ライヴ見聞録 
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2001,8/4 リメンバー・シャクティー



 真夏の暑い土曜日に、「リメンバー・シャクティー」を見に行きました。
 「シャクティ」とは、イギリス出身のギタリスト、ジョン・マクラフリンが1975〜1977年に、インド
の若手演奏家を率いて約2年間活動したグループです。当時発表された3枚のアルバムに
は、インド音楽とギターによる超絶技巧の応酬が詰まっており、今聴いても新鮮です。1999
年、マクラフリンは再び新メンバーによる、リメンバー・シャクティーを率いて活動を始め、遂
に来日公演がを行われました。当然、コンサートはインド大使館後援。
 ステージ中央に据えたれた高さ30cm×15m四方の台の上に、下座から出てきた4人は素
足で上がり、あぐらをかいて楽器を構えました。メンバーは以下の4人。
 ジョン・マクラフリン(エレクトリック・ギター)
 ザキール・フセイン(タブラパーカッション)
 U.シュリニヴァス(エレクトリック・マンドリン)
 V.セルヴァガネッシュ(カンジーラムリダンガム)
 ステージ左手前のザキール・フセインと右手前のセルヴァガネッシュが向かい合って座し、
奥には左からシュリニヴァスマクラフリンが並んでいます。客席奥のミキサーの上にはノー
トパソコンが置いてあり、ハード・ディスク・レコーディングが行なわれているかもしれません。
1&5度を中心に10度の音程がやや混じる電子音が、客席にかすかな持続音(ドローン)として
響いています。その音を基準に各楽器がチューニングを始めると、そのまま演奏に移行しま
した・・・とにかく、凄かった。6時に開演してから2時間半休憩なしで、インド音楽を基にした
超絶技巧の応酬による音の洪水・・・幸せな一時・・・。
 マクラフリンは、トレモロ・アームの付いたフローティング・テールピースのギブソン製セミア
(345か?)を、直接DIに繋いでいます。相変わらずの早弾きで、シュリニヴァスとの一糸乱れ
ぬユニゾンは特に凄かった!!!。インドのラーガとはかけ離れた、ロック・ジャズのイディオムに
近いフレーズを紡いでいますが、グループ全体としてはシャクティ固有の拡張インド音楽にな
っているところが凄い。途中のMCでは、ザキールが「グレート・ジョン・マクラフリン」と紹介
し、会場が一気に盛り上がりました。
 ウッパラプ・シュリニヴァスは、2台(調弦が異なるようだ)の6弦エレクトリック・マンドリン
曲によって使い分け、ボス製のデジタル・ディレイを常時介してDIに繋いでいます。スライディ
ングを多用するフレージングでは、速いフレーズでも2秒に1回くらいしかピッキングをしませ
ん。低音弦2本はドローン弦として利用しているようで、低音フレーズを弾くとき以外は、常に
開放弦を鳴らしていました。この人は、12才でマンドリンを南インド音楽界に認知させたとい
う早熟の超絶技巧奏者で、マクラフリンが彼の演奏を初めて見たときには開いた口が塞が
らなかったといわれています。CDでもその凄さが解っていたつもりでしたが、生で見るともっ
と凄かった・・・。
 ヴィナヤカラム・セルバガネッシュは、カンジーラ(南インドの打楽器、蛇皮を貼った小型の
タンバリン)の名手で、マクラフリンはMCで「天才」と紹介していました。フレーム・ドラムで、
ここまで低音から高音まで使い分けた先鋭的なリズムを紡ぐ人は、初めて見ました。最後の
曲での、彼の最大の見せ場となった数分間の無伴奏ソロがもの凄かった。インド人の名前
は、ファーストネームに父親のラストネームを用いるのですが、マクラフリンが彼のフル・ネー
ムをMCで紹介した時には、客席が沸きました(彼の父親は初代シャクティのメンバー:観客
はちゃんと解っています)。彼はまた、2曲でムリダンガム(南インドの代表的な両面太鼓)も
演奏しましたが、ステージに用意されていた父親から譲り受けたガダム(素焼きの壺)を遂に
演奏しなかったのが残念!
 ザキール・フセインは来日回数も多く、日本にもファンが多いため、マクラフリンのMCによ
るメンバー紹介で、最大の拍手を受けていました。今回のツアーは、マクラフリンザキール
の共同プロジェクトという形式であり、総てのインタビューは2人で行う契約になっているらし
い。開演前にステージ前に貼り付いて、ザキールパーカッション・セットを熱心に研究して
いる若者が多く、世界最高峰のタブラ奏者を長年努めてきた人だけのことはあります。タブ
ラ・バヤンのセットの他に、ウッドブロックベル・ツゥリー、低音のフレーム・ドラムなどを、
曲中の必要な部分に効果的に用い、グループの要として機能していました。兎に角、ザキー
の演奏を生で見るという、最大の目的が十分に達成されて、これだけでも十分満足!





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