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”焔の館”−マヤ哲学:ナワールの解説


イシュプールプヴェック;
お待ちかね、ここがウワサの”焔の館”。焔にくべられた血は甘く、焔に包まれた供物の匂いは香ばしい。
プフユー;
おいおい、ンなこと言って、白い毒の土を塗りこめた焼き鳥を食わされて、ひっくり返されちまったカブラカンの二の舞になるんじゃないぜ。人間ってやつは、どうも信用ならない。とにかくナワールだ。ほら、授業を始めるから生徒どもは焼けた椅子に座れ。
イシュプールプヴェック;
そうそう、尻をべッタリとつけてな。なあに、そんなに熱くはないよ。じきに立ち上がる気力もなくなるさ、きひひ。
プフユー;
はてさて、”ナワール”とは、マヤの言葉で「叡智」とか、「本質的な魂」を意味する。スピリットとでも言うべきか。別名で「キッヒ」とも言うな。
イシュプールプヴェック;
見た目マヤ文字だが、要するにルーン文字とか西夏文字みたいなモンだ。まぁ、見たら分かるが、あんま長い文章作るのには向かない文字だよ、マヤ文字っつのは。その文字、ひとつひとつに意味があるんだ。
プフユー;
現在ではグァテマラの伝統として、この文字が今も残ってる。
日本でよく「みずのと・ひつじ」とか「かのえ・うま」とか言うだろ? ああいうカンジの暦として、「フン・バッツ」とか「アッハ・カメー」とかいうのが使われてるってワケだ。、
イシュプールプヴェック;
ん? フン・バッツって、確かポポル・ヴフに出てくる登場人物の名前だよなアッハ・カメーってのもそうだ。
プフユー;
いいとこに気が付いたな相棒。そうさ、神話の中に登場する連中の名前ってのは、実は生まれた日の属性によってつけられてる。つまりは、その日のスピリットの化身でもある、というワケさ。
物語全体が、壮大な暦図になっているという説は、こっから出た。
と、いうわけで、まずはナワールを知らにゃぁ話ははじまらんということさ。
イシュプールプヴェック;
おお。そういうことなら書き出してみようじゃないか。
これが”ナワール”だ。よォく見てみるといい。


*20のナワール*


さて、マヤには3つの暦があった。
長期計算法太陽暦神聖暦。ニッポンでいうとこの、「ひのえ・うま」だのいう暦が、実際の生活で使われる暦とはちょいと用途が異なっているように、この3つの暦も、用途が違っていたらしぃんだな。

よく、「マヤの暦では2012年がおわりになっている」なんて言われるが、ソイツは長期計算法だ。約5000年で一巡りする。
太陽暦ってのが、単純に1ヶ月が20日×18ヶ月+5日で作られた365日だ。

そんで、ここにあげる「ナワール」ってのが使われてンのが、「神聖暦(ツォルキンtzolkín※)」。つまり仏滅だの大安だのに近い意味合いをもつ暦だっつぅことさ。

※マヤ語の場合。キチェー語ではチョルキフ(cholquih)、メキシコ語ではトタルポファリ(totalpohualli)


名称 バッツ
Batz
エー
E,ei
アッハ
Ah
イッシュ
Balam
ツィキン
Tziquin
言葉自体の意味 歯、はけ 葦草、柔らかい
トウモロコシ
じゃぐぁーる
カニールの象徴 時間 よい日、道
はじまり
トウモロコシ
家庭、家族
マヤの祭壇 大地の象徴
聖なる鳥
この日に生まれる
子の受胎される日
アカバル カット カン カメー キエッヒ
名称 アハマック
Ahmac
ノッホ
Noh
ティハッシュ
Tihax
カウーク
Caoc
アッハプ
Hunahpú
言葉自体の意味 みみずく 強い、樹脂 刃、
特定の鉱石
雷光 猟師、首長
カニールの象徴 罪人 思考、叡智 苦しみ 裁判官
守護者
調停者
女性(妻)
射手、狩人
旅人
この日に生まれる
子の受胎される日
カニール トッホ ツィ バッツ エー
名称 イモッシュ
Imox
イック
Ic
アカバル
Acbal
カット
Cat
カン
Can
言葉自体の意味 魚の名前 月、風 トウモロコシ保護
の網、とかげ
カニールの象徴 二重人格
感受性
空気、風 手、オーロラ
夜明け
トウモロコシ
の保護用網
羽ある蛇、
正義
この日に生まれる
子の受胎される日
アッハ イッシュ ツィキン アハマック ノッホ
名称 カメー
Camey
キエッヒ
Queh
カニール
Canel
トッホ
Toh
ツィ
Tzi
言葉自体の意味 富、
黄色い
トウモロコシ
雨、雷
カニールの象徴 鹿、
世界の四基点
四色の
トウモロコシ
供物、
支払い
この日に生まれる
子の受胎される日
ティハッシュ カウーク アッハプ イモッシュ イック

−イラスト拝借元:マヤ文明 新たなる真実/実松克義/講談社
−解説文拝借:マヤ神話−ポポル・ヴフ/林屋永吉 訳/中公文庫


 こまかい意味は省略だ。そんなモン、短い文章で表現しきれるモンじゃない。
 理解したい奴は、マヤ神官とこに修行に行ってきな(笑)

20とは、人間の手足の指の数の合計を表すとされる。マヤ神聖暦の一年は20×13、つまり260日だ。
どうして20に掛ける数が13かというと、人体の主な関節の数が13コだからだそうだぜ。どこをどう数えて13なんだかは知らないけどな。

また、20は男性の数で太陽をあらわし、13は女性の数で月をあらわすとも言われる。
女性は月経や出産などがあり、男の数に7つたりない不完全な数字だとされた。また、月は新月から満月まで約13日かかる。本当かウソかは知らないが、女性とは、不完全で変化する存在だとさけたらしい。ま、古代世界ではよくある思想だがね。

一年が260日といったが、これは、太陽がユカタン半島より南にある日数と、ちょうど一致する。のこり104日、太陽は北にある。交差点である1日を足して、360日で太陽が一巡りするというわけだ。
だが、新年は、太陽が真上を通過する5月1日ではなくて、2月4日にはじまる。


で。

人の名前に、このカニールがつく場合、数字との組み合わせでつけられる。
神聖暦の1年は、20のカニールが13回循環する、つまり、「1周目のナワール」から、「13周目のナワール」までが存在する。

たとえば、”フン”は数字の1を意味する。
われらがシ・バ・バル・バーの大王様についている御名前、「フン・カメー」といえば「1周めのカメー(死)の日」をあらわす。

”ヴクブ”は7だ。だからヴクブ・カメーは「7周目のカメーの日」になる。

プフユー;
生まれた日の名前を、子供につけることもあった。
つまり、だ。フン・バッツといえば1周目のバッツの日、つまり元旦生まれの登場人物だってことになる。そんなふうにして、登場人物のバアスデイが判ってしまうのよ。
イシュプールプヴェック;
いやまあ、別に判っても嬉しくもないけどな。
プフユー;
いいんだよ。とりあえず意味がわかれば。なんでコイツら、こんな似たよな名前なんだろう? わかりにくいっつってんだよ、とか、本読みながら文句たれなくてイイじゃん。
イシュプールプヴェック;
…いや、そういうことのためにナワールがあるわけじゃないと思うんだがな…。
プフユー;
と、いうわけだ。どうだ判ったか愚かな人間ども?!
熱くなってきたから、そろそろ出るか! な!
このゴウモンの館の最大の弱点は、番人のオレたちにとってもひじょぉに熱いっつーことだ! わはは!
イシュプールプヴェック;
おい、プフユー。オマエ、しっぽ焼けてる。
プフユー;
え?…

…うぎゃああ! ひいええ〜 と、トゥラロック〜?!
イシュプールプヴェック;
あーあー。錯乱しちゃってもォ。
そんな人間どもの神の名前なんか呼んでンしゃねぇよ、だいたい地下世界の時間の中に、地上の神はいねぇっつの。
ま、いいか。とりあえず表に出た出た。さぁていよいよ次で最終だ。
いいカンジにこんがりソテーされた貴様らを、血を求めて暴れまわってる”ヤツ”に食わせちまうとしよう。ケケケッ。



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