古今東西・北欧神話
ブラギ誕生
ブラギは、オーディンの息子で詩の神である。
「エッダ」では、全然活躍しないわロキに小ばかにされるわ、けっこう損な役回りだが、アイスランド・サガにおいては、「支配者はオーディンのために、農民はトールとブラギのために杯を掲げた」などの記述があるとうり、民間レベルでは、かなり信仰されていた神だったようだ。
ブラギは、豊かなあごひげを生やした老人の姿をしていた、という。
人々は、名高い詩人をブラゲと呼び、詩人自身も「スケグブラギ」のように、ブラギにちなんだ名前を名乗った。
ブラギの母は、オーディンがだまくらかした、巨人スットゥングの娘グンロッド(グンレズ)である。
オーディンがクヴァシルを殺して作られた「詩人の密酒」を盗みに行く話は有名なのでここでは省くが、このとき、酒を盗み出す片棒担がせたのが、グンロッドである。
取り残された可愛そうな女は身重になり、地下の洞窟で、まもなく息子を産む。これがブラギだ。
ブラギが生まれると、地下に棲む小人たちは、「詩と音楽の神が現れた」と大喜びし、子供に、得意のアーティファクト技能でこしらえた、竪琴を与えた。
この竪琴を使ってブラギの唄う「生命の歌」は、地下にある死の世界ヘルさえも揺るがし、天上界に響き渡ったという。
(北欧には、ギリシア神話のように芸術の神がいないのかと思ったら、こんなところに居たというわけだ。)
ブラギは、フィンランド叙事詩カレワラの主人公、「ワイナミョイネン」にも似ている。
ワイナミョイネンがカンテレを手にして歌ったときと同じく、木々は聞きほれ、さらに花も咲いたというから、まるで花さかジジイ同士(笑)
そして、この「花さかジジイ」な能力に惚れたのが、ほかならぬ、「青春のりんご」を持つ女神イドゥンだった。
彼女の持つりんごのお陰で、神々は老いることがない。どっからりんごを出しているのか、ずっと疑問に思っていたが、木々を茂らせ、花を咲かせるブラギの能力があってはじめて家庭菜園が成り立つのだとしたら…、この婚姻は、非常に有益だったと言えよう。
イドゥンとともにアスガルドへ上がったブラギは、そこで、英雄たちのための歌をつくり、神々をたたえる詩を作るようになった、という。
だがしかし、永遠の若さを持つイドゥンと、生まれたときからジジィなブラギって…。犯罪的夫婦のような気が物凄くするのですがいいんでしょうかどうなんですか。
前へ 戻る 次へ