南部縦貫鉄道を歩く 29

 いよいよ旧西千曳駅に近づき、レールはまたやぶの中となる。架線柱が傾き、そのてっぺんはちょうど私を通せんぼする高さにある。電線におそるおそるふれてみたが、もちろんビリリと感電するはずもない。けれどもやはり、手に届かないところにあるはずの線が自分と同じ高さにあるのは居心地悪い。

 左側に民家が見え始めた。足の裏や靴の当たる足指が少し痛いが、さいわい出発する前に絆創膏とテープをしっかりと巻いておいたので、悪化する気配はない。それよりも、やぶや木をまたいで歩いてきて、普通の道を歩くよりも足を高く持ち上げる動きを続けてきたせいか、腰が痛い。やぶを抜け、少し下り坂になって、ハー楽だらくだと思ったら、なんか腰砕けでびっこをひくような歩き方になってしまっていた。かなり疲れているなと思う。細い道路にぶつかる。そのとき、右の方から合流してきた、ごく細い踏み分け道を、そのときは「なんでこんな道があるのか、先の方に民家があるのかな」としか思わなかったのだが、後から考えてみると、それが旧東北本線の路盤だったらしい。へろへろの頭には、そんな大切なことが思い浮かばなかった。

(ブリキの看板に感心して写真を撮ったが、振り向けば旧東北本線の路盤です。)