南部縦貫鉄道を歩く 30

 旧西千曳駅。元は、ここより少し野辺地寄りに旧東北本線の千曳駅があったそうだ。今思うと本当に惜しいが、くたびれきっていて昼飯のことばかり考えていて、その東北本線のホーム跡はどこかなど考えようともしなかった。駅の周囲は開けていて、駅舎も戸や窓をベニヤ板でふさがれてはいるが古びてはいず、今にも列車が入ってきそうである。

 近所の店で菓子パンを買い、旧ホームでのんびり食べようと思ったが、お日様が出ず、歩くにはよいが座り込んだら風が冷たい。それに目の前の道を車が通るし、地元の若者がバイクをブイブイいわせて行ったり来たりしているので落ちつかない。彼らもやはり、こんな所でパンを食おうという人間を「ほえ?」という顔で見る。そんなことに負けて、歩きながら牛乳を飲み、パンをかじった。最後の区間のレール上を歩く気はなくなっていて、のどかであろう県道に向かって歩を進めた。