−２−

　さて、物語には、新たにグンナルとニャールという二人が登場する。グンナルはウンの親戚だ。

　あるときグンナルは、ウンから相談を受ける。”前夫フルートに対し結婚の持参金の返却を要求したいが、過去に亡き父・モルズが要求したときには叶わなかった、どうにか力を貸して欲しい”。
　そこでグンナルは、法律家であるニャールのもとに相談に行く。このサガのタイトルになっている「ニャール」という名の人物だ。

　ニャールは、彼に助言を与える。
　カウパ・ヘジンという偽名を名乗り、連れを伴ってフルートのもとに行き、愚か者のように振舞って油断させ、フルート自身の口から、ウンの財産請求法廷への召喚の言葉を語らせよ、と。
　当時アイスランドでは、裁判はすべて集会の場で行われた。そこへ被告と原告を呼ぶことは、最初のステップなのだ。

　グンナルはそのとおりにし、まずフルート自身に、フルートを法廷に召喚するための言葉を口にさせる。
　グンナルはわざと間違いながら、その言葉をまねする。フルートはさらに言葉を費やし、法的に有効な言葉を、しかも自らを訴えの場へと引きずり出す言葉を、完璧に口にしてしまう。グンナルはそれを、そっくりそのまま真似る。そして最後に言う、「モルズの娘ウンの代理による訴訟に召還する」と。グンナルの連れは、その召還の証人にするためにいるのだった。
　こうして、フルートは、自分自身の裁判へと、自らの言葉で召還されてしまう。

　グンナルは、過去にフルートがやったように、決闘を申しこむ。
　今度は立場が逆になった。フルートでは、逞しいグンナルに勝つことは出来ない。決闘すれば敗北するだけではなく、命を落とすことになる。
　そこでフルートとホスクルドの兄弟は、後ろでニャールが糸を引いていることを感じながらも、グンナルに金を払うことを選ぶのだった。

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