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”蝙蝠の館”−神々の名を呼ぶ者たち


プフユー;
さて、いよいよ最後の館。これからお前たちに、神々の名を呼んだ、幾多の民族の話を教えてやるとしよう。「ポポル・ヴフ」では第3部からのお話になる。そうそう、ここ、”蝙蝠の館”は、吸血蝙蝠カソマッツのおうちだ。あまり不審な動きはするんじゃないぜ。
カソマッツ;
キリッツ、キリッツ。…ふしゅー…
イシュプールプヴェック;
首根っこにがっちり齧り付かれると首が落ちるくらいだ。
暗くなると、オレたちまで襲われるから、電気消しちゃダメな。
プフユー;
さて。試練もいよいよ大詰めだ。
あのフンアフプーでさえ、ここで首を取られたのだからな。生きて出たくば暁を待て。決して焦って太陽を探してはいけない。汝の首が太陽となるであろう。
イシュプールプヴェック;
ここでは、もう一度、ポポル・ヴフを語った人々について繰り返す。
この書物を書いたのは、キチェー族という部族だ。マヤ文明は沢山の小さな民族の集まりだった。キチェー族も、その中の1つさ。
プフユー;
と、いうことは、マヤ族てェのは一体どういう民族の集まりなんだ…? って話。まずは「ポポル・ヴフ」を第3部を見てみるがいい。
イシュプールプヴェック、任せたぜ。
イシュプールプヴェック;
あいよ。そんじゃまァ、ダイジェストであらすじを送ってみるぜ。

最初に創られ最初に形を与えられたこの四人の男の名は、
一番目をバラム・キツェー、
二番目をバラム・アカブ、
三番目をマフクタフ、
四番目をイキ・バラムといった。
(中略)
それから彼らの妻となる女たちが創られた。
(中略)
女たちの名は、
バラム・キツェーの妻がカハ・バルーナ、
バラム・アカブの妻がチョミハー、
マクフタフの妻がツヌニハー、
イキ・バラムの妻がカキシャハーといった。

彼女たちが小さな部族、大きな部族の人々を孕み、われわれ、すなわちキチェー族の祖先となったのである。

 この辺りが、「最初に創られた人間たち」、聖書でいうとこのアダムとイヴな原始カップルについてだな。
 1対の男女じゃなく4対だ。
 そして彼らから多数の部族が誕生する。




 彼らが東方で生み、増えていったときには、それぞれちがった名前をもっていた。つまり東方では、オロマンコハフケネッチアハウと呼ばれていた。これが東方で生み、増えていった人たちの名前である。

 東方から一緒にやってきた、あのタムブ族イロカブ族の起源もわかっている。

 バラム・キツェーはカヴェック族の九つの大家の父であり祖父であった。
 バラム・アカブはニハイブ族の九つの大家の父であり祖父であった。
 マクフタフはアハウ・キツェー族の四つの大家の祖父であり父であった。…


 タムブ族とイロカブ族と一緒に、テクパンの十三の分族や、ラビナール、カクチケール、チキナハー、サカハー、ラマック、クマッツ、トゥハルハー、ウチャバハー、チェミラハー、キバハー、バテナバー、アクル・ヴィナック、バラミハー、カンチャヘール、バラム・コロブの諸部族がやってきた。

 これらはほんの主だった部族や分族だけを取り上げたに過ぎない。

……

プフユー;
…って、多ッ。
イシュプールプヴェック;
って言うと思ったぜ。
まぁとにかくいろいろいたんだよ。これだけいるとな、時間が経つに去れて混じっていったり、多少名前が変わったりしてもおかしくないだろ。実際、それはあったらしい。

問題は、これらの部族のすべてが、全く同じ神を崇めていたわけじゃ無い、っつーことだ。
プフユー;
おおう。どういうことだい?
イシュプールプヴェック;
 キチェー族にとっての神、トヒールが地上に現れたとき、タムブ族とイロカブ族は、同じくトヒールを自分たちの神として迎えた。それゆえ、この3つの部族はばらばらになることが無かった。
 ところが、ラビナールやカクチケール、チキナハーといった、歴史上、キチェー族と敵対していた部族は、言葉が変わってしまい、神の名前もトヒールではなくなってしまっていたんだ。
プフユー;
そういえば、カクチケール族の神は、蝙蝠の姿をしたチャマルカン(意味は”美しい蛇”)だったね。チャマルカンは、この、「蝙蝠の館」に住まう吸血蝙蝠、カソマッツと少し似ているかもしれない。
イシュプールプヴェック;
キチェー地方を出身とする3つの部族、キチェー族、タムブ族、イロカブ族は、名前は違ったがともに歩むことを誓い合った。ま、だから崇めてる神も同じさ。
だがカクチケール族やラビナール族は違ったのさ。彼らは一時期、同じ都に住んでいた別の部族だったというだけさ。
そして、この違った神々を崇める部族が、マヤ文明とは少しばかり違った、トルテカ文明を築く。
プフユー;
トルテカ文明といえば、のちにアステカが自分たちのルーツとした文明だねえ。てことは、マヤの諸部族とトルテカの部族は一時期、ともに行動して、のちに分かれたということになるのかい?
イシュプールプヴェック;
そう取れるな。
ポポル・ヴフの中では、神の名前も使ってる言語も違うが、隣人であったとハッキリ書かれているからな。ここらへんが、マヤとアステカの混同される原因だろう。
カクチケールやラビナールといったトルテカの部族は、一部がマヤの諸部族と行動を共にした。だが、アステカという別の文明に引き継がれていった部分もある。マヤはアステカとは直接関係ないが、トルテカ族は両者に関係しているというワケだ。
プフユー;
と、いうことはマヤとアステカでは神サマ違ったり?
イシュプールプヴェック;
モチ。なんせトルテカ族の神様からしてマヤ族とは違うからな。
オレら地下世界の住人も、かつて存在したキチェー族のライバル民族の神だったんじゃーないか、という説がある。
色々な部族がいて、色々な神々がいた。マヤ神話とは…その中でも、キチェー族を中心としたマヤの3部族が信仰した神々の物語を指すんだ、ということさ。
カソマッツ;
キリッツ、起立っ… 礼! ぶしゅっ。
イシュプールプヴェック;
おお。カソマッツが納得してくれたようだ。
もう日が昇る。あれは、フンアフプーの頭かな?
プフユー;
オチがついたところで、このへんで。
じゃアな人間! もう二度と死ぬんじゃねーぞ!
マヤのゴムボールは頭に当たるとマジで首の骨が折れるから、ほどほどになっ★

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試練を終える。