■アイスランド・サガ −ICELANDIC SAGA |
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さて、エヌンドと妻・エーサの間には二人の息子がいた。トルゲイルと、オーフェイグ・グレティル(あだ名が”グレティル”。母方の祖父の真似)の兄弟だ。
エヌンドは、エーサが死んだあと後妻としてトールディースを迎え、トルグリームという息子をもうけた。25歳のとき、すでに髪が白かったので「白髪のトルグリーム」と呼ばれた。
この三人兄弟は父エヌンドが死んだあと、財産を共同管理していたが、やがて、父と土地の取引をしたエイリークも死んでしまうと、その息子・フロシは、かつての取引が不当なものであったと主張しはじめ、争いが起こった。
フロシはエヌンドの息子たちのうち、長兄トルゲイルの暗殺を企てるが、これは失敗に終わる。
ことは、アイスランドが未曾有の飢饉に襲われたときにおこった。
食べ物が欲しい時である。
巨大なシロナガスクジラの死体が海辺に流れ着いたことから、その分配をめぐって戦いが起こった。かつて、漂着物についての取り決めをしていなかったことが、ここで火種となったのである。
ここで戦闘に参加した主な人々は、↓こちら。
トルゲイル側 | フロシ側 |
<エヌンドの息子たち> トルゲイル オーフェイグ・グレティル トルグリーム 他、12人の仲間 <コルベインの息子たち> イーヴァル レイヴ 他6人の仲間 カルドバクの人々 トルゲイルの友人・スヴァン とその仲間たち |
フロシ <難破船の船員> ステインとその部下 ドランガルのオーラーヴ とその手下(多数) |
もともと鯨が流れ着いたのは、フィヨルドの、トルゲイル側の土地である。しかしフロシたちが先にやって来て鯨の肉を切り出しはじめた。そこへトルゲイルたちがやって来て、自分たちの土地に流れ着いたのだからそれは自分たちのものだ、と言い、フロシは、土地はやったが漂着物までやるとは言っていない、と反論して戦いになる。
双方とも、もとは戦いに来たわけではないので鯨の肉を切るための道具しか持っていない。中には鯨の骨で殴りかかる者もいた。
この戦いでは次兄オーフェイグが命を失った。
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戦いのあと、民会において、かつての土地取引は有効であったこと、しかし漂着物についての取り決めが行われていたかどうかは立証できない、という判決が下された。
争いのもとになったフィヨルド周辺の土地については、あらためて分割が決められた。
殺されたオーフェイグには多額の保証金が払われ、フロシとその一党は「追放」(ただし軽い意味での追放である)の判決を下される。
やがてエヌンドの残された二人の息子たちは財産を分割し、トルグリームは動産、トルゲイルは不動産をとり、トルグリームは、トールディースという娘と結婚してアースムンドという息子を得た。
のちにグレティルの父親となる人物である。
アースムンドは父親と折り合いが悪かったが、父から動産のいくらかを譲り受け、それを元手に外国で成功する。
やがて、客人となっていたトルステインの妹・ラングェイグを見初め結婚、息子トルステインを得るが、妻は早世。やる気を無くしてしまったアースムンドは、息子を妻の実家に預け、再び旅に出る。
やがて旅に嫌気が差してきた頃、彼は、叔父のオーフェイグ・グレティルの娘、アールディースの娘(つまりハトコ)、アースディースと出会う。アースディースへの求婚は受け入れられ、やがて二人の間には、何人かの子供が生まれた。
長男は賢く人付きあいのよいアトリ。次男は人付き合いの悪い、きむずかしやのグレティル。娘たちもいたが、名前が出てくるだけで、本編ではあまり関わりが無い。
物語はようやく、主人公グレティルの代へとやってきた。