたらいいな・・という空想をしていた。

商品の整理をしている女性に声をかけた。
本の内容の説明をし、取引内容を書いた紙を見せた。
「この町とはあまり関係がなさそうですが・・」と言われ、
この店にぜひ置いて欲しくてうかがいました、と話す。
「仕入れの担当は私ともう一人なんですけど、
相談するのでチラシはいただいておきます」とのこと。

彼女自身にとっては興味が持てない
商品だったということかなと思った。

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・営業その4

ふたたび小田急線沿線へ向かう。
営業に行く書店は、あらかじめインターネットで目星を
つけておいたが、予定していなかった成城学園駅でいきなり下車。
ここの駅ビルにも書店があるとわかったからだ。
まあ、数を当たろうということで。

大きい書店の支店である。
まずは棚を全体的に見てみる。
「はしらのはなし」がすでに置いてある、なんていうことは
ないよなあ・・と一応は確認する目的と、
棚やお客さんの雰囲気・傾向を見て、
あまりにも自分の本を勧める感じではなかったら
営業はやめておこうということを判断するためです。

棚の整理をしている女性に声をかけると、
奥から店長の男性を呼んできた。
本の説明をして、見本を見せると、パラパラとめくって即、
「じゃあ、5冊入れます。10日置いて売れなければ返品しますから」と
ニコリともせずに言い、注文チラシの冊数の所に「5」と書き込んだ。
店からファックスを入れるというので「よろしくお願いします」と
頭を下げて店を出た。

正直なところ「イヤな奴」と思ったけれど、
「売れなければ返品する」と本当のことを言ってくれただけだ。
そう考えれば、5冊注文してくれるというのも嘘ではないだろう。
たぶん。