南部縦貫鉄道を歩く 17
 間もなく旧中野駅に到着。ここは駅舎に駅名標が残っている。民家のすぐ裏といった所にあり、レール上が物置きのような状態になっていたりする。人の家の敷地を通る感覚で、申し訳ない気持ちで粛々(しゅくしゅく)と行く。
 国道4号線から右に分かれ、東北本線の乙供駅方面へ向かう道路を渡ると、レールの右側にきれいに整備された公園が現れた。うららかな休日の昼間、遊具で遊ぶ幼い子らと若い親たちを柵越しに横目に見つつ、目立たぬように歩く。子供が「あのオバチャンなにやってるのー?」なんて訊いてきたら、親たちは何と答えるのかなと思う。もしかしたら「ハーメルンの笛吹き」みたいに思われて、「あっち見ちゃいけませんっ」なんて叱るかもしれない。それくらい、ピカピカの芝生の公園から見たら廃線跡は異質なものかもしれない。実際は、このあたりはレールの間にタンポポが咲き乱れていて、のどかな散歩道のようだ。