南部縦貫鉄道を歩く 28

 たびたび靴ひもを結び直す。やぶや木の多いところでひっかかってほどけるのは納得できるが、ここのようにひっかけるものが何もないところでもしょっちゅうほどけるのは解せない。

 たまに、山桜がひっそりと咲いているのに行き当たる。ソメイヨシノよりも濃い桜色で、周囲の木の緑に映えて美しい。月並みだが、列車が来なくて見る人がいなくとも、花は毎年美しく咲くのだなあと思う。小さな沼のほとりに咲く山桜が特に印象に残った。

 左側は、その向こうに国道があるとは思えない鬱蒼とした木立である。右側は、木が生えてはいるがその向こうは明るく、かすかに車の音がする。少しづつ廃線跡は高くなってきて、見晴らしがきいてきた。田畑の向こうに道路が見える。それだけでも人心地がつくけれど、ここでもし遭難? したら、やはり見つけてもらうのは難しいだろうと思う。昨夜の宿の人は、「バスで野辺地の方へ行くと言っていました」と証言し、家族は「なんかあのへんを歩くとか、廃線跡がどうとか言ってたなー」という感じであてにはならない。頼りになるのは、途中で会った人ということになるが、なにせ今日は人と会うようなところはほとんど歩いていない。廃線跡のそばに住む人がもしかして見ているかな、犬は何匹か見たが、証言してくれそうもない。確実なのは、天間林のコンビニで、チョコバーを買ったときのレジのおねえさんが覚えているくらいだろう。・・・など、暇なのでいろいろ空想してみる。