アイスランド・サガ −ICELANDIC SAGA

サイトTOP2号館TOPコンテンツTOP

−”義足のエヌンド”−


 物語は、主人公グレティルにとっては曽祖父にあたる、エヌンド(またはオヌンド)の代より始まる。

 その時代は、人々が故郷ノルウェーを捨ててアイスランドへと移住し始めていた時期だった。オフンドはノルウェーにいて、仲間たちとヴァイキング行を繰り返している。
 アイスランドへの移住は、ハラルド美髪王によるノルウェー統一と圧政が原因とされるが、この時代は、まさにそのハラルドが、権力を得んものとして侵攻中であった。
 (※ハラルドはウップランドの出身。エヌンドは母方はウップランドの出身、父方がロガランドの出身)
 ここでの構図を簡単にすると、↓のような感じである。

ハラルド側 連合軍(敗北)
ハラルド王
と、協力者たち
「富者」キョトヴィ
「長顎」トーリル

南部ロガランドより
ソーティー、スールキ王

援助を頼まれて出陣
エヌンド、バールキ、オルム、ハルヴァルド

その他、多数のヴァイキング


この決戦は872年、ハヴル(ス)・フィヨルドで実際に起こった歴史的事件である。サガに登場する人物の家系は、多くがこの戦いに関わっており、必ずしもハラルドの敵側についているとは限らない。
 この戦いで多数の死者が出、エヌンドは片足を失う。倒れた彼を助けたのは、そののち友人となる、ノルウェー人エイヴィンドの弟・トラーンドだった。
 エヌンドの傷は癒えたが、足をなくしたことで義足が必要となり、「義足のエヌンド」という名で呼ばれるようになる。

 二人はあるとき、南の島々(ヘブリデス諸島)へとやって来た。ここには、かつて一緒にハラルドと戦った、「しかめ面(グレティル)」のオーフェイグという人物がいた。
 片足をなくしたことで人々から侮られているのではないか、と悩むエヌンドに、トラーンドは、妻を娶ってはどうかと勧める。
 相手はオーフェイグの娘、エーサだ。エヌンドは、片足は失ったものの、名門の出であり財産も多い。オーフェイグは婚姻を承知する。一方のスラーインは、同じくこの島で再会したソルモーズという人物の娘と婚約した。

+++

 そうして、彼らは夏にヴァイキング行に出かけた。片足を失っても、エヌンドはまだ、ヴァイキング行を続けていたのだ。
 彼らは、ヴィーグヴョードとヴェストマルというヴァイキングと出会い、戦いになる。エヌンドは片足になっても強く、ヴィーグヴョードは倒された。彼らは略奪品を手に入れて、いちど引き上げる。

 その後、再び海に出た。今度は、アイルランドへ土地を求めに旅に出たのだ。
 ハラルド王に追い出され、土地を失った者は多い。だが、ハラルドの勢力は大きく、戦って勝つことは出来まい、というのが、多くのヴァイキングたちの意見だった。
 だが、トラーンドの異母兄・エイヴィンドは、エヌンドの来訪を快くは思わなかった。
 エイヴィンドはアイルランドの王、キャルヴァルの娘を妻としていた。エヌンドは、そのキャルヴァルを相手に戦をしかけ、危うく殺しそうになったことがあった。エイヴィンドはエヌンドを殺そうとするが、トラーンドが取り成し、何年かをエイヴィンドのもとで過ごした。

 やがて、トラーンドの父・ビエルンが死んだ。
 ハラルドの家臣で領主のグリームは、トラーンドは外国人なのだからビエルンの遺産は没収されるべきだ、と主張するが、トラーンドの母方の祖父、エンドートは、娘の息子が継ぐのだから没収されるいわれはない、と言い、グリームを追い返す。
 トラーンドはいそぎ故郷へ戻り、ひそかに遺産を手に入れてノルウェーを発つ。トラーンドはアイスランドへ行くことを告げ、いったんエヌンドとは別れた。トラーンドはアイスランドへ行き、かつてともにハラルド王と戦った仲間たちに迎えられ、エヌンドは、ノルウェーの親戚たちに会いに回った。

+++

 その間に、エンドートは、財宝を手に入れられず恨みを持っていたグリームによって殺されてしまう。エヌンドは、エンドートの息子たち、アースムンドとアースグリームに力を貸し、グリームを殺害する。さらに、グリームに指示してエンドートを殺させた、アウドゥン公にも生き恥を晒させることに成功した。彼らはエイリークという男のもとに厄介になったあと、それぞれ別のルートからアイスランドへ向かう。
 ハラルド王の手から逃れるように。

+++

 やがてアイスランドへと着いたエヌンドたちだったが、そこには既に多くの移住者がおり、手付かずの土地はあまり残っていないという。 そこでエヌンドは、先住のエイリーク・スナラという豪族から土地を譲り受けることで合意し、そこに屋敷を構えた。だが、土地の分配は決めても、その向こうにひろがる、海から流れ着く漂着物についての所有権は、決めていなかった。
 このことが、のちに大きな問題を引き起こすこととなる。

BACK< INDEX >NEXT