アイスランド・サガ −ICELANDIC SAGA

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 ここからは、コルスケッグと同じくアイスランドを出た、スラーインの話になる。

 スラーインは、グンナルの妻・ハルゲルズの二度目の結婚で生まれた娘、ソルゲルズを娶った男だ。彼はノルウェーに行き、グンナルの近い親戚としてハーコン候のもとに滞在する。
 この滞在中、ヴァイキングのコルという男が、ハルヴァルズという男を殺し、財産を奪うという罪を犯した。ハーコン候は、コルに賞金をかけ、あの高名なグンナルがここにいれば、コルなどすぐに殺されるだろうに、と言う。
 それを聞いたスラーインは、自分はグンナルではないが親戚なのだと言って、コル討伐へ乗り出した。戦いになり、コルとスラーインは激しく斬りあうが、スラーインが勝ち、切り落としたコルの首をハーコン候のもとへ持ち帰る。

 候は、褒美として怪鳥<ガム>と、いう名の船を与えた。この船は、どんな船よりも早く走る素晴らしい船で、そのため、スラーインは多くの妬みを受けた。
 春が訪れ、スラーインは、アイスランドに戻るか、候のもとに留まるかの選択を求められる。彼は、アイスランドからの知らせでグンナルが死んだことを知ると、出発をやめ、そのままノルウェーに留まることにする。


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 同じく、アイスランドを出たニャールの息子たちの話になる。
 コルスケッグ、スラーインとともにアイスランドをあとにした、グリームとヘルギの兄弟は、風に流されて、スコットランドやアイルランドの方面へと流される。
 嵐が開けたとき、目の前には13艘の船があった。船の指揮官は、グリョートガルズ、スネーコールヴ、メルコールヴ。彼らは友好的な対応はしなかった。荷を置いていくか、戦うか。選択を突きつけられて、ヘルギの息子たちは戦うことを選ぶ。かくして、多勢に無勢の不釣合いな戦いが始まった。
 と、そこへ立派な船に乗った人物が現れた。この人物はカーリと名乗り、ニャールと、その息子たちの名を知っていた。カーリの加勢で3人の頭を倒し、この戦いに勝つと、グリームとヘルギは、カーリとともにオークニー候のもとへ向かう。

 カーリの紹介で、ふたりはオークニー候シグルズのもとに滞在することになった。
 やがてヘルギは、突然、シグルズに「スコットランドの守りを固めるべきだ」と、言い始める。スコットランドで反乱の起きる気配があったからだ。父ニャールと同じく、彼も、先見の明のある男だった。
 これを確かめたシグルズ候は、大軍を率いて反乱を鎮圧する。グリームとヘルギは褒美を賜り、ノルウェーへ戻る許可を得て、再び船出する。カーリは、いずれ自分もノルウェーへ行く、そのときに会おう、と言った。
 この友情は、長く続くことになる。


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 ノルウェーに滞在しているスラーインと、ノルウェーへ向かったニャールの息子たちは、必然として再び出会う。だが、その前に、ひとりの新たな人物が登場する。嘘つきのフラップだ。
 コルスケッグとニャールの息子たちがアイスランドを出るのと入れ違いにアイスランドへ行った、コルベインという男が、このフラップに出会った。フラップは、乗船賃を払うから自分を船に乗せて欲しい、と言い、その理由は、人殺しをして島にいられなくなったからだ、と言う。
 フラップを船に乗せてアイスランドを出るコルベイン。
 だが、この男は酷いペテン師で、金は持っておらず、船の上でもいざこざばかり起こす。腹をたてはしたものの、コルベインは、この男を見逃すことにして(つまらない男相手に本気で起こって、名誉を落とすこともない。)船から降ろす。

 ノルウェーへついたフラップは、ハーコン候の友人、グズブランドのもとへ行き、雇ってくれるように頼む。グズブランドには、ハーコン候と共同で管理する、ノルウェー最大の神殿と、グズルーンという名の娘があった。
 はじめのうち、フラップは面白おかしい話で人々を笑わせ、大いに盛り上げるが、そのうち、グズブランドの娘グズルーンにちょっかいをかけるようになる。グズブランドは娘に注意するが、2人の密会は止まらず、父はアースヴァルズという男に監視を命じる。

 ある日、アースヴァルズは、森に出かけたグズルーンが、木陰でフラップと寝ているのを見つけ、激怒する。アースヴァルズはフラップを殺そうとするが、逆に殺されてしまう。グズルーンは、あなたはもうここにはいられないでしょう、そしてもうひとつ、自分が妊娠していることを知ったら父は許さないでしょう、と言う。
 フラップはその二つとも自分から報告しよう、と言い残してグズブランドのもとを訪れる。
 当然、グズブランドは激怒し、フラップを掴まえて殺そうとするが、身軽な彼は森の中に逃げ延びてしまう。グズブランドは、このことをハーコン候に報告するが、候の手はかりず、自分たちだけでフラップを追い詰めようとするのだった。

 さらに悪いことに、フラップは、神々に悪さを働こうと考えた。
 彼はハーコン候とグズブランドが共同管理する神殿にもぐりこみ、地方神ソルゲルズ・ホルダブルーズと、トール神とイルパ女神の像から黄金の飾りを奪い、像を外に放りだして、神殿を焼き払ってしまう。さらに、駆けつけた男たちを傷つけ、逃亡する。
 これを知った候とグズブランドは、すぐさまフラップを追った。ことにハーコン候の怒りは凄まじく、フラップを生かしてはおかぬ所存だった。

 しかしフラップの逃げ足は速かった。
 彼は入り江に逃げ込み、ちょうどそこでは、スラーインとニャールの息子たちが出航の準備をしていた。フラップは彼らに、かくまってくれと言い、援助を断って目の前で人が死ぬのを見るのは気持ちよくないと思ったスラーインは、フラップを船に隠してやることにする。
 スラーインは、心のうちで計算する。援助を求めてきた罪人を見殺しにする不名誉と、罪人を候に引き渡す名誉と、どちらがより大きなものだろうか、と。
 結局、決めかねた彼は、フラップの悪運に賭けて、船を自由に捜していい、と候に申し出る。
 候は二度まで船をくまなく捜すのだが、毎回、場所を変えて隠れているフラップを見付けることが出来ない。三度めに気づいたとき、船はすでに出航していた。
 こうして、フラップは、まんまと外洋へ逃げおおせるのである。


 フラップによって、新たな火種が生まれた。
 怒りの静まらないハーコン候は、スラーインと共にいたニャールの息子たちに責任を転嫁し、捕らえて殺そうとする。海上戦となり、ニャールの息子グリームはアースラークを殺し、ヘルギはエギルを殺すが、候の息子スヴェインによって捕らえられてしまう。
 捕らえられたのが夜だったため、すぐさま命を失うことは免れたが、朝になれば処刑が行われるという。まさに不幸中の幸いだった。
 ヘルギとグリームは、共謀して夜のうちに自力で逃亡し、夜が明けたところで、偶然にも、あのカーリの船を発見する。

 ハーコン候は、2人がカーリのもとに保護を求めたことを知り、和解を望む。候の息子エイリークがその仲立ちとなって、彼らの仲は修復された。
 こうして、カーリとニャールの息子たちはヴァイキング行に出、そののち、アイスランドへ向かうことになる。
 


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