南部縦貫鉄道を歩く 27
 次の旧西千曳駅までは、国道と離れ、地図で見るからに孤独な感じの区間だ。途中から、東北本線の古い路盤を右に見るように進むらしい。レールバスに乗って行くならば、国道の喧噪と離れ、山の中を行く雰囲気が楽しめるだろう。けれども、一人で歩く身には、気合いを入れ直さないと進めない。お腹が空いてきたが、パンなどを買うタイミングを失い、まだしばらくは食べられそうにない。
 この間、レール上にはあまり木や笹はなくて、とりあえず歩きやすい。ただ、曇り気味の空と、左右の木立が寂しげである。曇り空の方が汗をかかなくて楽かもしれないが、青空だったらもっと気持ちは軽かっただろうな、と贅沢なことを考える。ザクザクと自分の歩く足音だけが聞こえる。たまに立ち止まってみると、鳥の声と遠くで車の走る音が聞こえるだけで、とても静かだ。この廃線跡で、今一番うるさいのは自分である。廃線跡でなくても、田舎の道を歩いているときや近所の住宅街を歩いているときなども、ふと立ち止まってみると、自分の足音が一番響いているのだと気づかされることがよくある。