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台湾のサトウキビ鉄道を訪ねて その9

 中興車站が近づくと、母は座席から立ち上がって沿道を見たり、意外にも線路脇のポイント切り替え器に気づいて「これ、知ってる? ガチャンとやると、ポイントが切り替わるんだよ」なんて説明してくれたり。動かない貨車のそばに寝ていた黒犬は、立ち上がったと思ったら元通りにストンと腰を落とし、また眠り始めた。

 中興車站に戻ってきた。子ども達は、待っていた保育園のバスに乗り込んで帰っていった。とっても大きなガジュマルの木を無理矢理写真におさめる。自分一人で来ていたなら、工場跡を跨ぐ陸橋に上がってみたり、動かない貨車や機関車の方へずんずんと歩いて行って写真を撮ったり、ゆっくりと雰囲気を味わうところだが、母の付き添いであるゆえ、そういうのはやめておく。
  車に乗り、新營駅へ。翌日の自強號の出発時間を確認する。駅前にはあまり建物がなくて、町の中と比べてひっそりしている。地図を見ると、駅前にはいくつかホテルがあるようなのだがパッとしない。自分たちの泊まったホテルがこの町ではいい方の部類らしい。

 ガイドの楊さんが目星をつけておいた牛肉麺の食堂に入った。店内はクーラー付き、4人がけのテーブルと椅子が並び、テレビがついている。こぎれいな大衆食堂、といったところ。若い人、女性もごく普通に昼食をとりに入ってくる。テーブルに備え付けてある伝票兼用のメニューに希望の数を書き、それを店の表に持ってゆく。というのは、作っているのは店の前だから。外の席で食べる人もいるし、持ち帰る人も多いようだ。牛肉麺3人前と、餃子を10コ頼む。
 楊さんは店の奥から無料の冷茶(甘い。母は飲めない)と、酸っぱい漬け物を持ってきた。それにかける醤油も、少し甘く感じる。

 私はどうしても詳しい地図を手に入れたくて、並びの金石堂書店で分厚い『大嘉南全覧百科地圖』を購入(1380元)。いつか乗りたいと思っている、阿里山森林鉄道もしっかり載っている。ホテルに戻って小休止。これからが母にとっての本番、パルプ工場と社宅方面である。


(サトウキビ工場跡にかかる陸橋。ここに上がれば全体が見渡せるはずですが、私は残念ながら上がりませんでした)

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