■アイスランド・サガ −ICELANDIC SAGA |
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ホスクルド殺害を悲しんでいたのは、フロシだった。ホスクルドの妻は、フロシの姪である。親戚の死に関して、彼が仲間を集めるのは当然のことだった。
その中には、シーザのハルもいる。
モルズの計略によって、ホスクルド殺害を告示したのは、モルズ自身だった。フロシはこのことを訊ねに、アウルの首長ウールヴの息子、ルノールヴのもとを訪れる。ルノールヴは民会へゆくことを約束した。
そのあとフロシは、ホスクルドのもとに嫁いだ姪、ヒルディグンの家を訪ねる。ヒルディグンはフロシに、夫の復讐を願う。迷っている様子の叔父を見て、彼女は、かつてフロシがホスクルドに贈り、殺された時も身に着けていたマントを、血の塊とともにフロシに叩きつける。フロシの表情が変わった。
彼は、ホスクルドがニャールの養子になる前の実家である、シグフースの息子たちのもとを訪ねる。
シグフースの息子たち、ホスクルドの父スラーインの兄弟でもある彼らは、ニャールの息子たちを追放するか、殺害したいと望む。
フロシは、甥のスタルカズを、モルズの娘、ラングェイグに求婚に行かせる。こうして訴訟の準備は整っていった。
一方、スカルプヘジンらニャールの息子たちのほうは、父ニャール、義兄弟カーリのほかに、ニャールの養子となっていたアースグリームの息子ソールハルなどとともに各地の有力者の間に援助を求めて回るが、どこでもスカルプヘジンは不評で、なかなかうまく援助を取り付けられない。
そうこうしているうちに、民会は始まった。
まず最初にソールハルが、フロシが実はホスクルド殺害に参加していたことを上げ、訴訟準備が十分ではなかったことを示したのち、ニャールが語り出す。
彼にとっては、実の息子たちが養子にした息子を殺した、という、仇を仇とも思えない状況だった。
ニャールは和解を望み、シーザのハルも、フロシに和解をせよと望む。フロシとニャールはそれぞれ6名ずつの裁判官を決め、合計12人が判決を決めることになる。
その12人の中には、首長スノリと、「権威ある」グズムンドもいた。
彼らは、民会における最高限度額の賠償金で和解にもちこもう、という判決を下した。それは、通常の3倍の賠償金で、銀600というものだった。この全額が、民会で支払わなければならない。
裁判官たちが半額を出し、ニャールとその息子たち、人々から集めたぶんで残りの半分になり、ホスクルドの賠償金となる銀は全額集まった。だが、フロシはこの和解を望まず、わざと人々の前でニャールを揶揄してみせる。スカルプヘジンがこれに言い返し、2人は喧嘩となり、和解は不成立に終わった。ホスクルドの命は無賠償か、それとも血の賠償か。いずれにせよ、銀での支払いは受け取らない。
そういい残して、フロシは、シグフースの息子たちとともにその場を去る。ニャールは、最悪の結果を予感しながら、息子たちとともに帰郷する。
支払われた銀を保管するとき、首長スノリは言う。「この銀が、また必要になるときは遠くない」と。
不吉な争いの予感が、島に広がりつつあった。